Fate/kaleid caster ドラまた☆リナ 作:猿野ただすみ
現在わたし達は、デパートの水着売り場でお店の人に叱られています。……っていきなり何言ってるのかわからないよね?
……そう、今日はミユ、クロ、スズカ、ナナキ、タツコ、ミミの六人と一緒に、海で着るための水着を選びに来たんだ。しかも支払いは全て
そんなワケでご厚意にありがたく甘えていざ試着、というときスズカ達がわたしにって持ってきた水着が、下から細いバンドのような布がV字状に伸びたもの。何でそんな、隠す場所が少ないモノ選んでくるのッ! ッていうか、なんでそんなのが子供水着の売り場にあんの!?
スズカ、痛くないってそういう問題じゃ…そのカメラはなに!?
「俺、これ買うわ」
なんてやってたら、タツコがほぼ紐だけのビキニ着て歩き回ってるっ!?
ミユとクロを除いたみんなでタツコを取り押さえたけど、結局お店の人に叱られた、というわけでした。
「大人しく粛々と水着を選ぼうね」
わたしの意見に賛同する、ナナキとスズカ。みんなでお嬢様風に会話しながら水着選びだ。……何だかミユが、変な目で見てる気がするけど、気にしないでおく。
そんなこんなで水着を選んでたら、突然クロがわたしの服の襟首を引っ張った。
「ちょっと、なに? みんなで淑女っぽく、水着選びしてたんだけど?」
「……淑女観、間違ってるわよ? ……ってそうじゃなくって!……魔力が、切れそうなのよ」
……え?
「えっと、まさかそれって…」
「……補給…お願い」
……マジですか?
「どうなさいましたの、イリクロさん?」
「えっ? いや、その…、お、お花を摘みに行こうと思いまして」
那奈亀ちゃんにそう返して、イリヤちゃんとクロちゃんが階段の方へ向かっていく。その様子を見て、無性に気になったわたしは、悪いと思いながらも後を追いかけていった。
するとふたりはお手洗いには向かわずに、階段を少し降りて踊り場に立つ。一体なんだろう?
「……キス、するなら、早くしてよ…」
………………え?
「……ク、クロからしてよ。いつも、そうしてたじゃない…」
……はいいいいいっ!?
えっ? えっ!? ふたりって、そういうアレだったのオオオオッ!!
「大体、どうしてキスじゃないといけないの? お陰でなのはちゃん達にまで、あんなシーン見られちゃったんだから! 魔力供給なら、もっと他にも方法はあるんじゃないの!?」
……なのはちゃん? 誰のことだろう? それに魔力って?
「あの子達にはわざと見せつけたから」
「クロッ!?」
わ、わざとッ!?
「……ま、他にもあるっちゃあるんだけど。でもあなた、絶対了承しないわよ?」
そう言ってイリヤちゃんに耳打ちをすると。
「…………っ!! へ、変態っ! 変態変態変態ッッッ!!」
「……だから言ったのに」
「不潔よっ!!」
ク、クロちゃん、一体何を言ったの!?
「不潔なんて、純情ぶらないでよ。あなただって、『将来わたしもするようになるのかな』とか、思ったことあるでしょう?」
そ、それってつまり、愛するもの同士が組んず解れつする、アレですかーーーっ!?
「そもそも! 魔力供給が必要だとしても、わたしである必要はないんじゃないの!?」
「確かに他の人でもいけるけど」
他の人でもいけるううううッ!?
「どういうわけかあなたとだと、他の人より10倍は効率がいいのよ。それにあなたにはルビーがいるから、魔力の回復も早いでしょ」
……ルビー? それは誰?
「あと、あなたがしないなら、わたしは手当たり次第するわよ?」
手当たり次第ーーーッ!!
「慣れてない人は、吸い取られたショックで虚脱状態になるけど、別に死ぬわけじゃないし。わたしだって知らない人とはしたくないから、知り合いが中心になるわね。
……あ、それなら、お兄ちゃんにいっぱいしてもらおうかな」
なあああ! イリヤちゃんと、イリヤちゃんのお兄さんとの三つ巴ッッッ!?
「……ね? 選択の余地なんてないでしょ?」
「うう…、わかったわよ。でもこれは、一種の医療行為みたいなもんなんだからね。なんの感情も無く、粛々と行うこと!」
「……まあ、いいわ」
「そ、それじゃ、行くよ…」
ウ、ウソ! ホ、ホントにしちゃうのおおおおッ!?
それは、とても、とても濃厚なものでありました。
……ってクロちゃん、キスなんて挨拶みたいなもんって言ってたけど、絶対そんなレベルじゃないよ、アレッ!!
「……ちょ、ちょっとタンマ。も、もういいでしょ?」
「ダメ、全然足んない。もっと唾液ちょうだい」
唾液てーーーッ!!
