Fate/kaleid caster ドラまた☆リナ   作:猿野ただすみ

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今回、【スレイヤーズ】既存の魔法に、今作オリジナルの詠唱がついてます。


Front breaking

≪リナside≫

「ねえ。もしかしてミユは並行世界の…?」

「!」

「ふうん。よく気がついたわね、イリヤ」

 

イリヤのセリフに美遊はびくりと肩を震わせ、あたしは感心したように答える。

 

「なのはちゃんやサクラちゃんと会ってなかったら、多分気づかなかったよ」

 

なるほど。ある意味、並行世界の存在に接していたからこそか。

 

「それと…ううん、今はいい」

 

いつもとは違い、踏み込めないのではなく踏み込まないイリヤ。おそらくだけど彼女が途中でやめた言葉は、あたしが口にしたガウリイのセリフ、それについての事だろう。

今のイリヤなら、あれが何を指してるのかわかったとしても、おかしくはないはずだから。

 

「……へえ。君達、気づいてたのか」

「ま、色んなヒントが散りばめられてたからね。決定打は、クラスカードが並行世界から来たものかも知れないって、わかったからだけど」

 

実際、それと結びつかなければ、ガウリイが言ってた[聖杯]が何を指すか、予想すらつかなかったと思うし。

 

「……クッ、ハハハハ! いいね! 君、面白いよ!」

 

……なんだろう。前世からやたら、こういう厄介なのに好かれてる気がするのだが。

 

「……うん? どうやら儀式の乗っ取りは終わったみたいだね」

 

儀式の乗っ取り? ……聖杯戦争!?

 

「散開!!」

 

皆まで言わずにかけた言葉に、イリヤと美遊、そして当然あたしも咄嗟に飛び退く。その直後には、ほんの一瞬前まで美遊が立っていた場所に、巨大な黒い左手があった。ってなんじゃこりゃ!?

いや、確かに美遊を掌中に収めようとするんじゃ無いかと思って叫びはしたけど、まさかこんなもんが現れるとは思ってもみなかったわよっ!

 

「うん。中々いい判断だ。でも」

 

!! 避けた美遊を黒い手が追いかける! けど、この天才魔道士を舐めるなよっ!!

 

風魔咆裂弾(ボム・ディ・ウィン)!!」

 

びゅごおおおっ!!

 

もとより、単発で終わるなんて思っちゃいない。あたしは攻撃阻止の目的で唱えていた術を解放する。

放たれた爆風は美遊、そしてついでにイリヤを吹き飛ばす。美遊はその風を利用し、魔力での跳躍を織り交ぜて大きく距離をとった。よし、今!

 

「光よっ!」

 

再び[烈光の剣(ゴルンノヴァ)]を取り出し、黒い腕を斬り裂かんと振り下ろす!

 

がぎぎゃっ!

 

「なっ!?」

 

あたしは小さく声を漏らす。その黒い腕にはいつの間にか、一枚の盾が現れ、光の刃を防いでいたのだ。

 

「……ちいぃっ!」

 

小さく舌打ちをし、慌てて距離をとるあたし。だが、何故だかわからないが、反撃をする様子はみられない。

 

「ああ、やっぱり。受肉が半端に終わったせいかな。宝具の大半はあちら持ちみたいだ」

 

受肉? つまり肉体を得たって事? よくわからないが、あたしが到着するまでの間に半身が肉体を得たらしい。

 

「それにしても、君は本当に変わった存在だね。別の魂がその体に入り込んでいるのか」

「!?」

 

コイツ、あたしの在り方を…?

 

「しかも、異界の根源と繋がって…。ああ、そうか。君自身がシャブラニグドゥ世界の存在なんだね?」

 

そうか、コイツ。

 

「アンタ、あたしを見通したわね? いわゆる、千里眼ってやつでしょ?」

「ごめんね? 普段は抑えてるんだけど、どうしても君に興味が尽きなくてね。ああ、さすがに未来までは見ていないよ。それじゃあさすがにつまらないからね」

 

ちっ、余裕ぶって。

 

「……で? さすがにその巨大な手も、今、美遊がいるところまでは届かないみたいだけど?」

「ああ、そうだね。()()、あの位置からは移動できないようだけど…。でも、黒い僕には理性はないけど、()()()()()()()()()()?」

 

え、……あ!

 

「美遊! 逃げてっ!!」

「え…」

 

美遊が一瞬戸惑い、慌てて移動しようとするが、その時にはドーム状の結界から、数本の鎖が美遊にめがけて飛び出してきた!

