Fate/kaleid caster ドラまた☆リナ   作:猿野ただすみ

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遅くなりましたが更新です。


妖夢 蠢く

≪稲葉リナside≫

「少し、確認したいことがあるの」

 

なのはちゃんは真剣な表情(かお)で言った。

なのはちゃんに一体なにが…?

 

「凛さん、でしたよね?」

「えっ、私!? そ、そうだけど…」

 

戸惑いながらも、凛さんが答える。

 

「あの、すみませんが、関西弁で何か喋ってもらえませんか?」

 

……………………は?

 

「え? は? えっと、関西弁?」

「あ、いきなりそんなこと言われても、なにを言えばいいかわかりませんよね。

それじゃあ、『わたしは人様に迷惑をかけてまで生きとうない』って言ってみてください」

 

えっ、そのセリフって、……あ!?

 

「なんか、結構重いセリフね。まあ、いいわ。

ええと、『わたしは人様に迷惑をかけてまで生きとうない』…?」

「「「はやて!?」」」

 

逢魔さん、フェイトちゃん、ユーノが驚きの声を上げる。かく言うあたしも、驚いてはいるのだが。

ただ、少し前、あたしが宝石の護符(ジュエルズ・タリスマン)を作り始めたころ。凛さんのセリフを聞いて何か引っかかるものを感じたことがあったけど、原因はこれだったのだ。

あの時はキツめの関西弁だったから、直接は結びつかなかったけど。おかげで驚きは最小限に抑えられている。

 

「ええと、よくわからないけど、私の声があんたたちの知り合いと似てるってこと?」

「ええ。友達のはやての声にそっくりなのよ」

「うん、とてもよく似てる」

「ぼくもビックリしたよ」

 

まあ、予備知識が無けりゃそうなるだろう。一方のイリヤと美遊、クロエはサッパリという顔をしている。

仕方がない。今度もう一回なのはを借りて、みんなに見せてあげよ。

 

「あの、それで、もうひとつ引っかかってたこともわかったの」

 

ん? もうひとつ?

 

「美遊ちゃんが持ってるサファイアちゃんの声が、忍さんの声にそっくりなの!」

「忍さん!?」

 

今度は思わず声を上げてしまった。そうかぁ、忍さんかぁ。

 

「ちょっとリナ。忍って誰よ?」

「月村忍さんはなのはちゃんたちの友達、月村すずかのお姉さんで、なのはちゃんのお兄さん、高町恭也さんの恋人よ」

 

クロエの疑問に答えるあたし。

しかし、忍さんは盲点だったなー。TVでも出番は少ないし、映画版なんか出番なしだったものね。

 

『サファイアちゃんの声とそっくりな方ですかー』

『なんだか、複雑な気分です』

 

お。サファイアが少し照れてる? これはちょっと珍しいかも。

でも、そう言われてみると、クロエやルヴィアさんと似た声のキャラたちもいたわね。StrikerS以降のキャラだから、今のなのはちゃんたちは知らないはずだけど。

……って、こっちの方で話が盛り上がっちゃってるけど、ゼロスに聞きたいことがまだあるんだった。

 

「えーと、ゼロス。ちょっと間が抜けちゃったけど、アンタまだ、何か目的があるんじゃないの?」

「あっ、そうよ! なのはの発言ですっかり忘れてたわ」

 

あ、やっぱり逢魔さんも同じこと思ってたんだ。

 

「何だか本当に間が抜けた会話になっちゃいましたねぇ。別にいいんですけど。

さて、他の目的と言うことですが、確かにありますよ」

 

コイツ、いけしゃあしゃあと言いやがった。

 

「ゼロス。アンタ、なに隠してんのよ?

あたしの転生についてもひっくるめて、キリキリ吐いてもらいましょうか!?」

 

あたしの剣幕に、ゼロスは頬を掻き。

 

「あー、何だか勘違いしてるみたいですね」

 

……は? 勘違い?

