Fate/kaleid caster ドラまた☆リナ   作:猿野ただすみ

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今回はタイトル詐欺ですね。


聖槍使い

≪リナside≫

墓守の少女、グレイを前にしたあたしは、黒鍵とクラスカードを取り出し。

 

「クラスカード『セイバー』、限定展開(インクルード)!」

 

宝具を展開させる。

 

『おい、その剣はまさか…!?』

「うん。選定の剣の二振り目♡」

『お茶目に言うとこかよ!?』

 

うーみゅ。ちょっとギスギスしてたから少しばかり茶目っ気を入れてみたのだが、どーやらアッドには不評だったようだ。

 

「ねえ、リナ。どうしてそのクラスカードを? それって、バゼットさんが回収してったはずなのに」

 

そう。イリヤが疑問に思ったとおり、このカードはバゼットさんが戦利品として回収していった三枚の内の一枚だ。

 

「イリヤ。寄るところがあるって言ったでしょ? バゼットさんの所に行って、一時的にあたしのセイバーのカードとトレードしたのよ」

 

あたしはロードから、グレイが持つ礼装の特性を聞いている。特に使用頻度の高い[グリム・リーパー(死神の鎌)]と呼ばれる大鎌の形態は、斬りつけた相手から魔力を吸収して使用者へと蓄える機能があるそうだ。それってハッキリ言って、[光の剣]にとっても天敵ということである。

光の刃は精神力によって形成されるが、それも魔力という形に変換しての事。武器同士がぶつかり合う度に、純度の高い魔力が吸収されていくという事なのだ。

なので切嗣さんにバゼットさんの居場所を尋ねてみたのだが、舞弥さんが彼女の寝泊まりしている場所、未遠川縁を把握していてくれたのだ。

でもって翔封界でひとっ飛び、これからバイトの面接を受けに行くというバゼットさんを運良く捕まえ、一時的なカードのトレードをしたというわけだ。

 

「……まあ、詳しい説明は省くけど、[光の剣]とあれとは相性が悪くって、この剣とあれとなら、まあマシってとこね。てか、ある意味同質の武器だから」

「!? つまり、そういう事…」

 

どうやらクロエには、あれの正体がわかった様である。

グレイの武器。その正体は、かの騎士王が携えた神が造りし聖なる槍、[最果てに輝ける槍(ロンゴミニアド)]だ。

詳しい話こそ聞かなかったものの、セイバー顔のグレイは、騎士王…、アーサー王と何か所縁があるのだろう。

 

「……さて、お待たせして悪かったわね」

 

そう言って剣を構えるあたし。……言っておくが、ただだらだらと話してたわけではない。これは一種の時間稼ぎである。

当初は戦闘で、どれだけ引き延ばせるかを考えてたのだが、せっかくイリヤが話を振ってくれたのでそれに乗っかった、という訳だ。

まあ、ほんの僅かではあるが、せっかく稼いだ時間だ。あっさりやられない様、気を引き締めねば。

 

「どうしても彼女を庇うというのなら、仕方ありません」

 

なにを言ったかわからないが、言いたいことはわかることを言って鎌を構えるグレイ。そして。

 

ッィイイイイン!

 

剣と大鎌、互いの刃がぶつかり合う。イリヤには適当に言ったが、いくらこの聖剣でも魔力の吸収はされているに違いない。ただ、[光の剣]の様な致命的な弱点ではないことと、同じ王が持つ聖なる武器故に、ある程度の耐性を願って選択したのだ。

実際、耐性まではわからないが、一度の鍔迫り合い程度では限定展開の強制解除の兆しは感じられない。勘だけど。

ともかくこの調子なら、今しばらくは対峙できるだろう。

 

 

 

 

 

きぃん!

がぎぃっ!

 

刃のぶつかり合う音が鳴り響く。時折、爆炎舞(バースト・ロンド)烈火陣(フレア・ビット)などを足元に炸裂させて牽制を入れつつ、かれこれ5分。それで判明したのは、グレイは戦い慣れているが強敵ではないということ。

洗練された一流の戦いには遠く及ばず、武技はあたしと同等か少し上回るかも知れないが、駆け引きという点においてはあたしに劣る。言ってしまえば素直な戦い方だ。

これらだけを見れば、あたしの方が手練手管でやり込める自信はあるのだが。

しかし問題は、やはりあの大鎌。伊達に主要武器として使っているわけではない、その間合いもしっかり把握しているのだろう、あたしの剣の間合いをとらせてくれない。更には例の機能も相まって、あたし自身が無意識に、いつもより大きく躱してしまう。

そもそもあたしは時間稼ぎがメインで、彼女を倒す気などこれっぽっちも無い。そんな消極的な理由のため、どうしてもやや後手に回ってしまうのだ。

とはいえそろそろ、限定展開が解除されてもおかしくない時間だ。このままだと、ちとやばいのだが…。

そんな事を考えたとき。まさにそれがフラグであったかの様に、クラスカードが排出されて黒鍵に戻ってしまった。って、マズッ!