 

「物理保護ッ!!」

 

イリヤが咄嗟に、複数の物理保護壁を美遊の周りに展開する。しかし。

 

ぱきゃあああああん!!

 

それらはあっさりと破壊され、美遊は鎖に絡め捕られた。

 

「ミユッ! ……斬擊(シュナイデン)ッ!」

 

斬擊で鎖を断ち切ろうとするが、傷ひとつ付けることが出来ない。なら!

 

赤竜(かみ)の戒め解き放たれし

黄昏暗き (くれない)の刃よ

 

……かつて、ひとりのトレジャーハンターが得意としたこの術。実は彼が唱えていたものとは詠唱が異なっている。彼の詠唱は幾度か聴き、あたしも実際に試してみたが、一度たりとも発動しなかったのだ。

 

我が力 我が身となりて

共に滅びの道を歩まん

 

おそらくは、彼の中で眠っていた者の力を直接引き出す呪だったのだろう。

しかしあたしには、とてもよく似た呪文の知識があった。故に。あたしは、()()()()()()()()()()()()、この術を再現して見せたのだ!

 

竜王の 魂すらも打ち砕き!

 

食らえっ!!

 

魔王剣(ルビーアイ・ブレード)ッ!!」

 

あたしは掌の中に生み出された紅き刃を、美遊を絡め捕る鎖に向かって振り下ろす!

 

ギィンッッ!

 

何!? 先程のイリヤの攻撃同様、あたしの攻撃は鎖に傷ひとつ付けることが出来ない。確かに彼が扱っていたものよりは威力が幾分落ちるものの、それでもある程度の高位魔族までだったらダメージを与えるだけの力があるというのにッ!

 

「無駄だよ。名残程度とはいえ、神性を持つ者を捕らえた僕の友(この鎖)は、その程度じゃ傷つかない」

 

くそっ! 悔しいけど、認めざるを得ない。

 

「ミユッ!!」

 

鎖がドームに向かって引っ張られ、イリヤが声を上げる。

 

「……駄目だったんだ。拒んでも、抗っても、逃げても無駄だった」

「ミユ! 諦め…」

「でも。そんなわたしに、寄り添ってくれる人のことを教えてくれた、そして、最後まで運命に抗えと言ってくれる人がいた」

 

美遊…。

 

「だから、わたしは諦めない。今はただ、サファイア(これ)をあなたに託すだけ」

 

自由になっている方の腕を伸ばし、美遊はイリヤにサファイアを手渡す。

 

「イリヤ。それとリナ。必ずわたしを助け出してね」

 

その言葉を最後に、美遊は結界の中に引きずり込まれた。

 

「ギルガメッシュ! これが美遊がいた世界の聖杯戦争だっての!?」

 

いつの間にか透明な足場を渡り、ドームの真上へと近づくギルガメッシュに、あたしは有らんばかりの声で疑問をぶつける。

 

「そう。イレギュラーが多すぎるけどね。

万能の願望器たる聖杯を降霊させるための儀式、聖杯戦争。そのために僕ら英霊までも利用しようっていうんだから、迷惑な話さ」

 

これは、アイリさん達に聞いた話と何ら変わらない情報。しかし…。

 

「それじゃあやっぱりミユも、聖杯戦争のために生まれたの?」

「『ミユも』? そうか。君も聖杯戦争の関係者なのか。ま、珍しくもない。いろんな世界、様々な時代で繰り返してきた儀式()だものね。

……でも、彼女は特別さ。彼女は聖杯戦争のために生まれたんじゃない。彼女のために聖杯戦争が創られたんだよ」

 

それは、一体…?

 

「彼女は、生まれながらに完成された聖杯だったのさ」

「……そう、いう事…か」

 

……詳しくは知らないけど、アイリさんはアインツベルンの技術によって造られた聖杯で、イリヤはおそらく、それを受け継いで誕生した存在だ。

けれど美遊は、聖杯そのものとして誕生した存在なんだろう。そしておそらくは、小聖杯であるイリヤ達とは違って…。

 

「ひとりは気がついてるみたいだけど。彼女は天然物で中身入り。オリジナルに極めて近いレアリティさ」

 

そう。美遊自身が大聖杯そのものと言って過言ではない、って事だ。

 

「人間が聖杯という機能を持ってしまったと言うより、聖杯に人間めいた人格がついてしまったのかな。いずれにせよ、あれは世界が生んだバグだ」

 

バグ、だって?

