Fate/kaleid caster ドラまた☆リナ   作:猿野ただすみ

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洋菓子好きな、彼女が出ます。


ねらわれるもの

≪凛side≫

「……つまりこれで、フラガラックは使えない!!」

 

私の言葉を聞き、バゼットが歯がみをしながら睨んできた。それを受け止めつつ、更に説明を続ける。

 

「フラガラックは相手の切り札より後に発動し、時間を遡って相手の心臓を貫く。

『切り札発動前に使用者は死んでいる』という事実を後付けでつくり、発動の事象そのものをキャンセルする魔剣…。

だけどもし、相手の死と同時にバゼットも死ぬとしたら?

『フラガラックを撃つことにより、フラガラックを撃つ前にバゼットが死ぬ』という矛盾…!! 因果の葛藤(コンフリクト)が発生する!!」

 

……って、何かしら。みんなの反応が微妙な気がするのは。

 

「それって、イリヤのフラガラック破りと似たようなもんじゃない」

「は?」

「それは、どういうことですの!?」

 

クロの発言は、私たちにとってはまさに青天の霹靂だった。そしてその説明はリナが担う。

 

「美遊が宝具をぶっ放してバゼットがフラガラックを使ったんだけど、イリヤがフラガラックに対してゲイボルクの投擲使用したのよ。

で、どちらも命中するって因果のせいで葛藤(コンフリクト)が発生、お互いを押し返して、ついでに美遊の宝具も無効化されたってワケ」

 

何よ、そのふざけた破り方。いや、私のも言えたもんじゃないけど。

 

「……まあ、因果逆転故の矛盾を逆手にとったという意味では、確かに似てますわね」

 

確かにルヴィアが言うとおりだけど。なんだか私が真似したみたいになってるんですけど。先に仕掛けたのは私なんですけど。

 

「あー…、えーと、とにかくそういう事! 術は以前採取したイリヤの血を使って、念のために宝石に込めておいたのよ」

 

何だか締まらなくなったけど、言いたいことは言ってやったわ!

……何、何なのよ。リナのあの、冷ややかな視線は!? まるで全てを見通すかのような…。

……ハッ!? そういえば彼女の前世は、130まで生きた異世界の魔道士。それじゃもしかして、「死を伝える」っていうのがブラフだって気がついてた? しかもおそらく、クロに使ったときから?

うっわ! ハズカシー!! 顔が上気してくるっ!!!

思わず、頭を抱えてうつ伏せに倒れ込みたくなる衝動を、なんとか踏み止まる。

……まあ、リナも駆け引きに長けてるようで、ここで余計なことを言う気は無いみたいだし、他のみんなも、私が跋の悪い思いをしてるだけだと解釈してるみたいで、助かってはいるが。

兎にも角にも私の羞恥は置いといて、今はこれで押し通してバゼットとの交渉に持ち込めれば…。

 

「50点ですね」

 

え…!?

 

「確かにこれで、フラガは封じられたのかもしれません。……ですが、それだけです。そんなもの、死なない程度に殴ればいい。その気になれば、自分の痛覚など無視できる」

 

何、この脳筋女は!

くっ、仕方が無い。出来れば使いたくなかったけど、最後の切り札よっ!

 

「そう。なら加点をお願いするわ!」

 

そう言って私は、大きな羊皮紙を広げてバゼットに突きつける。

 

「……それは?」

「この町の地脈図。

以前、地脈の正常化を行ってね。その経過観察のため撮った、レントゲン写真みたいなものよ。

……わかるかしら? 左下の方」

 

言われて視線を移したバゼットの表情が険しくなる。

 

「地脈の収縮点に、正方形の場…? まさか…」

「前任者ならわかるわよね。

正確には正方形ではなく立方体。虚数域からの魔力吸収…。

そう。八枚目の、リナのも入れれば十一枚目のカードよ!」

 

みんなが驚愕の表情に変わった。

 

