Fate/kaleid caster ドラまた☆リナ   作:猿野ただすみ

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AATM入りました~♪


写本

≪third person≫

稲葉リナと逢魔リナ、ふたりのリナが呼びかけた途端、その男は突如現れた。

黒い神官服を着て錫杖を持った、黒髪おかっぱ頭の青年。人の良さそうな笑顔をたたえてはいるものの、どこかつかみ所の無い雰囲気を醸し出している。

 

「それにしても、こんなところで出会うことになるとは思ってもいませんでしたよ。ねえ、リナさん」

 

彼の言葉に、ふたりは嘆息し。

 

「「まったく。やっぱりいたわね、ゼロス/名薗森寛!!」」

 

…………。

 

「……って、名薗森って誰!?」

 

逢魔リナのセリフに、思わずツッコミを入れる稲葉リナ。

 

「それは、そちらの(逢魔)リナさんの世界にいる僕の偽名ですね?」

「ちょっと、アンタ知ってるの!?」

 

まさか知ってるとは思わなかった逢魔リナが、思わず聞き返した。それに対してゼロスは、表情を崩すこともなく答える。

 

「ええ。あのお方を介して、逢魔リナさん、そして稲葉リナさんの様子は存じてますから」

 

あのお方。それが何を示しているのか、ふたりは即座に理解した。

 

「L様?」

『あたしが教えたわけじゃないよ。ただ、他の世界線のあたしも根底では繋がってるからね』

 

L様の説明に、成る程とうなずく。虚無の根底って? とも思ったが、そこをツッコむと脱線しそうな気がするのでやめる。

 

「それにしても僕がいるって、よくわかりましたね」

魔王竜(デイモス・ドラゴン)があたしをまたいだからよ」

「リ、リナ、ちょっと待って! イマイチ話が見えないんだけど!

いきなりこの人が現れたこととか!

ドラゴンがまたいだから、この人のことがわかったとか!

ていうか、ゼロスってリナが話してた、スィーフィード世界の魔族の人!?」

 

頭が混乱したイリヤが捲したてながら、稲葉リナに尋ねた。

 

「あー、ごめん。そういやまだ、紹介してなかったわね。

コイツはゼロス。今、イリヤが言ったとおり、スィーフィード世界の高位魔族、魔王の腹心である獣王(グレーター・ビースト)[ゼラス=メタリオム]が創った獣神官(プリースト)よ。

魔族ってのは精神世界面(アストラル・サイド)に身を置く精神生命体なの。それ故に空間を渡って、いきなり現れたりもするのよ。

……そうね。クロエが使う転移魔術みたいなものかな」

「ふえぇ…」

 

稲葉リナの説明にイリヤは驚くばかりである。

 

「……それで、魔王竜がまたいでゼロスのことを知った理由なんだけど」

 

言って稲葉リナは、再びゼロスを見る。

 

「確か以前にも、こんな感じのことがあったわね」

「おや、そうでしたか?」

「しらばっくれてんじゃないわよ!

アテッサで!

アストラル・サイドからの攻撃が途中で消えたり、アメリアが反射させた光線系攻撃が敵に当たったり、敵が放った雷系の広範囲魔法があたしたちの誰にも当たらなかったりしたでしょ!

あれ全部がアンタの仕業だったのは、しっかり覚えてるんですからねっ!」

「そういえばあのドラゴン、リナを踏みつけようとしたときにバランスを崩してたわね」

 

あの場で、もっとも稲葉リナの近くにいたクロエが、思い出すように言った。

 

「そう。その時、ゼロスのことが頭をよぎったのよ」

「もちろん、それを伺ってたあたしもね」

 

逢魔リナも同調する。

 

「ええと、リナちゃん。その、アテッサの話、わたしは知らないよ?」

「わたしも」

 

なのはとフェイトが言う。それを聞いたユーノが、あっ、という表情になって言った。

 

「そうか。ふたりは知らなかったんだね。

アテッサの事件は、長編15巻よりあとの出来事なんだ」

 

【スレイヤーズ!】長編、すなわち本編は、このときはまだ15巻で完結、特別編として書かれた16巻は発表されていなかったのだ。

 

「ともかく。レッサーデーモンがウヨウヨしていたあの状況であんな偶然が起きたんだから、あなたのことを疑ってみたくもなるってもんよ」

「別に、僕が彼らやドラゴンを召喚したわけじゃありませんよ?」

「んなこたぁわかってるわよ」

 

稲葉リナは、左手を腰に当て言い返す。

 

「あなたがアレを召喚したなら、あたしを助ける意味なんてないもの」

「まあ、その通りなんですけどね」

 

ゼロスも、悪びれもせずに言い返す。

 

「それで? 実際のところ、なんでゼロスがここにいるわけ?