「……ク、クロ。これ、一回したら、どれくらい持つの? 戦いとかで消費しなければ、ずっと持つんでしょ?」
「そうでもないわ。補給しなくちゃいずれ0になる。……ただ生活してるだけ、存在してるだけでも魔力は消費されていく。
……つまり、あなた無しでは生きていけないって事。いろんな奇跡が重なって、辛うじてわたしはここにいるのよ」
「奇跡…」
あなた無しでは生きていけないとかーーーッ!?
「覗き?」
ーーーっっっ!?!?
「みっ、みみみ美遊ちゃん!?」
美遊ちゃんは階下を覗き込んでから振り返って。
「彼女達の邪魔はしないで。それと、ここで見たことは忘れて」
そんな事言ってきた。わたしはおもいきり頷いたけど、あんなの忘れられるわけないよっ! そ、それに。
「み、美遊ちゃんはいいの? イリヤちゃんとクロちゃんがあんなことしてて」
「?」
「あ、ううん! 別に女の子同士じゃダメッてワケじゃなくて!」
むしろアリだけどッ!
「わたし、そういうのは美遊ちゃんとだと思ってたから…」
「……言ってる意味がわからないけど」
「えっと、だから…。平気なの?イリヤちゃんが、キ、キスしてるの…」
「クロを無条件に認めたわけじゃない。でも、向こうが事を荒立てない限り干渉しない事にしてる。
……結局は、イリヤが決めることだと思うから」
お、大人だーーーッ!!
ま、まさか三人が、そこまで複雑な関係だったなんて!
……お手上げです。もう、わたしがどうこう出来る案件じゃありません。わたしに出来ることは、この経験を小説に生かすことくらい…。
「……ところで」
「はいっ!?」
「どうしてわたし達の名前を知ってるの? あなた誰?」
あ…………。
「まだ、憶えられてなかったのおおおおおお!?」
「? 同じ学校の人?」
もう、わたしは、唯々泣くしかありませんでした。
そんな感じで、美々が泣きながら、美遊は不思議そうな顔でみんなの元に戻って行き、踊り場には絶賛魔力供給中のイリヤとクロエが残された。
魔力供給が終わりに差しかかった頃。階下から足音が聞こえる。しかしふたり供、それには全く気付いていない。そして。
「うわっ!?」
「「!?」」
若い男性の驚く声。ただしそれは日本語では無かった。イリヤとクロエも、その声に反応して振り返る。
そこには士郎より少し年上くらいの、眼鏡をかけた茶髪の少年と、フードを目深に被った、イリヤ達より2、3歳ほど年上に見える、衣装から女性と思われる人物が立っていた。
「あわわわわ!み、見られちゃったよーーーッ!?」
とうの昔に、美々に覗き見されていたとは露とも知らぬイリヤが、思いきり絶叫をあげる。
「あ…」
男性が声をかけようとしてからイリヤが日本語を喋っていたことに気づいたのだろう、ハッとした表情になり、軽く咳払いをする。
「ええと、ごめん。ジャマをするつもりはなかったんだ。ただ彼女が、人混みがニガテだったから」
所々イントネーションがおかしいものの男性は、流暢な日本語で説明をした。
「えっ、あ、いえ! こっちこそ、こんな場所でっ! ……あ、あの…、見ました?」
「ああ、うん。そういうのには理解あるつもりだから」
「いやっ、その! あれは違くてですねッ!!」
イリヤが慌てて言い訳をしようとすると、クロエが背中をツンツンと
「(どうせ見ず知らずの人なんだから、そう思わせておきなさいよ。それとも魔力供給とか、馬鹿正直に言うつもり?)」
「(ぬうう~~)」
クロエの意見と羞恥の狭間に悩むイリヤ。
「ええと…?」
置いてけ堀にされた男性が頬を掻き、困った表情でイリヤ達を見ている。
「ああっ、いえ、なんでも、ない…です……」
慌てながらも良い言い訳が思い浮かばず、結果クロエの案で妥協せざるをえないイリヤだった。
「それじゃ、ホドホドにね」
そう言ってイリヤ達の前を横切る男性。その後をフードの少女がついて行き。クロエの前を横切る瞬間、ポツリと呟く。
「……living ghost…」
((……え?))
