Fate/kaleid caster ドラまた☆リナ   作:猿野ただすみ

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クロとイリヤ、初めての共同作業。


少女戦記

≪イリヤside≫

「抵抗するならば強制的に回収を…!?」

 

カード回収の前任者、バゼットさんは言葉を途中で止めて振り返り、右拳を振るう。それは不意討ちを狙っていたクロへと向かい。

 

ガギイィッ!

 

クロは陰陽の双剣で攻撃を防ぎながら、後方へと吹き飛んだ。

 

「……ルビー、転身お願い」

『イリヤさん! 今の見たでしょう? 正直言って今のイリヤさんに勝算はありません!

彼女の目的がカードだというのなら、素直に渡すのが…』

「ルビー!!」

 

わたしはルビーの言葉を遮る。

 

「言いたいことがたくさんあるけど、今は時間が無いからひとつだけ。

あの人は確かにとんでもない強さだけど、それでもクロは戦ってる。だったら、わたしも戦わなくちゃいけないんだ。

だって、この力を使って、大事な人を守るって決めたから! 大事な人たちを見捨てて、前になんか進めないってわかったから!!」

 

最後のカード回収の時にわたしが誓った、そしてクロとケンカ別れしたときに、リナのお陰で再認識することができた、そんな大切な想い。

今でこそ、力の多くはクロが持っていってるけど、それでも想いは変わらなくて。

 

『……そうでしたね。それが今のイリヤさんの原動力でしたね』

 

ステッキ姿になったルビーの柄を掴み、わたしは変身をした。

 

 

 

 

 

再びわたしを見たバゼットさんが、口を開く。

 

「アーチャーの力を使う少女に、ゼルレッチ卿の礼装を使う一般人。事態は協会の認識以上に、混沌としているようですね」

 

おとーさんとママは一般人じゃないけど。もちろんそんなことは言う気もない。それにこの人は。

 

「しかしなんであれ、わたしの仕事は変わりません。

……さあ、始めましょうか」

 

やっぱりこの人はプロだ。受けた仕事は遂行する人だった。

 

砲射(フォイア)!!」

 

まずはわたしが砲撃を放つ。でもバゼットさんはそれを左手で弾く。

 

散弾(ショット)!!」

 

すかさず、範囲を集中させた散弾を放つと、バゼットさんはクロスアームブロックでそれに耐える。

その背後からクロが踏み込み、右手に持つ白い方の剣を突き立てようとして。

 

ざっ!

 

バゼットさんはわたしから見て右に避けた。その瞬間、遮る物が無くなった散弾がクロに襲いかかる!

 

「チィッ!」

 

クロは双剣で魔力弾を弾きながら、バゼットさんとは反対方向へ飛び退いた。

そして魔力弾(たま)が途切れた瞬間、バゼットさんがクロに襲いかかろうとして。

 

斬擊(シュナイデン)!!」

 

わたしが放った斬擊を、しかし彼女は右手で鷲掴むようにして地面に叩きつけた! なんてデタラメな…!

そんな一瞬の思考の無駄を、彼女は見逃さなかった。バゼットさんは方向転換をして、一気にわたしへと詰め寄る。

マズい!

わたしは後ろに飛び退きながら、振り抜かれた右拳をルビーの柄の部分でガードする。だけど安定しない状態だったから、わたしはそのまま吹き飛ばされてしまった。

それでも何とか両足で着地をするわたし。

攻撃がまったく通じない。この人、やっぱり強い!

……っていうか。

 

「わたしが弱いんだね! わかってたけどっ!!」

『いやー、まったくもって出力が足りてません。主人公にあるまじき弱さですね!』

 

ハッキリ言わないでッ! あと、主人公って何の事!?

そこへ、駆け寄ってきたクロが、わたしの前に背中を向けて立つ。

 

「ちょっとイリヤ! 嘆いてる暇なんてないわよ!!」

 

そ、そうだ。またわたしの悪い癖が出ちゃった。

 

『すみません、クロさん。イリヤさんに注意事項があるので、少しだけお願いします』

 

へっ?

