Fate/kaleid caster ドラまた☆リナ   作:猿野ただすみ

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最近、隔週化している。


時計塔

≪美遊side≫

「ホントに、ドラまただ」

 

ユーノがぽつりと呟いたひと言。意味はよくわからないけど、いい意味ではないことはすぐにわかった。

何しろ、その対象であるリナが顔を赤くして、ワナワナと身を震わしているのだから。

 

「……よ、よ・く・も! あたしに恥をかかせてくれたわねッ!!

ユーノ、チェーンバインド!!

クロエはあたしへのつゆ払いをおねがい!」

「は、はいっ!」

「わかったわ!」

 

リナの剣幕に、ユーノは思わず敬語で返事をする。クロにはふつうの指示だったため、ふつうの返事を返していた。

 

「なのは、イリヤ! 稲葉さんはアレを使う気だから、あとのサポートに行って!」

「あ、うん!」

「わかったの!」

 

逢魔さんが、イリヤとなのはさんに指示を出す。確かに、あんな場所であんな術を使ったら、ビルが耐えきれずに崩壊するかもしれない。いや、バーサーカー戦の時と違い、約束された勝利の剣(エクスカリバー)の前方への後押しがない分、爆発の余波で吹き飛ばされる可能性だってある。

普段のリナならそこら辺も考えて行動するはずだけど、よほど頭にきたんだろう。冷静さを欠いているようだ。

 

黄昏よりも昏きもの

血の流れより紅きもの…

 

リナが呪文の詠唱を始める。そんな彼女の元に殺到するレッサーデーモンたちを、クロが迎撃していく。

デイモス・ドラゴンも反撃しようと試みているものの、ユーノの拘束魔術によって身動きがとれない。

……あれって、バーサーカーを押さえ込んだ術より強力なんじゃあ…。

そんな中、イリヤとなのはさんがリナの後ろに回り込み近づいていく。

 

……我と汝が力もて

等しく滅びを与えんことを!

 

そして術の詠唱が終わり。

 

竜破斬(ドラグ・スレイブ)!!」

 

ズガゴワァァァン!!!

 

リナが解き放った術によって、ドラゴンは跡形もなく消し飛んだ。

しかし、その爆風によって吹き飛ばされそうになるふたり。そんなリナをなのはさんが、クロをイリヤが受け止める。

 

『イリヤさん、ビルが傾き始めてます!』

『なのは、早急に離脱を!』

 

ルビーとレイジングハートの警告に、慌ててビルから離れていく。とりあえずリナとクロが無事でよかった。

イリヤたちがこちらへ帰ってくるのを、わたしたちがアシストする。

そして。到着したリナに、逢魔さんが声をかける。

 

「こういう状況だから多くは言わないけど。言いたいことは、わかるわね?」

 

そう、未だにデーモンたちに囲まれた状況で、わたし、フェイトさん、ユーノの三人で対応している。

それでも、逢魔さんが言いたいことは理解できるので、わたしたちは黙って敵を殲滅させていく。

 

「ん…」

 

リナは軽く頷き、クロに向き直る。

 

「ごめん、クロエ。あたしが見境なしに大技使ったせいで、クロエにまで危険な目に遭わせて。

それにイリヤとなのはちゃんにまで迷惑をかけて、悪かったわね」

 

二人を抱えている、イリヤとなのはさんにも謝るリナ。その様子を見て、軽く息を吐く逢魔さん。そして。

 

「稲葉さんについてはこれでいいとして。

ユーノ! アンタのあのセリフが原因だってのは、忘れんじゃないわよ!」

 

逢魔さんはユーノに釘を刺す。

 

「……うん、ごめん」

 

どうやらユーノは、本気で反省しているようだ。

それにしても……。

 

「ねえ、結局ドラまたってなんなのよ?」

 

わたしと同じ疑問を口にしたのはクロだった。

リナは困ったような表情で、それに答えた。

 

「……ドラまたリナは前世での二つ名のひとつで、『ドラゴンもまたいで通るリナ=インバース』の略よ」

 

……それって、「猫もまたいで通る」みたいな意味だよね? 確かに、あんまり嬉しくはないかも。

 

