Fate/kaleid caster ドラまた☆リナ 作:猿野ただすみ
【CCさくら】のクロスオーバーなのに、さくらの活躍も少ない。
……リナさん、主役だからって頑張りすぎだよ。
がっ! と、剣と剣がぶつかり合う。
片や魔王が生み出した五つの武器の、そのひとつ。レプリカなれど、その潜在能力は計り知れない。
片や稀代の魔術師と評されるクロウ・リードが生み出したカードの一枚。主がさくらへと代わり、カード自体も新生したが、担い手の意思によって切れ味を調節できる[
「レプリカとはいえ、[光の剣]…、ううん、[
「そちらこそ、私の意思の力で切れ味の増した[
お互いがお互いの武器を称え合う。そして互いが押し合い、距離を取るように離れる。
「ときにあたしは、魔法剣士が本来のスタイルなんだけど、織り交ぜながら闘ってもいいのかしら?」
「ええ、構いませんよ。ですが私も、神の眷属だということを忘れてもらっては困ります」
おどけたように言うリナに、軽く笑みを浮かべながら返すキャナル。お互いの駆け引きに、しかし水を差す人物がひとり。
「待ってくれ、ふたりとも! そんな闘い方、危ないじゃないか! 下手したら死んじゃうんだぞ!?」
黒神聖名。キャナルの宿主である神名のその兄は、
とはいえ、リナもキャナルも、常識は知っていても常識人とは言い難い存在である。
「心配する気持ちはわかるけど、ちょっとウザいわね」
「……仕方がありませんね。
キャナルが[シールド]を発動させると、自身とリナを除いた全員が押し出される形で結界が展開された。
「これで邪魔されることなく闘えますね」
「そうね」
リナはそう口にするが。
(今のところはね)
と、心の中で呟いた。
「くそっ! またあの結界か!」
聖名が憤りながら拳をぶつける。しかし当然ながら、[シールド]の結界はビクともしない。
「ふたりとも、やめるんだ!」
距離の離れたふたりに、大声で呼びかける。そんな聖名に。
「あの、少し落ち着かれた方がよろしいのではないでしょうか?」
知世が声をかけ、落ち着かせようとする。
「ふたりが危険なことしてるのに、落ち着いていられるわけないじゃないか!」
聖名の言い分は尤もである。
「うーん、なんかこういうトコは、お兄ちゃんと似てるわねー」
「うん。お兄ちゃんもわたし達の事を知ったら、こういう風に止めそうだよね」
クロエの意見に同意するイリヤ。だが今回は、そこで思考をやめたりしない。
「でもこのままじゃ、リナ達の邪魔になっちゃうよね。だから。
やっちゃえ、
『はいは~い』
ぷすっ
「はうっ!?」
ルビーによって首筋に注射を打たれた聖名は、あっという間にその場に崩れ落ちた。
「ほええええ!?」
あまりにもな出来事に、さくらは半ば混乱をきたしている。と言うか、これが普通の反応だろう。
『ふふふ、象もイチコロのルビーちゃん特製、強力睡眠薬ですよー』
ルビーは自慢気に言うが、はたとイリヤに向き直る。
『……ところでイリヤさん、先程私のことをバーサーカー扱いしませんでしたか?』
「え? なんのこと?」
イリヤはすっとぼけた。これにはクロエも。
(イリヤも図太くなったわね…)
などと、半ば呆れつつも感心している。
『まあ、いいでしょう。それよりも、どうなさいますか?』
「え、どうって…」
『闘いを止めるかどうかは別としても、私達は結界の外に追いやられた状態です。このまま闘いが終わるのを結界の外で待つか、それとも結界を破り、近くで行く末を見守るか』
ルビーに言われ、うっと唸り顔を俯かせるイリヤ。
「……そりゃ、近くで見てたいよ。でも、闘いの邪魔になったら嫌だし、それに闘いなれてるふたりなら、多分大丈夫だと思うから…」
「ウジウジしてんじゃないわよ、このバカイリヤッ!!」
すっぱああああん!
突然の衝撃がイリヤの頭を襲う。頭を押さえたイリヤが視線を移すと、左手を腰に当て、右手にスリッパを持った、まるでリナを彷彿とさせるようなクロエの姿があった。……因みに痛覚共有でクロエも痛いはずなのだが、それは一切おくびにも出さない。
「まったく、最近はだいぶマシになったと思ってたけど、ここに来てウジウジイリヤの再発?」
「だって…」
「だってじゃないわよ! 見たいなら見たい、信じるなら信じる! 今のアンタはどっち付かずなのよ!」
「う…」
図星を突かれたイリヤは言葉に詰まってしまう。
「さあ、どうするの? 行くの? 行かないの?」
急かされたイリヤは数秒間考え込み、そして。
「……行きたい。行って、キャナルさんには悪いけど、リナの応援をしたい!」
彼女の出した答えに、クロエはニッコリと微笑む。
「大変よくできました♡」
別に、イリヤが出した答えが正解というわけではない。残って無事を祈ろうと、結界を破りリナかキャナルか、もしくはふたりを応援しようと、または戦闘を止めようとも、どれでも構わなかった。ただ、素直な
---クロにも欲しいものはあるんでしょう!? だったら、願ってよ! 自分の望みを、叶えてよ!
