Fate/kaleid caster ドラまた☆リナ   作:猿野ただすみ

6 / 106
原作プリヤなのに、イリヤの活躍少ない。
【CCさくら】のクロスオーバーなのに、さくらの活躍も少ない。
……リナさん、主役だからって頑張りすぎだよ。


さくらと無敵の呪文

≪third person≫

がっ! と、剣と剣がぶつかり合う。

片や魔王が生み出した五つの武器の、そのひとつ。レプリカなれど、その潜在能力は計り知れない。

片や稀代の魔術師と評されるクロウ・リードが生み出したカードの一枚。主がさくらへと代わり、カード自体も新生したが、担い手の意思によって切れ味を調節できる[(ソード)]の能力は健在である。

 

「レプリカとはいえ、[光の剣]…、ううん、[烈光の剣(ゴルンノヴァ)]の刃を受け止めるなんてね」

「そちらこそ、私の意思の力で切れ味の増した[(THE SWORD)]で断ち切れないとは」

 

お互いがお互いの武器を称え合う。そして互いが押し合い、距離を取るように離れる。

 

「ときにあたしは、魔法剣士が本来のスタイルなんだけど、織り交ぜながら闘ってもいいのかしら?」

「ええ、構いませんよ。ですが私も、神の眷属だということを忘れてもらっては困ります」

 

おどけたように言うリナに、軽く笑みを浮かべながら返すキャナル。お互いの駆け引きに、しかし水を差す人物がひとり。

 

「待ってくれ、ふたりとも! そんな闘い方、危ないじゃないか! 下手したら死んじゃうんだぞ!?」

 

黒神聖名。キャナルの宿主である神名のその兄は、この道の人間(陰陽師)としてはとても常識人であった。

とはいえ、リナもキャナルも、常識は知っていても常識人とは言い難い存在である。

 

「心配する気持ちはわかるけど、ちょっとウザいわね」

「……仕方がありませんね。(THE SHIELD)!」

 

キャナルが[シールド]を発動させると、自身とリナを除いた全員が押し出される形で結界が展開された。

 

「これで邪魔されることなく闘えますね」

「そうね」

 

リナはそう口にするが。

 

(今のところはね)

 

と、心の中で呟いた。

 

 

 

 

 

「くそっ! またあの結界か!」

 

聖名が憤りながら拳をぶつける。しかし当然ながら、[シールド]の結界はビクともしない。

 

「ふたりとも、やめるんだ!」

 

距離の離れたふたりに、大声で呼びかける。そんな聖名に。

 

「あの、少し落ち着かれた方がよろしいのではないでしょうか?」

 

知世が声をかけ、落ち着かせようとする。

 

「ふたりが危険なことしてるのに、落ち着いていられるわけないじゃないか!」

 

聖名の言い分は尤もである。

 

「うーん、なんかこういうトコは、お兄ちゃんと似てるわねー」

「うん。お兄ちゃんもわたし達の事を知ったら、こういう風に止めそうだよね」

 

クロエの意見に同意するイリヤ。だが今回は、そこで思考をやめたりしない。

 

「でもこのままじゃ、リナ達の邪魔になっちゃうよね。だから。

やっちゃえ、ルビー(バーサーカー)!!

『はいは~い』

 

ぷすっ

 

「はうっ!?」

 

ルビーによって首筋に注射を打たれた聖名は、あっという間にその場に崩れ落ちた。

 

「ほええええ!?」

 

あまりにもな出来事に、さくらは半ば混乱をきたしている。と言うか、これが普通の反応だろう。

 

『ふふふ、象もイチコロのルビーちゃん特製、強力睡眠薬ですよー』

 

ルビーは自慢気に言うが、はたとイリヤに向き直る。

 

『……ところでイリヤさん、先程私のことをバーサーカー扱いしませんでしたか?』

「え? なんのこと?」

 

イリヤはすっとぼけた。これにはクロエも。

 

(イリヤも図太くなったわね…)

 

などと、半ば呆れつつも感心している。

 

『まあ、いいでしょう。それよりも、どうなさいますか?』

「え、どうって…」

『闘いを止めるかどうかは別としても、私達は結界の外に追いやられた状態です。このまま闘いが終わるのを結界の外で待つか、それとも結界を破り、近くで行く末を見守るか』

 

ルビーに言われ、うっと唸り顔を俯かせるイリヤ。

 

「……そりゃ、近くで見てたいよ。でも、闘いの邪魔になったら嫌だし、それに闘いなれてるふたりなら、多分大丈夫だと思うから…」

「ウジウジしてんじゃないわよ、このバカイリヤッ!!」

 

すっぱああああん!

