Fate/kaleid caster ドラまた☆リナ   作:猿野ただすみ

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綺礼を動かすのが大変です。


Fate/ZERO Requiem -Kaleidoscope-

≪リナside≫

「切嗣さん、ゴメン。ちょっと質問」

「ん、何かな?」

「冬木に来てから、イリヤとアイリさんの話題が出て来ないんだけど」

 

そう。切嗣さんはイリヤとアイリさん、もっと言えばセラさんリズさんとも一緒に日本へ来たはず。なのに冬木での話には、切嗣さん本人と舞弥さん以外のアインツベルン陣営は登場しないのだ。

 

「ああ…。彼女達はこことは別の都市にある、封印指定の魔術師の許に匿って貰ったんだ。アイリもイリヤも、小聖杯の機能があったからね。敗退した英霊はなんとかなる算段はあったけど、小聖杯が近くにあったらどうなるかわからないだろう?」

「あ、なるほど…」

 

ふむ、確かに。どう対処しようとしたのかは知んないけど、イリヤやアイリさんが近くにいた場合、誤って彼女達の中にある小聖杯が、敗退した英霊を取り込んでしまう可能性が十二分にある。ある程度覚悟できているだろうアイリさんはまだしも、当時赤ちゃんだったイリヤにそれは、あまりにも酷であろう。

 

「それじゃあ話を続けるよ?」

「はい。お願いします」

 

あたしが頷くと、切嗣さんは再び第四次聖杯戦争について語りだした。

 

 

 

 

 

舞弥さんが、ケイネスの婚約者とロンドンへ向かっている頃。切嗣さん達は遠坂家へと出向き、時臣さんの妻、葵さんに時臣さんの死を告げ、同時にしばらくこの街を離れるように告げる。敵陣営が何を仕掛けてくるかわからないからだ。

葵さんは気丈ではあったものの、何かの拍子に気持ちが折れてしまいそうな脆さもあった。それに気づいた切嗣さんは、雁夜さんに付き添うように促す。保護した子供たちも共にいれば、葵さんの心の支えにもなるし、僅かな間とはいえ親子三人が一緒にいられるという配慮を考えてのことでもあったらしい。

ただし、子供達には聖杯戦争の事は伏せていたそうだ。もとよりこれを、聖杯戦争の終焉にしようと臨んでいるのだ。余計なことは話さない方がいいという判断だったのだろう。

 

こうしてアインツベルン陣営には切嗣さんとウェイバーさん、そしてそれぞれのサーヴァントが残ったわけだが、その頃からウェイバーさんの様子が変わってきた。

ロード自身の補足によると、直接ではないものの切嗣さんがケイネスの死に関わったこと、ケイネスを殺したアサシンのサーヴァントとその命令を下した言峰綺礼への恨み、そして切嗣さんの提案を受け入れてしまった自身への嫌悪に苛んでいたそうだ。

そしてそれは現在も続いているらしい。最初に切嗣さんに見せた、嫌悪感とそれ以外の複雑な表情や態度はそれが原因だったようだ。

……しかし、それも仕方のないことだろう。人である以上、感情の整理(コントロール)は出来ても、それを打ち消すことはなかなか出来るものではない。ましてや彼が抱いた感情は、そのどれもが、人として抱いてもおかしくないものなのだから。

……話が逸れたが、だからといって彼が切嗣さんから離反することはなかった。自分が出した決断だというのもそうだが、聖杯に対しての危機感が彼を辛うじて冷静でいさせたのだろう。イスカンダルの存在も大きかったのかも知れない。

 

ケイネスとの闘いから三日。残る敵、言峰綺礼と二人の英霊(サーヴァント)、19人のハサン・ザッバーハの誰かとディルムッドに動きはなかった。

しかし切嗣さん達も、ただ黙って待っていたわけではない。切嗣さんはイギリスからとんぼ返りしてきた舞弥さんとともに、聖杯の降臨地の検索に当たった。そもそも聖杯戦争を終わらせようとしている彼らは、聖杯が完成せずとも、顕現した段階で破壊が出来るように目星を付けておきたかったのだ。

