Fate/kaleid caster ドラまた☆リナ   作:猿野ただすみ

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本日(2021年8月27日)は「劇場版Fate/kaleid linerプリズマ☆イリヤ」の公開日ですね!


さくらと天使と天才魔道士

≪リナside≫

「要はソードと力試しをしろ、って事でしょ? ね? キャナル!」

 

あたし達の前に現れた、長めでダブり気味のサマーブルゾンを着た銀髪の少女が、あたしの言葉にニコリと笑みを浮かべる。

 

「……ったく。何が悲しくて、そんな凶悪カードと闘わにゃならんのよ!」

「リナさんには済まないと思っていますが、これが私のけじめですので」

 

ん? けじめ? それって一体…。

をや、ちょっと待てよ? そーいやあの時…。って、まさか!?

 

「もしかしてアンタが、この一連の事件の原因かああああ!?」

『ええっ!?』

 

あたしの発言にみんなが驚く中、当のキャナルはというと。

 

すい~…

 

さっきまでの落ち着いた態度はどこへやら。思いっきり顔を背けている。よく見りゃ冷や汗まで流してる様だ。

 

「えっと、リナちゃん。それってどういうこと?」

 

さくらちゃんが疑問を投げかけるが、それももっともな事だ。彼女達はこっちの事情なんて、わからないんだから。

 

「俺からも、いいかな? その、君がキャナルって呼んでるのは、神名じゃないのか? いや、神名の髪は黒だけど…」

 

って、しまった! そーいや聖名さんも居るんだった!

あたしがキャナルに視線を送ると、少し考え込むようにしてから軽く頷いた。どうやら()()()()()()彼女からも許可が出たようだ。

 

「……そうね。簡単に説明すると、今の彼女はキャナル。こことは別の世界から来た、神の眷属。所謂天使よ」

 

正確には分身みたいなもんらしいけど。

 

「天使さん!?」

「まあ」

 

さくらちゃんと知世ちゃんが再び驚いている。

もちろん聖名さんも驚いているが、すぐに思考を切り換えたのが見て取れた。それが魔術師と同じ理由から来るものなのか、祓い師としての経験から来るものなのかはわからなかったけど。

彼は黙ってあたしを見つめる。どうやら結構、肝が据わってるようである。

 

「ただ、キャナルは精神だけの状態で、そのままでは存在を保っていられなかった。そんな彼女を救うために身体を貸したのが、神名だったの」

「神名が!?」

 

さすがに妹のことに触れたら、声を上げずにはいられなかったようだ。だがあたしは、それには答えず、話を続けることにした。

 

「キャナルがこの世界に来た理由は、彼女の世界の魔王の武器を回収し、送り返すためだったわ。あたし達…、あたしとイリヤ、美遊、クロエ、そして凛さんとルヴィアさんは、その最中(さなか)のキャナルと知り合い、魔王の武器の回収に成功したのよ」

「なんや、ざっくり話とるけど、魔王なんて、またけったいな話やな」

 

まあ、ケルベロスの意見もわからなくはない。いつも引き合いに出すが、[赤眼の魔王(ルビーアイ)]と戦う前のあたしが聞いたら、眉唾モンの作り話と笑い飛ばしてただろう。

 

「まあ、魔王の話自体は聞き流してもらってもいいけど。ともかく回収した武器を、キャナルが向こうの世界、神の名を取って[ヴォルフィード世界]ってするけど、そこへ送り返した訳ね」

 

そこで一拍空けて。

 

「ただ、その時、キャナルが少しやらかしたらしいのよ」

 

そう言ってキャナルを見ると、今度は顔を背けなかったものの、ものすっごく跋が悪いって表情をしてる。しかし、すぐにひとつ息を吐き、その表情は覚悟を決めたものへと変わった。

 

「私が[瞬撃槍(ラグド・メゼギス)]を送り返した時に繋いだ時空の路が、捻れ位置に存在した他の世界に掠ってしまったんです」

「あっ! もしかしてそれが、さくらさんがいた世界!?」

『おそらくは、そういう事でしょうねー。と言うかイリヤさん。別世界への接触は、あの場でも説明受けましたよ?』

 

キャナルの説明で得心がいったイリヤに、ツッコミを入れるルビー。

 

「……もしかして、あの時のメンバーで気づいてなかったの、わたしだけ?」

「まあわたしは、魔王の武器の辺りで気づいたけどね」

「えっと、ごめんイリヤ。わたしも、それくらいで気づいてた」

 

クロエと美遊に言われて、落ち込むイリヤ。とは言え、気づくだけまだマシである。どこぞの脳ミソクラゲ男(ガウリイ)だったら、ここまで言われてもわからなかったに違いない!

