Fate/kaleid caster ドラまた☆リナ   作:猿野ただすみ

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今回は独自解釈があります。


デュアル!

≪美遊side≫

リナが殴り飛ばされた瞬間、わたしの中に猛烈な怒りがこみ上げてきた。けれど、なんとかキレずに踏み止まっている。

冷静な判断を欠いて、倒せる相手ではないのが判っているから。

わたしは散らばったカードを見る。この中で、彼女に通用する切り札を持ったもの。それは…。

わたしは再び剣に風を纏わせ、それを魔力と共に斬擊として撃ち出す。そう、かつて黒化したこの英霊が放っていた様に。

バゼットは両腕を交差させて、斬擊に耐える。この攻撃に耐えられるのは驚異的ではあるけど、今はそんな思考にかまけていられない。わたしは彼女の横をすり抜けるようにしながら、一枚のカードを拾い上げ。

 

上書き(オーバーライト)夢幻召喚(インストール)!」

 

その瞬間、この英霊の記憶の一部が頭の中に流れ込む。

やっぱりそうか。この英霊はギリシャ神話に語られる三柱の女神の末妹にして、英雄ペルセウスによって倒された怪物。

そう、名も無き島の怪物メドゥーサ。それがこの英霊の正体だ。

召喚された天馬(ペガサス)に跨がり、わたしは上空へと駆け上がる。この英霊なら、例え相手が宝具に対抗できる力を持っていても、おそらく対処できるはず。

わたしは両目を覆うバイザーを上にずらして相手を見る。

[石化の魔眼・キュベレイ]

この英霊を特徴づけるモノのひとつ。

……さすがに石化は叶わなかったけど、バゼットに重圧をかけられた。動きさえ封じられれば、彼女も()()()()()()()()

わたしは天馬に光の手綱を装着し。

 

騎英の手綱(ベルレフォーン)!」

 

宝具を開放した。

 

 

 

 

≪バゼットside≫

あの少女の視線を受けた瞬間、私に途轍もない重圧がかかった。それは魔眼による攻撃。おそらく黄金級…、いや、宝石級か。ともかく抵抗(レジスト)しきれないほど強力なものだ。

だが、これは本命ではない。あくまでそのための布石(あしどめ)。その証拠に、彼女の魔力が跳ね上がっていく。

 

騎英の手綱(ベルレフォーン)!」

 

この瞬間を待っていた!

茂みに隠しておいた筒から魔術処理を施した鉄球が飛び出し、私の下へ飛んでくる。私は鉄球に拳を添え。

 

後より出でて先に断つもの(アンサラー)---」

 

鉄球に現れし刀身の先が、対象を捕捉する。全ては、この瞬間のため。

 

斬り抉る戦神の剣(フラガラック)!」

 

私は()()()撃ち出した!

 

 

 

 

≪イリヤside≫

天馬に乗ったミユの魔力が高まってる。もしかして、宝具を発動させる気?

ダメだよ、ミユ! バゼットさんに宝具を使ったら!!

ルビーが言うには、バゼットさんには究極のカウンターがあるらしい。つまり。いくら足止めが出来たとしても、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()っていうこと。

そしてルビーが、クロにお願いしてまでわたしに伝えたっていうことは、この予想は多分間違ってないはずだ。

どうしよう。今のミユに声をかけても、多分止まらないと思う。

わたしに、ふたりを止めるだけの力があったら…。

……力? 力なら、ある!

わたしは無理矢理立ち上がると、カードホルダーからカードを抜き取り、ルビーに当てる。

 

限定展開(インクルード)!」

 

姿が変わったルビーを構え、わたしはふたりを凝視する。タイミングを外すわけにはいかないから。

 

騎英の手綱(ベルレフォーン)!」

 

ミユが真名開放と共に、天馬ごとバゼットさんに突っ込んでいく。だけどまだだ。このタイミングじゃない。

茂みの中から飛び出した鉄球に拳を添えるバゼットさん。

……? 一瞬、首筋に血がついているのが見えたけど、今はこっちに集中しないと!

そして。

 

斬り抉る(フラガ)…」

 

ここだ!

 

突き穿つ(ゲイ)…」

 

わたしは限界まで身体をひねり上げ。

 

「……戦神の剣(ラック)!」

「……死翔の槍(ボルク)!」

 

バゼットさんと同じタイミングで、わたしは朱い魔槍を投擲した!