 

「「勝手なことをッ!!」」

 

あたしとイリヤのセリフが被る。しかしギルガメッシュは涼しい顔だ。

 

「怒りならこの僕じゃなく、彼女の運命か、それを利用しようとした大人達か。……あるいは理性(ぼく)を失って肥大化した、憐れなこの僕にぶつけてよ」

 

その瞬間結界が弾け飛び、中からは手足を生やした黒く巨大な魔獣が現れた。何となくだが、魔剣ドゥールゴーファの魔獣を彷彿とさせる。

おそらくは切り離された、ギルガメッシュの半身なのだろうが、まさかこうも見る影もないとは…。

 

「受肉して切り離された僕はどっちの味方でもないんだけど、こうするのが一番自然なのかな」

 

足場から、背を下にして飛び降りるギルガメッシュ。

 

「もう、この戦争は止まらない。死にたくなければカードを置いて逃げなよ」

 

彼は忠告をし、怪物の上に落ちる。ここからじゃ見上げる形なので、どうなったかまではわからないが。

 

「……何よ! 勝手な事ばっか!!

クラスカード『バーサ…』」

「イリヤッ!!!」

 

暴走しそうになるイリヤを、あたしの声が引き止める。

 

「……イリヤ。あたしは、怒るなとは言わない。だけど、こういう時だからこそ冷静に行動しなさい。美遊を、救うためにも!」

 

自身も冷静であろうと、あたしは心を落ち着けながら語った。

 

「……うん!」

 

一度深呼吸をしてから、力強く頷くイリヤ。これで、いい。

 

「うん。実にいい判断だ」

 

ギルガメッシュの声がする。やはり生きてたか。

 

「それで? 作戦はあるのかい?」

「そんなの決まってるじゃない!」

 

あたしは言うと、上空のイリヤと目を合わせて頷き合う。

 

「「正面突破!!」」

 

あたしと同時に答えたイリヤは、再びカードをルビーに触れさせ。

 

「クラスカード『バーサーカー』限定展開(インクルード)

射殺す百頭(ナインライブズ)!!

 

巨大な斧剣を魔獣ギルガメッシュに向かって落下させた。

 

 

 

 

≪イリヤside≫

「そんな劣化物(レプリカ)じゃ原典(オリジナル)には勝てないよ」

 

英霊の子が言って、その目の前に巨大な弓と矢が現れた。

 

真・射殺す百頭(ナインライブズ)!!」

 

その矢が発射されるのと同じタイミングで、わたしは次の行動をとる。

放たれた矢は九つに分かれ、それぞれの軌道で襲いかかってくる。そして。

 

ドドドォ!!

 

数本が突き刺さり、その体が無残に砕け散った。

 

「あーあ、逃げていればよかったのに」

 

英霊の子はそう言う。だけど。

 

パキイイイン

 

乾いた音と共に()()()()()()()限定展開が解けて、サファイアの姿に戻った。

()()()わたしは着地して、英霊の子の前まで一気に駆け寄り。

 

パアアアアアアン!

 

その頬に平手打ちをお見舞いする。

 

「……驚いた。あと一本ステッキがあったらまずかったかも」

 

……流石に、もう一本はいらないかな?

一瞬、羽根ルビーが思い浮かんでそんな事を考えたりもしたけど、すぐにその思いを振り払って英霊の子に尋ねる。

 

「ミユはどこ!?」

「僕の中さ」

 

……中?

 

「ちょうど中心部くらいかな? ちゃんと生きているよ。

……でも、気をつけてね? 君は今ここで死んじゃうかも知れないから」

 

それと同時に、足元から複数の武器が飛び出してくる。……だけど。

 

「あなたもね?」

 

そう言って、すうっと横に移動した。同時に。

 

螺光衝霊弾(フェルザレード)!!」

「!?」

 

リナの術が英霊の子に迫る。

 

バキャアアアアン!

 

だけど、英霊の子の目の前に現れた一枚の盾で、その術は防がれてしまった。

 

「危ない危ない。大人の僕ほどじゃないけど、どうやら慢心してたみたいだ」

「なら、慢心ついでにもう一発食らいなさい!」

「えっ、クロ!?」

 

いつの間にか現れたクロが、いつものあの捻れた矢を放つ。

 

虹霓剣(カラドボルグ)偽物(レプリカ)か。残念だけどそれくらいじゃ…」

壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)!」

「!?」

 

盾に当たる直前に、クロは矢を爆発させた。

 

「転進よっ!」

 

クロが声をかけて。

 

『イリヤさん!』

『イリヤさま!』

 

