Fate/kaleid caster ドラまた☆リナ 作:猿野ただすみ
あたしが魔法瓶の危険性に気づき、急いで特訓場所に向かっていると、突然濃密な何かをその身に感じた。
この感覚は知っている。あれは二度目に魔王と対峙した世界で感じたもの。そう。それは濃密な魔力である。どうやら既に、魔法瓶の力を解放してしまった様だ。
林を抜け、視界が開けた瞬間。
「おーっほほほほ! このわたし、
「
ちゅごうん!!
思わず火炎球を放ったあたしは、悪くないと思ふ。
「え、あ…、リナ!?」
「ちょっと、どうしてアイツがいるのよっ!?」
イリヤのセリフを無視して叫ぶあたし。いや、マジでどうしてこうなったのかを知りたい。……いや、知りたくない?
「えっと、リナが時々言ってる昔の知り合いが、どんな人か知りたくって、魔法瓶にお願いしたら…」
「コイツが現れたって訳ね…」
まさか、あたしの普段の言動のせいでこんな事になるとは…。
「……ふぅん。どうやらこの瓶の力で、わたしは呼び出されたようね」
むくりと起きあがったナーガは、目の前にあった魔法瓶を持ち上げ、訝しげに見ながら言った。
「え、何コイツ、もう復活した!?」
「というか、あの爆炎で生きてるなんて…」
クロエと美遊が驚いてるが、こんな程度でビックリしてたら身が持たないわよ?
ふう、とひとつ、ため息を吐く。
「久しぶりね、ナーガ!」
「うん? この子は何を言って…って、あら? あなた、もしかしてリナ? リナ=インバースなの!?」
どうやら今のあたしでも、リナ=インバースとして認識された様だ。
「ええ、そうよ。もっとも、この世界に転生して、今は稲葉リナって名前だけど」
さすがに[稲葉リナ]の名を出すと、まだちょっと気分が落ち込みそうになるが、今はそんな事言ってられない。
「転生? 何を言っているの? 確かにここ一年ほど、会ってはいないけど」
「へっ?」
一年ほど会っていない? って事は、このナーガは英霊の座から召喚されたわけでなく、本人が召喚されたって事? というか、あたしが寿命で死んだ時よりも過去の存在?
「ルビー?」
さすがに推測も成り立たず、あたしとしては珍しくルビーに説明を仰いだ。
『そうですねー。スィーフィード世界の並行世界…、という可能性もありますが、この世界と繋がりが強いのはリナさんがいらしたスィーフィード世界でしょうから、その時間軸がズレているんじゃないでしょうかねー? 時間移動も第二魔法の範疇ですから』
ほう、そうだったのか。第二魔法というのも奥が深い。
「なるほど? つまり貴女は、わたしよりもずうっと先の未来、年老いて死んでしまったリナって事ね?」
「何よ。この人、見た目に反して頭いいじゃない」
「あら、どういう意味かしら?」
クロエの発言に、目を据わらせて睨みつけるナーガ。
「ええっと、だって…」
「あなたの格好、どうやったって悪の女幹部にしか見えないんだけど」
言い淀むイリヤに、ハッキリきっぱり言うクロエ。
確かにナーガの格好は、かなりアレである。黒のビキニアーマーに刺付きのショルダーガード、髑髏のネックレスに黒マントといった、悪の女幹部というか、悪の女魔道士というか、とにかくそういった格好なのだ。
そしてクロエのその意見も、前世でもあたしが通ってきた道である。そうなると当然、ナーガの返答は。
「あぁら、このセンスがわからないなんて、貴女達もまだまだ子供ねっ!」
ああ、やっぱり。言うと思った。
子供と言われたイリヤ達が納得いかないとばかりに、あたしへと視線を向ける。
「いや。あたしは前世で、一生かけても理解できなかったわよ?」
それを聞いて、ホッと胸を撫で下ろす三人。その気持ちはわかる。
「で。話は変わるけど、ナーガ。あんた、さっさと帰ってくんない?」
「ちょっと、そちらで勝手に呼び出しておいて、随分な言い草じゃない?」
むう。ナーガのくせに正論を。とはいえ、こんなのがこんな場所にいたら、トンデモない騒動を起こすのが目に見えている。
「そもそも、どうやってわたしを送り返す気?」
「それは、呼び出したとき同様その魔法瓶に願えば、おそらく元の世界に戻れるはず」
「って美遊!」
しまった! みんなに注意を促しておくべきだった! それだけの力を秘めた
「
