Fate/kaleid caster ドラまた☆リナ 作:猿野ただすみ
「要はソードと力試しをしろ、って事でしょ? ね? キャナル!」
あたし達の前に現れた、長めでダブり気味のサマーブルゾンを着た銀髪の少女が、あたしの言葉にニコリと笑みを浮かべる。
「……ったく。何が悲しくて、そんな凶悪カードと闘わにゃならんのよ!」
「リナさんには済まないと思っていますが、これが私のけじめですので」
ん? けじめ? それって一体…。
をや、ちょっと待てよ? そーいやあの時…。って、まさか!?
「もしかしてアンタが、この一連の事件の原因かああああ!?」
『ええっ!?』
あたしの発言にみんなが驚く中、当のキャナルはというと。
すい~…
さっきまでの落ち着いた態度はどこへやら。思いっきり顔を背けている。よく見りゃ冷や汗まで流してる様だ。
「えっと、リナちゃん。それってどういうこと?」
さくらちゃんが疑問を投げかけるが、それももっともな事だ。彼女達はこっちの事情なんて、わからないんだから。
「俺からも、いいかな? その、君がキャナルって呼んでるのは、神名じゃないのか? いや、神名の髪は黒だけど…」
って、しまった! そーいや聖名さんも居るんだった!
あたしがキャナルに視線を送ると、少し考え込むようにしてから軽く頷いた。どうやら
「……そうね。簡単に説明すると、今の彼女はキャナル。こことは別の世界から来た、神の眷属。所謂天使よ」
正確には分身みたいなもんらしいけど。
「天使さん!?」
「まあ」
さくらちゃんと知世ちゃんが再び驚いている。
もちろん聖名さんも驚いているが、すぐに思考を切り換えたのが見て取れた。それが魔術師と同じ理由から来るものなのか、祓い師としての経験から来るものなのかはわからなかったけど。
彼は黙ってあたしを見つめる。どうやら結構、肝が据わってるようである。
「ただ、キャナルは精神だけの状態で、そのままでは存在を保っていられなかった。そんな彼女を救うために身体を貸したのが、神名だったの」
「神名が!?」
さすがに妹のことに触れたら、声を上げずにはいられなかったようだ。だがあたしは、それには答えず、話を続けることにした。
「キャナルがこの世界に来た理由は、彼女の世界の魔王の武器を回収し、送り返すためだったわ。あたし達…、あたしとイリヤ、美遊、クロエ、そして凛さんとルヴィアさんは、その
「なんや、ざっくり話とるけど、魔王なんて、またけったいな話やな」
まあ、ケルベロスの意見もわからなくはない。いつも引き合いに出すが、[
「まあ、魔王の話自体は聞き流してもらってもいいけど。ともかく回収した武器を、キャナルが向こうの世界、神の名を取って[ヴォルフィード世界]ってするけど、そこへ送り返した訳ね」
そこで一拍空けて。
「ただ、その時、キャナルが少しやらかしたらしいのよ」
そう言ってキャナルを見ると、今度は顔を背けなかったものの、ものすっごく跋が悪いって表情をしてる。しかし、すぐにひとつ息を吐き、その表情は覚悟を決めたものへと変わった。
「私が[
「あっ! もしかしてそれが、さくらさんがいた世界!?」
『おそらくは、そういう事でしょうねー。と言うかイリヤさん。別世界への接触は、あの場でも説明受けましたよ?』
キャナルの説明で得心がいったイリヤに、ツッコミを入れるルビー。
「……もしかして、あの時のメンバーで気づいてなかったの、わたしだけ?」
「まあわたしは、魔王の武器の辺りで気づいたけどね」
「えっと、ごめんイリヤ。わたしも、それくらいで気づいてた」
クロエと美遊に言われて、落ち込むイリヤ。とは言え、気づくだけまだマシである。どこぞの
……などと、内心で前世の身内をディスってる内に、知世ちゃんがキャナルに確認を取り始めた。
「ええと、要約しますと、キャナルさんの手違いで私達の世界と接触したことが、私達やさくらちゃんのカードがこちらに来る原因となってしまった、……ということでよろしいでしょうか?」
「はい。なので私が貴方方を本来の世界へとお返しします。
……ですがその前に、カードの精霊の願いを叶えようと思っています。それが私の贖罪であり、けじめですので。もちろんあなた方も、私が出来ることであれば、願いが叶えられるよう尽力を尽くしますが?」
成る程、ね。確かにキャナルらしいものの考え方だ。しかも「なんでも願いを叶える」ではなく、「叶えられるよう尽力を尽くす」ってのが小賢しい。あたしお得意の上げ足取りも通用しないって事だ。……まあ、こっちの住人のあたしにゃ関係ない話だけど。
「ええと、私は元の世界に帰れるなら、それでいいよ」
「さくらちゃんがそれでいいのなら、私も同じですわ」
まあ、この二人ならそう言うと思ってた。
「主がそう思っているのなら、私には何も言うことはない。『雪兎』も特には望まないだろう」
「まあワイも、こないな事で叶えてもらうような大層な願いはあらへん。元の世界に返してもらうだけで、等価交換も問題ないハズや」
どうやらケルベロスも問題なしみたいね。
「せやけど」
うん?
「ひとつ質問に答えてんか?」
「はい。答えられることでしたら」
相変わらずそつの無い答えね。しかし質問か。……なんだろ?
