Fate/kaleid caster ドラまた☆リナ   作:猿野ただすみ

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今回は、リナと両親の物語…。


明日への勇気

≪third person≫

リナが観布子市に赴いてから三日後。安全の確認が取れたからと、全員がエーデルフェルト邸へと集まっていた。

 

「八枚目、もしくは十一枚目のカード回収作戦会議を始めるわよ」

 

メイド姿の凛が告げ、意味もなく盛り上げるためにみんなが拍手をする。それが静まってから、凛は状況を説明し始めた。

 

「浜辺のボーリング工事も終わり、地中深くにあるカードの許へ、ようやく辿り着いたわ。後はこれまで通り、鏡面界でカードを回収するだけよ」

「はーい! 先生しつもーん!」

 

手を挙げてクロエが質問を挿む。

 

「こっちはボーリング工事してあるからいいけど、鏡面界(むこう)は地面の中じゃないの?」

「あっ、言われてみれば!」

 

その質問に、はたとするイリヤ。しかし。

 

『それは大丈夫です。鏡面界は可能性を重ね合わせた状態にありますから』

「は?」

 

サファイアが説明をするが、イリヤは要領を得ていない。

 

『我々が接界(ジャンプ)する事で重ね合わせの中から相対状態を選び取るわけです。本当の意味での理解はじじいにしか不可能ですが、シュレディンガーの猫を思い浮かべればいいかと…』

 

ルビーが引き継いで説明をするが、やはりイリヤは要領を得ない。するとリナが呆れた口調で言った。

 

「アンタらの説明は専門的でわかりにくいのよ。要は第二魔法、並行世界の考え方と一緒って事でしょ。まだ確定していないあらゆる可能性の中から、ボーリング工事がされている可能性を鏡面界として固定させて、その空間に移動する。そーいう事よね?」

『……まあ、細部の微妙な違いはありますが、概ねそのとおりですね』

「……うん。まだちょっと難しいけど、何となくは理解した」

 

頭を抱えつつも、一応納得をしたイリヤ。その様子を見てリナは、うんうんとうなずく。

 

「バゼットさんはどうするんですか?」

 

美遊が尋ねると、凛が難しい顔をした。

 

「それが問題その1ね。彼女も同行することになったわ」

「「「「えっ!」」」」

 

凛の発言に小学生組が短く声を上げる。

 

「とは言っても、もちろん仲間じゃないわ。カードを手にするために戦う、競争相手ってとこね」

 

要はこの間まで、凛とルヴィアが繰り広げていたことと同じである。

 

「なら、とにかく速攻ね! ちゃっちゃとけり付けて、お先にカード、ゲットだぜ!」

「おまいはどこのサトシくんじゃ!?」

 

クロエの言い様に突っ込むリナ。

 

「事はそう簡単じゃないわ。

問題その2。カードはこれまでの比じゃないほど、魔力を吸収している。よりによって、地脈の本幹のど真ん中よ」

「ふみゅ。およそ2か月半の間、それこそ地脈が収縮するほど魔力を吸収してたのよね? 2週間かそこらであの強さだったんだから、ひょっとしたらそのクラスでの最大状態までいってるかも」

 

リナの発言で、イリヤの表情が強張った。

 

『ならばそれこそ、クロさまが仰ったとおり、一瞬で終わらせるべきでは?』

「正解よ、サファイア」

 

サファイアの発言を肯定し、リナはその先を続ける。

 

「……魔族って下級のレッサーデーモンでも、魔力量において人間では遥かに及ばない存在なの。中位にでもなれば、人間が倒せる相手ではないわ。普通ならね」

「リナ?」

 

突然話始めた内容に、思わず声をかけるイリヤ。しかしリナはそれには応えず、更に話を続けた。

 

「そんな相手と戦うコツってのがあってね? 即ち、『短期決戦、一撃必殺、不意を突く』よっ!