[力あることば]と共にナーガを中心に風が荒れ狂い、吹き飛ばされたあたし達が身を起こしたときには既に、彼女の姿はそこにはなかった。
「ナーガに持ち逃げされたああああっ!!」
あたしは叫び、ナーガを追うべく走り出したのだった。
『リナ、本当にごめんなさい』
ナーガを捜索する中、事ある毎にオーブ越しであたしに謝る美遊。もう、何度目だろうか。
ハァ…
あたしは小さくため息を吐き、オーブを口許に持ってくる。
「もういいわよ、美遊。さっきから謝ってばかりじゃない」
『でも…』
「反省も大事だけど、そんなの後でも出来るでしょ。それより今やらなきゃいけないことは、急いでナーガを見つけること。違う?」
諭すように言うあたしに、美遊はしばらく沈黙し、そして。
『うん。わかった』
それだけ答えて通信を切った。うん。これでヨシ。
さて、ナーガの行方だが…。イリヤと美遊は上空から、あたしとクロエは地上から探索している。あたしも空は飛べるけど、機動力はイリヤ達にやや劣る事と、二人ひと組でチームを作った方が色々と都合がいいのでこうなったのだ。
「それでリナ。そのナーガって人、どうやって捜すワケ?」
街中まで出たあたしに、クロエが尋ねる。ふむ、クロエもまだまだね。
「そんなの簡単よ。よぉく聞き耳を立ててみて」
そう言ってあたしも、街中の人々の話を耳を澄まして聞いてみる。すると。
『おい、向こうの方で痴女が現れたらしいぞ』
『ねえ、向こうでコスプレした女の人が、高笑いしながら走ってったって!』
「……なるほどね」
クロエも納得してくれたようだ。ハッキリ言ってあの姿、スィーフィード世界ですらアレな格好なのだ。こっちで、あんな格好で出回ったら、注目を集めないわけがない。
あたしはオーブを通して、イリヤと美遊へ指示を飛ばす。もちろん、二人が彼女を発見するまでの間に少しでも距離を詰めるため、噂になっている方角へと移動を始める。
『リナ! ナーガさん、
「りょーかい! 周りに人は?」
『……今は見当たらないよ』
「だったら小学校に追い込んで!」
そう伝えると一端オーブを口許から外し。
「クロエ! 凛さんとルヴィアさんに応援を頼んで!」
「わかったわ!」
クロエに指示して、再びオーブを口許に持ってくる。
「今クロエに、凛さん達を呼んでもらってるわ。イリヤ達は学校に誘導した後、ナーガの足止めをお願い。宝具以外ならどんな攻撃でも、全力でぶち当てて構わないから」
『え…』
『全力って…』
イリヤと美遊が戸惑ってるけど、さっきのあたしの攻撃は見てなかったのだろうか。
「
というか、
『……わ、わかったわ』
いちおーは納得したみたいだけど、声が引きつってるなぁ。まあ、アレの特異性は実際に戦ってみなきゃ、わかんないからね。バゼットさんの頑強さとは、ちょっと違うからなー、アレ。
通信を切ったわたしは、リナに言われた通り
「
これだったら今のわたしなら、大したダメージを与えられないはず! ……なんか物凄く虚しくなったけど。
「
ぼふん!
ああッ!弾かれた!!
『イリヤさん、侮ってはいけません。見てくれはどうであれ、スィーフィード世界の魔道士、しかもリナさんの知り合いなんですから』
「そ、そうか」
確かにリナも同じ術で、クロの攻撃を弾いてたっけ。
「その通り! わたしはリナの、最強最大にして最後のライバ…」
「
「ミユッ!?」
どどどど…!
「わぴゃっ!」
あ、可愛らしい悲鳴。……ってそうじゃなくって! ナーガさんが言い終わるのより早く、ミユが魔力の連弾を浴びせかける! ちょっと、アレって結構威力があるんじゃ…。実際ナーガさん、路面に倒れ込んでるし。
えっと、リナ? これってホントに大丈夫なの? そんな心配をしていたら。
「……ちょっと、痛いじゃないの!」
そんなこと言って、むくりと起きあがってきたって痛いだけで済んじゃうの!?
「何なの、この人…!?」
『リナさまの攻撃にも、すぐに復活していました。もしかして、
ミユとサファイアも困惑してる。だけどわたしは、ある意味吹っ切れた。つまりリナが言ってたのは、こういう事なんだって。というわけで。
「
「なっ、
放った散弾を、複数の氷結系の魔力弾で迎撃される。スィーフィード世界の術って[カオスワーズ]とかいうのを唱えないといけないらしいのに、反撃が凄く速い。この人、やっぱり凄いんだ! ……でも!