かつてそう言ったのはイリヤ。だからこそ、ハッキリしないイリヤに我慢がならなかった。クロエにとっての譲れないものであった。
「さて、そうと決まれば、中に入るために結界を破らなきゃなんないわけだけど」
そう言ってクロエはさくらを見る。
「ここはやっぱり、[カードキャプター]さんにお願いしようかしら?」
「え…、えええええっ!?」
クロエのいきなりのお願いに、思わず驚きの声をあげるさくら。しかしそれも致し方ない。何故なら。
「せやけど、今のさくらには[シールド]の結界を破る手立てがあらへん。[ソード]は天使の嬢ちゃんが持っとるからな」
そう。[シールド]を破れる[ソード]が無い今、さくらにその手段がないのだ。
だが、当然クロエも、それくらいのことは織り込み済みである。
「でも、[ソード]以外にもやり様はあるんじゃないのかしら? 例えば[イレイズ]とか」
「あ! そういえばさっき、[アロー]の攻撃消してた!」
イリヤが相槌を打つが、ケルベロスの表情は冴えない。
「こないに大きな結界だと、[イレイズ]の効果の範囲に納まらんかも知れへん。それに一部を消し去っても、破壊と
「でも、可能性はあるんだよね? だったら試してみる!」
そう言うと、さくらはカードを取り出し。
「 [
その力を発動させる。結果はケルベロスの予想通り、結界のその一部を消し去るにとどめ、更に予想通り、瞬時にして復元された。
「やっぱりダメみたいですわね」
「でも、ま、想定の範囲内よ」
少しガッカリしたように言う知世に、クロエは軽く返す。そしてイリヤを見て。
「やっぱり
「ほえ?」
さくらと同じセリフをこぼして、イリヤは疑問の視線をクロエに向けた。
「
[力あることば]と共に、キャナルの周囲が噴き上がる。しかしキャナルは慌てもせず、その身に薄く魔力の結界を纏い、バックステップで噴き上がる土砂を突っ切っていく。
術が収まると、キャナルが元いた場所の目の前まで、リナが詰め寄っていた。
(やはり目くらましでしたか)
(ちっ、やっぱり読まれたか)
お互い読み合いながらの闘い。しかしリナは人間の身でありながら、魔族という格上相手に切った張ったを繰り広げてきたのだ。ここで終わるはずもない。既に手にしていた硝子玉を、キャナル目がけて指で弾く。
「くっ!」
キャナルは剣で球を弾き…。
(キャナル! 目を閉じてっ!)
突然頭に響く声に思わず反応して、キャナルは目を閉じてしまう。そして次の瞬間、目を閉じてすら明るく感じるほどの閃光。そう。リナが放った硝子玉には、持続時間ゼロの[
「読まれた? いや、でも…」
訝しむリナ。そしてはたと気がつく。
「まさか神名? 硝子玉に込められた魔力の質から、発動する魔術の特性を割り出したっての?」
その可能性に至りつつも、俄には信じ難いことであった。しかし、魔力の質を読み取り、自身の魔力の質を変化させる神名の特異性を考えれば、有り得ないとは言えない。そしてその考えはまさに正しかった。
「……すみません、リナさん。一対一の勝負なのに」
「……別に構わないわよ。あなた達が二人で一人なのは理解してるから」
「しかし!」
リナの言葉に、それでも自身が納得出来ないでいるキャナル。そんな彼女の言に被せてリナが言う。
「それにあたしにだって…って、まさに丁度みたいね」
先に気づいたのはリナ。続いてキャナルも異変に気づく。
「結界が…!?」
そう。[
「リナーっ!」
そして聞こえるイリヤの声。
「さっきの続きだけど、あたしにだって、みんながいるから」
そう言ってリナが振り返ると、そこにはみんなの顔が…。
「って、「聖名さん!?」」
リナとキャナルが同時に叫ぶ。
「ちょっと、大丈夫なんですかっ!?」
かなり慌てるキャナル。
『心配性ですねー。ルビーちゃん特製の超強力睡眠薬を打っただけです。強力過ぎて丸一日目を覚ましませんが、副作用や後遺症のない、安心安全設計ですよー』
『姉さんは性格に難はありますが、魔法薬に関しての腕は確かです』
サファイアの口添えもあってか、ふう、とひとつ、安堵のため息を吐いた。
「わかりました、信じましょう。
それよりも、どうやって結界を破ったのですか? それにカードが戻ってこないのですが?」
「それはさくらが結界を破ったからや。[
ケルベロスの説明に、なるほどと頷くキャナル。
「ちょい待ち」
しかしリナが、待ったをかける。
