Fate/kaleid caster ドラまた☆リナ   作:猿野ただすみ

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魔法少女イリヤはうつむかない

≪リナside≫

金髪ツインテの背後の空間から、複数の剣先が頭を覗かせている。ハッキリ言って、めちゃくちゃ状況が悪い。一度の斉射なら風波礫圧破(ディミルアーウィン)風魔咆裂弾(ボム・ディ・ウィン)で防げるだろうが、連続斉射となると、あたしの術が続かないのだ。

 

逃げろ…! そいつは…、その女は、危険だっ!

 

美遊のにーちゃん…美遊兄はそう言うが、簡単に逃げられる状況でもない。

 

「お前達の目的・侵入方法を教えろ。3秒以内に答えねば、ひとりずつ殺していく」

「いや、答えたからって殺さないって保証もないし?」

 

とりあえず、あたしのペースに持ち込もうとそんなことを言ってみるが。

 

「……3」

 

聞く耳持たねーでやんの。

 

「……2」

 

とにかくあたしは、風波礫圧破の詠唱を始める。

 

「……1」

 

そして。

 

「まずはひとり目だ」

 

そう言って射出された1本の剣はしかし、ギルの目前の波紋の中に消えていった。

 

「……何だ? 何をした、貴様!!」

 

激高した金髪ツインテは、剣を一斉に射出する。しかしその剣のことごとくも、ギルの波紋の中へと吸収されていく。

 

「総数に比べれば塵みたいな数だけど、ご返却どーも」

 

恭しくお辞儀をしながら言うギル。慇懃無礼も甚だしい。

 

「こうして見ると、改めて実感するよ。なんて贅沢で傲慢な戦い方だ。

本来、ひとりの英霊に対して宝具はひとつ。多くても三つが限度だ。そんな神話や伝承に謳われる宝具の原典を星の数ほど有し、それを矢のように、無造作に、無尽蔵に放つ。故にアーチャー、故に最強。それこそが人類最古の英雄。英雄王ギルガメッシュ。

宝具は宝物庫そのもの。王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)

僕のカードの使い心地はどうだい、アンジェリカ」

 

なるほど。無尽蔵な宝具のカラクリはそういうことだったか。しかし逆を言えば、それらの刀剣類は()()()()宝具ではないということ。つまり、宝具の真名開放は出来ないってわけだ。……まあ、真名開放しなくても充分脅威だけど。

 

「……まさか、受肉したのか」

「さすがに理解が早い。まあ、受肉と言っても半分だけどね」

「なるほど。財宝の一部が消えていたのは、お前と二分したためか」

 

……なんだかあたし達、置いてけ堀なんだけど。

 

「君らにとっては幸運だったかもね。完全な受肉だったらこんな物語、僕が塗り替えていた」

 

……ええと。

 

「カード風情がよく吠える。大人しく使われていれば良かったものを…」

 

……。

 

「まったく…。傲慢や慢心まで真似しなくたっていいのに…」

「だああああっ! 爆煙舞(バースト・ロンド)ッ!!」

 

ちゅごうんっ!!

 

あたしが放った術が炸裂する。とはいえ、どちらにも当ててはいない。あくまであたしに注目させるためであって、敵愾心を煽るためではないからだ。

 

「アンタら、さっきからぺちゃくちゃと! あたし達にもわかるように、ちょっとは説明しなさいよっ!」

「いやぁ。この辺、予定調和とイレギュラーがひどく入り組んでてさ」

 

ギルが困り顔で答える。むゆぅ、確かにあまり難しい話をする状況ではないか。

 

「……ややこしい話は後にして、わたしが知りたいのはひとつ。ミユはどこにいるの!?」

 

イリヤが、金髪ツインテことアンジェリカに向かって尋ねる。

 

「それを知ってどうす…」

美遊は、城の中央…。一番高い塔の最上階だ…!

 

アンジェリカの言葉を遮り、美遊兄が答えた。よく知ってたな、とも思うけど、どうせ何も出来ないだろうと、当たり障りのない情報は与えているのかも知れない。これもギルの言う慢心ゆえかも知れないが。

 

頼む…美遊を…

gush奔れ!」

がああああああああっ!

 

美遊兄のセリフを遮り、アンジェリカが短く(しゅ)を紡ぐと、牢の中から彼の悲鳴が上がる。助けてやりたいが…、今のあたし達ではどうしようもない。

 

「余計な口出しは、命を縮めるだけだ。……だが、どのみち無意味なこと。お前達は、今この場でまとめて殺す」

 

そう言って王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)を展開するアンジェリカ。まったく、融通の利かない相手ね。

 

「ねえ、ギル。アンタの目的って()()なんでしょ? だったら、後は任せてもいい?」

「偶然だね。僕も君達に、逃げる様言おうとしてたんだ」

 

そう言いながら[身隠しの布]を、あたしに押しつけるように手渡してきた。そのやり取りに、何か言おうとして言葉を飲み込むイリヤ。彼女もわかっているのだ。

 

頼む…。美遊を、救ってくれっ…!!