確かに今回の相手は、今までに無い強敵かも知れない。いいえ、間違いなくそうなるでしょうね。だからこそ、相手が何かをする前に高火力で殲滅するってのは、作戦としては非常に正しいわ」

(……問題は、その攻撃が効くのかだけど)

 

説明の後、リナは懸念を浮かべるものの、みんなに不安を与えないためにその思いを心の内に留める。

 

「リナの言うとおりよ。今回とれる戦略はただひとつ。最大火力をもって一撃で終わらせる!」

 

凛のその言葉に、一同は顔を引き締め頷くのだった。

 

 

 

 

 

会議が終わり、エーデルフェルト邸を出るとそこに、ひとりの人物が待ち構えていた。

 

「リナさん、お待ちしてました」

「な、キャナル?」

 

そう。前世のリナが居たのとはまた別の世界、[ヴォルフィード世界]の天使の分け御霊、キャナルであった。

 

「キャナルさん、どうしてここに?」

「聖名さんから、貴方方が何か大きな事件に携わるらしいと伺ったもので」

「……情報、すっかり洩れてんじゃない」

 

イリヤの疑問に答えるキャナル。そしてクロエはしっかりツッコミを入れる。

 

「ふむ。それで? 別にただの陣中見舞い…って訳でもないんでしょう?」

「……さすがリナさんですね」

 

キャナルはニコリと微笑むと、袈裟懸けに架けていたカバンから、一本の棒状の物を取り出した。

 

「こちらをリナさんにお貸しします」

「え…、ちょっと、これって!?」

 

リナが驚くのも無理はない。何しろキャナルが差し出したのは、[烈光の剣(ゴルンノヴァ)]のそのレプリカだったのだから。

 

「……しばらく前から海辺の方で、途轍もない力を感じるようになりました。おそらく貴方方が持つカードと、関係したことなのでしょう。ですがその力は、並のものではありません。

……なので、少しでも戦力の足しになるのならば、と。差し出がましいかも知れませんが」

「ううん、そんなことないわ。確かにあたしのカードでも[光の剣]が使えるけど、時間制限があるし、手札は多いに超したことないもの。ありがと、キャナル」

 

リナがお礼を言うと、キャナルは首を横に振る。

 

「いえ。リナさんは1年前に神名を救ってくれた、命の恩人です。わたしとしては、これでもまだ足りないと思うくらいに恩を感じているんですよ?」

「そんな、畏まるよーなもんでもないのに」

 

苦笑いを浮かべ、そう答えるリナ。詳しい話は省くが、リナは1年前、キャナルの宿主である神名が事故に遭うのを未然に防いだのである。

 

「……神名は、そうは思ってませんよ? わたしだって、神名が生きていたからこそ、今こうしてここに居られるんです。リナさん、本当にありがとうございます」

「う、ど、どういたしまして」

 

面と向かってお礼を言われ、少し照れるリナ。その様子をイリヤとクロエは、ニマニマしながら見ている。

 

「それでは失礼します。……皆さん、無事を祈ってますよ」

 

最後にそれだけ言うと、キャナルは立ち去っていった。

 

「ねえ、リナ。1年前に何したの?」

「そうねー。私も聞きたーい」

「別に、たいしたことじゃないわよ」

 

イリクロに問われ、軽く流そうとするリナだったが、二人は尚も食らいつく。

 

「ああもう、わかった! 今度話したげるから!」

「約束だからね」

「わかったわかった」

 

辟易としながらリナは答えるのだった。

 

 

 

 

 

「……ただいま-」

「お帰り、リナ。……どうかしたの? 浮かない顔をしてるけど」

 

リナの母、サナが訝しむ。

 

「うん、ちょっと…」

 

そう答えてからリナは少し考え込み。

 

「……お母さん。お父さんが帰ってきたら、二人に話したいことがあるの」

「話したいこと? 今じゃ駄目なの?」

「うん。込み入った話だから、夕食が済んで落ち着いてからでいいから」

「……そう。わかったわ」

 

そう返事をして微笑むサナ。それを後目に、リナは自分の部屋へと戻っていった。

 

 

 

 

 

夕食が終わり、食器も片付け、リビングには浮かない顔のリナ、優しい笑顔を称えるサナ、いつもよりも難しい顔をした一也の三人が集う。

 

「それで、話ってなんなのかしら?」

 

笑顔のまま尋ねるサナを見て、リナは胸が締めつけられるような思いになる。リナは一端視線を落とし。

 

(……言うって、決めたじゃない!)