「ケルベロスの説明はわかるけど、さくらちゃんはどうやって結界を破ったのよ。[ソード]は無いし、[イレイズ]辺りじゃ結界全体に効果があるかわかんない。かといって一部分を消し去っても、多分すぐに結界は再生されると思うし。そもそも結界を破るのは、イリヤかクロエだと思ってたのに…」
捲したてるリナに、苦笑いを浮かべる一同。視線を交わしたあと、クロエが代表して答えた。
「[イレイズ]の
それよりも、リナがこの方法に気づかないのが意外なんだけど。まあ、作品としてサクラ達のことを知ってるせいで、固定観念があるのかも知んないけどね」
そんな事を言われて、少しムッとするリナ。とはいえクロエの言うとおりなので、文句も言えないでいる。
「サクラの魔法の杖に、[キャスター]のクラスカードを
あ、と短く呟くリナ。限定展開の条件は、高位の魔術礼装を使うこと。さくらの持つ[星の杖]は、まさに高位の魔術礼装である。
確かにクロエが言うとおり、[星の杖]=[さくらカード]という固定観念に縛られていたと、リナは心の中で反省した。
「……さて、それではリナさん、
「ちょっと待て、キャナル! 今、明らかに不穏な意味合いで言ったでしょ!?」
「冗談ですよ。でなければ、神名に叱られますから」
言ってニコリと微笑むキャナル。質の悪い冗談を、とリナは呟く。
「ハァ、しょうがないわね。そんじゃ気合いを入れ直して…」
「リナ!」
リナが戦闘に戻ろうとしたところで、イリヤが声をかける。
「頑張ってね。リナなら、
イリヤの応援に、目を丸くするリナ。その様子を見て、イリヤは先程のことを思い出す。
それはクロエの発案で、さくらがクラスカードを使うことに決まったあと。クロエからクラスカードの、そして[
しばらくすると、説明を聞き終わったさくらが、イリヤの元へやって来る。イリヤが戸惑っていると、さくらが口を開いた。
「えっと、イリヤちゃん。イリヤちゃんはリナちゃんの事、信じてるんでしょ?」
「え…、うん。もちろん!」
「だったら、多分なんて言ったら駄目だよ」
「あ…。うん、そうだよね」
「多分」では、相手を信じ切ってるとは言えない表現である。さくらに言われて、イリヤも気づくことが出来た。
「イリヤちゃんが信じてるなら、こう言ってあげなきゃ。“絶対大丈夫だよ”って」
(実際は「絶対」なんて、無いんだと思う。でも、それでも。「絶対大丈夫」って、信じてあげなくちゃ。わたしはリナの、親友なんだから!)
イリヤにも、それくらいの
「……イリヤ、ありがと。気持ちは受け取ったわ」
そして、その想いは伝わった。
リナは再び[
「……絶対、ですか。その言葉自体がとても不確定的なものであるのに、リナさんはそれを信じるのですか?」
キャナルからの質問に、リナは軽く笑い答えた。
「まあ、絶対なんて、ありゃしないんでしょうね。でも、そういう気持ちは大事よ?
……それに何より。『絶対大丈夫だよ』は、無敵の呪文だから!」
そう言い切った瞬間、キャナルに向かって駆け出すリナ。しかし、気配で行動を読んでいたキャナルは慌てもせずに、手にしていた剣を前へと突き出す。
リナは片手で[烈光の剣]を使い剣を弾き上げ、残る右手で拳をつくり、キャナル目がけて突き出した。
[魔道士]であり[剣士]であるリナから繰り出された、そのどちらでもない攻撃に意表を突かれたものの、キャナルとて[
「くっ!?」
目前のリナが、左足を軸に反時計回りに回転をしているのを見て、次に来るであろう横薙ぎの一閃を防ぐため左側で剣を立てて、左手を添えて衝撃に備える。
が、しかし。リナは光の刃を消し去りそのまま振り抜いた。
キャナルが「あっ」と思う間もなく、リナは手首を返し、剣の柄を握るキャナルの右手の甲を[烈光の剣]の柄尻で叩く。
キャナルの手から剣がするりと落ち。リナは刃を消したまま、[烈光の剣]をキャナルに突きつけた。
「チェックメイトよ、キャナル」
「……その様ですね。私の負けです、リナさん」
苦笑しつつもスッキリとした表情のキャナル。
「さくらちゃん」
「はい!」
リナの呼びかけに、さくらは返事をし。
「汝のあるべき姿へ戻れ。主、さくらの名の下に!」
[
戦闘シーンは少ないですが、さくらカード回収は完了です。おそらくあと2話で、この番外編は終了すると思います。……プリヤ版ZERO、いい加減なんとかしないと。
次回「さくらとプールと心の憂い」
さくらと一緒に、レリーズ!