……などと、内心で前世の身内をディスってる内に、知世ちゃんがキャナルに確認を取り始めた。

 

「ええと、要約しますと、キャナルさんの手違いで私達の世界と接触したことが、私達やさくらちゃんのカードがこちらに来る原因となってしまった、……ということでよろしいでしょうか?」

「はい。なので私が貴方方を本来の世界へとお返しします。

……ですがその前に、カードの精霊の願いを叶えようと思っています。それが私の贖罪であり、けじめですので。もちろんあなた方も、私が出来ることであれば、願いが叶えられるよう尽力を尽くしますが?」

 

成る程、ね。確かにキャナルらしいものの考え方だ。しかも「なんでも願いを叶える」ではなく、「叶えられるよう尽力を尽くす」ってのが小賢しい。あたしお得意の上げ足取りも通用しないって事だ。……まあ、こっちの住人のあたしにゃ関係ない話だけど。

 

「ええと、私は元の世界に帰れるなら、それでいいよ」

「さくらちゃんがそれでいいのなら、私も同じですわ」

 

まあ、この二人ならそう言うと思ってた。

 

「主がそう思っているのなら、私には何も言うことはない。『雪兎』も特には望まないだろう」

 

(ユエ)さんも特になし、雪兎さんも(ユエ)さんの言うとおりだろう。

 

「まあワイも、こないな事で叶えてもらうような大層な願いはあらへん。元の世界に返してもらうだけで、等価交換も問題ないハズや」

 

どうやらケルベロスも問題なしみたいね。

 

「せやけど」

 

うん?

 

「ひとつ質問に答えてんか?」

「はい。答えられることでしたら」

 

相変わらずそつの無い答えね。しかし質問か。……なんだろ?

 

「あんた、どうやって、さくらのカード使(つこ)うたんや? そのカードは、さくらの魔力にしか反応せえへんハズや」

 

……あ。それってこないだあたしが、イリヤ達に説明したばかりじゃない。この状況ですっかり失念してたわ。

 

「……これは、神名の能力です」

「神名の…?」

 

聖名さんが食いついた。ふみゅ、どーやら家族にも心当たりが無いみたいね。

 

「リナさん達は既にご存知ですが、神名には式神使い、もしくは召喚士としての資質があります。結果的にですが、私との相性が良いのも、この能力のお陰ですね」

 

うん、確かにそれについては聞いている。だけどそれが、さくらカードを使えた理由とどう繋がるのか。

 

「式神使いに、召喚士?」

 

っと、さくらちゃんにはその知識は無かったか。

 

「式神使い、召喚士共に、契約した魔獣なんかを使役する術者の事や。そういう意味ではさくらも、召喚士ちゅう一面があるな」

「ほええ」

 

そう。さくらカードやクラスカードの使用は、ある意味での召喚術だ。特にクラスカードは、その原型と思われる聖杯戦争に於いてのサーヴァントと予想される。そちらはまさに召喚術で、聖杯戦争中のマスターは一時的に、召喚士を担っていることになるのだ。

 

「……続けてもよろしいですか?」

「あ、はい!」

 

キャナルに言われ、慌てて返事をするさくらちゃん。

 

「……もうひとつ、神名には特殊な能力があります」

 

うん? それはあたしも初耳なんだけど?

 

「神名は自身の魔力、こちらで小源(オド)と呼ばれているものですね。その質を変化させることが出来るのです」

 

魔力の質の変化!?

 

「つまりや。カードに残ってたさくらの魔力を読み取って、自分の魔力を変化させたっちゅう事か」

「そういう事になりますね。とはいえ、特別訓練もしていない神名です。その魔力に近い状態へと持っていっただけですが」

 

なるほど。つまりクロウカード時代の、さくらちゃんや小狼(シャオラン)くんみたいなもんね。クロウ・リードの魔力とは違うけど、それによく似た魔力、ってね。

 

「……よかった」

 

ん? 聖名さん?