もしかしていつもの『秘密』ってやつ?」

「いえ、僕はいつもの仕事で、ここに来ただけですよ」

「いつもの…って、まさか!?」

「ここにあるっていうの!?」

 

ゼロスのいつもの仕事を知るふたりのリナが、声を上げて驚く。

 

『リナさま。一体何に驚かれているのですか』

『一体ここに、何があるって言うんですかー?』

 

サファイアとルビーの疑問に、逢魔リナが口を開く。

 

「ゼロスが言うことが本当なら、この世界にはあらゆる世界の知識が詰まった魔道書、異界黙示録(クレアバイブル)、その[写本]があるわ。

あたしの世界のゼロスも、その理由でスィーフィード界からやって来たのよ」

 

逢魔リナの説明に、なるほどと答える2本のステッキ。

 

「……うーん?」

 

その様子を見て、腕を組み唸る少女がひとり。なのはだ。

 

「どうしたの、なのは。唸り声なんかあげてさ」

 

ユーノが尋ねると、なのはは頬を掻きなが答えた。

 

「さっきからあのステッキの声を聞いてると、なんだか頭に引っかかるものがあって…」

「そう?」

 

特に深く考えもしなかったユーノには、今イチピンときてはいなかった。

 

「……さて、それで? 本当に[写本]はあるの、ゼロス!」

 

逢魔リナがゼロスに詰め寄る。

 

「そうですねぇ。

でもまずは、その前に…」

 

そう言ったゼロスが指をパチンと鳴らす。すると。

 

「う…」

「うう…ん」

 

今まで気を失っていた凛とルヴィアが、目を覚まし始めた。

 

「……え、これって?」

「どう、なってますの?」

 

自分たちを取り巻く異常事態に、凛とルヴィアは一瞬混乱してしまう。

 

(……え、今の声って)

 

なのはは何かに気づいたものの、口には出さない。

 

「……あら、あなたたちは、イリヤと美遊?」

「えっ!? リンさん、わたしたちのこと、知ってるの!?」

「おふたりは、わたしたちとは別の世界のおふたりですよ、ね?」

 

凛の意外な発言に、イリヤと美遊は驚きを隠せない。そんなふたりに、逆に目を丸くして答える凛。

 

「ええと、ふたりはたまたま並行世界から紛れ込んで、喫茶店でアルバイトしてたわ…よ……ね?」

「うぇえ!? そんなのしたことないよぅ!」

「小学生の労働は一部を除いて、労働基準法に抵触している」

 

相変わらず、無駄に知識の多い美遊である。

 

『ふむ…。どうやらそちらの凛さんたちは、我々とは別の世界線の我々と接触したことがあるようですねー』

『おそらく私たちと、ごく近い世界線の私たちだったのではないかと思われます』

「あー、つまり、また並行世界ってわけね」

 

クロエが額に手を当てながら言った。

 

「なん、ですって!?」

(ワタクシ)たちはいつの間にか、第二魔法の域に…!」

『なにを言ってるんですかねー、この薄らトンカチたちは。おふたりにそんな技能、あるわけ無いじゃないですかー』

『次元創成の失敗で、ねじれ位置に存在する世界を巻き込んだに過ぎません。おふたりはもう少し、現実を直視するべきかと』

「わかってるわよ、コンチクショー!」

「少しは夢を見させてくださいまし!」

 

わかっていたこととはいえ、現実をたたきつけられたふたりは絶叫した。

 

「えーと、そろそろよろしいですか?」

 

ゼロスが頬を掻き、少し困った顔をしながら言う。

 

「……あんた、誰よ」

「僕はゼロスといいます。ご覧のとおり、どこにでもいる謎の神官ですよ」

(((謎の神官なんてそうそういないから!)))

 

イリヤ、美遊、クロエは心の内で、思い切りツッコミを入れた。

 

「それではミスタ・ゼロス。(ワタクシ)たちにどういった用がおありなのですか?」

「はい。まずお聞きしますが、あなた方がこの空間を創り上げた張本人で間違いありませんね?」

「ええ」

「相違ありませんわ」

 

ゼロスの質問を肯定するふたり。ゼロスは頷き話を続ける。

 

「ではそのために、何らか資料から知識を得たのではありませんか?」

「……さあ、何の事かしら?」

(ワタクシ)たちは存じませんわ」

「凛さん、ルヴィアさん!」

 

すっとぼけようとするふたりに、稲葉リナが慌てて声をかける。

 

「あんたは?」

「あたしは稲葉リナ。……って、あたしのことはどうでもいいわ。

それよりも、ゼロスの質問には素直に答えた方がいいわよ。特に、アンタたちが持つ資料に関しては」

「なにを言って…」

「例えば!」

 

凛の言葉を遮り、強く言い返す。

 

「ふたりは数百、数千のドラゴンの群れを壊滅させることは出来る?」

「それは…、さすがに(ワタクシ)でも不可能ですわ。なら当然、ミス・トオサカにも不可能ですわね」

「……そうね。さすがに、高位の幻想種を倒せるほどの力は持ち合わせていないわ。つまり、ルヴィアにも無理ってことね」

「なんですって!」

「なによ、あんたが先に言ってきたんでしょ!?」

「アイツには出来るわ…」

 

ぴくり

 