 

あたし達の目的、あたし達が何をするべきかを。

 

「さあ…」

 

そう言って自身の首飾りに手を触れようとして、その動きを止める。あたしが硝子玉を手にしているのを見たからだろう。あたしは硝子玉を掲げ、[力ある言葉]を叫ぶ。

 

明りよ(ライティング)!!」

 

硝子玉が割れ、持続時間0の強烈な閃光が奔る。あたしはイリヤの手を引き、[身隠しの布]に囲われた状態で走り出した。

 

 

 

 

 

逃げ出したあたし達は外へと飛び出し、どこか侵入できそうな場所を探す。しかし良さそうな侵入口が見当たらない。翔封界(レイ・ウィング)で上空から、とも考えたが、風の結界が布の外に飛び出してしまうので感知される可能性もある。アンジェリカはギルが相手してるけど、ベアトリスと葛木が残ってる状態で、さすがにそんな危険は犯したくない。特に葛木…ってかズーマは、空間渡って突然現れるし。……おや、なんだろう? 何か違和感が?

 

「リナ! こうなったら、正面から侵入するしかないんじゃないかな?」

 

しかし、その違和感の正体に行き着く前に、イリヤが声をかけてきた。

 

「……それしかなさそうね」

 

出来る事なら避けたい選択だが、空から行くよりはマシと思うことにしよう。

あたし達は走る勢いのまま、正面の扉を勢いよく開き、城内へと突入して、……落ちた。

……って!

 

浮遊(レビテーション)!」

 

咄嗟に呪文を唱え、あたしは転がり落ちるのを防いだ。下を見れば、何やら色々な道具が小高く積み上げられ、小さな山のようになっている。……そして。これらはおそらく、その全てが何某かの魔術礼装に違いない。

 

「へぇ、ホウキも無しに浮かぶなんてイカしてるじゃん」

 

あたし達にかけられたその声は、少し前に公園のところで聞いた声。あたしはゆっくりと床に降り立ち、術を解き。

 

「あなたは…」

「ベアトリス・フラワーチャイルド…」

 

あたし達が呟くように言うと。

 

「あん? アンタら、さっき遊んだばかりの天災(まど)()達じゃん」

 

……なんだろう。今、ものすっごくバカにされた気がするのだが。

 

「いやー、ちゃんとあたしの名前覚えてくれてて、ベア子うれしー!」

 

そう言った直後、素早くあたしの目の前まで詰め寄って。

 

「それじゃあご褒美に、Dieプレゼント♡」

 

あたしのお腹に日傘の先端を突きつけ…。

 

 

 

 

 

≪イリヤside≫

ベアトリスがリナのお腹に日傘の先端を突きつけた、次の瞬間。その先端が爆発を巻き起こした!

 

「リナッ!!」

 

叫んだわたしは、リナに駆け寄ろうとして気がついた。

 

「……いったぁ。……ふう、危ない危ない」

 

そう言ってむくりと起きあがったリナの姿は、ブレスプレートに[烈光の剣(ゴルンノヴァ)]、だけど青白い岩の肌だった。

 

「セイバーとバーサーカーの二重夢幻召喚(デュアル・インストール)…?」

「そゆこと。ランサーとバーサーカーの組み合わせには劣るけどね」

 

そう言ってウインクした後、表情を引き締めてベアトリスを見る。

 

「……なんだよ。アンタもカード、持ってたのか」

 

さっきまでとは違い、少し冷めた声のベアトリス。

 

「ねぇ、それが何かわかる? ウチの旦那は仕事熱心でさァ、世界中から礼装やら魔具やら器やらを集めてんだ。

それを宝具だか聖杯だかに置換しようとしては、失敗の繰り返し。気がつけば、こんなゴミの山の出来上がりってワケ。

……そんなウチがさ、ようやく本物の聖杯を手に入れたんだ。邪魔するヤツは()()KILL(ギル)に決まってんジャン!!」

 

再び右手に限定展開(インクルード)したベアトリスが、その手を振り下ろす。

 

「光よっ!」

 

ぎぎゃっ!

 

リナは[烈光の剣(ゴルンノヴァ)]を起動してそれを受け止めるけど、力負けして吹き飛ばされた!

 

「リナッ!!」

 

わたしは再び叫び声をあげた。それに応えるように、リナは魔術礼装の山から這い出してくると、わたしに向かって軽く笑顔を作る。だけどその笑顔は若干ひきつり、額からは血が流れ脂汗も流れてる。それは、当たり前だ。だってリナは、痛みに対してそれほど耐性があるわけじゃない。あんなの、ただの痩せ我慢に違いないんだから。それなのに、わたしに心配かけないように無理してあんな…。

 

「へぇ、あの攻撃にも耐えるんだ。どこの英霊か知んないけど、なかなかやるじゃないの」

 

確かにバーサーカー(ゼルガディスさん)の岩の肌はとても丈夫だけど、わたし達が集めた方のバーサーカーには遠く及ばない。

 

「……そんじゃあ、もう一発イッとくゥ!?」

 

そう言ってベアトリスは、もう一度腕を振り上げた。

 

 

 

 

 

それからしばらく経った。リナはベアトリスの大ぶりの攻撃を躱しながら接近して剣を振るうけど、その圧倒的なパワーに圧倒されて上手く攻撃を当てられないでいた。

……それに、なんだかここに来て、リナの動きに精彩が無くなってきたような気がする。これって一体…?