「さて、と。おしゃべりはここまでにして、そろそろ戦いに戻りましょうか。いつまでも三人に任せっぱなしってわけにもいかないしね」

 

逢魔さんがそう宣言すると同時に、みんなに緊張感が奔る。それなら。

 

「リナとクロはこっちに来て! 私が魔力で足場を作るから、二人はその上に!」

 

飛翔の術を使うと戦えないリナと、そもそも飛べないクロをわたしが引き受ける形をとる。

 

「ありがと、美遊」

「ミユの愛情が伝わってくるようだわ」

 

クロがおどけた調子で言った。

 

『美遊さま。クロさまの足下だけ術を解除されてはいかがでしょう』

「考慮に価する」

「ちょ、ちょっと、冗談よね!?」

 

慌てた様子のクロに、わたしは言う。

 

「うん、冗談。でも、あまりふざけすぎるようなら、本当にやる」

「……りょーかい。場を弁えることにするわ」

 

……ふざけないとは言わないんだ。

 

「こら、そこ! くっちゃべってる暇があるなら、やることやれーっ!」

「「「了解!」」」

 

逢魔さんの怒号に答えるわたしたち。やっぱりどちらのリナも、怒らせると怖い。

 

「そーいや、カードについてはまだ、説明してなかったわね」

 

そう言ってリナはクラスカードを取り出し。

 

「あたしたちが使うクラスカードは、一枚につきひとりの英霊と繋がってる。

ただ、あたしが持つ三枚は、他のカードとは少しだけ毛色の違う英霊と繋がってるの。

例えばこの、セイバーのカードは…」

 

みんなに聞こえるよう大きめの声で説明していたリナは、セイバーのカードを前に突き出し、あの短い呪を唱えた。

 

夢幻召喚(インストール)!!」

 

瞬間、リナの姿が秘密を語ってくれたときに見せたあの姿になる。

 

「な、その姿って…」

 

逢魔さんが驚きの声を上げる。それはそうだろう。今のリナの姿は、彼女たち(リナ=インバース)の前世のパートナーのそれのはずだから。

リナは手にした剣の刀身を外す。

 

「光よ!」

 

ゴルンノヴァが光の刃を生み出し、それをリナが射出、イリヤの後ろから迫っていたデーモンを討ち取る。

 

「やるわね、リナ。こりゃ、わたしも負けてらんないわ」

 

言ってクロも、投影した剣を矢に変換、敵の密集した場所に放つ。

 

壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)!」

 

炸裂した魔力に巻き込まれて、数体のデーモンが屠られる。

もちろんその間、その様子をただ眺めていたわけじゃない。

 

速射(シュート)!」

 

魔力砲の連弾で、デーモン数体を倒す。

とにかく今は、一刻も早くこの状況を何とかしたい。でないと、ふたりは…。

 

 

 

 

≪クロエside≫

わたしたちは次々と、レッサーデーモンたちを倒していく。

でも、それにしてもきりが無い。さすがにドラゴンはもう現れないけど、空もビルの屋上も、レッサーデーモンの群れ、群れ、群れ!

……実を言うと、そろそろ魔力がやばい。いい加減魔力供給をしたいとこなんだけど、さすがにこの状況じゃ無理よね。

ふと、リナの様子を見ると、かなり疲れた様子だ。

でも、仕方ないか。ドラグ・スレイブ使ったあとにカードを夢幻召喚した上、宝具まで発動させてんだから。

能力の割に魔力消費は少ないみたいだけど、あんなに打ち出してたら限界も早いはず。

 

「リナ。ムチャしすぎだよ」

「美遊…、うん、ごめん」

 

ミユの指摘に、素直に謝るリナ。

……うーん? なんからしくないわね。

 

「リナ? もしかしてさっきのこと、まだ気に病んでるんじゃ…」

「くっ!? そうよ、悪い!?」

 

……これは、ちょっと意外ね。リナってもっと、気持ちの切り替えが上手だと思ってたけど。

これって、それだけわたしを気にかけてくれてるって考えて、いいのかしら? それならそれで、ちょっと嬉しいけど、でも。

 

「ねえ、今のあなた、イリヤと変わんないわよ?