 

「もう、仕方がないわね」

 

そう言ってクロは、ふっと笑い。

 

「ところで、別に倒してしまっても構わないんでしょ?」

 

などと、めちゃくちゃキザなことを言って。

 

ダンッ!!

 

一気にバゼットさんとの距離を詰めた。

 

『さて、めちゃくちゃあやしいフラグを立てたクロさんが心配なので、さっさと説明しちゃいましょー』

 

うあ。クロの見せ場が台無しだぁ。……いや、確かにあの発言は心配になるけどね?

 

『いいですか。彼女には宝具などのような「大技」や「切り札」は一切使わないでください。

時間が無いので詳しい説明は省きますが、究極のカウンターが来ると思っていただければいいと思います』

 

究極のカウンター…。それがどんなものかわからないけど、用心するに越したことはないよね。

 

「うん。わかったよ、ルビー」

 

わたしはルビーの言葉を胸に刻みながら、力強く頷いた。

 

 

 

 

≪リナside≫

あたしたち…、あたしに凛さん、ルヴィアさん、そしてオーギュストさんの四人は、エーデルフェルト邸の緊急用地下通路にいる。屋敷が倒壊する直前にオーギュストさんに促されて、地下通路(ここ)へと逃げ込んだのだ。

 

「……とりあえず、これでいいでしょ」

 

そう言ってあたしは、術を解除する。

実はルヴィアさん、バゼット(凛さんから聞いた)って人の攻撃でかなりの重傷、気を失った状態で、あたしが今まで治癒(リカバリィ)の術をかけていたのだ。

とはいえこの術、被術者の怪我を治す代わりに体力を消耗させるため、重症患者を疲労死させてしまいかねないというリスクもあったりする。

そんなわけで今回は、怪我のヒドい部分を応急的に治療するのにとどめた。ルヴィアさんなら大丈夫そうな気がするけど。

 

「……なんか、術のリスクに目を瞑れば、私の治癒魔術よりも効果がある気がする」

「このリスクは、目を瞑っていいもんじゃないわよ」

 

凛さんのやっかみを軽く受け流し、あたしは小さく肩をすくめてみせる。

実際前世では、治癒(リカバリィ)だけではなく復活(リザレクション)を覚えていれば救えた命も、数え切れないほど目にしてきたのだ。

 

「さてと」

 

あたしはすっくと立ちあがり、膝のホコリを払い落とす。

 

「それじゃあ、行ってくるわ」

「行くってまさか、バゼットと戦うつもり!?」

 

凛さんが悲鳴のような声をあげるが、この反応は当然予測済み。

そりゃああたしだって、あんなヤツと戦わなくて済むならそれに越したことはないんだけど。

 

「バゼットの目的は、クラスカードの回収よ。彼女が残りの3枚、見逃すと思う?」

「~~~!!」

 

初めて見たあたしが思ったのだ。あたしよりも彼女のことを知ってるであろう凛さんが、それに気づいてないはずがない。

それに、イリヤの家は目と鼻の先。いくら認識阻害の結界が張られているとはいえ、これだけドンパチやればイリヤたちが異変に気づいてしまう可能性もある。……できれば、こっちの予想は外れていてほしいのだが。

ええいっ、考えてたって埒があかない!

 

「とにかく、あたしは出来るだけのことをやってみる。凛さんとオーギュストさんはルヴィアさんをお願いね!」

 

あたしはふたりの返事も聞かずに走り出した。そして、走りながらポケットに手を突っ込み…。

 

 

 

 

≪クロエside≫

コイツ、ホントに強い! わたしの剣撃も、イリヤの砲撃・斬擊も、全て素手でいなし、あるいは打ち破ってくる。

ハッキリ言ってこんなのと戦うくらいなら、ディルギアと戦った方がよっぽど楽ってモンよ。

 

「……やれやれ、対応できないほどではありませんが、さすがにこの連携は少々うざったいですね」

「アラ、カ-ド回収の前任者さまが弱音?」

 

わたしは軽く挑発、……と言うより強がりを言ってみせる。

 

「まさか。ただ、戦い方を変える必要がある、というだけです」

 

そう言ってわたしに詰め寄り、振るってきた右拳を干将(黒い剣)で防いだ、……と思った瞬間、左へと回り込み、右足の蹴りが跳んでくる!?