ぼそりと呟く稲葉リナに、反応するふたり。

 

「ゼロスは異世界の魔族と呼ばれてる存在(モノ)。その力は、数千に及ぶドラゴンたちを一撃で壊滅状態に追いやったほどよ。

ついた二つ名は[ドラゴンスレイヤー]ゼロス…」

「いやですねー、リナさん。そんな大層な二つ名は好みじゃないって、以前にも言ったじゃないですか」

 

真剣な話をする稲葉リナに、茶々を入れるゼロス。もしかすると本当に好みではないのかも知れないが、それを鵜呑みにできる相手ではない。

しかし、凛やルヴィアにはそんなことはどうでもよく、むしろ気になったのは。

 

「あなた、否定はしないのですね…」

 

そう、二つ名を嫌がっているだけで、今までの話を否定しないという事実。

 

「ゼロス。もしも凛さんたちがずうっとしらばっくれてたら、どうするつもり?」

「そうですね…」

 

ゼロスは軽く考えるそぶりをして。

 

「まあ、おふたりを殺してから、その資料を確認するでしょうね」

 

こともなく言うゼロスに、ふたりのリナを除く全員が戦慄する。

イリヤたち、凛たちは純粋に、初めて接触するゼロスという存在に。

なのはたちは小説のみの知識で、夜天の書事件から今までの間には見せていなかった本性に対して、あらためて。

 

「……あーもう、わかったわよ!

確かに私たちは、特殊な文字で書かれた文献から知識を得たわよ!」

「そうですか。ではその知識とは、世界の根源に関わるものではありませんか?」

((なっ、それって…!))

 

その知識に心当たりがある、ふたりのリナが驚愕する。

 

「そう、ですが…。なぜその事を?」

 

ルヴィアのその疑問には答えず。

 

「どうやら僕の求めていたものに、間違いないようですね。

すみませんが、その資料を僕に譲ってはくれませんか?」

「な、……くっ」

 

凛が言い返そうとするが、ゼロスが一瞬だけ放った殺気に気圧されてしまう。

 

(なんなのよ、コイツ。この殺気、サーヴァントの比じゃ無いじゃない…!)

 

そうは言いつつも、心を折られずに踏みとどまっている凛の精神力もなかなかのものである。

 

「……わかったわよ」

 

言って凛は、服の裾から手を突っ込み、巻物(スクロール)を取り出しゼロスに投げ渡す。

 

「ありがとうございます。さて…」

 

ゼロスが中身を確認するために、巻物を広げると。

 

「「ゼロス。それ、あたしたちにも見せてくんない?」」

 

ふたりのリナが尋ねた。

 

「そうですねぇ。まあ、おふたりになら特に問題は無いでしょう」

 

ゼロスからの許しを得たふたりは、それぞれゼロスの左右からのぞき込むように見る。そこにはスィーフィード世界の文字で、こう書かれていた。

 

---全ての闇の母、魔族たちの真の王、在りし日の姿に帰るを望み続けるもの

闇より暗き存在、夜より深きもの

混沌の海にたゆたいし金色、全き虚ろ……

 

「やっぱり…」

「これって、()()()()()()()よね」

 

そう、その書は[金色の魔王]について書かれたものだった。ただしそれは、かつて()()=()()()()()()()ディルス王国で聞いた不完全なもの。

 

「ええ。かつてディルスに存在した[写本]から、さらに書き写されたものです。

とはいえこれは、[写本]と何ら変わらないもの。というわけでこれは…」

 

ボフッ

 

巻物は突然燃え上がり、あっという間に炭へと変えてしまう。

 

「「ああ!」」

 

凛とルヴィアが声をあげる。それはそうだ。大事な資料が燃やされてしまったのだから。

 

「嘆くことはありませんよ。あの資料に書かれていたことには間違いがありまして。

つまり、それを基にしたあなた方の実験は成功しないということです」

「「な…!?」」

 

ゼロスのセリフに、開いた口が塞がらないふたり。

その様子を見て、稲葉リナは嘆息し。

 

「とりあえずこれで、アンタの当初の目的は達成できたってわけね。そ…」

「あのー…」

 

稲葉リナが話を続けようとした、その時。なのはがおずおずと言葉を投げかけた。

 

「少し、確認したいことがあるの」

 

そう言うなのはの表情は、とても真剣なものだった。




今回のサブタイトル
「スレイヤーズ」シリーズ ゼロスの捜し物(笑)から

というわけで、ゼロス登場です。
前々回の魔王竜の件はこういう訳です。アテッサネタはどうしようか悩んだんですが、結局入れました。

凛とルヴィアの補足。彼女たちはAATM(略称。詳しくはネットで調べてください)という型月公式作品のふたり。並行世界のイリヤのアルバイトの話は2巻に収録されてますが、そういうことがあったんだ程度で充分です。

物語最後の方のなのはは、かなり真剣な表情をしていますが、確認したいことはくだらないことです。

次回「妖夢 蠢く」
見てくんないと、
「「ガンド!」」
(by 凛 & ルヴィア)
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