そのタイミングで、ルビーとサファイアがわたしの許にやって来た。わたしはルビーを掴んで転身すると、もう片方の手でクロの手を掴み飛び立つ。因みにリナは、サファイアを掴んでからレイ・ウイングで飛び立っている。

 

「それで、あれはなんなのよ!?」

 

わたし達が着地したタイミングで、クロが尋ねる。だけどそれに答えたのは、わたしやリナじゃなくって。

 

「攻撃方法から見て、八枚目のカードの英霊でしょう」

「バゼットさん!」

「しかし、どうしてあの様な異形に…」

 

バゼットさんの疑問は当然のことだった。リナとクロだって、詳しいことは知らないはずだし。

 

「実は…」

 

わたしは話した。

 

あの英霊は、ミユと追いかけた先で宝具をひとつ落下させ、大空洞を剥き出しにした事。

あの英霊があの場所で何かを…、多分さっき言ってた術式の乗っ取りをしようとしてた事。

マズいと思ったわたしは、英霊をその儀式から押し出そうとした事。

英霊は分離して、押し出した方は子供の姿だった事。

ドーム状の泥の結界が拡張してきて、わたし達は子供の英霊を連れて待避した事。

合流したリナのセリフで、ミユが並行世界から来たことを知った事。

ミユが化け物の方の英霊に捕まった事。

英霊の子の説明で、ミユは並行世界の聖杯戦争の聖杯だったと知った事。

英霊の子が、化け物の英霊と再び融合した事。

そしてミユは、あの化け物の中にいる事。

 

アレの攻撃から逃げ回りながら、わたしはこれらの事を話し終えた。

 

「ミユがあの中に…!?」

「並行世界…。信じ難いことですが…。しかしなるほど。どうりであの翁が首を突っ込むわけだ」

 

……翁? それって、時々話題に上がる宝石翁さんのこと? そういえばその人、第二魔法…並行世界の運用、だったっけ? それの使い手だったもんね。

 

「でもどうするのよ! 助けるにしても、こんなの近づくことすら…」

「そんなのわかんないよ! でも、絶対に助ける! だってミユは言ったからッ! 『必ずわたしを助け出してね』って!!」

 

そうだ。おそらく今までのミユだったら、きっと諦めてただろう。そういう達観したところが、前からあったから。

でもあの時は、わたしを。そしてリナを頼ってくれた。だから、必ずミユは助け出すんだ!

 

「身体が大きくなると、攻撃まで大雑把になっていけない」

 

突然、英霊の子が語りだした。

 

「でもまあ、どうせだから、もっと大雑把にいこうか」

 

そう言って取り出したのは、巨大な剣。化け物の方の手が掴み取る。

 

「流石にもう、避けてとは言えないな」

 

化け物は剣を振りかぶり…。

 

『イリヤさん、薙ぎ払いが来ます! 上空へ避けてください!』

 

ルビーがそう言うけど、逃げるわけにはいかない!

 

「……ねえ、リナ。これからわたしが凄い無茶をするって言ったら、あなたは怒る?」

 

わたしの問いかけにリナは。

 

「……そうね。意味のない無茶だったら怒るでしょうね。でも、無茶をしなきゃいけない状況だったら、あたしは怒らない。ううん、怒れないわ。だってあたしも、何度もそういった無茶をしてきたから。

……だからイリヤ、思いっきり行きなさい!」

「うん!」

 

わたしは頷き、右手を伸ばす。

 

「サファイア! 力を貸して!!」

『! はい!!』

 

リナの手をすり抜け、わたしの右手に納まるサファイア。そこへ横薙ぎの一撃が迫ってきて。

 

「うそ、でしょ」

 

クロは言う。でも、これは現実だ。

英霊が振るった剣は、その途中からポッキリと折れていて。

 

ドォンッ!!

 

先端の部分が大地に突き刺さる。

 

「君は、何者だ?」

 

英霊の子が尋ねるけど、わたしはそれには答えず。

 

「友達が助けを求めてるなら…、絶対に助け出してみせるっ!!」

 

ルビーとサファイアが融合した新たな力、ツヴァイフォームの衣装をまとったわたしは、力強く高らかに宣言をした。




今回のサブタイトル
アニメ「スレイヤーズEVOLUTION-R」EDから
※意味は林原めぐみの造語で「正面突破」の意。

以前はイリヤがリナの影響で原作より成長しているとしましたが、美遊もやはりリナの影響で考え方に変化があったようです。
なので、原作同様取り込まれた美遊ですが、もうひと反撃あったります。

次回「JUST BEGUN」
見てくんないと、暴れちゃうぞっ!
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