 

 

 

 

≪リナside≫

何が、起きたの? 美遊とバゼットは、確かに宝具を発動させていた。

美遊は天馬による突貫、バゼットはおそらく、宝具などの切り札に対してのカウンター。

凛さんが注意を促してたって事は、このカウンターが放たれれば勝ちは揺るがないタイプの攻撃なんだろう。

だけど。

バゼットが宝具を発動させたと思った次の瞬間、宝具の力を込めていたのだろう鉄球が破裂して、バゼットは慌てて回避。

一方の美遊は天馬ごと吹き飛ばされ、なんとか地面に着地と同時にライダーとセイバーのカードが排出、夢幻召喚解除(アンインストール)された。

……そして。いつの間にか立ち上がっていたイリヤの傍に、回転しながら飛んできた[刺し穿つ死棘の槍]が突き立ち、槍からはカードが排出される。

 

「まさかこの様な方法で、私の宝具が破られるとは思いませんでした」

 

バゼットが厳しい表情で言う。

 

『私もまさか、こんな現象が起きるなんて思いませんでしたよ』

「ルビー、どういうこと?」

 

ステッキの姿に戻ったルビーを手に取り、イリヤが尋ねる。

 

『彼女が使ったのは、逆光剣フラガラック。敵の切り札より後に発動しながら時間(運命)をさかのぼり、切り札発動前の敵の心臓を貫く、宝具(エース)を殺す宝具(ジョーカー)。フラガが現代まで伝えきった神代(かみよ)の魔剣です』

「そういうことか…」

 

ルビーの説明に、ようやくあたしもカラクリが判った。バゼットもあたしの呟きに興味を惹かれたらしく、黙ってこちらに視線を移す。

 

「リナ、そういうことって?」

 

イリヤの疑問に答えるために、あたしは順序立てて説明を始める。

 

「まず、フラガラックはルビーが説明したとおりとして、ゲイボルクは刺突では心臓を貫く必中の槍、投擲では心臓限定ではなくなるけど必中の槍、でいいわね?」

『はい』

 

ルビーが頷く。

 

「そしてこの槍もまた、命中したという結果が先にあって発動させる宝具。そうなんでしょう?」

『まったくその通りです』

 

うむ。ならやっぱり、間違いないだろう。

 

「つまり本来なら、フラガラックによって美遊か天馬の心臓が貫かれるという結果があったはずだけど、ゲイボルクが()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

フラガは過去にさかのぼり心臓を貫くはずなのに、槍が命中してなければならず、槍はフラガに命中しなければならないのに、フラガは過去にさかのぼり心臓を貫かなければならない」

「酷い、矛盾ね…」

 

後ろからクロエが応える。

 

「そ。その結果、両方の因果的結末が反発しあい、空間干渉時のエネルギーを残したままお互いを押し返した。

フラガは鉄球へ一気に逆流したために破裂し、槍は効力を失ってカードが排出される。

一方の美遊は、宝具ふたつ分の残留エネルギーの余波で宝具の効果を相殺され、弾かれてしまったってワケよ」

 

もちろんこれは、あたしの推測でしかないのだが。だけど、破裂した鉄球といい、弾かれた(ルビー)からカードが排出された事といい、この推測はあながち間違ってもいないだろう。

 

「……もっとも今回は、イリヤが宝具の撃ち合いに介入したのが偶然功を奏したっていう、幸運によるものだけどね」

 

そう。先程の理屈でいけば、フラガラックとゲイボルクの撃ち合いだった場合、お互いの心臓を貫き合う共倒れという結末になっていたはずだ。ホント、運に恵まれた結果と言っていい。

 

ふうぅ…

 

バゼットがひとつ、大きなため息を吐く。

 

「因果逆転型の宝具同士(ゆえ)、ですか。確かに、今回の様な形ではありませんが、私の宝具の弱点として想定はしていました」

 

そう言いながら腰を屈め、落ちているカードを拾い集めていく。とはいえもちろん、攻撃を許すような隙などあるはずも無い。

バゼットは美遊が所持していたセイバー、そしてイリヤのランサーも拾い集める。

距離のあるあたしや、まだ傷の癒えないイリヤやクロエでは不意討ちも出来ず、美遊もさすがに単独で攻撃するようなマネはしない。

 

「……ですがこんな偶然、二度も起こせるものではありません。

さあ、どうします? 私と戦って、カードを取り返しますか? それとも諦めて、最後のカードを差し出しますか?」

 

そうなのだ。先程のはあくまで偶然の産物。そもそも同じシチュエーションにすら持ち込めやしないだろう。

だけど、諦めるわけにもいかない。カードを差し出すということは、クロエの命を差し出すということなんだから。

 

「リナ」

 

イリヤが左手で首の後ろを押さえながら、あたしに声をかける。……まったく、イリヤは。

 

「美遊! 大きな判断ミスの罰として、クロエの様子を見てなさい!