グレイは大鎌を勢いよく振り下ろす!

 

「「リナッ!?」」

 

イリヤとクロエの声が重なる。

……くっ、嘗めんな!

 

ぎぎゃああっ!

 

「な…」

 

グレイが驚愕の声を上げる。

あたしは即座に黒鍵へ魔力を通し、刃を成して大鎌の刃をいなしたのだ。強化されているとはいえ、さすがに黒鍵の刃程度では大鎌の攻撃には耐えきれずに砕け散ったが、自身の身を守ることには成功したのだ。

そして。

 

ゴウン…!!

 

そんな音を響かせて。

 

ドシャン!

ギャルルル!

 

自動車がジャンプしながら突っ込んでくる。

 

ギャギャギャッ

ドォン!!

 

そして、ブレーキ音の直後に木にぶつかり停車するその光景は、僅か1ヶ月ほど前に見たそれとほぼ同じであった。

しかしあの白いベンツェ、せっかく修理したのに、またもや修理工場行きか。

 

「あれ、ドアが開かないわね」

 

そう言って、バンッ!とドアを蹴り開け現れたのは、当然の如く。

 

「やっぱりママ…」

「さすがにもう、驚かないからね!?」

 

と言いつつ、少し驚いてるでしょ、イリヤ?

一方のグレイは、あたしにスリッパで(はた)かれた時ですら理不尽な表情をしてただけだったが、今回はさすがに呆気にとられているようだ。更には。

 

「……全く、マダムの運転は、私の寿命を縮めかねん」

 

そうぼやきながら助手席側から現れたのは、かのロード・エルメロイⅡ世。

 

「え、師匠!?」

 

目を見開き驚くグレイ。その声に反応したロードは、軽く衣服を整えてから口を開く。

 

「レディ、とりあえずはその武器を納めてくれないかね?」

「し、しかし師匠…」

「そちらの少女達は、私の知人の関係者だ。何より、あの男とこちらのマダムを敵に回したくはない」

 

何を話してるのかはわからないものの、眉間の皺を深くし、冷や汗をかきながらやや俯きがちに語る彼の姿に、納得のいかない表情ながらも大鎌を掌サイズの立方体に納めるグレイ。どうやらあの立方体が、アッドの普段の姿のようだ。

と、そこへ眼鏡の青年が、ベンツェの突っ込んできた方向から駆けてきた。多分この人が…。

 

「うわっ、凄いことになってるな」

「あ、カウレスさん」

「そういや、いつの間にか姿消してたわね」

 

うん、やっぱりロードが言ってた人だ。しかし、姿消してたはひどい。通りに出て、ロード達が来たときの誘導に当たってただけなのだが。まあアイリさんの事だから、ロードがカウレスさんを視認した途端、スピードも緩めず突っ込んで行ってこうなったってトコだろう。

 

「あなたがロードの仰っていたカウレスさんですね?」

「え、ああ。という事は、キミが先生が言ってた天才()()()だね?」

 

どうやらロード、あたしのことは魔術師として説明したようだ。まあ時間のない中、細かな説明するわけにもいかなかったんだろうけど。

 

「まあ、そんなとこです。それより…」

 

言ってあたしは、ちらりとグレイを見る。

 

「大丈夫。先生に任せておけば問題ないよ」

「そう願いたいですね」

 

その為の、時間稼ぎだったのだから。

アイリさんも一緒だけど、まあ、大丈夫だろう。というか、それこそそう願いたい。

 

 

 

 

≪third person≫

「師匠、どういうことですか?」

 

グレイが当惑しつつも、恨みがましくエルメロイⅡ世に尋ねる。

 

「言っただろう。あの少女達は、私の知人の関係者だと」

「わたしがその知人のひとりよ」

 

アイリが横から口を挟む。

 

「イリヤちゃんもクロちゃんも、大切なわたしの娘だし、リナちゃんはその大切なお友達。だから、もしあの子達に危害を及ぼすつもりなら…」

 

そこで一端言葉を句切ると、すっと真面目な表情に変わり。

 