 

突然の衝撃がイリヤの頭を襲う。頭を押さえたイリヤが視線を移すと、左手を腰に当て、右手にスリッパを持った、まるでリナを彷彿とさせるようなクロエの姿があった。……因みに痛覚共有でクロエも痛いはずなのだが、それは一切おくびにも出さない。

 

「まったく、最近はだいぶマシになったと思ってたけど、ここに来てウジウジイリヤの再発?」

「だって…」

「だってじゃないわよ! 見たいなら見たい、信じるなら信じる! 今のアンタはどっち付かずなのよ!」

「う…」

 

図星を突かれたイリヤは言葉に詰まってしまう。

 

「さあ、どうするの? 行くの? 行かないの?」

 

急かされたイリヤは数秒間考え込み、そして。

 

「……行きたい。行って、キャナルさんには悪いけど、リナの応援をしたい!」

 

彼女の出した答えに、クロエはニッコリと微笑む。

 

「大変よくできました♡」

 

別に、イリヤが出した答えが正解というわけではない。残って無事を祈ろうと、結界を破りリナかキャナルか、もしくはふたりを応援しようと、または戦闘を止めようとも、どれでも構わなかった。ただ、素直な答え(きもち)を聞きたかったのだ。

 

---クロにも欲しいものはあるんでしょう!? だったら、願ってよ! 自分の望みを、叶えてよ!

 

かつてそう言ったのはイリヤ。だからこそ、ハッキリしないイリヤに我慢がならなかった。クロエにとっての譲れないものであった。

 

「さて、そうと決まれば、中に入るために結界を破らなきゃなんないわけだけど」

 

そう言ってクロエはさくらを見る。

 

「ここはやっぱり、[カードキャプター]さんにお願いしようかしら?」

「え…、えええええっ!?」

 

クロエのいきなりのお願いに、思わず驚きの声をあげるさくら。しかしそれも致し方ない。何故なら。

 

「せやけど、今のさくらには[シールド]の結界を破る手立てがあらへん。[ソード]は天使の嬢ちゃんが持っとるからな」

 

そう。[シールド]を破れる[ソード]が無い今、さくらにその手段がないのだ。

だが、当然クロエも、それくらいのことは織り込み済みである。

 

「でも、[ソード]以外にもやり様はあるんじゃないのかしら? 例えば[イレイズ]とか」

「あ! そういえばさっき、[アロー]の攻撃消してた!」

 

イリヤが相槌を打つが、ケルベロスの表情は冴えない。

 

「こないに大きな結界だと、[イレイズ]の効果の範囲に納まらんかも知れへん。それに一部を消し去っても、破壊と(ちご)うて、瞬時に修復される可能性のが高い思う」

「でも、可能性はあるんだよね? だったら試してみる!」

 

そう言うと、さくらはカードを取り出し。

 

「 [(イレイズ)]!」

 

その力を発動させる。結果はケルベロスの予想通り、結界のその一部を消し去るにとどめ、更に予想通り、瞬時にして復元された。

 

「やっぱりダメみたいですわね」

「でも、ま、想定の範囲内よ」

 

少しガッカリしたように言う知世に、クロエは軽く返す。そしてイリヤを見て。

 

「やっぱり()()の出番ね」

「ほえ?」

 

さくらと同じセリフをこぼして、イリヤは疑問の視線をクロエに向けた。

 

 

 

 

 

炸弾陣(ディル・ブランド)!」

 

[力あることば]と共に、キャナルの周囲が噴き上がる。しかしキャナルは慌てもせず、その身に薄く魔力の結界を纏い、バックステップで噴き上がる土砂を突っ切っていく。

術が収まると、キャナルが元いた場所の目の前まで、リナが詰め寄っていた。

 

(やはり目くらましでしたか)

(ちっ、やっぱり読まれたか)

 

お互い読み合いながらの闘い。しかしリナは人間の身でありながら、魔族という格上相手に切った張ったを繰り広げてきたのだ。ここで終わるはずもない。既に手にしていた硝子玉を、キャナル目がけて指で弾く。

 

「くっ!」

 

キャナルは剣で球を弾き…。

 

(キャナル! 目を閉じてっ!)