……サファイアも、クロエの事おねがい!」

「え…、あ! わかった!!」

『お任せください』

 

そしてあたしは右手に拳を作り、それを口許まで持ってきて数秒、考えるような仕草をして。

 

「やっぱり、このままじゃムリね。

夢幻召喚解除(アンインストール)!」

 

ランサー(アメリア)のカードを解除する。

 

「……諦めましたか」

 

そう言って、バゼットはズボンのポケットにカードを仕舞った。

 

「まさか! ただ、ちょっとした芸をお見せしようかと思ってね」

「芸…?」

 

あたしの軽口に、彼女は疑問を投げかける。それを無視してあたしはもう一枚、バーサ-カーのカードを取り出しランサーのカードと重ね、さらにその二枚に右手を重ねて。

 

「クラスカード[ランサー][バーサ-カー]…、二重(デュアル)夢幻召喚(インストール)!!」

 

二枚のカードを、同時に夢幻召喚する。

……かつてガウリイから聞いた、このカードの応用。色々と模索して見つけた使用方法である。あたしだって魔法の品…、魔術礼装を作ってばかりではないのだ。

あたしの今の姿は、アメリアの服装にゼルの岩の肌。マントはアメリアのものだけど、腰にはゼルの剣が下がっている。

更に言えば、もうひとつ宝具の開放が可能になったけど、さすがにバゼット相手に使う気はない。

 

「クラスカードの同時使用…」

「そういうこと。これが、あたしのカードのみの効果なのか、他のカードでも使えるのかは判んないけど」

 

そう言いながら剣を抜き構え。

 

だんっ!!

 

あたしは地を蹴った!

 

「……はっ!」

 

気合と共に剣を振り下ろすと、バゼットは左拳で弾き受け流しながら、右拳を顔面に向けて振り抜いてくる。あたしは左手を離し、肘でその腕を弾き上げながら二歩ほど後ろへ下がった。

すると今度はバゼットが、距離を縮めるために踏み込もうとして。

 

炎の矢(フレアアロー)!」

 

バゼットの()()()()()発動させた炎の矢を、()()()()()()()解き放つ!

 

「くっ!?」

 

さすがに死角の、しかも至近距離から放たれた攻撃は、躱すことも叶わなかったようだ。

更に直撃を受けたバゼットにあたしは、肩から入るタックルを腹へぶちかます。その衝撃に負けた彼女は、後ろへ数歩蹈鞴(たたら)を踏む。

 

「……ッ! やりますね」

 

いやいや、この攻撃に耐えられるアンタの方がとんでもないって。炎の矢は当然のことながら、ゼルの身体にアメリアの敏捷性を加えたタックルを耐えたのだ。どんだけ身体強化や魔術耐性の強化をしてんだって話よ。

……彼女なら火炎球でも耐えられそうな気がするけど、さすがに死なせちゃうと不味いしなー。

いや、前世を考えりゃ今更なのは判ってる。ただ、親が悲しむようなことはしたくないし、何よりイリヤたちの前で、そーいうのはちょっと見せらんない。

そもそも。

 

「ですが、これくらいでは私を倒すことなど出来ません。

これ以上子供を甚振るのも気が引けますが、これも仕事です。もう少しギアを上げさせてもらいますよ」

 

彼女は悪人じゃないのだ。

……戦いにくいわね。

そう思いながら、あたしは剣を構え直した。




今回のサブタイトル
アニメ「デュアル! ぱられルンルン物語」から

今回のフラガラックとゲイボルクの独自解釈ですが、実は別のプリヤ作品用に考えていたものです。その話では、ゲイボルクの代わりに[必中せし白銀の矢(イーオケアイラ)]というオリジナル宝具の予定でしたが、そちらは書くかどうかも判らないのでこちらで採用しました。
因みにこの幸運による結果は、あの福音の影響もあります。幸運値10%upは侮れません。

デュアル(DUAL)の意味は、二元的な、二重の、といった意味です。デュエルとは関係ありません(笑)。

次回「タッチ」
見てくんないと、暴れちゃうぞ!
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