Fate/kaleid caster ドラまた☆リナ   作:猿野ただすみ

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コラボ最終回です。


日常

≪遠坂凛side≫

「……てな事があったのよ」

 

ここはとある喫茶店、[アーネンエルベ]。交錯する並行世界の中心に位置する[魔法の箱]。

そこで、[時計塔]で起きた事件を語り終えた私、遠坂凛は、ティーカップに残った紅茶をくいっと飲み干す。

 

「……なかなか、貴重な体験をしたみたいだな」

 

疲れた表情で答えたのは衛宮士郎。正義の味方を目指す魔術使いだ。

 

「まあ、魔術の実験は大失敗だったわけだけどね」

 

私はそうぼやいた。

 

「でもわたしも、リナって子と仲良しの、そっちのわたしたちに会ってみたかったかな?」

「うん。大変興味深い」

 

そんな意見を述べたのは、並行世界からやって来たふたりの少女、イリヤと美遊。彼女たちはイリヤの兄、そちらの世界の士郎に誕生日のプレゼントを買うための資金を得るため、アーネンエルベ(ここ)でバイトをしている。

 

「……って、あんたたち、何でまだバイトしてんのよ? 必要な資金なんて、もう貯まったでしょう!?」

 

そう指摘すると、ふたりは苦笑いを浮かべた。

 

「えーと、実は店長さんから、売り上げがあがったからもうしばらくお願いしたいと言われちゃって」

「あの店長は問題があると思う」

 

……ああ。まあ、そういうところを気にしない人ではあるわね。

あ、そういえば。

 

「ところであんたたちの世界のクロエ、だったわよね? 見たことないんだけど」

 

この子たちも似たような歴史を辿ってるのなら、あの黒いイリヤもいるはず、よね?

 

『あー、クロさんなら、「お金を持ってるのに働くなんてバカらしー」とか言ってましたよー?』

「え?」

『クロ様は一時期、ルヴィア様の預かりでしたので、お小遣いとしてポンと大金を…』

 

まったくあのバカは! 何でもかんでも、お金持ち目線で物事を進めるんじゃないわよ!

……あれ、でも。

 

「それじゃあ、何で美遊はバイトしてんの?」

 

この子も、向こうのルヴィアのとこにいるのよね?

 

「わたしは、イリヤに頼まれたから」

 

わぁ、この子、ホントにいい子だ。

 

「「ホント、イリヤと仲良くしてやって(くれ)!」」

 

これに関しては、士郎と私は同意見だ。と。

 

バン!

カランカラン…!

 

「イリヤ、ミユ、遊びに来たわよー!」

「ヤッホー」

 

入り口の扉が勢いよく開けられ、ふたりのトラブルメーカーが現れた。

 

「うわっ、また来たッ!」

「何よ。またとは失礼ね」

 

いや、気持ちはよくわかる。

 

「いらっしゃいませ、イリヤスフィールさん。アルクェイドさん」

 

そう。現れたのは、こっちの世界のイリヤとアーパー真祖様。

やれやれ。また騒がしくなるわね。

私は、フゥ、とひとつため息を吐いた。

 

 

 

≪なのはside≫

……あ、あれ?

なんだろう。今一瞬、記憶が飛んだような気がしたの。ええと、たしか…。

わたしは辺りを見渡して、思い出す。

そうだ。私たちははやてちゃんの家へ向かう途中、この転生者さん…、たしか、如月秀美(ひでよし)くん、だっけ? 彼が声をかけてきて、ごめんなさいしたあとリナちゃんを怒らせて。

それでお約束どおり、リナちゃんの魔法攻撃を受けて、今、地面に寝転がってるの。

頭を軽く振ったリナちゃんは、……?

なんだろう。今のリナちゃんの動き、ちょっと違和感を感じたんだけど。

……まあ、いいや。リナちゃんはしゃがみ込むと、ステッキを使って転生者さんをツンツンと突っつく。すると転生者さんは薄らと目を開けて。

 

「ねーねー、このまんまあたしの魔法の餌食になるのと、もう二度とチョッカイを出さないの、どっちがいい?」

 

リナちゃんが問いかけると、転生者さんは目を見開いてガバッと起きあがり。

 

「もう二度と手を出そうとしたりしませんから、どうか、命ばかりはぁぁぁっ!!」

 

それはもう、見事な土下座をしたの。

でも命ばかりはって、人聞きが悪い。いくらリナちゃんでも、そんなことはしないと思うの。

 

「……わかった。それじゃあさっさと、どっかに行ってちょうだい」

「……へ?」

「ほらっ! 駆け足っ!!」

「ひぃえぇぇ! すいませんでしたぁ!!」

 

転生者さんは謝りながら駆け足で去っていった。

 

「まったく、まだあんなのがいるなんてね」

 

リナちゃんはぼやきながら、バリアジャケットを解除する。

 

「姉さん、お疲れさま」

「別に疲れちゃあいないわよ」

 

ユーノくんのねぎらいの言葉に、軽口で返すリナちゃん。それが様になってるから凄いと思うの。

 

「ねえ。時間も食ってしまったし、急いだ方がいいんじゃないかな」

 

フェイトちゃんが、時計を気にしながら口を開いた。そうだ。確かにみんなを待たせちゃまずいの。

 

「確かにフェイトの言うとおりね。そんじゃ急ぎましょうか!」

 

リナちゃんが声を張りあげて言った。うん、ようやく日常に戻った気がするの。

……? ようやく? わたし、なに言ってるんだろ??

まあ、いっか。

わたしはみんなの後を追うように、一歩を踏み出した。

 

 

 

≪イリヤside≫

ざっぱあぁぁん!!