ウジウジしてるなんて、リナらしくないわ」

 

わたしが発破をかけると、リナは一瞬驚いた顔をしてからため息を吐く。そしてカードを解除(アンインストール)して。

 

「そうね。ちょっと、あたしらしくなかったわね。

てなわけで、攻撃の手を弛めずにみんな集合!」

 

リナがみんなを集めた。

 

「リナ、どうしたの?」

 

イリヤの疑問は、羞恥心と共に氷解することになる。

 

「イリヤはクロエに魔力供給をおねがい。クロエの魔力はカツカツのはずだから」

「なっ!?!?」

 

イリヤは顔を真っ赤にしてテンパってる。うん、じっくりねっとり魔力供給してやろっと。

 

「みんなはその間、ふたりを守ってて。

で、そのあとはルビーを使って、あたしへの魔力供給ね」

「な、な、な……!!!」

 

リナ、結構鬼のような所業ね。イリヤの転身解いたら…。ま、わたしには関係ないか。それにこっちの方がリナらしいし。

それじゃ、まあ…♪

 

「じゃあイリヤ、おねがいね♡」

「うえぇ、ホントにやるの? こんなところで…」

「別にしなくてもいいけど、このままだとわたし、消えちゃうなー」

「くっ、うう…。でも、みんなの前で……」

 

隙アリ!

 

ちゅぱ!

 

「んんーーーーー!?!?」

「「「「ええッ!?」」」」

 

うん、やっぱり魔導師組のみんなが驚いてる。よぉし、もっと見せつけてやれ!

 

ちゅっ、ちゅぱ

ぴちょり

ぬるっ

れろれろ

 

「ん、んん……」

 

んー、イリヤってば、感じてる? ふふ、心は嫌がってても身体は正直ね。って、わたしはエロ親父か!?

 

「う、うみゅう…」

「え、え、なん、なの…?」

「……!!!」

「お、女の子同士でなんて、乱れすぎだよ!?」

 

む、小3にはさすがに、ディープ(フレンチ)キスは刺激が強すぎたか。ユーノもミミみたいなこと言ってるし、このくらいにしときましょ。

みんな手が止まって、リナとミユだけで応戦してるし。

 

 

 

 

 

「うう…、わたし、何か悪いことした?」

 

そう言って泣き崩れているイリヤの、今の姿はスクール水着(スク水)

現在リナが、ルビーを使って魔力の供給をおこなってるけど、その間はイリヤの転身を解かなくてはならない。

けれどわたしたちは、ここに来る直前まで水泳の授業を受けていたわけで。結果、今のイリヤの出来上がり、というわけだ。

さすがに今回は、みんなの戦闘の手は止まっていないけど、時々イリヤの姿をチロチロ見てたりする。これは見事な羞恥プレイだ。

 

「イリヤ、ありがと。もういいわよ」

 

そう言われて差し出されたルビーを引ったくるように受け取って、イリヤは急いで転身する。

 

『イヤー、イリヤさんから、進んで転身する日が来ようとは』

「こんな場所じゃ、水着姿よりこっちのが絶対マシだもん」

 

まー、そりゃそうか。

 

「それでリナだったら…」

穂群原小(ホムショー)の制服って、可愛いわよねー」

「ん、了解」

 

どっちも断固拒否、と。

 

「それで。戦況を立て直すとして、このあとどう動くか、なんだけど」

 

そう。魔力の補給が出来たとはいえ、わたしとリナが動けないのは変わらない。そのくせレッサーデーモンは、倒しても倒しても、あとからどんどん湧いて出る。まるで夏場のGだ。

 

「あの、ひとつ気になったことがあるんだけど」

 

そう発言したのはフェイト。

 

「あの一角だけ、デーモンたちがいないんだ」

 

フェイトはデーモンを屠りながら指さす。そこにあるのはあの、逆さになった時計台。

 

「本当だ。あの時計塔の周りにだけ、デーモンたちがいないの」

 

……時計塔!? それってまさか!

