Fate/kaleid caster ドラまた☆リナ   作:猿野ただすみ

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プリズマ☆イリヤ、新作映画制作決定!


魔術師殺し

≪リナside≫

日曜日。あたしはイリヤたちとの買い物、……海で着るための水着選びを断り、ひとり、ある場所へと向かっていた。それはあの女性、久宇舞弥さんに渡された手紙に記されていた場所。

手紙には具体的な場所は伏せつつ、ただ住所と、そこで会って話がしたいという旨が書かれていた。もちろんひとりで来るように、という指示があり、且つ、あたしの両親についての詳細まで書かれていたのだ。

相手はあたしの周辺についても、しっかりとリサーチ済み。コレでは、言われたとおりにするっきゃない。

とーぜん、それなりの準備はしている。クラスカードはもちろんのこと、魔術礼装の黒鍵(改造済み)に遠話球(テレフォン・オーブ)、魔法を込めた硝子玉、影縛り(シャドウ・スナップ)等に使うための小刀、そして身を守るための宝石の護符(ジュエルズ・アミュレット)も持ってきた。

大袈裟と言うなかれ。この世界にもバケモノ級の人間がいるのは、先日のバゼットさんとの闘いが証明している。しかもあたしの見立てでは彼女、アレでまだ手加減していた。

だからこそ、油断するわけにはいかないのだ。

 

 

 

 

 

頭の中に叩き込んだ住所の場所までやって来て、思わずあたしは、あんぐりと口を開けてしまった。

だってそこは、どう見ても武家屋敷である。なんでまた、こんなとこに…。

あと、すぐ近くに[藤村組]と書かれた屋敷もあったけど、……まさか、ね?

とりあえず、気を取り直してあたしは、その屋敷の門を潜り抜ける。すると。

 

カラカラカラ…

 

呼子(よぶこ)が鳴る音が屋敷に響いた。けれどあたしは、何かに触れたり引っかかったりなど、一切していない。おそらくは、侵入者を知らせる結界が作動した、ということなんだろう。

あたしが扉の前に立つと、何かするまでもなく。

 

ガラガラ…

 

引き戸は開かれ、舞弥さんが出迎えた。

 

「お待ちしてました。どうぞこちらへ」

 

あたしは言われるまま、彼女の後をついて行く。

……しかし、家の中に通されるとは思わなかった。てっきり、人気のない公園とか、そんな場所で会うことになるとばかり思ってたんだけど。

ううみゅ…。これだと、いざという時に逃げるのに困る。特に、玄関で靴を脱がなくてはならないのが痛い。相手も、そこら辺を考えてのこのチョイスなんだろう。なかなか厄介な…。

庭に面した廊下を通り、一枚の障子の前で舞弥さんが立ち止まる。

 

「どうぞ」

 

促されたあたしは、一度だけゆっくりと深呼吸をしたあと、意を決して障子を開けた。

そしてあたしは、またもや開いた口が塞がらなくなった。

そこにいたのは、ボサボサの黒髪に無精ひげを生やし、煙草を燻らせる、黒いスーツ姿の男性。その男性(ひと)は、あたしがよく知る人で。

 

「やあ、リナちゃん。久し振りだね」

「…………き、切嗣(きりつぐ)、さん?」

 

衛宮切嗣。イリヤのお父さんだった。

 

ばちいぃん!

 

数秒ののち、あたしは両手で挟み込むように、自分の頬を思いっきり引っぱたいた。うん、痛ひ。

けれどそれで、意識の切り替えはできた。ハッキリ言って、さっきからの予想外の出来事に、飲まれかけてたのだ。

それに、そこにいたのは切嗣さんだけではなかった。切嗣さんのさらに後ろ。立ったまま、同じように煙草、但し葉巻を燻らせる、長い黒髪で眉間に皺を寄せた男の人がいる。少なくとも、人種的な意味での日本人ではなさそうだが。

ともかく、あたしはまず切嗣さんに挨拶を返すことにした。

 

「お久しぶりです、切嗣さん」

 

そう言ってお辞儀をすると、感心するように切嗣さんはうなずく。

 

「なかなか、気持ちの切り替えが早いね」

 

そりゃそーだ。気持ちの切り替えが上手く出来なきゃ、スィーフィード(あの)世界で、130まで生きることは出来なかっただろう。……それに。

 

「切嗣さんは、そういうのの確認がしたかったんでしょ?」

 

あたしがおどけて言うと、切嗣さんは軽く笑みを浮かべ。

 

「どうやら、全てお見通しみたいだね」

 