「地脈の本幹のど真ん中。協会も探知できなかったんでしょうね。

カードの正確な場所を知っているのは私だけ。地脈を探ることが出来るのも、冬木の管理者である遠坂の者だけよ」

 

私は地脈図を折りたたみ、決めの一手を打つ。

 

「貴女の任務が『全カードの回収』だとするのなら。

コレも数に入ってるんじゃない?」

 

 

≪リナside≫

結局はそれが決定打となった。バゼット…、いや、バゼットさんは現場判断を超えた事態と判断して一時休戦、協会の指示を仰ぐそうだ。

奪われたクラスカードは、凛さんとルヴィアさんが交渉をして[キャスター][アサシン][バーサーカー]の三枚を返してもらった。

凛さんは「バゼット相手にこの結果なら充分勝ち」って言ってたが、イリヤは悔しそうにしている。かくいうあたしも悔しくはあるが、凛さんの言うことも充分に理解できた。

……だけど、気になったこともある。それは美遊が呟いた言葉。

 

「八枚目のカード…? そんなもの、あるはずがない」

 

彼女が何を思って呟いたのかは判らない。クラスカードの関係者らしいので、何かしら確証があっての言葉なんだろうけど。

……待てよ? 確か聖杯戦争に呼び出される英霊は、七騎だったはず。それ故に八枚目はあり得ない?

でも、あたしのカードの事もあるし、そもそもこのシステムを知っているのなら、美遊は聖杯戦争の関係者って事に…。

あー止め止め! 推測の域を出ないことをいくら考えたって仕様がないし、美遊に尋ねたところで答えてくんないだろう。

いざとなれば無理矢理にでも聞き出すけど、今はまだ、美遊の意思を尊重してあげたいし、ね。

 

 

 

 

 

ようやく落ち着いたあたしたちは、それぞれの家路についた。

……とはいってもルヴィアさんと美遊はここが家だし、凛さんは実家に帰るのかは知らないけど、事後処理でここに残るはずだ。イリヤとクロエは向かいの家なので、まともに家路と言えるのはあたしくらいなのだが。

 

「あっ、そういえば帰りが遅くなったみたいだけど、今回は大丈夫なの?」

 

イリヤが自宅のドアの前で振り返り、尋ねてきた。

 

「心配してくれてありがと。でも今回はメール入れたから大丈夫よ」

 

実は地下通路を移動中にメールを飛ばしたのだ。魔術師ではないオーギュストさんが、もしもの時のために携帯を使えるようにしておいたみたいだ。グッジョブ、オーギュストさん!

 

「じゃあね。イリヤ、クロエ」

「うん、じゃあね」

「リナ、気をつけてねー」

 

別れの挨拶を交わしたあたしは、ひとり歩き出した。

歩き出してから数分、小さな十字路を右に折れようとした、その時。

 

ぞわり

 

全身を泡立つような悪寒が奔る。……これは、殺気!?

慌てて気配を感じた方へと視線を移す。その方角には、1㎞ほど先に集合住宅がある。

まさか、そんな遠くから…? 確かに視覚で捉えるだけなら、高性能のスコープでもあれば数㎞先からだって観察することは可能だろう。

しかしまさか、そんな遠くから殺気を感じさせることが出来るなんて…。しかもこれ、ワザと放った殺気だ。

考えてもみてほしい。1㎞ほど離れたところからあたしに届くような殺気を放った人物が、果たして並の存在だろうか。答えは否である。

だが同時に、そんな人物があたしに気取られるような真似をするのか。これもまた否である。

なら考えられることは、あたしの観察。そして、あたしのことを試したのだろう。その証拠に、あたしがその方角を見てすぐに、あれほどの殺気がすうっと退いていったのだから。

---いったい、何だったんだろうか。

その疑問に答える者は、この場にはいなかった。

 

 

 

 

 

翌日。イリヤから、ルヴィアさんの所へ陣中見舞いに行くけど一緒に行かないか、と誘いがあった。

とりあえず陣中見舞いに対してツッコミを入れつつ、一緒に行くと返事をして、一旦衛宮家へ行くこととなった。

 