「誰であろうと絶対に容赦しません」

 

その瞬間、グレイの背筋に悪寒が走る。魔術師としてはさして強くもないアイリだが、それでもその殺気は、グレイに危機感を感じさせるに足るものだった。

だがそれも一瞬のこと。アイリから発せられた殺気は霧散して消える。

 

「……なんて言ってみたけど、クロちゃんに対しては後ろめたいことがあるの。()()()は魔術師として対応していたから優しい言葉もかけてあげなかったけど、あの子に仕出かした行いについては、ちゃんと向き合いたいのよ」

 

イリヤ達に聖杯戦争について話したときのこと、そしてアインツベルンから逃亡する前に、イリヤ(クロエ)の記憶を封じたことを思い出しながらアイリは語った。

 

「ですが、あのクロエという少女は…」

「落ち着くんだ、グレイ。あの少女の今後については、ある程度の方策が立っているそうだ」

 

逸るグレイを落ち着け、アイリに続きを促す。

 

「わたしの古い知り合いに頼めば、クロちゃんの事は何とかなると思うのよ。ただ、対価が問題なのだけど」

「……ああ、彼女に頼むのか。なるほど、確かに方法としては悪くない」

 

エルメロイⅡ世も、アイリの発言に思い当たるものがあったのか、妙に納得顔である。

 

「でしょう? 雛型のデータも、十年前のものから現在のものを割り出せるみたいだし、ある程度の調整も利くようだし。……対価については、リナちゃん次第かしら?」

「リナ嬢を人身御供にするつもりか?」

 

口調は批難染みているが、表情は至って冷静である。

 

「まさか。娘の大切なお友達を、人身御供になんてしません。リナちゃんには、彼女の魔術の知識をあの人への対価にしてもらいたいの。もちろん彼女の意思を最優先にするし、説明だってちゃんとするわ」

「確かに。リナ嬢の魔術の知識は、対価としては申し分ないだろう」

 

先程から何か違和感を感じていたグレイは、この受け答えを見て、ふと思う。

 

(師匠にしては、返答が稚拙な気がする?)

 

そう。魔術の解体などという、とんでもないことをやってのける彼にしては、ありきたりな返答ばかりな気がしたのだ。

しかも、「リナの魔術知識は、対価たり得る」という認識があるのに、アイリの発言に対して「人身御供」などと言っている。エルメロイⅡ世ならば、必要な情報を有しておきながら、アイリの言葉の意味を読み取れないとは考えにくい。

そして、ようやく気がついた。

 

「……演劇?」

 

そう呟くと。

 

「あら、バレちゃった?」

「師匠!」

 

あっけらかんと言うアイリ。それを聞いてグレイは、少し怒った顔でエルメロイⅡ世に詰め寄る。

 

「どうしてこんな回りくどいことを!?」

「では尋ねるが、君はこれらの説明を素直に聞き入れられるだけの、心のゆとりはあったのかね?」

「それは…」

 

言葉に詰まるグレイ。

 

「些か冷静さを欠いた君には、第三者視点から見てもらうことで納得してもらおうと、芝居を打たせてもらったのだよ」

「言っておくけど、さっきまでの会話は演技だったけど、言ってたことは全部本当よ?」

 

アイリが補足を挟む。

 

「……グレイちゃん。ウェイバーくんから話は聞いているわ」

 

突然話を変えたアイリはそう言うと、グレイの前まで歩み寄り、目深に被ったフードを除ける。

 

「あ…」

 

慌てるグレイに、しかしアイリは済まなそうな表情になり、言葉を続ける。

 

「グレイちゃんがこうなってしまったのも、主人が騎士王を召喚してしまったからなのでしょう?」

 

その言葉にハッとなるグレイ。

 

「本当に、ごめんなさい」

 

謝りながらアイリは、優しくグレイを抱きしめる。

 

「……いいえ」

 

否定でも肯定でもない、ただ純粋に、グレイに迷惑をかけた事への謝罪。それは、エルメロイⅡ世が彼女の顔を忌む事で得られる喜びとは、また違った嬉しさであった。

 

 

 

 

 

「ふみゅ。よーわからんけど、どうやら上手く収まったみたいね」

 

グレイを抱きしめるアイリの姿と、その行為に笑みを浮かべるグレイを見て、リナがそう結論づける。

実際、リナが言う「よーわからん」は、その言葉が指している部分は違うものの大体正解である。エルメロイⅡ世とアイリとの寸劇からいきなり話を変えての謝罪に、展開に追いつけなかったグレイがやや混乱して、済し崩し的に()()()()()()()()というのが実情だからだ。エルメロイⅡ世のお陰というより、ある意味アイリのお陰である。