 

「同じ魔王(ルビー・アイ)様が治める世界でも、僕はお二人とは別の、所謂並行世界からやって来たんですよ」

「別の、世界?」

 

あたしに軽く頷き、ゼロスは言葉を続ける。

 

「はい。一応、稲葉リナさんの転生の経緯は知っています。しかし、それぞれ思惑がありますからね。その理由を僕が語るわけにもいきません」

 

むぅ。ゼロスのことだからこれ以上尋ねても、「秘密です」でかわされるのがオチだろう。

……まあ、仕方がない。ならば。

 

「それじゃあ当初のとおり、アンタの目的について聞かせてもらいましょうか!?」

「そうですね。いくつかありますが…」

 

いくつもあるんかい。

 

「とりあえず、彼らに出てきてもらった方がいいでしょう」

 

へ? 彼ら?

あたしが思考を巡らせる間もなく。

スッと、奴らは姿を現した。

これは、あたしにも予想外だった。

 

 

 

 

≪逢魔リナside≫

これは、あたしにも予想外だった。

あたしたちから少し距離をとって現れたのは、三匹の魔族。それも、中位以上の。

いや、レッサーデーモンたちが現れた時点で、魔族が裏で糸を引いてるのは予測できてたんだけど、まさか三匹も現れるとは思ってなかったのだ。

 

「ゼロス。なぜ我々の邪魔をする」

 

三匹の内の真ん中に立つ、ブラウンの短髪で厳つい顔の、騎士風の男が口を開く。……どうでもいいけど、まさか何たら将軍なんて肩書きはないでしょうね?

 

「いえいえ、本来なら邪魔なんて、する気もありませんでしたよ。

ただ、あなたたちが今なさろうとしていることは、僕たちが進めている計画にも悪影響がありまして。出来れば、やめて頂けたらありがたいのですが。

どうですか、ディルギアさん」

 

ぶふうぅぅっ!!

 

あたしは思わず吹き出した。見れば稲葉さんも同様、なのはたちもなんとも言えない表情をしている。

当のディルギアは訝しみ、ゼロスは知ってか知らずか涼しい顔、イリヤたちはキョトンとしている。

しかしディルギアって、よりにもよってあの、下ネタ獣人と同じ名前とは。せっかくのシリアスが台無しである。

 

「んー、ちょっと質問!」

 

なぁっ、クロ!? アンタ、空気を読みなさいよ!

……いや、もしかしてわざとか? 稲葉さんも涼しい顔してるし。

 

「なんでしょうか、クロエさん」

「この空間がいまだに安定、ううん、()()()()()()()、どっちの仕業なのかしら?」

 

膨張してる!? ちょ、L様?

 

『クロエの言うとおり、確かに空間の膨張がみられるね。

このままいけば、あたしたちの世界…、いや、様々な世界が完全に取り込まれていくだろうね』

「そうよ。リンとルヴィアがね、術式が断たれたはずなのに、世界の膨張が止まらないって言ったの。

もし、術式を奪ってそんなことが出来るとすれば…」

「魔族しかいないって訳ね」

 

なるほど。すでに創成されている空間なら、魔族のキャパシティをもってすれば拡張も不可能ではないんだろう。

しかしそうなると、それを行っているのは…。

 

「ディルギア、アンタたちの仕業でしょう?」

 

ズビシッと指差し言ってのけるあたしに、ディルギアは興味深げな表情を浮かべ、口を開く。

 

「人間、なぜそう思う」

「ゼロスは()()()()()()からよ」

 

そう。嘘()つかないのだ、ゼロスは。ただそれが真実全てではなく、むしろ間違った方へ解釈するように誘導しているだけで。

 

「ゼロスは言ったわ。レッサーデーモンや魔王竜(デイモス・ドラゴン)を呼んだのは自分じゃないって。なら、それをしたのはアンタたちってことになるんだけど…」

「わざわざそんなことしてまで、あたしたちを排除しようって理由も、空間拡張の障害になりかねないから、って考えればしっくりといくのよ」

 

稲葉さんが、あたしのセリフを引き継いで言う。

 

『念のためで、リナを襲ってたヤツ(ガーヴ)だっていたしねー』

 

いや、アンタが言うか!?