「お待たせー」

「あっ、リナ!」

「遅いわよー」

 

すでに扉の前で待っていたイリクロと挨拶を交わす。

そしてイリヤは扉を開けると。

 

「ママー、セラー、リナが来たよー」

「判ったわー」

「今行きます」

 

奥へと呼びかけ、アイリさんとセラさんが返事を返した。

そっかー、ふたりも行くのかー。んんみゅ、セラさんはいいとして、アイリさんは大丈夫なのだろうか。なんか変なこと(のたま)いそうで怖いんだけど。

 

 

 

 

 

「本当にぺしゃんこになっちゃったのねー。

あはははははは…」

「お、奥様! 笑うところではありません!」

 

うん。やっぱり空気を読むの「く」の字も無かったわ。

エーデルフェルト邸へとやって来て、アイリさんが一番最初に発したのが今のセリフである。

 

「何でも、ボイラーの爆発事故があったとか…」

 

気を取り直したセラさんが、そう言ってお見舞いの品を差し出し、美遊が受け取った。

なるほど。そういう設定で落ち着いたのか。

 

「ルヴィアさん、怪我はもう大丈夫なの?」

「おかげさまで、と言うべきかしら。

稲葉リナ(イナバリナ)の応急手当の甲斐あって、もうなんともありませんわ」

 

小声で尋ねるイリヤに答えるルヴィアさん。

おう、それこそ治癒(リカバリィ)をかけた甲斐があったってもんよ。

 

「今はあのマッシブ女にどう恩を返すか、考えるのが楽しくて楽しくて。

とりあえず屋敷の損害分を協会に請求しつつ、回り回ってヤツの負債になるよう、ネゴと根回しを…」

 

……意趣返しも程々にしとこうね、ルヴィアさん。いや、あたしも昔、よくやってたけど。

 

「そういや昨日、ミユたちはどこに泊まったの?」

「新都の方にホテルを借りてて…。しばらくはそこで寝泊まりするつもり」

 

クロエの疑問に答える美遊。さすがお金持ち、と思ったらルヴィアさんが、ホテルを一棟貸し切ろうとして断られたので株を買い占めるなどと曰っている。

何だかルヴィアさん、段々ダメな金持ちになってるような。いや、もしかしてこっちの方が本来の姿なのか?

 

「わざわざホテルなんてとらなくても、みんなウチに泊まればいいのにねぇ」

「「「「えっ!?」」」」

 

アイリさんの爆弾発言にあたしとイリヤ、セラさん、凛さんが思わず聞き返す。

いや、凛さんとルヴィアさんなんか家に泊めたら、士郎さんの貞操が危険じゃない! ……とか思ったら、凛さんは。

 

「どうぞお気遣いなく。私は実家が別にあるので大丈夫です。

ルヴィアもホテルの方が気を遣わないでしょうし…」

 

ごめん、凛さん。そうだよね。少なくとも凛さんは、こういう気遣いが出来る人だったわね。ルヴィアさんだってさすがに…。

ん? ルヴィアさん?

 

「いけません。まだ早すぎます、お義母(かあ)様!!」

 

何が!?

 

「というか、順番が逆でしてよ、お義母様ッ!!」

 

何の順番よ、何の!!?

 

「でも、本人たちの同意の上であるならば、多少本来の手順と異なっても、それは…」

「いーかげん黙りやがれ、この発情牛乳女がーーーッ!!」

 

すっぱあぁぁぁん!

 

スリッパで頭を叩く乾いた音が、敷地内に響き渡った。

くうぅ、忘れてたわ。ルヴィアさんって方向性は違うけど、アイツみたいに面倒くさい性格してるんだった。

 

---追記。美遊は一日だけ、衛宮家にお泊まりすることになりました。

 

 

 

 

 

はあぁ、疲れた。

帰り道、あたしは小さくため息を吐いた。結局あの後、あたしは凛さんと一緒に、ルヴィアさんのツッコミ要員となってしまったのだ。イリヤたちは一歩退いて、そんなあたしたちを見てたけど。

おいコラ、イリヤ! アンタはこちら寄りのキャラでしょーが! 何、ここぞとばかりに傍観決め込んでんのよ!