わたしはすぐさま体を沈める。わたしのすぐ後ろにはミユが立っていて。
「
ナーガさん目がけて魔力弾を放つ。さすがに魔術を放った直後なら、次の術の詠唱は間に合わないはず。
するとナーガさんは短い剣、……多分ダガーってやつだと思うけど、それを抜き放って魔力弾を弾き飛ばした!
え、アストラル・ヴァインを使う暇なんてないはずなのに?
『あれはもしかして、魔力剣ですか!? しかも美遊さんの魔力弾を弾くということは、それなりに強力な魔術礼装という事です!』
そうだった。ナーガさんはスィーフィード世界の住人。いわゆる剣と魔法の世界だ。だったら、さすがにありふれてるって事はないだろうけど、それでもこちらより、優れたマジックアイテムが手に入りやすい環境にはあるのかも知れない。
「ちょっと! 危ないわね!」
ナーガさんはこっちの混乱も気にせずに文句を言う。わからなくはないけど、こっちにだって言いたいことはある。
「それだったら、その魔法瓶をわたし達に返して、元の世界に戻ってください」
「それは嫌。あらゆる願いを叶えるマジックアイテムなんて、そうそうお目にかかれるものではないもの!」
ですよねー。
するとミユが、一歩前に出る。
「拒むなら、攻撃は止めない。リナからは全力で攻撃していいって言われてる」
サファイアを、ナーガさんに向けて突き出しながら言う。なんかムサシが啖呵切ってるみたいでかっこいい。
「あら、わたしと勝負をする気?」
不敵な笑みを浮かべて仁王立ちになるナーガさん。一方のミユも、サファイアを構え直す。二人の間に流れる緊迫感。
『(イリヤさん、今がチャンスですよ)』
「え、あ…」
ルビーに言われて気がつくわたし。不意討ちみたいなのは気が引けるけど、仕方がない。
わたしはひとつの硝子玉を取り出すと、ナーガさんの足元めがけて投げつけた。硝子玉がアスファルトに叩きつけられた瞬間。
どぐぁぁん!
「にょわっ!?」
大きな音と共に、ナーガさんを爆炎が包む。今のはリナから渡された、魔術を封じた硝子玉。封じられてたのは、さっきもリナが使ってたファイアー・ボール。
うーん、それにしても。本来よりも威力が劣るらしいけど、それでもやっぱり強力すぎる。今度があったら、もう少し威力の弱いものにしてもらおう。
「ちょっと、不意討ちは卑怯…」
起きあがったナーガさんが文句を言おうとする中、わたしは次の硝子玉を構える。リナから渡された硝子玉は、全部で三つ。残りは二つだけど、牽制するには充分だ。
案の定、ナーガさんはそれを見て顔色を変える。さすがにファイアー・ボールを何度も食らうのは嫌だったみたいだ。
そして次の瞬間、ナーガさんは突然駆け出して
「イリヤ、まだだよ。ナーガさんの足止めをしないと」
「そうだった。行こう、ミユ」
いけないいけない。思わず達成感に浸ってしまった。わたしは恥ずかしさを誤魔化して、ミユと共にナーガさんを追いかける。
わたし達が追いついたとき、ナーガさんはグランドの中央に立っていた。
「おーっほほほほほ! まんまと誘い込まれたようね!」
「え…」
「それってどういう…」
まさか、わざと逃げ出したって事!?
「つまり、こういう事よっ!
ナーガさんが[力あることば]を唱えると、地面が隆起して、人よりも遥かに大きな石の人形が現れた!
『まさか、ゴーレムの生成術ですかっ!?』
『簡単な詠唱で生成するとは、スィーフィード世界の魔術は侮れません』
ルビーとサファイアが驚いてるけど、わたしだって驚いてる!
「さあ、ゴーレム! やぁっておしまい!」
三悪の女ボスの様に命令を下すナーガさん! 一体、どうすれバインダー!?
今回のサブタイトル
神坂一「スレイヤーズ」+OAD「カーニバル・ファンタズム」及び「Fate/Grand Carnival」から
書いてて思った。ナーガを使ったギャグが弱い!
やっぱり神坂先生は偉大だ。
次回「スレイヤーズ☆ふぁんたずむ」
見てくんないと、暴れちゃうぞ!