その言葉にドキリとするふたり。その言葉の意味は、イリヤにも理解できた。
ファンタジーもののモンスターに、リビングメイルというものがある。日本語では生きた鎧だ。そこから推察すれば、リビングゴーストが生きた幽霊、即ち生き霊と導き出すのも容易いことであった。
そしてクロエは、アーチャーのクラスカードを核として顕界している、イリヤの生き霊と言える存在。それを言い当てられたのだ。驚かずにいられるわけもない。
ふたりの姿が見えなくなり、イリヤはクロエに問う。
「……あのふたり、何者なのかな」
クロエは少し考え込んでからその疑問に答えた。
「……わからない。でも多分、魔術師じゃないかしら」
「魔術師!?」
「ええ。しかも、わたしのあり方を見抜かれたことを考えると、おそらく
しかしクロエのこの推測は、根本の部分で外れているのだった。
みんなの元に戻ったイリヤとクロエは、先程のふたりのことが気になりながらも水着を選び、買い物を済ませた。
そして、帰宅のためにバス停へと向かっている途中。
「……イリヤ、クロ。どうしたの? 何だか浮かない顔だけど」
「ああ、うんとね。実はさっき…」
ふたりの様子が気になった美遊が尋ねる。そんな彼女に、イリヤは踊り場での出来事を語った。
「……そう」
話を聞き終えた美遊は、少し考え込み。
「出来たらしばらくの間、警戒していた方がいいかも知れない。ルヴィアさん達のようなお人好しの魔術師は、例外だと思うから」
『美遊さまの仰るとおりです。魔術師は基本的に、ろくでなしの屑、の集まりですから』
美遊の髪の中から少しだけ姿を見せ、サファイアが言った。
「サファイアも言うわねー。ま、その通りだけど」
「うん。わかった」
クロエも自虐的な笑顔を浮かべながらに肯定し、イリヤは三人の意見に頷いた。
「お、バスが来てるぞ」
三人+1の会話に気づかない雀花が、停留所を見て声をあげる。
乗り遅れないようにと小走りをする中。
「(イリヤ、ミユ。なんか、早速みたい)」
イリヤと美遊の間、ふたりの横に並んだクロエが囁く。驚いて辺りを見渡すと、確かに離れた位置からこちらを伺う、先程のふたりの姿が目に入った。
「(ミユ、彼女の目的はわたし達…、いえ、わたしだと思う。だけど念のため、スズカ達についてってあげて)」
「(でも…)」
「(ミユ、わたしからもお願い。ここは、わたしとクロで何とかするよ。もしもの時は、リナを呼ぶから)」
「(……わかった)」
クロエとイリヤに言われ、渋々ながらも美遊は頷く。
だがここで、イリヤはひとつ、ミスを犯した。今日のイリヤには何とかすることが出来ないことに、気づいていなかったのだ。しかしそれに気づくのは、もう少し後のことである。
「あっ、しまった! 買い忘れがあったんだ!」
「全く、イリヤってばしょうがないわねー。ごめんみんな、先に帰っててくれる?」
等と、半ば寸劇染みたやり取りをするふたり。
「おう、みずくさいな。俺達も付き合ってやるぜ?」
空気を読まない割に、真っ当なことを言う龍子。
「わあ、気を遣ってくれるなんて、タツコは優しいな。
……だが断る」
「あんたが一緒だと、オチオチ買い物も出来ないわ」
まさにさっきまでの事である。嘘の買い物とはいえ、イリヤとクロエが言う事ももっともだ。
「ほら、タッツンはジャマだってさ」
「オウッ!?」
那奈亀は龍子の顔面にアイアンクローを極めながら、引きずっていく。
「おう、じゃあな」
雀花も挨拶をして踵を返す。その様子を確認してから、美遊は軽く頷き後をついて行くのだった。
みんなが乗ったバスが出発するのを見送り、そのまましばらく待っていると。
「キミ達、ちょっといいかな?」
と、先程の男性が声をかけてきた。その隣にはフードを目深に被ったままの女性。その覗いている口許が動き、何かを喋り始め。
「ブシツケですまないが、彼女が、そちらのキミは生き霊だと言っているんだけど、それはホントウなのか?」
男性の言葉に、クロエは表情を険しくし、イリヤは落ち着きを無くす。
「……本当だったらどうなの?」
クロエの返答を男性は英訳して、女性に伝える。そのタイムラグがもどかしい。
「……本当なら、あるべき所に戻ってほしい。今のキミのあり方は不自然で、人に害をもたらすものだから、と言っt」
「嫌よ! わたしは願ったんだもの。『家族が欲しい』『普通の暮らしがしたい』『消えたくない』『生きていたい』……って!!」
「……その願いを言う様に、わたしはクロに願った。だからわたしは、クロのその願いに付き合わなくちゃならない。一度関わったことは、無かったことには出来ないから!」
クロエとイリヤが、その熱い思いを述べる。男性は一瞬たじろぐものの、すぐに女性へ通訳した。すると女性は、戸惑いの気配を浮かべてイリヤを見る。生き霊と知りながらも守ろうとするイリヤが、今一理解できなかったようだ。
「……それで? これで話は終わり、……ってワケじゃないんでしょう?」
「……ああ、そうだね。こんなトコロじゃ、人除けの結界もたかが知れてる。場所を変えようか」
男性の意見に、イリヤとクロエは頷くのだった。
今回のサブタイトル
植芝理一「謎の彼女X」から
そんな訳で、出たはいいけど名前が出ないふたりでした。
念のため。女性(少女)はⅡ世の内弟子、男性は並行世界だと聖杯大戦の参加者だった彼です。
次回「ディスコミュニケーション」
見てくんないと、暴れちゃうぞ!