 

突然頭に響く声に思わず反応して、キャナルは目を閉じてしまう。そして次の瞬間、目を閉じてすら明るく感じるほどの閃光。そう。リナが放った硝子玉には、持続時間ゼロの[明かり(ライティング)]が込められていたのだ。

 

「読まれた? いや、でも…」

 

訝しむリナ。そしてはたと気がつく。

 

「まさか神名? 硝子玉に込められた魔力の質から、発動する魔術の特性を割り出したっての?」

 

その可能性に至りつつも、俄には信じ難いことであった。しかし、魔力の質を読み取り、自身の魔力の質を変化させる神名の特異性を考えれば、有り得ないとは言えない。そしてその考えはまさに正しかった。

 

「……すみません、リナさん。一対一の勝負なのに」

「……別に構わないわよ。あなた達が二人で一人なのは理解してるから」

「しかし!」

 

リナの言葉に、それでも自身が納得出来ないでいるキャナル。そんな彼女の言に被せてリナが言う。

 

「それにあたしにだって…って、まさに丁度みたいね」

 

先に気づいたのはリナ。続いてキャナルも異変に気づく。

 

「結界が…!?」

 

そう。[(シールド)]の結界が解除されたのだ。

 

「リナーっ!」

 

そして聞こえるイリヤの声。

 

「さっきの続きだけど、あたしにだって、みんながいるから」

 

そう言ってリナが振り返ると、そこにはみんなの顔が…。

 

「って、「聖名さん!?」」

 

リナとキャナルが同時に叫ぶ。(ユエ)から戻った雪兎に背負われていたのは、気を失った聖名であった。

 

「ちょっと、大丈夫なんですかっ!?」

 

かなり慌てるキャナル。

 

『心配性ですねー。ルビーちゃん特製の超強力睡眠薬を打っただけです。強力過ぎて丸一日目を覚ましませんが、副作用や後遺症のない、安心安全設計ですよー』

『姉さんは性格に難はありますが、魔法薬に関しての腕は確かです』

 

サファイアの口添えもあってか、ふう、とひとつ、安堵のため息を吐いた。

 

「わかりました、信じましょう。

それよりも、どうやって結界を破ったのですか? それにカードが戻ってこないのですが?」

「それはさくらが結界を破ったからや。[(シールド)]の主はさくらや。そのさくらが破ったことで、カードは本来の持ち主に戻ったっちゅう事やな」

 

ケルベロスの説明に、なるほどと頷くキャナル。

 

「ちょい待ち」

 

しかしリナが、待ったをかける。

 

「ケルベロスの説明はわかるけど、さくらちゃんはどうやって結界を破ったのよ。[ソード]は無いし、[イレイズ]辺りじゃ結界全体に効果があるかわかんない。かといって一部分を消し去っても、多分すぐに結界は再生されると思うし。そもそも結界を破るのは、イリヤかクロエだと思ってたのに…」

 

捲したてるリナに、苦笑いを浮かべる一同。視線を交わしたあと、クロエが代表して答えた。

 

「[イレイズ]の(くだり)はさっきケルベロスが言ってたし、まさにその通りだったわ。

それよりも、リナがこの方法に気づかないのが意外なんだけど。まあ、作品としてサクラ達のことを知ってるせいで、固定観念があるのかも知んないけどね」

 

そんな事を言われて、少しムッとするリナ。とはいえクロエの言うとおりなので、文句も言えないでいる。

 

「サクラの魔法の杖に、[キャスター]のクラスカードを限定展開(インクルード)したのよ」

 

あ、と短く呟くリナ。限定展開の条件は、高位の魔術礼装を使うこと。さくらの持つ[星の杖]は、まさに高位の魔術礼装である。

確かにクロエが言うとおり、[星の杖]=[さくらカード]という固定観念に縛られていたと、リナは心の中で反省した。

 

「……さて、それではリナさん、死合(しあい)の続きをしましょうか?」

「ちょっと待て、キャナル! 今、明らかに不穏な意味合いで言ったでしょ!?」

「冗談ですよ。でなければ、神名に叱られますから」

 