リナが指で目頭を押している。どうやらわたしと同じことを思ったらしい。

 

「ルビー、サファイア…!」

 

ドスの利いた声で、ふたつのステッキの名前を呼ぶリナ。

 

「アンタら、あそこが魔術協会の総本山、時計塔だって知ってて黙ってたわねッ!」

 

そう。わたしは、おそらくリナも、時計台と認識していたから気づけなかったけど、なのはが時計塔と言ったおかげで、その呪縛から解き放たれたってわけだ。

 

『あの、私は姉さんから口止めを…』

「ルビー?」

『いやですねー。あそこが原因だという確証がなかったから、ルビーちゃんは黙ってただけですってばー』

 

うわっ、コイツ! いけしゃあしゃあと!!

 

「……まあ、いいわ。

それで、あそこに黒幕がいるって見ていいわけ?」

『ええ、おそらくは。ですがあの様子を見る限り、塔の周りには強力な結界が張り巡らされているとみて、間違いなさそうですねー』

『それなら、うってつけがいるじゃない』

 

L様の言葉にハッとして、みんなの視線がひとりにそそがれる。

 

「……うん、わかった。いくよ、レイジングハート!」

『はい、なのは』

 

なのははレイジングハートを変型させて構え。

 

「…常世を守りし白輝の聖母よ…」

 

呪文を唱え始める。確かに、リナが詠唱につかうカオス・ワーズってのに似てるわね。

 

「…我と汝が力以て 全てを撃ち抜く閃光となれ!」

 

これは、さっきまでの魔力の残滓がなのはの元に集まってる!? これって、魔力を集めて再利用する術なの!?

 

「星光集束斬・改[スターライト・ブレイカー]!!」

 

強力な魔力の砲撃は結界を突き破り、塔の頂部を破壊した。

そこから、ふたつの人影が落下していく様子が見えた。

 

「出てきた! ……犯人!?」

「犯人…、って、ええええ!? あれがーーー!?」

 

イリヤがビックリするのも仕方ない。何しろ落下しているのは、取っ組み合いのケンカをしているリンとルヴィアなんだから。

 

『アレの意識を奪ってください! それでこの空間は閉じるはず、なんですが…』

 

ん? なんか歯切れが悪い…?

構わずイリヤはぶっ込んでいき。

 

「一撃卒倒! ハリセンモード!!

反省しなさい!!!」

 

ズパパァン!!

 

ルビーから生えたハリセンで、ふたりの意識を刈り取った。

 

 

 

 

 

ふたりを回収すると、なぜかデーモンたちが姿を消した。わたしたちは大岩の上に、気を失ったふたりを連れてきたんだけど。

 

「……何にも起きないわね」

 

わたしはつぶやいた。そう、レッサーデーモンが消えた以外、なんの変化も起こさない。

 

『これは、嫌な予感が当たってしまったようですねー』

 

嫌な予感?

 

『本来、不安定であるはずのこの空間に、次元振動のような反応が一切ないんですよ。

どの世界線のお二人かは存じませんが、このような次元干渉の域まで達したのはたいしたものだとは思います。ただ、ここまで安定させるのは、このお二人には無理ではないかと』

 

なるほど、ね。……というかこのふたり、並行世界のリンとルヴィアなのね。

 

「ということは、やっぱり」

「そういうことになるわね」

 

ん? ふたりのリナ?

 

「「どこかで見てるんでしょ? 出てきなさいよ、この『パシリ魔族』!」」

「いやーお二人とも、パシリ魔族は非道いですよ」

 

そう言って突然、その男は現れた。




今回のサブタイトル
Fateシリーズ魔術協会の総本山から

今回の冒頭、それと前回の終わり部分は、TVスレイヤーズ(無印)第1話のパロディです。
年下で並行世界の自分に咎められるリナ。ちょっとシュールですね。
そして、ついに登場のあの男。リナに「パシリ魔族」と呼ばれてる段階で、どこの誰かはわかりますね。

次回「写本」
リリカル、マジカル…
「秘密です♪」
「うん、意味分かんないから」
「てか、『リリすれ』でやってるから、それ」
(by ??? & 稲葉リナ & 逢魔リナ)
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