Fate/kaleid caster ドラまた☆リナ   作:猿野ただすみ

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ある人の見せ場が無くなった。


タッチ

≪リナside≫

バゼットがあたしの懐まで踏み込む。慌てて後ろに飛び退くと同時に、バゼットの拳があたしに襲いかかってくる。

 

がぎゃあっ!

 

咄嗟に剣の平たい部分で受け止めたものの、衝撃と勢いで数メートルほど吹き飛ばされた。

彼女が言ったとおり、スピードもパワーもさっきよりワンランクアップしている。

更に追い撃ちをかけようとする彼女に、あたしは地面に手をつき。

 

地撃衝雷(ダグ・ハウト)!」

 

大地の錐がバゼットを襲う。ここで「ハッハッハァ!」なんてバーサ-カー(ゼルガディス)っぽく高笑いしたいとこだけど、さすがにそんな余裕はない。

 

どごぉ!

ずがぁ!

 

発生した錐を破壊しながら姿を現すバゼット。

……なんか、彼女こそバーサ-カーって感じがするのは気のせいだろーか?

 

氷の矢(フリーズ・アロー)!」

 

あたしが牽制に放った術はあっさりと躱され、再びこちらへ詰め寄ってくる。そんな彼女に対して剣を横に薙ぐが、太腿と肘で挟み受け止められた。が、あたしは両手を離し、右腕を畳み肘を彼女の鳩尾へ決め、……ようとしたものの、打点がずれた。一応不意は突けたのだろう、想定外の攻撃にダメージは通ったみたいだが…。

むうぅ、体術もある程度は出来るけど、所詮はある程度。元々、力も体重もないあたしには向いてないので、あくまでもしもの時、身を守る程度である。達人とまではいかないアメリアの域ですら遥かに遠い。

バゼットはお腹を軽くさすると、再び構えをとる。

 

「どうやら体術の心得もあるようですが、剣術に比べれば児戯にも等しいですね」

 

うるさい。判ってらい、そんなこと。

あたしのスタイルは、あくまで魔法剣士。体術はその場しのぎで充分なのよっ!

と、その時。

 

ビビビ…

 

一瞬、不快な音が鳴り、すぐに治まった。

 

「……今の音は?」

「……我に集いて閃光となり

深淵の闇をうち払え

霊王結魔弾(ヴィスファランク)

……さあ、何かしらね?」

 

術を発動させてから、軽口で答えるあたし。

 

「……まあ、構いません。貴女を黙らせた後、他の少女たちに聞くまでです」

 

そう言い切って、あたしへと突っ込んでくる。あたしも負けじと、バゼットへ突っ込み、魔力を纏った右拳を彼女の頭へと振るった。それを、首を傾げるようにして躱し、彼女の右拳があたしのお腹を捉える!

 

「!?」

 

バゼットの表情が、驚きのそれへと変わる。それはそうだ。この瞬間のため、ゼルの物理防御に気づかれないように振る舞っていたのだから。

 

「……我に従い閃光となり

深淵の闇をうち払え!」

「しまっ…!」

青魔烈弾破(ブラム・ブレイザー)!!」

 

至近距離から放った蒼い閃光が、バゼットを貫く。

あたしは急いで距離を置いた。術を受けた左脇腹をおさえ、僅かに気怠そうにしているということは、一応攻撃は通ったということか。

もっとも、衝撃と精神(アストラルサイド)へのダメージを少しだけで抑えてしまってるのが、ちょっとばかし悔しいけど。

……まあ、目的は果たせたし、取り敢えずあたしの出番は終わりね。

気持ちを切り替え後ろに下がると、そこに立っていたのはクロエ。まだ痛々しくはあるけど…。

 

「どうなの?」

「正直まだキツいけど。……まあ、何を狙ってんのか知らないけど、イリヤのサポートくらいなら、ね」

 

バゼットに聞こえないよう、クロエは声量を抑えて答えた。

 

「そっか。なら、後は任せるわ」

 

あたしはクロエの肩を軽く叩きながら、美遊の傍まで下がっていく。

 

「美遊、サファイア、ありがとね」

 