 

「……はは、どうした? 随分動きが大雑把になってきたじゃねーか。ああ、わかるよ。お前も段々、狂化の影響を受けてきたんだろ?」

「え? 狂化の影響…?」

 

わたしが聞き返すと、ベアトリスは呆れた表情になった。

 

「なんだ、知んねーのか? バーサーカーのカードは夢幻召喚(インストール)し続けると、段々と狂化の影響を受けるんだよ。まあ、狂化に完全に飲み込まれるまで、精々十分くらいじゃねーの?」

「な、リナ!」

「ま、まダ、しばらくはモつわ…」

 

リナはそう言うけど、もう意識を保ってるだけできつそうだよっ! そもそも冷静なリナだったら、絶対ここは退いてるはず!

 

「おう、言うジャン! まさに[バーサーカー]って感じじゃねーのっ!!」

 

そう言って何度目かの腕を振り上げ、リナは[烈光の剣(ゴルンノヴァ)]を振りかぶる。でも、違う! まともにぶつかり合っても、ベアトリスのパワーには勝てないっ!!

 

ごっ!!

 

「カハァッ!」

 

わたしの予想通り、リナはベアトリスの腕で吹き飛ばされてしまう。ベアトリスは横たわるリナに近づくと、その大きな手でリナの頭を鷲掴みにして持ち上げる。

 

「キヒッ! あんた、どこまで耐えられるかなァ?」

「がああああっ!?」

 

頭を締め上げられて、悲鳴を上げるリナ。

 

「……だめ。やめて」

「ああん。やめるわけねえだろ。あたしはこういうのを聞きたかったんだからさァ♡」

 

わたしのつぶやきに、ベアトリスは悦に入った表情で答えた。

こんなの、こんなのだめだよ。このままじゃリナが…。何か、武器は…。

わたしは魔術礼装の山を漁り、目に映った、布に包まれた棒状のものを掴んでベアトリスに突っ込んでいく。

 

「ハハン! アンタ原始人? そんな棒ッ切れで何が出来るってんだよっ!!」

 

ベアトリスはそう言ってリナを手放し、わたしに向かって腕を振り上げる。

……でも。きっと()()は、ただの棒じゃない。この棒に巻かれてる布って、リンさん達が使ってた拘束布ってやつみたいなものだと思う。という事は、これはとても強力で、とても危険なものかも知れない。

それでもわたしは自分の勘を信じて、振り下ろされたベアトリスの拳に握った棒を叩きつける。すると、巻き付けられた布は弾け飛び、中から現れたのは…!

 

「……何ソレ、意味分かんない」

 

ベアトリスが呟くように言った。

布の中にあったのは、魔法使いが造った魔法の(カレイド)ステッキ、マジカルルビー。やっぱりある意味危険だった。

わたしは魔法少女に転身していた。

 

『イ…イリヤさああん!』

「えぶうううっ!?」

 

ルビーがわたしの顔面に直撃してきた。……痛い。

 

『信じてましたよ、イリヤさん! きっとわたしを見つけてくださると!

単身敵に捕まり封印布に巻かれて捨てられたときは、永久の孤独という名の下の死を覚悟しましたとも! ですがいかな運命も知った事かと繋がった、わたしとイリヤさんとの縁と絆!!

何やら不愉快なことを考えてたっぽい事は許しますので、今こそ万感の思いを込めて呼ばせてください! あなたこそわたしの、最初で最後のマイ・マスターと!!』

 

危険だって思ってたのバレた!? ……って、今はそれどころじゃなくって!

 

「ちょ、ちょっと待った! ……ごめんルビー。再会できたのは嬉しいけど、今は遊んでる場合じゃないの。倒したい人が…、倒さなきゃいけない人がいるから。

……それに」

 

わたしは視線を移す。

 

「リナ。夢幻召喚(インストール)を解除して」

「で、でモ…」

「……はっきり言うわ。今のリナは、わたしの邪魔にしかならないの」

 

胸が苦しくなるのを我慢して、わたしは言った。リナは一瞬黙り込んで。

 

「……ゴめン、イリヤ。……接続解除(アンインストール)

 

夢幻召喚を解除したのでした。




今回のサブタイトル
甘岸久弥「魔導具師ダリヤはうつむかない」から

原作よりも早く、バーサーカーのカードの欠点が判明しました。もちろんリナは、その欠点をあらかじめ知ってましたが(カードの英霊としてのゼルガディスから聞いている)。
因みにリナが、セイバーとバーサーカーの組み合わせがランサーとバーサーカーの組み合わせに劣ると言ってますが、別にアメリアとゼルガディスがラブラブという意味ではありません。

次回「四界の闇を統べる王」
見てくんないと、暴れちゃうぞっ!
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