慌てて莫耶(白い剣)を逆手に変え、腕に沿わせる形で防御、かと思えば、後ろから右のバックナックル…。

これは、足を止めずに前後左右、全方位からの攻撃!? おまけにこの状態じゃ、わたしが枷になってイリヤも魔力弾を飛ばすことが出来ない。

 

ピキィ!

パキンッ!

 

干将・莫耶も、さっきから何度も砕かれては破棄して投影を繰り返してるけど。

……マズい! このままじゃ捌ききれなくなるっ!

 

バキィッ!

 

彼女の渾身の左を双剣をクロスさせて防いだけど、双剣は完全に破壊。そこに出来た防御の穴に向かって、彼女は右手を振りかぶる!

投影は、……間に合わない!?

やられるっ! ……そう思った瞬間、バゼットの右腕に星形の物理防御壁が、ってイリヤ?

そうか。物理防御壁を拘束具代わりに…。やるじゃないの。

さらにバゼットの左腕も拘束し。

 

「クロっ!」

 

言われるまでもない。わたしは跳躍して、夫婦剣を同時に振り下ろし…。

 

パキィン!

 

物理防御壁が砕け。

 

どぅむっ!

 

わたしはお腹に、強烈な一撃を食らい吹っ飛んだ。

 

「クロッ!?」

 

イリヤが叫ぶけど、息が詰まって返事をすることも出来ない。

なんて迂闊なの。拘束したことに安心して、大きく隙を作ってしまうなんて。敵を仕留めるときこそ、もっとも慎重になるがセオリーだってのに!

 

「拘束が二重ならやられていました」

 

普通はアレを簡単に破れたりしないわよっ!

 

「ならっ…!」

 

イリヤは再び、物理防御壁を展開しようと思ったんだろう。けど。

 

がっ!

ズガアァッ!!

 

彼女は地面に手を突き立てると、地表の一部を捲りあげた。

ちょっと、地表で畳返しってどういう理屈よ!?

と。次の瞬間、腹部への強烈な衝撃でわたしは意識を手放してしまった。

 

 

 

 

≪イリヤside≫

……痛い。痛いよ。

地面を畳返しするなんて、とんでもないことされて意識を逸らされたわたしは、バゼットさんの攻撃をお腹にまともに受けてしまった。

その激痛で、今はまともに身体を動かすことも出来ない。

クロは…、痛覚共有で気を失っちゃったみたい。ごめん、クロ。

バゼットさんが近づいてくる。このままじゃカードが…。でも、身体は思うように動かない。

バゼットさんがわたしの前で立ち止まり、ゆっくりと、太ももにあるカードホルダーへと手を伸ばして…。

 

「バム・ロッド!」

「!?」

 

突然襲いかかる炎の鞭を、バゼットさんは慌てて右拳で弾き飛ばす。だけどその先端は向きを変えて、再びバゼットさんに襲いかかった。

 

「チィッ!」

 

バゼットさんは上から拳を当て、炎の鞭の先端を地面に叩きつけて、追い打ちをかけるように拳を叩きつける。

さすがにそれには耐えきれなかったのか、炎の鞭は霧散した。

だけど、息つく暇も与えず、人影が飛び出し棒状のものでバゼットさんを強打する。

 

「まったく、好き勝手やってくれたわね」

「イリヤは、わたしが護る」

 

わたしは、かすれる声でふたりの名前を呼んだ。

 

「リナ…、ミユ…!」

 

と。




今回のサブタイトル
カルロ・ゼン「幼女戦記」から

美遊が原作よりも少しだけ早く到着。その理由は、リナのちょっとした仕草がヒントです。しかしまるで、少年マンガのような引きだな。

補足1:復活(リザレクション)は蘇生ではなく、体力を消費させずに回復を促す強力な治療魔法。スレイヤーズにそこまで詳しくない人もいるかもしれないので、念のため。

補足2:クロはディルギアを引き合いに出したが、魔族故に人間相手に本気を出せないことは知らない。
もしディルギアが本気を出せたら、いくらバゼットでも勝て…、る気がするのはきっと気のせい。

次回「破壊の女神」
見てくんないと、暴れちゃうぞ!
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