あたしがお礼を言うと、美遊は首を横に振り。

 

「ううん、大したことはしてないよ」

『はい。やはり特殊な存在故か、私との契約は不可能でした。治癒促進(リジェネレーション)の効果はありましたが、それでもあの程度まで回復させるのがやっとという有様です』

「そう…」

 

まあ、これは予想していた事ではある。むしろカレイドステッキの治癒が少しでも効いただけ御の字だろう。

……さて。

 

夢幻召喚解除(アンインストール)

 

あたしは転身を解除する。ハッキリ言おう。もう魔力が心許ないのだ。

知識や技能の問題ではなく、単純に魔力量が発達途上である今のあたしには、魔術礼装開発の後に夢幻召喚して戦う時間は限られている。

だからあたしは時間稼ぎをすることを決め、そのことを、考える素振りをしながら遠話球(テレフォン・オーブ)を通して話し、準備が整ったら一瞬、救援信号を発信するように指示を出しておいたってワケだ。

それに。今のふたり(イリクロ)に、任せてみたくもあった。彼女たちならバゼットに、ひと泡吹かせることが出来るんじゃないか。そう思ったのだ。

クロエがいつもの夫婦剣を投影し、向こう側ではイリヤがルビーを構えている。

次の瞬間、イリヤの物理保護壁が乱れ飛び、それを躱すバゼット。クロエは彼女の動きに合わせ、イリヤが狙いやすいよう誘導と牽制をする。

……そうか、あの魔力の壁を拘束具代わりにしようって事か!

 

「挟撃…、ですか。

ならまずは、その厄介な眼を封じる!!」

 

そう言ってバゼットは拳を地面に叩きつけ、炸弾陣(ディル・ブランド)のごとく土砂を噴き上げた。

……おそらくは、この土煙が治まるまでに、すべてが決するはずだ…!

 

 

 

 

≪third person≫

クロエが二対の夫婦剣を投擲、イリヤは魔力砲を放つ。それをバゼットは、耳を頼りに察知する。

 

(飛来物5!!

水平方向のものは魔力弾。上空4つは…)

 

バゼットを中心に引き合う四振りの剣。

 

「とっておきよ!」

 

クロエはバゼットの背後から斬りかかる。核となる英霊の絶技に転移を織り交ぜた、彼女の得意技。初見での回避は不可能に近い。

故にバゼットは、飛び交う剣を無視してクロエを迎え撃つ。

振り返りながら、クロエめがけ左拳を打ち出し。

 

がぎぃぃん!

 

そこには巨大な斧剣が壁となっていた。

 

(力が、乗らない!? さっきの術の影響か!)

 

リナが放った青魔烈弾破による精神衰弱が技のキレに影響を及ぼす。

 

ざざすっ!

 

深手にこそならないものの、四振りの剣がバゼットを切り裂く。斧剣の投影が解かれると、クロエはすでに遠く離れていた。

 

「本命はこちらですか!!」

 

バゼットは身体をひねり、右の後ろ回し蹴りで魔力弾を弾き、その時初めて、その下を併走するイリヤに気がついた。

蹴りの態勢から戻せないバゼットに近づいたイリヤは、カレイドステッキを彼女のズボンに当て。

 

限定展開(インクルード)!!!」

 

ポケット越しに限定展開を行った。

だが、バゼットも一流の執行者。次の行動は速い。

 

(どのカードを使おうと、発動前に使用者を潰せばいい!!)

 

単純にして明快な答え。イリヤに向けて拳を上から叩きつける。……だが、拳を伝う手応えに違和感を感じるバゼット。そして。

 

「いっっ……たいですね、もーーー!!!』

 

カードが排出され、その姿はイリヤからルビーへと変化す(もど)る。

 

(やられた! これは(アサシン)!!!

本物は---)

 

イリヤは足から滑り込むような体勢で、バゼットの後ろに回り込んでいた。

 

 

 

 

≪イリヤside≫

ルビーを囮にして、わたしはバゼットさんの後ろに回り込むことに成功した。

ここまで来た。あとはただ、()()に触れれば…!!

 

ズキィン!