なんて言った。とはいえ、もちろん全てではないし、切嗣さん相手に見栄を張る気もない。

 

「それは買いかぶりです。ただ、アイリさんからあたしのことを聞いて、あたしのことを試してるんだろうなーって事くらいですよ」

 

そう。おそらく切嗣さんは…。

 

「……その通りだよ。異世界の魔道士、リナ=インバースくん」

 

やっぱり。衛宮家のみんなは、士郎さんを除いてこのことを知ってるはずだから、こういうことが起きたっておかしくはないのだ。

切嗣さんにそこら辺のことをもう少し聞きたい、けどその前に。

 

「……あの」

 

あたしはもう一人の男性に声をかける。

 

「間違ってたらすみませんが、もしかして、ロード=エルメロイⅡ世ですか?」

 

今まで表情を崩さなかった彼の眉が、ピクリと動く。

 

「何故、そう思ったのかね?」

「切嗣さんがあたしの前世のことを言ったのに、あなたはなんのリアクションもとらなかった。かと言って、切嗣さんと同じ席には座らず、その背中を睨み続けているってことは、舞弥さんとは違って仲間ってわけでもない。

なら。あとは宝石翁か、代理人であるロードの可能性が高い。でもあなたは、(おきな)と呼ばれるような歳には見えないわ。だからあなたは…」

「なるほど。見事な洞察と推察だ。だが、魔術で若い姿を保っている可能性もあるのではないかね?」

 

ふぅん。まるで講師みたいね。いや、魔術協会が魔道士協会みたいに講義を行ってるなら、教鞭をとる講師がいるのも普通か。

とりあえずはその疑問に答えるとしよう。

 

「ええ、その可能性も充分に考えられるわね。

けれど人間というのは、見た目の姿に影響を受けてしまうわ。例えそれが、根源を目指す魔術師であろうとも。

ならば、あなたがキシュア・ゼルレッチ・シュバインオーグだとしたとき、宝石翁という二つ名が魔術師の間で定着するとは考えにくいと言える。もちろん、言う人は言うでしょうけど、どちらかと言えば少数派でしょうね」

 

そこまで推論を重ね、最後にこう締め括る。

 

「そもそもあなた、ルビーみたいな、はためーわくな性格してないし」

 

あたしの解答に意表を突かれたのか、彼は毒気を抜かれたような表情になり、やがてククク…、と笑いを噛み殺す。

 

「まさか、そのような解があるとは思わなかった。

ああ、確かに私には、あの性格を真似することは出来まい」

 

どうやら、あたしの回答は気に入っていただけたようだ。

 

「そうだ。私はロード=エルメロイⅡ世。時計塔の現代魔術科講師でもある」

 

講師っていうあたしの予想も当たってたわね。

 

「ウェイバーくんも、リナちゃんの事は気に入ったみたいだね」

 

切嗣さんが声をかけると、ロードはきつい表情になった。ただ、同時に戸惑いの気配も滲ませている。

 

「貴様も随分と丸くなったものだな、魔術師殺し」

 

ロードは皮肉を込めて言った。……魔術師殺し?

 

「君も、別の意味で[魔術師殺し]だろう?

まあいい。それよりも、リナちゃんへの説明が必要なんじゃないかな?」

「……そうだな。それで君は、何故ここに呼ばれたかはわかっているのかね?」

 

そうあたしに尋ねるロード。

ふむ。当然さっき答えた、「あたしを試すため」以外の回答を求めてるのよね。

そうね。まず切嗣さんは、ロードの事を「ウェイバー」と呼んでいる。彼がⅡ世を名乗るからには、その名を継ぐ前の本当の名前があるはず。そして「ウェイバー」が本当の名前なら、それを知ってる切嗣さんとは、軋轢があろうとも旧知の仲、ということ。

……ここからは憶測になるが、ふたりに共通したもの、それは…。

 

「アイリさんと約束してた、聖杯戦争の話、かしら?」

「正解だ」

 

やっぱり、か。

第四次聖杯戦争。アイリさんは未然に終わったって言ってたけど、それってあくまで、始まらなかったって意味でしかない。つまり、準備段階までは移行していた可能性もあるわけで。

 

「切嗣さん。ロード。おふたりは聖杯戦争の参加者だった…、ううん、参加者になるはずだったって事でいいんですか?」

 

あたしの問いに、ふたりはしばし沈黙し、ロードが切嗣さんに目配せをする。その視線には非難の色も含まれているが、それ以上に、切嗣さんに委ねる意味合いが強いように思えた。

切嗣さんがひとつ、ため息を吐く。

 