その事実に気づいているのか、エルメロイⅡ世はやや機嫌を損ねているようだが。

 

「ええと、リナ。これで一件落着でいいのかな?」

「ま、わだかまりやら何やらは残るかもしんないけど、とりあえずの解決は見たってトコでしょ」

「よかったぁ」

 

リナの説明に安堵するイリヤ。しかし。

 

「まだ問題は残ってるわよ」

 

そう言ったのはクロエ。

 

「どうしてリナがグレイについて知ってたのか、とか、ママと一緒に来たあの男は誰なのか、とか、謎が残ったままじゃない」

「あ、そうだよ! どうしてリナはあの聖槍?の事知ってたの!?」

 

ふたりの質問に、リナは一瞬面倒くさそうに顔を歪める。イリヤは「ちっ、憶えてたか、とか思ってんだろうなー」などと考えたが、口には出さないでいる。

 

「……まあ、ある程度予想はついてるとは思うけど、ここに来る前にあの人から事前に情報を得てたのよ」

 

エルメロイⅡ世を一瞥して、そう説明する。

 

「あたしがみんなと水着を買いに行かなかった理由も、彼に会うためよ」

 

さすがに切嗣の事は内密にするリナ。

 

「で、彼の正体は、倫敦(ロンドン)にある魔術協会、その金字塔である[時計塔]のロード、エルメロイⅡ世その人よ」

「「ええ~ッ!?」」

 

さすがにクロエですら驚く事実。もちろん時計塔の関係者だとは思っていたが、ロード自らの登場は予想外だったのだ。

 

「え、という事は、リンさんやルヴィアさんの…」

「先生みたいね。詳しくは知んないけど」

 

リナが憶測混じりで答える。因みにこの世界(ドラまた☆リナ)のルヴィアは、今回のクラスカードの一件で日本に来るより前に、某世界線と同じ[剥離城アドラ]の事件も経験している。本来よりもだいぶ前倒しだが、まあ、原作(stay night)とは色々と条件の違う世界線なので、そういう事で納得していただきたい。

閑話休題。

 

「それで、彼がアイリさんと一緒にいた理由だけど、前に聞いた[未然に防いだ聖杯戦争]での関係者で、旧知の仲だったからね。イリヤとカウレスさんの連絡を受けて、冬木に詳しいアイリさんに連れて来てもらったってワケよ」

「ふええ…。ママと時計塔の偉い人が知り合い…」

 

自分の親の意外な交友関係に、イリヤは少しばかり呆け気味になる。一方のクロエは、少しばかり考え込み。

 

「……それじゃあ最後に。リナとロードは、一体なんの話をしていたの?」

 

核心とも言うべき事を聞く。

 

「……残念だけど、現段階では秘密よ。そういう約束での話だったから。ただ、もしも必要に迫られたときには話してもいいことになってるわ」

 

今回はゼロスの真似をするでもなく、至って真面目に返答をするリナ。それだけに、リナはどれだけ問い質されても話すことはないだろうと、ふたりは理解するのだった。




今回のサブタイトル
植芝理一「夢使い」から

というわけで、植芝理一作品のサブタイトルモチーフ三連発でした。いや、「謎の少女X」のあとがき執筆中に次話タイトル考えてたとき、「次も植芝作品の【ディスコミュニケーション】でいーじゃん。あ、その次、【夢使い】ももじれるじゃん」となって、タイトルの三部作みたいになってしまいました。……まあ、○○使いってタイトルの作品、他にもありますけど。
因みにタイトル詐欺になったのは、戦闘シーンを大幅カットしたためです。いや、下手に戦闘シーン書くと、マジでグレイが抜錨しかねなかったので(自分がさせたかったとも言う)、さすがに自重しました。

……前話の途中から、カウレスのセリフが無いのに気づいてた人、どれだけいるんだろーか。たまに主要キャラを出し忘れてることもあるけど、今回は狙ってやってます。
一方、アッドのセリフが前半に少ししかないのは、話が長くなるから(笑)。

補足。ロードがグレイの顔を忌むのは、あの顔を見ると切嗣を思い出し、その流れで、自分の判断が遠因ながらもケイネスの死に関わった事を突きつけられ、やるせなくなるから。事件簿の彼より面倒くさい理由ですが、元々面倒くさい奴なので問題はないかと。

次回「予想推理」
見てくんないと、暴れちゃうぞ!
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