 

勢いよく立ち上がったわたしの身体に、とてつもない激痛が奔る。魔術礼装(ルビー)の加護が、無くなったから?

そんな、あと少しなのに!

我慢が出来ない痛みじゃない。一歩を踏み出すことだって可能だ。

……だけど。その一歩が遠い。きっと、わたしが一歩を踏み出すより、バゼットさんが行動を起こす方が早いはずだ。

イヤだ! 諦めたくないッ!! リナが、クロが繋いでくれたこの瞬間を、ムダにしたくないッ!!!

わたしがそう願った、その時。

 

「ディム・ウイン!」

 

わたしの後ろに移動していたリナが魔術の風を発動させて、背中からわたしを強く押し出した。

ああ、やっぱりリナは、わたしの合図に気づいてくれたんだ。

風の後押しで一歩踏み出したわたしは、バゼットさんの首の後ろに手を触れた。途端、バゼットさんを中心に、地面に魔法陣が展開されて魔力がほとばしる。

異常を感じたんだろう、バゼットさんはわたしから距離をとって、そして尋ねた。

 

「何をしたのです」

 

だけどわたしは答えない。ううん、身体が痛くて答える気力が湧かない。だけどバゼットさんはそうとらなかったみたい。

 

「答えないのならッ!」

 

そう言ってわたしに襲いかかってきて。

 

ガギイィィン

 

「これ以上イリヤには、触れさせない!!」

 

割って入った美遊がサファイアで防ぎ、弾き返す。

そして。

 

「「チェックメイト(ですわ)、バゼット」」

 

わたしの左側にはリンさん、右側にはオーギュストさんに支えられたルヴィアさんが立っていた。

 

「よがっだ…、三人(ざんにん)ども生ぎでだ…」

 

感極まったわたしは、涙目になって言った。まともな言葉になってないのも構わない。

 

「そりゃこっちのセリフよ」

 

そう言ってわたしの頭を撫でるリンさんに、とても安心感を感じる。

 

「全くですわ。しかも遠坂凛(トオサカリン)の仕込みに気がつき、(あまつさ)え発動にまで持って行くとは…」

 

ルヴィアさんが褒めてくれるけど、わたしひとりの力じゃきっと無理だった。

クロがバゼットさんの気を引き、リナが時間稼ぎとわたしの後押しをしてくれて、ミユが庇ってくれたから、わたしは今、こうしていられるんだ。

 

「仕込み…。

首筋に何らかの魔術の発動を感知。それ以降、腹部の激痛が止まらない…。

一体、何を…」

 

やっぱり。バゼットさんの首筋に、血で描かれた紋様の正体は…。

 

「[死痛の隷属]

主人(マスター)の受けた痛みを奴隷(スレイブ)にも共有させ、主人が死ねば奴隷も命を落とす。

とある貴族が用いてた、古い旧い呪いよ」

 

クロとおんなじ、痛覚共有だ!

 

 

 

 

≪リナside≫

やっぱり、凛さんの仕掛だったか。首筋に赤いものがチラッと見えたとき、屋敷の中でバゼットの後ろから凛さんが、ガンドの連射をしてたことを思い出させた。

つまり、ガンド(それ)に紛れ込ませて呪術入りの宝石も一緒に飛ばしていたのだ。

そしてイリヤが、痛めた様子のない首の後ろを押さえながらあたしの名前を呼んだことで、彼女もまた凛さんの仕掛に気づいていたのだと判った、というわけだ。

……しかし凛さん、相変わらずハッタリをかましてるなー。

クロエの時にも思ったけど、あの儀式レベルでは死を伝えるほどの強力な呪いたり得ない。……それともそう思い込ませることで、何か有利に運ぶ算段でもあるのか。

そう思ったとき、凛さんの発したセリフでその疑問も氷解した。

 

「……つまりこれで、フラガラックは使えない!!」




今回のサブタイトル
あだち充「タッチ」から

というわけで、見せ場が無くなったのはルヴィアでした。

クロには魔法少女の適性が無いということにさせていただきました。そうすれば、カレイドステッキを使って魔力供給をしない理由にもなるので。

次回「ねらわれるもの」
見てくんないと、暴れちゃうぞ!
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