最初の地は柳洞寺。第二回は現在の遠坂邸。第三回は冬木教会。そして次に目されていたのは、イリヤ達が地脈の正常化を図ったという、あの大空洞だったようだが…。

しかしもう一カ所、可能性のある地を見つけ出す。そこは市役所の建設現場だった。

 

その2カ所に絞り込み、候補地の一つ、市役所の建設現場へ赴いたその先に、何と言峰達が待ち構えていた。

ランサーがライダーを襲い、その隙にアサシンがウェイバーさんを襲う。更に言峰が切嗣さんと対峙、セイバーは切嗣さんを守り、ウェイバーさんは舞弥さんの援護で何とかやり過ごすものの、英霊相手に身を守るので精一杯の状況だった。

切嗣さんは言峰に問う。聖堂教会の人間であり魔術師でもある彼に、聖杯戦争に参加する理由を。

曰く、彼は人が美しいと思うものを美しいと感じず、他者の苦痛にこそ喜びを感じる、性質が悪の人間である、と。

当初は切嗣さんが同質の人間だと思っていたようだが、すぐにそれが間違いだと気づき落胆をする。そして腹癒せとばかりに切嗣さんの邪魔をし、聖杯によってこの世界に災いを撒き散らして、人々の不幸を見て滅んでいくことを望むようになったそうだ。

 

── 下らない理由だと思うかい?

 

そう聞いてきた切嗣さんに、あたしは首を横に振る。あたしも、そんな人物を知っていたから。

生まれつき目が見えず、何としてもその目で世界を見たいと精霊魔法・白魔法・黒魔法の研究をし、聖人と呼ばれる裏では非道な実験を続け、やがてその内に眠る魔族の王にその身を乗っ取られた、そんな男(赤法師)を。

 

言峰が彼と同じとは言わないが、こちらが下らないと思えたからといって、それが彼らには耐えがたい苦痛であったのだろう事は想像に難くない。

切嗣さんも同じ考えだったのかはわからないが、言峰の本気は感じ取り、更にその願いが、穢れた聖杯と余りにも相性が良すぎることに危機感を抱いた。

切嗣さんはセイバーに言峰の足止めを命じ、タイミングを見計らって銃を撃つ。しかし言峰はそれを辛うじて躱し…。それを繰り返したある時、その後ろで舞弥さんを襲おうとしていたアサシンに、その一発が命中した。

サーヴァント…英霊の肉体は仮初めのもの。その特性上、ダメージを与える事は適わない。だが物質化しているが故、一瞬でも気を惹くことは出来る。

そして。言峰が躱した瞬間、セイバーはアサシンの元に詰めており。銃撃に、わずか一瞬意識が逸れたその時、セイバーの剣がアサシンの胴を薙いでいた。そう、言峰が銃弾を躱し続けたその時の事まで考慮した、二段構えの作戦だったのだ。

 

二体目のサーヴァントが脱落し、言峰のサーヴァントはランサー・ディルムッドひとりとなる。しかし狂化のかかった彼は強い。槍を一本失いつつも、ライダーの攻撃を捌き攻撃を返す。

騎乗せず、戦車(チャリオット)も出していないライダーはしかし、負けず劣らずの攻撃を繰り返していた。しかしそれも時間が経つごとに、徐々に圧され始める。苛烈を究める征服王、攻防においても才覚を見せるものの、それは侵略者として戦乱の中にあってこそ。一対一の、極めし者との闘いでは、長引くほどに己の不利へと転じていくようだ。それでも未だ覆せぬほどの状況に無いのは、皮肉にも、ランサーに狂化がかかっていたためだろうか。

相も変わらず切嗣さんとセイバー、更に合流した舞弥さんとも対峙する言峰は、このままでは埒があかないと言い、腕に大量に刻まれた令呪を見せつけ願う。「狂化の解除」と「身体能力の最大限上昇」を。

その瞬間、ランサーの槍捌きに切れが増し、更にスピードとパワーをもってライダーの胸を貫く。そして。

「ライダー、負けるな!」「必ず勝つって言っただろ!」「そんな奴に負けないでくれっ!」

そう叫ぶウェイバーさん。同時に三画の令呪を使いきる。令呪はサーヴァントに対する絶対命令権。故に、曖昧な命令ほどその効力は落ちる。……通常なら。しかし三画全てを使い切り、強い想いを乗せたそれは、結果を覆すだけの力を持っていた。