「……ああ、その認識で間違いないよ。

リナちゃんはアイリから、何処まで聞いているんだい?」

 

切嗣さんの問いに、あたしは少しだけ考え。

 

「……第四次聖杯戦争は未然に終わったって事。大聖杯と小聖杯のシステム。御三家の事。あとは七騎の英霊を召喚して戦わせる、って事かな?」

「……ということは、イリヤの事も」

「ええ。直接聞いたわけじゃないけど、アイリさんの事もね」

 

ふたりは、大聖杯に英霊の魂をくべるための器、小聖杯。それを考えると、未だに胸クソが悪くなる。

凛さんとルヴィアさんが、魔術師の中では如何に良識派なのかがわかる事例だ。

 

「そうか…。

そういえばイリヤが関わってる事件、エーデルフェルトも関係しているんだね?」

「え? エーデルフェルト、ルヴィアさんがどうかしたの?」

 

切嗣さんが魔術の世界に関わりがあるのなら、エーデルフェルト家を知っててもおかしくはない。ただ、わざわざここで名前を挙げる理由だってないはずなのだ。

 

「僕たちとは直接関わりはないんだけどね。エーデルフェルトは、第三次聖杯戦争の参加者なんだ」

 

な、エーデルフェルト家も聖杯戦争の関係者なの!? ……まさか!?

あたしがロードを見ると、彼は小さく首を横に振り言った。

 

「……あのふたりをクラスカードの回収に向かわせたのも全て、宝石翁の差し金だ。宝石翁にどのような思惑があるのか、あるいはただの偶然か…。私は関知してはいない」

 

どうやらロードも、宝石翁に深く関わりたくはないみたいだ。直接知ってるワケじゃないけど、聞いた話とルビーの性格を考えると、あたしだって関わるのはご遠慮願いたい。

 

「すまない、話が逸れてしまったね。それでリナちゃんが聞きたいことは何かな?」

「……第四次聖杯戦争で何があったのか。封印されてた方のイリヤ…、クロエを救うためなのはわかるんだけど、その結末についてはわからない。イリヤ、そしてクロエが、今をいられる理由を知りたいの。あたしはふたりの友達だから。

……それに、聖杯戦争にこそ、今、あたし達が巻き込まれてる事件を解決するヒントがある。あたしはそんな気がするのよ」

 

あたしは、切嗣さんの目を見つめ訴える。

 

「何故、そう思ったのかね?」

 

ロードは、何かを見定めるかのようにあたしを見る。

 

「……宝石翁に指示されて回収したクラスカード。あたしの物を除いて枚数は七枚。まあ、八枚目が見つかったみたいだけど、今はそれを置いといて。これって、召喚されるサーヴァントの数と同じよね?

そしてその内訳は、[セイバー][ランサー][アーチャー][ライダー][キャスター][アサシン][バーサーカー]の七騎。これっておそらく…」

「……ああ、聖杯戦争に召喚された英霊に振り分けられる、基本のクラスだ。英霊はクラスの型に嵌め、他の能力を削ぎ落とすことで、ようやく我々が召喚することが出来る様になる」

 

やっぱり、か。黒化していたとはいえ、ランサーで顕界していたアメリアの戦闘が制限されていたときに、なんとなく思ってはいたのだ。だけど、これでより、確信に変わったわ。

 

「ロードの説明のとおりなら、クラスカードはおそらく、()()聖杯戦争に使用されたアイテムよ!」

「「!!」」

 

ふたりは驚きの表情を浮かべた。

 

「亜種、聖杯戦争か…」

「亜種聖杯戦争?」

 

あたしが疑問を口にすると、切嗣さんがそれに答えてくれる。

 

「亜種聖杯戦争は、冬木の聖杯戦争を模倣したものだよ。カードを使用したものは聞いたことがないけど、確かにその可能性は否定できないな」

「それが事実ならば、リナ嬢の言うとおり冬木の聖杯戦争に、解決のためのヒントが存在するかも知れん」

 

ロードの見解に、切嗣さんは軽く頷いて。

 

「わかった、話してあげるよ。十年前の、未然に終わった『第四次聖杯戦争』の事を」

 

あたしに向かって、そう口にした。




今回のサブタイトル
衛宮切嗣の裏世界での呼び名から

というわけで、久々の更新です。何だか話がまとまらなくて、しばらく放置してました(またかい!)。
次回もまた、更新が遅れると思いますが、見捨てず待っていて下さい。

次回「Fate/ZERO -Kaleidoscope-」
見てくんないと、暴れちゃうぞ!
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