 

わたしたちは一斉に、水中から飛び出した。そして。

 

ドン!

ごろごろごろ…

がっしゃあん!

 

タイムを計っていたタイガとミミを巻き込んで転がっていき、プールサイドの柵に激突した。

 

「げ…、元気よすぎよ、4人とも…」

「お、お星さまが、ぐ~るぐる~…」

 

あう~、ふたりには悪いことしちゃったなぁ。不可抗力だけど。……と?

 

「……っていうか、25メートル11秒フラット!?」

「藤村先生、こっちもですっ!!」

「ちょ、これ、世界狙えんベよ!?」

 

うーん。このタイムは参考になんないよね?

 

「よかった。あの空間に落ちてから、ほとんど時間差ないみたい」

 

ミユの考察に、わたしも安堵する。

 

「でも、せっかくの勝負が引き分けか。残念だわぁ。イリヤの奢りでアイス食べようと思ったのに」

 

いや、クロ? 奢りは負けた人だからね? わたしで確定してるわけじゃないからね!?

チラリとリナを見ると、ホッと胸を撫で下ろしてるのが覗えた。

 

『(まあ、一番分が悪かったのはリナさんですからねー)』

 

こっそりと話すルビーに、わたしは相づちを打った。

 

フゥ…

 

ひとつ息を吐いて、わたしは腰を下ろす。

……なんだかデタラメでトンデモナイ体験だったなぁ。でも、なのはちゃんたちと出会えてよかった。

なのはちゃんたちがわたしたちのことを憶えてないのは寂しいけど、わたしは何があっても忘れないからね。

 

「イリヤ。なのはたちのことを思い出してたの?」

 

リナが尋ねてきた。なのはちゃんの呼び方が、呼び捨てに戻ってる。

そりゃそうか。あれってリナちゃんの呼び方と区別するためにやってたんだもんね。

 

「うん。また、会えるといいなぁって」

「……ん、そうだね」

 

リナは空を見上げながら言った。つられてわたしも見上げる。

 

「オイコラ、イリスケにリナっち! おめーらいつの間に、あんな速くなりやがった!」

 

うあ。気分台無し。龍子が絡んできた。

……でも、ま、これがわたしの日常だもんね。

 

「えへへー、そんなのナイショだよ!」

「あーっ、ずりーぞ!」

 

わたしはそんなこと言いながら立ち上がると、みんなの所へ歩いて行った。

 

 

 

 

≪third person≫

とある場所に建てられた一軒家。古びてはいるもののおしゃれな邸宅である。ただし、数年前に起きた災害のため、その一部が破損しているが。

その邸宅の一室で、黒い神官服を纏った青年がふたりの女性に話を聞かせている。青年の正体は、獣神官(プリースト)ゼロス。

話の聞き手は、共に17~8。ひとりは黒髪ロング、もうひとりは赤毛のポニーテールで、ふたりともスレンダー体型である。

 

「……とまあ、そんなことがありまして」

 

ゼロスは亜空間内で起きたことを、()()()説明し終えた。

 

「ふぅん…」

 

黒髪の少女は腕を組み、軽く頷いてからゼロスに尋ねる。

 

「それで、あんたらの計画には支障はないのね?」

「はい。しかし以前にもお聞きしましたが、よろしいのですか? 我々魔族に力を貸すなんて」

 

人間が、滅びを望む魔族に力を貸す。普通では考えられないことをする少女ふたりに、さすがに戸惑いを感じるゼロス。

すると、今まで黙っていた赤毛の少女が、あきれ顔で言った。

 

「アンタねぇ、散々あたしらを巻き込んどいて、今更でしょうが。

ま、あたしたちは、あんたらの最終目的だけはきっちり阻止させてもらうけどね」

 

ゼロスに敵対的な発言をする赤毛の少女。普通に考えれば悪手以外の何物でもない。

しかしゼロスは、笑顔で言った。

 

「まあ、貴女なら、それくらいのことは考えていると思いましたけど。

……それでは、貴女はどうなんですか?」

 

そう言って黒髪の少女を見る。

 

「私は、アイツらの考えが気に入らない。

僅かな犠牲で多くの人々を救う。

……確かに、犠牲の上に成り立つ平和ってのは存在するわ。でもアイツらのは、平和のために犠牲は当たり前ってヤツじゃない。そんなの、私は認めない!

……確かにあんたらの計画が成功したら、この世界は滅びるんでしょうね。

だけど私は、彼女を信じてるから」

 

そう言って赤毛の少女を見る。

 

「……ありがと」

 

赤毛の少女は、ニコリと笑った。

 

「わかりました。それではおふたりは、今までどおりということで」

 

そう言うとゼロスは、空間にすうっと消えていった。

 

 

 

彼、彼女らの会話が意味するもの。それが分かるのは、まだ先のことである。




今回のサブタイトル
あらゐけいいち「日常」から

というわけで、コラボ終了です。
いやー、長かった。原作は1話分の長さしかないのに、かかった話数は12話。TVだったら1クールです。
まあ、内容をこねくり回してますから仕方ないですが。
そして今回のラスト、ゼロスくんのパートは、当然ながら伏線です。締めの文で書いたとおり、それが回収されるのはまだ先の事ですが。
さて。次回ですが、シナリオ形式で振り返る座談会です。裏話もあります。本編とは関係ないので、読み飛ばしても大丈夫です。

次回「Re:ZEROから始まる座談会」
リリカル、マジカル、
「「「「「「「「さようならー!」」」」」」」」
(by リリすれメンバー一同)
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