 

意を決して顔を上げ、ともすれば逃げ出したくなる気持ちを抑え、リナは言葉を紡ぐ。

 

()()()()()()()()。あたしは、本物の稲葉リナじゃありません!」

 

その告白に驚いたのか、二人は声ひとつ上げない。構わずにリナは告白を続ける。

 

「あたしの本当の名前は、リナ=インバース。死後の世界で[稲葉リナちゃん]と会って、彼女にあなた方二人のことを託されたんです」

 

再び視線を落とし語るリナの言葉は、しっかりとしたものだった。しかしよく見れば、その肩は小刻みに震えている。

ふと。リナは、サナが立ち上がる気配を感じ、そして次の瞬間。

 

「……え?」

 

サナはリナのことを優しく抱きしめていた。

 

「……ねえ。どうして今まで黙っていたの?」

「それ、は…、二人を悲しませるのがいやで…」

「本当に?」

「え?」

 

ドキリと、心臓の鼓動が跳ね上がる。今までリナ自身がそう思っていたのだが、果たして本当にそれが理由だったのか。

 

「本当は、わたし達と赤の他人になるのが怖かったからじゃないの?」

「あ…」

 

リナの目から、涙が零れ出す。今までリナ自身が気づいていなかった気持ちに、今気づいた。自分はいつしか二人のことを、本当の両親のように慕っていたのだ、と。

 

「リナ。今のリナが何者だろうと、お前は俺達の娘だよ」

 

さっきまでの難しい顔からは想像できない程の優しい口調で語る一也。

 

「お、父さん…、お母さん…!!」

 

そしてリナは、堰を切ったように泣き出すのだった。

 

 

 

 

 

しばらくして、リナもようやく心が落ち着いた。

 

「大丈夫、リナ?」

「……うん。ありがと、お母さん」

 

お礼を述べてからふと思い、リナは尋ねる。

 

「でも、お父さんもお母さんも、どうしてそんなに落ち着いてるの?」

 

聞かれた二人は苦笑いを浮かべ。

 

「実を言うとね、随分と前からリナが別人だって気づいてたの」

 

と、とんでもない爆弾を落とした。

 

「……へ?」

 

むしろリナの方が驚き、目が点になっている。

 

「ええっ!? 一体いつから!?」

「うーん? 漠然と違和感を感じたのは、リナが意識を取り戻した後かな? もしかしてって思ったのは、1年くらい経ってからだったと思うけど」

「それって、ほぼ初めからじゃない…」

 

リナはがっくりと項垂れた。

 

「俺はサナから聞いてからだな。最初は気が触れたんじゃないかと心配したけど、注意深く見ていたら、確かに違和感を感じるようになって、今日までには俺もそう思うようになってたよ」

 

一也の話を聞き、自分の演技が大根だったのではなく、サナの勘が良すぎたのだと知り、少し的外れな安堵感を抱くリナである。しかしそれでも疑問はある。

 

「それにしたって、どうしてわかったの? 性格は、……ちょっとは違うけど、それでも[リナちゃん]とは似てると思うし、大病を患った後に性格が変わるケースだってあるから、そこまで疑問に思われるなんて思わなかったんだけど」

「そうね…」

 

サナは少しだけ考え込み、そして言った。

 

「あなたは時々大人っぽいこと言うけど、5歳にしてはマセ過ぎてたから。嵐を呼ぶ園児でも大人のマネしてるだけなのに、リナは、ね?」

「う…」

 

心当たりがありすぎて、唸ることしか出来ないリナ。

 

「……でも、最初に違和感を感じたのは、一人称ね」

「……一人称?」

「そう。()()()は自分のこと、『わたし』って言ってたけど、リナは『あたし』だったから」

「あ」

 

言われてみればと、[リナちゃん]と出会ったときのこと、そして[リナちゃん]の記憶を思い起こす。

とはいえそれは、ほんの些細なこと。最初のひと言が「わ」か「あ」の違い。普通に会話していたら聞き流してしまう程度のものだ。

 

「お母さん、結構耳聡いね」

「わたしの耳はすこぶる性能がいいから」

 

何だか自分と似た事言うなと思い、そういえば自分と[リナちゃん]は異世界の同位存在だったと思い出し、その母なら然もありなんと納得するリナ。ある意味思考が麻痺してるとも言える。

 

「でも、別人だって知ってたなら、どうして…」

 

リナが感じた最後の疑問を口にし、しかし最後まで言葉に出来ない。そんなリナに、サナは優しく微笑み言った。

 