……なんて思いながら、暴走状態のルヴィアさんを諫めていた。これで疲れないわけがないだろう。

 

「……で? いーかげん出てきたらどうなの?」

 

昨日と同じ十字路で立ち止まり、あたしは声をかける。すると集合住宅の方へと続く道のひとつ先の角から、年齢不詳の綺麗な女性が現れた。

 

「……アンタは?」

「久宇舞弥、といいます」

「変わった名前ね。因みにどういう字を書くのかしら?」

 

あたしはおどけて尋ねてみた。すると。

 

「久しいに宇宙の宇、踊りの舞に弓偏にさんずいではない(なんじ)です」

 

うわっ、マジで答えたよ。半分以上冗談のつもりだったのに。しかもこの雰囲気からすると、聞かれたから答えただけって感じなのよね。

 

「それじゃあ舞弥さん、何の用かしら? あたし、貴女から殺気を向けられるような覚え、ないんだけど」

 

そう。それまであたしをつけてきた彼女は、あたしが十字路にさしかかったときに強烈な殺気を飛ばしてきたのだ。

 

「失礼ですが、貴女を試させていただきました。稲葉リナさん」

「なるほど。つまり…」

 

あたしは小さく呟いて。

 

烈閃槍(エルメキア・ランス)!」

 

ぼひゅっ!

 

烈閃槍を放った後方には、小さなカメラを取り付けられたネズミが一匹、気を失っていた。

 

この子(ネズミ)を使って、あたしの様子を伺ってたんでしょ?」

「気づいていましたか」

「そりゃあ、昨日のあの殺気を受けたら、少しは周りを気にかけるわよ」

 

平和な日本とはいえ、バゼットさんとあんな戦いを繰り広げたあとだ。その時の緊張が続いていたのも大きいだろう。

 

「それで、どうしてそんなことを? 多分、昨日のアレをやった人が関係してるんだろうけど」

「はい。

……彼は驚いていました。平穏な日常を過ごすローティーンの少女が、殺気に反応するだけでなく、その出所にまで当たりをつけていた、と」

 

そりゃあ前世では、切った張ったも数え切れないほど潜り抜けてきたからね。

 

「その上で再度の確認と、それをクリアしたなら…」

 

そこまで言って彼女は、ジャケットのポケットから一通の封筒を取り出し。

 

「この手紙を貴女へ届けるようにと、指示を受けました」

 

指示、ね。

 

「読み終えたら、手紙は…」

「燃やしちゃうんでしょ? ま、情報を洩らさないための常套手段ね」

 

言いながらあたしは、手紙を受け取る。

 

「では、私はこれで失礼します」

「あ、ちょっと…」

 

踵を返し、立ち去ろうとする舞弥さんを呼び止める。

 

「なんですか?」

「あ…、ごめん、何でもない」

 

振り返った舞弥さんを見て、ふと気づいてしまった。彼女に感じていた違和感の、その正体。それは、人間性が感じられないこと。

自我が希薄で、まるでスィーフィード世界のホムンクルス、主にコピーと称されていた、こちらでいうクローン人間によく似たそれのようなのだ。

彼女に何があって、そうなってしまったのかは判らない。ただ、それを聞くのは失礼なことだと思ったのだ。彼女自身は、そんなことは思わないのかもしれないが。

去って行く舞弥さんを見送った後、複雑な感情を胸に残しつつ、あたしは再び家路へとつくのだった。




今回のサブタイトル
PCゲーム「うたわれるもの」から

舞弥さん登場です。当然、彼女が渡した手紙の送り主はあの人です。
というわけで。

次回「魔術師殺し」
見てくんないと、暴れちゃうぞ!
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