危険を感じたランサーが引き抜こうとした槍を、ライダーは左手で掴み、右手の剣はランサーの首を薙いでいたのだ。

 

ランサーは消滅し、ライダーが片膝をつく。ウェイバーさんが駆け寄ると、ライダーの体は徐々に光の粒子へと変わっていた。ライダーは確かに勝負には勝った。だが、霊核を破壊され、消滅する運命までは変えられなかったのだ。

ライダーはウェイバーさんに何かを語りかけ、そして消えていった。その言葉がなんだったのかはわからない。切嗣さんには聞き取れなかったそうだし、ロードは教えてはくれなかったから。

 

ともかくも、セイバーを残して四騎の英霊が脱落し。突然切嗣さんの胸元から、軋むような嫌な音が鳴り響いた。それはアインツベルンを離れる前、切嗣さんとアイリさんが密かに作り上げた、小聖杯よりも小さな、小聖杯のレプリカだった。これは理論上、三騎までの英霊の魂が納まるらしい。……いや、正しくは、その程度まで再現するのが精一杯だったそうだ。

しかし切嗣さんが対策を取るよりも早く、四騎の英霊が倒れ、小聖杯(レプリカ)の許容量を超えてしまったのだ。

しかも、時を同じくして地脈が活性化し、市役所の建設現場に大聖杯が降臨してしまう。そして砕けた小聖杯から開放された英霊の魂は、小聖杯をくべるまでもなく、近くにあった大聖杯に取り込まれてしまった。

その機を逃さず、大聖杯に触れ願う言峰。不完全ながらもその願いによって、泥のようなナニカを吹き出し始め。それが途轍もなく危険なものだと感じ取った切嗣さんは、令呪を全て使いきりセイバーに大聖杯の破壊を命じた。もとより切嗣さんの意見に賛同していたセイバーは、大聖杯に目がけて宝具を開放するが…。

開放のタイミングで言峰の邪魔が入り、攻撃は僅かに逸れ、大聖杯の完全破壊はならなかった。直後に鳴り響く二発の銃声。一発は言峰の胸を、もう一発は頭を貫き、言峰は絶命した。

 

一方の大聖杯は完全な破壊とはいかなかったものの、機能を停止させることには成功した。ただし、溢れ出した泥を押し留めることは出来ない。セイバーも、聖杯からのバックアップがなくなり、やがて座へと戻ってしまった。

切嗣さん達は、工事現場から辛うじて脱出する事が出来た。しかし溢れ出した泥は街を蹂躙していく。不幸中の幸い…、と言っていいのかわからないが、大聖杯を破壊するのが早かったためか、被害の規模は工事現場から半径1キロ前後で治まったことだろうか。

 

やがて切嗣さん達は手分けをして、生存者を探し始める。この惨状で生き残るのは、奇跡と言っていいだろう。

そして切嗣さんは、その奇跡の生存者を発見することになる。あたしはその名を聞いて驚いた。切嗣さんが発見したのはシロウという少年。そう、イリヤの兄ちゃん、士郎さんだったのだ。

 

その後士郎さんを引き取り、一年ほどこの家で暮らした後、現在の家に移り住み、イリヤと士郎さんをセラさん、リズさんに任せて、聖杯戦争に繋がりそうな事柄を潰すために、アイリさんと共に世界を飛び回っているそうだ。

 

一方ウェイバーさんは、ケイネスの姪にして義妹のライネスという人に祭り上げられ、彼女がロードを継ぐまでの繋ぎとして、エルメロイの名を引き継ぐことになったということだ。Ⅱ世と付けたのは、ウェイバーさんのせめてもの抵抗らしい。

 

 

 

 

 

「……以上が、第四次聖杯戦争で起きた出来事だよ」

 

長かった切嗣さんの話に、あたしは大きく息を吐く。

 

「未然に、とは聞いてたけど、本当に『聖杯戦争』という形式で始まらなかっただけなのね…」

 