「一也さんが言ったでしょう? 今のリナが誰だろうと、あなたはわたし達の娘だもの」

「……あたしはこれからも、二人の子供でいいの?」

「「もちろん」」

「……ありがとう」

 

再び涙腺が緩みそうになるのをぐっと堪え、笑顔で応えるリナ。

……しかし、話はこれで終わらない。

 

「……それで? 他にも話はあるんでしょう?」

 

先に切り出したのはサナだった。

 

「リナが意を決して告白したのは、そう思わせる重大な何かがあったからだろう?」

 

サナの後を継いで、一也が尋ねる。

 

(……そうか。お父さんが難しい顔してたのは、あたしの告白と、それに関連する何かを想定してたんだ。……それでも笑顔でいられるお母さんって、結構肝が据わってるなぁ)

 

そう考察してから、リナは深く息を吐き気を引き締めた。

 

「お父さん、お母さん。あたしは今夜、友達と一緒にある事件を解決しなくちゃならないの」

「……それって以前、夜に出かけていったのと同じこと?」

 

サナの言ったのは、バーサーカーのカード回収の時にリナが述べた理由のことである。

 

「うん。でも、おそらくあの時よりも危険で、下手をしたら命を落とすかも知れない」

「リナ!?」

「一也さん」

 

思わず声を上げる一也にサナは、首を横に振って制止する。とはいえ、さすがにサナから笑顔が消え失せているが。

 

「……こういう事言うと、死亡フラグだって言う人もいるけど、あたしはそうは思わない。

だってあたしは負ける気なんて無い。あたしは最後まで勝つ気で戦う。これはあたしが、リナ=インバースだったときから変わらないことだから。

……でも、それでも、人の生き死にはままならないわ。だから。迷いを吹っ切るためにも、本当の事を打ち明けたの。迷ったまま戦ったら、それこそ死亡率が高まるから。あたしには帰る場所が…ううん、帰らなきゃいけない場所がある。だから絶対に負けない!」

 

その決意は非常に固く。

 

「……わかったわ」

「サナ!?」

 

サナがかけた言葉に、一也は驚く。

 

「わたしは、リナを信じる。だから、必ず帰ってきなさい。あなたの家はここなんだから」

「うん!」

 

サナの励ましに、リナは力強く頷くのだった。

 

 

 

 

 

「クラスカードに宝石の護符(ジュエルズ・アミュレット)、黒鍵、魔術を込めた硝子玉、投擲用の短刀、遠話球(テレフォン・オーブ)、……そしてキャナルから借りた[烈光の剣(ゴルンノヴァ)]。うん、全部揃ってる」

 

身に着けた物、そしてバックパックの中身を確認して、それを背負いリナは部屋を出る。玄関では両親が待ち構えていた。

 

「リナ、行くのね」

「うん」

「必ず帰って来るのよ」

「わかってる。……絶対、大丈夫だよ!」

 

サナも一緒に見たことがある、アニメの主人公のセリフを口にするリナ。するとサナは。

 

「そうね。絶対大丈夫は無敵の呪文だものね」

 

そう答えて笑顔を返した。

 

「行ってきます。お父さん、お母さん」

「いってらっしゃい。リナ」

 

ばたんと扉が閉まり。

 

「……一也さん」

 

一也の胸に顔を埋め、肩を震わせるサナであった。




今回のサブタイトル
アニメ「魔法騎士(マジックナイト)レイアース」エンディングから

因みに0時を過ぎれば翌日なので、()()()()は間違いではないです。

さて。いよいよ始まる、2wei/NEXT(hertz含む)に於いての最終決戦です。気が重い。

魔族を倒すコツは【スレイヤーズ[降魔への道標(どうひょう)]】に於いて、リナがモノローグで述べてたことです。

リナが1年前に神名を救ってますが、もし事故に遭っていたら確実に死んでおり、その後にやって来たキャナルも宿主が見つけられないまま消失してました。
因みに神名がそのタイミングで死んだ場合、水色の髪の女神様(CV・雨宮天)によって異世界転生します(笑)。

リナの両親。名前も含めて無印2話以来の登場です。まあサナさんは【しあわせのかたち】の回に、リナのモノローグ回想でセリフはありましたが。
因みにサナさん、どんな字だったか思い出せずに読み返したら、リナと同じく片仮名でした。

次回「永久(とわ)と無限をたゆたいし」
見てくんないと、暴れちゃうぞ!
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