言ってニコリと微笑むキャナル。質の悪い冗談を、とリナは呟く。

 

「ハァ、しょうがないわね。そんじゃ気合いを入れ直して…」

「リナ!」

 

リナが戦闘に戻ろうとしたところで、イリヤが声をかける。

 

「頑張ってね。リナなら、()()()()()()()()!」

 

イリヤの応援に、目を丸くするリナ。その様子を見て、イリヤは先程のことを思い出す。

 

 

 

 

 

それはクロエの発案で、さくらがクラスカードを使うことに決まったあと。クロエからクラスカードの、そして[破戒すべき全ての符(ルールブレイカー)]のレクチャーを受けているさくらを、イリヤはぼんやりと見ていた。

しばらくすると、説明を聞き終わったさくらが、イリヤの元へやって来る。イリヤが戸惑っていると、さくらが口を開いた。

 

「えっと、イリヤちゃん。イリヤちゃんはリナちゃんの事、信じてるんでしょ?」

「え…、うん。もちろん!」

「だったら、多分なんて言ったら駄目だよ」

「あ…。うん、そうだよね」

 

「多分」では、相手を信じ切ってるとは言えない表現である。さくらに言われて、イリヤも気づくことが出来た。

 

「イリヤちゃんが信じてるなら、こう言ってあげなきゃ。“絶対大丈夫だよ”って」

 

 

 

 

 

(実際は「絶対」なんて、無いんだと思う。でも、それでも。「絶対大丈夫」って、信じてあげなくちゃ。わたしはリナの、親友なんだから!)

 

イリヤにも、それくらいの(ことわり)はわかっていた。だが、そう信じることには、何の制約も無いのだ。

 

「……イリヤ、ありがと。気持ちは受け取ったわ」

 

そして、その想いは伝わった。

リナは再び[烈光の剣(ゴルンノヴァ)]構え、キャナルと対峙する。

 

「……絶対、ですか。その言葉自体がとても不確定的なものであるのに、リナさんはそれを信じるのですか?」

 

キャナルからの質問に、リナは軽く笑い答えた。

 

「まあ、絶対なんて、ありゃしないんでしょうね。でも、そういう気持ちは大事よ?

……それに何より。『絶対大丈夫だよ』は、無敵の呪文だから!」

 

そう言い切った瞬間、キャナルに向かって駆け出すリナ。しかし、気配で行動を読んでいたキャナルは慌てもせずに、手にしていた剣を前へと突き出す。

リナは片手で[烈光の剣]を使い剣を弾き上げ、残る右手で拳をつくり、キャナル目がけて突き出した。

[魔道士]であり[剣士]であるリナから繰り出された、そのどちらでもない攻撃に意表を突かれたものの、キャナルとて[(ヴォルフィード)]の亡き世界で魔族と対峙していたのだ。咄嗟に身体は動き、左へと身を躱しつつ剣を構え直し。

 

「くっ!?」

 

目前のリナが、左足を軸に反時計回りに回転をしているのを見て、次に来るであろう横薙ぎの一閃を防ぐため左側で剣を立てて、左手を添えて衝撃に備える。

が、しかし。リナは光の刃を消し去りそのまま振り抜いた。

キャナルが「あっ」と思う間もなく、リナは手首を返し、剣の柄を握るキャナルの右手の甲を[烈光の剣]の柄尻で叩く。

キャナルの手から剣がするりと落ち。リナは刃を消したまま、[烈光の剣]をキャナルに突きつけた。

 

「チェックメイトよ、キャナル」

「……その様ですね。私の負けです、リナさん」

 

苦笑しつつもスッキリとした表情のキャナル。

 

「さくらちゃん」

「はい!」

 

リナの呼びかけに、さくらは返事をし。

 

「汝のあるべき姿へ戻れ。主、さくらの名の下に!」

 

(ソード)]をさくらカードへと戻す。こうして遂に、全てのカードの回収を終えたのだった。




戦闘シーンは少ないですが、さくらカード回収は完了です。おそらくあと2話で、この番外編は終了すると思います。……プリヤ版ZERO、いい加減なんとかしないと。

次回「さくらとプールと心の憂い」

さくらと一緒に、レリーズ!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。