いや、マジで関係者数名は死んでるし、一般人にも被害出てるし。

 

「……まあ、それは置いといて。気になるのは、セイバーとアサシンの事ね」

「セイバーとアサシン?」

 

聞き返す切嗣さんに、あたしは頷き返して話を続ける。

 

「イリヤ達が集めたクラスカード、セイバーはまさしく[約束された勝利の剣(エクスカリバー)]の使い手だった。そして、あたしはいなかったから聞いた話だけど、アサシンも数十人単位で現れたと言っていたわ。それっておそらく…」

「ああ、言峰が呼び出したアサシンだろうね」

 

切嗣さんの意見も同じだったようだ。

 

「つまり切嗣さんやロードが経験した[聖杯戦争]のセイバーとアサシンが、現象とはいえ呼び出されていた。

けれどこちらでは、キャスターは女だったし、ライダーも女、……というか、メドゥーサだった。そしてランサーはクー・フーリン。

ハッキリ言って関係あるのかないのか、訳わかんないわ」

 

あたしが愚痴混じりに言うと、黙って見ていたロードが口を開く。

 

「……おそらく第四次聖杯戦争と、直接は関係ないだろう。だが、間接的には関係あるかも知れん」

「……どういうことですか?」

 

聞き返すと、ロードは眉間の皺を深くしてから続きを語った。

 

「突拍子もない話だが、実在している限り可能性はある。そう踏まえて聞いて欲しいのだが…。そのカードはおそらく…」

 

そこまで口にした、その時。あたしの遠話球(テレフォン・オーブ)が鳴り響く。それに少し遅れる形で、ロードの携帯からも着信音が鳴った。

このタイミング、何か嫌な感じがする。

 

「……もしもし?」

『あっ、リナ!』

 

送信者はイリヤだった。切嗣さんが驚いた顔をしてるけど、イリヤのこの切羽詰まった感じ、そちらの方が重要だ。

 

「どうしたの、イリヤ。随分慌ててるみたいだけど」

 

イリヤを落ち着かせるため、出来るだけ軽い口調で尋ねる。

 

『ク、クロが、セイバーそっくりの女の人と、闘い始めちゃったの!』

 

…………はい?




今回のサブタイトル
「Fate/ZERO」+「Fate/Requiem」+宝石翁の別の二つ名「カレイドスコープ」から





今回も説明をば。

封印指定の魔術師……当然、人形師のあの人です。

セイバーは切嗣さんを守り……本来なら舞弥が切嗣を守り、ウェイバーの元にセイバーを付けるのが定石だが、言峰の実力が計り知れずにこの様になった。さすがトップクラスの元代行者である。
因みに切嗣は固有時制御も組み込んでいたが、さすがにリナにも秘密にしている。

そんな人物を知っていたから……スィーフィード世界の人物。赤法師レゾ。実はその魂の内に「赤眼の魔王」が眠っていた。原作1巻でリナが倒した魔王の、その核となった。

大量に刻まれた令呪……原作【ZERO】同様、父の璃正を殺し奪った、かつての敗退者から回収した令呪。裏設定として、綺礼が数日動かなかったのは、金ピカが居らず唆されなかったため、ボーダーラインを超えるかどうかで悩んでいたのが原因。

その程度まで再現するのが精一杯だった……アイリの力を借りたとはいえ、むしろそれだけ再現出来たのが凄い。

大聖杯に触れ願う言峰……ここら辺は【ZERO】よりも【stay night】寄りであった模様。なお、不完全な聖杯ではあったが言峰の願いとの相性が良すぎたために、中途半端ながらも発動をした。

二発の銃声……言峰生存ルートを完全に絶ち切った。

座へと戻って……実際は座に戻ったわけではないのだが、彼らはアーサー(アルトリア)の事情を知らないので、勝手にそう思い込んでいる。

ライネスという人……こちらでも義妹は暗躍してます。





そんなこんなで、ようやく過去(ZERO)編終了です。そして、最後のイリヤのセリフに出てきたのは、当然彼女です。というわけで。

次回「謎の少女X」
見てくんないと、暴れちゃうぞっ!
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