 

「くっ、ははは……! 面白いぞ、人間! わずかな情報から、よくそこまで想像できるものだ。

……貴様ら、何者だ?」

「……逢魔リナ」

「稲葉リナよ」

 

あたしたちが名乗ると、ディルギアは軽く考えるそぶりを見せ。

 

「貴様ら、リナ=インバースと関わりがあるのか?」

「……あたしたちの、前世の名前よ」

「並行世界の同一人物よ、あたしたちは」

 

あたしたちが答えると、今までひと言も喋らなかった二匹の魔族がピクリと反応を示す。

 

「リナ=インバース…」

「あり得ないはずのまさかを、何度も成し遂げた人間か…」

 

黒い槍を担いだ青い髪の青年風と、胸元の開いた白いワンピースを着た、長い赤毛の美女風、二匹の魔族が興味深げにあたしたちを見る。はっきり言って嬉しくない。

 

「まさかこんなところで、因縁と相まみえるたぁな」

 

は? 因縁?

 

「分からないって表情(かお)ね。

私たちはね、魔竜王(カオス・ドラゴン)様の元配下。もっと言えば、竜将軍(ジェネラル)ラーシャート様の部下になるわ」

「「な…!」」

 

あたしたちは言葉に詰まる。

 

「ああ、もちろん仇討ち、なんてつもりはねぇぜ。

だがよ、俺たちゃあ興味が湧いちまってな。

魔王様のお一人を倒し、魔竜王様に手傷を負わせ、ラーシャート様を打ち破り、冥王様が滅ぶきっかけをつくった…」

「そしてシェーラ様を討ち、我らが今の主、覇王様を退けた人間。さらにはもう一人の魔王様をも討ち取ったのだ。興味を引かぬ訳がなかろう」

 

むぅう、確かに魔族側からすれば、あたしは特異な人間に映るんだろうけど、別にあたしひとりで倒したわけじゃないし。

 

「さて、ディルギアさん。話も尽きないようですが、そろそろ先程の返事を聞かせてはもらえませんか」

 

ゼロスがディルギアに話しかける。先程の返事…、この空間への干渉を続けるかどうか。

もしやめてくれるなら、この空間は維持が出来なくなり、おそらくあたしたちは帰る手段を手に入れる。

でも、さっきの話の流れからすると…。

 

「聞くまでもなかろう。答えは否、だ」

 

やっぱりか。しかしディルギアたちの表情は堅い。

そりゃそうだろう。三匹まとめてだろうと、ゼロス相手じゃ勝ち目なんてほとんどない。はっきり言って、無謀なことに挑んでいるのだ。

 

「そうですか。なら、仕方ありませんね。

というわけでみなさん、あとはよろしくお願いしますよ」

「「………………は?」」

「ほら、格下相手とはいえ、三人を相手にするのは面倒くさいじゃないですか」

 

いや、それ、アンタの仕事でしょーが!

 

「何よりディルギアさんたちは、リナさんたちと闘いたがっておられるようですし、ここはお譲りする、ということで」

「いらん気の回し方するんじゃないぃっ!」

「アンタは厄介事、押しつけてるだけでしょ!?」

 

あたしたちのツッコミも、どこ吹く風のゼロス。

 

(われ)が言うのもなんだが、よいのかゼロス。この人間どもを殺してしまっても…」

 

さすがにディルギアも、ゼロスの言動に戸惑っているようだ。

 

「ええ、構いませんよ。それに…。

リナさんたちにはこれくらいの敵、倒してもらわなくてはなりませんから」

 

え、それって…。

 

「ふむ、まあよいか」

「ああ、人間相手に心躍ることになるたぁな!」

「さあ、あなたたちの絶望、たっぷりと味わわせてちょうだい」

 

あたしが考えをまとめるよりも先に、三匹は戦闘態勢へと入った。

ええい、仕方がない。今は目の前の敵をどうにかしないと!




今回のサブタイトル
神坂一「ロストユニバース」2巻タイトルから

はい、またもや遅れてしまいました。すみません。
なのはのやり取りが終わった途端、筆が進まなくなったという。

今回の中の人ネタですが、サファイアの中の人、前任者が忍の中の人だったんですが、お亡くなりになられた人のネタなのでどうしようかとも思ったものの、結局使ってしまいました。

次回「導かれし力を束ね」
リリカル、マジカル
「頑張ります!」
「ようやく本家が登場だね」
「おおお! ホンモノだぁ!!」
(by なのは & ユーノ & 稲葉リナ)
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