「あんた、どうやって、さくらのカード
……あ。それってこないだあたしが、イリヤ達に説明したばかりじゃない。この状況ですっかり失念してたわ。
「……これは、神名の能力です」
「神名の…?」
聖名さんが食いついた。ふみゅ、どーやら家族にも心当たりが無いみたいね。
「リナさん達は既にご存知ですが、神名には式神使い、もしくは召喚士としての資質があります。結果的にですが、私との相性が良いのも、この能力のお陰ですね」
うん、確かにそれについては聞いている。だけどそれが、さくらカードを使えた理由とどう繋がるのか。
「式神使いに、召喚士?」
っと、さくらちゃんにはその知識は無かったか。
「式神使い、召喚士共に、契約した魔獣なんかを使役する術者の事や。そういう意味ではさくらも、召喚士ちゅう一面があるな」
「ほええ」
そう。さくらカードやクラスカードの使用は、ある意味での召喚術だ。特にクラスカードは、その原型と思われる聖杯戦争に於いてのサーヴァントと予想される。そちらはまさに召喚術で、聖杯戦争中のマスターは一時的に、召喚士を担っていることになるのだ。
「……続けてもよろしいですか?」
「あ、はい!」
キャナルに言われ、慌てて返事をするさくらちゃん。
「……もうひとつ、神名には特殊な能力があります」
うん? それはあたしも初耳なんだけど?
「神名は自身の魔力、こちらで
魔力の質の変化!?
「つまりや。カードに残ってたさくらの魔力を読み取って、自分の魔力を変化させたっちゅう事か」
「そういう事になりますね。とはいえ、特別訓練もしていない神名です。その魔力に近い状態へと持っていっただけですが」
なるほど。つまりクロウカード時代の、さくらちゃんや
「……よかった」
ん? 聖名さん?
「自分は落ちこぼれだって気に病んでたみたいけど、もうその必要は無いんだね」
……へえ、神名ってそんな悩みがあったんだ。あたしが出会った頃にはそんな雰囲気、微塵も無かったけど。
「……あの、聖名さん。私のこと、そして神名の能力については、ご家族にも内密に願います。特に私がいることは、封印指定の対象になりかねませんので」
封印指定! 言われてみれば、確かに。うあー、バゼットさんと一緒じゃなくてよかったわ。
「わかった。親父や
聖名さんが笑顔を浮かべながら応える。それを確認して、仄かに頬を染めながら安堵のため息を吐くキャナル。……ん? 頬を染めながら?
「キャナル。アンタひょっとして、聖名さんの事…」
「さあリナさん! 話も終わりましたから、そろそろ始めましょうかっ!!」
うわぁ、わっかりやす!
「ええと、なんて言うか」
「わかりやすい反応ねー」
「うん」
『聖名さんは士郎さんと通ずるものがありますし、中々面白おかしくなりそうですねー』
『姉さん!』
イリクロと美遊、そしてステッキ二本がもしょもしょと話してる。
「?」
「あら、まあ」
一方キョトンとしてるさくらちゃんと、多くは言わない知世ちゃん。そしてケルベロスは聖名さんの横まで移動すると、彼の肩に片手を置き。
「まあ、なんや。兄ちゃん、がんばりや」
「え? ああ、うん…?」
いずれ近い将来、苦労することになるだろう聖名さんを労っている。当の本人はわかっていない様だが。うん、確かに士郎さんと通ずるものがあるわ。
「リナさん!」
キャナルは顔を真っ赤にして、恥ずかしいのか怒ってるのかわからない表情であたしの名を呼ぶ。さすがにこれは、からかわない方が良さそうね。
……とはいえ、勝負かぁ。
「……どうしても闘わなきゃダメ?」
「……他の方でもよろしいですが、もしその方にこちらが勝っても、[
みゅむうう。確かにそれは言えてる。代わりの人物が勝てばいいけど、もしも負けた場合、結局あたしが闘う羽目になるのは目に見えている。
「ああもう、わかったわよ! 闘えばいいんでしょ、闘えば! だけどあたし、クラスカード
……まあ、
するとキャナルはお見通しとばかりに、ブルゾンの内側から一本の棒状の物を取り出し、あたしに手渡した。ったく、用意周到なんだから。
「これで、問題ありませんよね?」
キャナルってば、トコトン逃げ道を塞いでくる気ね? ってか、最初からあたしと闘うことを想定してたって事か。まあこの、厄介事に首を突っ込む性格は、あたし自身が充分に自覚してるけど。
ハァ…
あたしはひとつ息を吐くと、気持ちを切り換えてキャナルを見据える。そして。
「光よっ!!」
そのかけ声と共に、青白い光の刃が形成される。キャナルが渡してきたのは[
「
キャナルもさくらカードを発動させる。しかも触媒も無しに。さくらちゃんは[星の杖]に、
そんな思考を切り捨て、あたしは剣を青眼に構え。
「いくわよ、キャナル!」
「はい、リナさん!」
これがふたりの、戦闘開始の合図だった。
フハハハハハ! 戦闘回と期待した者たちよ、ザンネンであったな。今回はただの説明回でした!
ふむ、読者諸兄の怒りの悪感情、大変に美味である!
などと、
本当にすみません。ちょっと説明入れるだけのつもりだったのに、気がついたら2000字を優に過ぎていたので、開き直って説明回にしました。まあ、さくらの出番の量を無視すれば、タイトル詐欺にならなくて良かったですが。
次回「さくらと無敵の呪文」
さくらと一緒に、レリーズ!