 

「自分は落ちこぼれだって気に病んでたみたいけど、もうその必要は無いんだね」

 

……へえ、神名ってそんな悩みがあったんだ。あたしが出会った頃にはそんな雰囲気、微塵も無かったけど。

 

「……あの、聖名さん。私のこと、そして神名の能力については、ご家族にも内密に願います。特に私がいることは、封印指定の対象になりかねませんので」

 

封印指定! 言われてみれば、確かに。うあー、バゼットさんと一緒じゃなくてよかったわ。

 

「わかった。親父や真名(まきな)(にい)にも言わないでおくよ」

 

聖名さんが笑顔を浮かべながら応える。それを確認して、仄かに頬を染めながら安堵のため息を吐くキャナル。……ん? 頬を染めながら?

 

「キャナル。アンタひょっとして、聖名さんの事…」

「さあリナさん! 話も終わりましたから、そろそろ始めましょうかっ!!」

 

うわぁ、わっかりやす!

 

「ええと、なんて言うか」

「わかりやすい反応ねー」

「うん」

『聖名さんは士郎さんと通ずるものがありますし、中々面白おかしくなりそうですねー』

『姉さん!』

 

イリクロと美遊、そしてステッキ二本がもしょもしょと話してる。

 

「?」

「あら、まあ」

 

一方キョトンとしてるさくらちゃんと、多くは言わない知世ちゃん。そしてケルベロスは聖名さんの横まで移動すると、彼の肩に片手を置き。

 

「まあ、なんや。兄ちゃん、がんばりや」

「え? ああ、うん…?」

 

いずれ近い将来、苦労することになるだろう聖名さんを労っている。当の本人はわかっていない様だが。うん、確かに士郎さんと通ずるものがあるわ。

 

「リナさん!」

 

キャナルは顔を真っ赤にして、恥ずかしいのか怒ってるのかわからない表情であたしの名を呼ぶ。さすがにこれは、からかわない方が良さそうね。

……とはいえ、勝負かぁ。

 

「……どうしても闘わなきゃダメ?」

「……他の方でもよろしいですが、もしその方にこちらが勝っても、[(THE SWORD)]は納得しないと思いますよ?」

 

みゅむうう。確かにそれは言えてる。代わりの人物が勝てばいいけど、もしも負けた場合、結局あたしが闘う羽目になるのは目に見えている。

 

「ああもう、わかったわよ! 闘えばいいんでしょ、闘えば! だけどあたし、クラスカード限定展開(インクルード)したから、[光の剣]はしばらく使えないわよ?」

 

……まあ、夢幻召喚(インストール)は出来るんだけど、聖名さんがいるからね。

するとキャナルはお見通しとばかりに、ブルゾンの内側から一本の棒状の物を取り出し、あたしに手渡した。ったく、用意周到なんだから。

 

「これで、問題ありませんよね?」

 

キャナルってば、トコトン逃げ道を塞いでくる気ね? ってか、最初からあたしと闘うことを想定してたって事か。まあこの、厄介事に首を突っ込む性格は、あたし自身が充分に自覚してるけど。

 

ハァ…

 

あたしはひとつ息を吐くと、気持ちを切り換えてキャナルを見据える。そして。

 

「光よっ!!」

 

そのかけ声と共に、青白い光の刃が形成される。キャナルが渡してきたのは[烈光の剣(ゴルンノヴァ)]…、そう、[光の剣]だ。但し本物ではなく、また、クラスカードの宝具でもない。キャナル…、かどうかは知んないけど、[ヴォルフィード世界]の神の眷属が創ったレプリカである。でも、その能力は本物だ。

 

(THE SWORD)!」

 

キャナルもさくらカードを発動させる。しかも触媒も無しに。さくらちゃんは[星の杖]に、限定展開(インクルード)みたいにして使ってるのに。天使のキャパシティ、侮れないわね。

そんな思考を切り捨て、あたしは剣を青眼に構え。

 

「いくわよ、キャナル!」

「はい、リナさん!」

 

これがふたりの、戦闘開始の合図だった。




フハハハハハ! 戦闘回と期待した者たちよ、ザンネンであったな。今回はただの説明回でした!
ふむ、読者諸兄の怒りの悪感情、大変に美味である!

などと、何処ぞ(このすば!)大悪魔(バニル)の真似事はこれくらいにして。
本当にすみません。ちょっと説明入れるだけのつもりだったのに、気がついたら2000字を優に過ぎていたので、開き直って説明回にしました。まあ、さくらの出番の量を無視すれば、タイトル詐欺にならなくて良かったですが。

次回「さくらと無敵の呪文」
さくらと一緒に、レリーズ!
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