Fate/kaleid caster ドラまた☆リナ 作:猿野ただすみ
「……はっきり言うわ。今のリナは、わたしの邪魔にしかならないの」
イリヤにハッキリとそう言われて、その時のあたしはようやく理解した。……いや、それは正確じゃないだろう。その時は狂化の影響を受けて、思考力はかなり低下していたから。ただ、イリヤの想いを感じ取っていただけ。それを受けてあたしは
「ハッ! いいじゃん、いいじゃん!! 面白いのはそっちの自称天才魔道士かと思ってたけど、アンタも結構キてんじゃん!?」
……自称と言われるのはムカつくが、まだ思考が鈍いことに加え、あんな醜態を晒してしまった手前、さすがに文句も言えない。
「リナは正真正銘、天才魔道士だよ。確かにうっかリナな時もあるけど、その分差し引いても、あなたに自称なんて言われる筋合いはないよ!」
イリヤ…。親友にそこまで思われて、あたしは少し嬉しくなった。……まあ、間にちょっとディスられてるけど、それこそ自分でも理解してる部分なので、文句など付けようもない。
「おーおー、泣けるねェ! オトモダチのためにそこまで言って! それじゃあちょっと遊んでやるよっ!!」
そう言ってベアトリスは大きな瓦礫を、イリヤに向かって投げつける。それを躱し。
「
斬擊を飛ばすものの、ベアトリスは限定展開した右腕でそれを防いだ。
「ンだァ? ショボい攻撃してんじゃねェよ!!」
そう言って振り抜く拳が当たる直前、軌道を変えてベアトリスの頭上を越えていったイリヤは、体をきりもみ回転させながら。
「全力の、
魔力弾を撃ち込んだ。しかしベアトリスは、それをもその腕で庇い防いでいる。
「ショボいって言ってんだよォ!!」
ベアトリスは払い除けるように拳を振り、イリヤはルビーで防御するものの大きく吹き飛ばされた。
「イリヤ! 大丈夫!?」
「リナ!? う、うん。リナこそ大丈夫なの!?」
「あたしは…、体は
下手にとり繕っても仕方がない。あたしは素直に答えた。
「……わかった。
「……! りょーかい!」
どうやらイリヤも気づいているようだ。ベアトリスは…いや、ベアトリスが使うカードの英霊は、今のあたし達では簡単に倒せる相手じゃないって事を。もちろん、だからって簡単に引き下がるわけにもいかないのだが。
「おいおい、あたしとバトってるってのに、随分と余裕ぶっこいてくれんねぇ」
ベアトリスの右腕が、メキメキと膨れ上がっていく。
「おしおきしちゃうゾ☆」
そう言うと、その腕を一気に振り下ろす。
「散開ッ!!」
あたしの指示に、一斉に飛び退く、その直後。腕が叩きつけられた床が派手に吹き飛んだ。
「
「だから、効かねェってんだよ!!」
先程から繰り返されるイリヤの砲撃は、そのどれもが右腕によって防がれている。逆を言えば、限定展開されていない部分に当たれば充分にダメージを与えられるということだろうが、さすがに戦い慣れているのだろう、それを簡単に許すような相手ではないようだ。
「何にも攻撃が通じない…」
『相変わらず、火力不足は否めませんねー』
「せめてサファイアがいれば、ツヴァイフォームで…」
おいコラ、イリヤ!
『いけませんよ、イリヤさん! あの時、どれほどの器官が損傷したことか! わたしが必死に治癒させて頂きましたが、イリヤさんの身体には、まだ多大な傷が残っています。アレはあの時限りの最終手段だったんです!』
……あたしが何か言うまでもなく、ルビーが注意を促してくれた。イリヤ自身もそれで納得したようだ。……ったく。ここは無茶するべき場所ではない。さっきのあたしみたいに思考が低下してるならまだしも、そこの見極めがまだまだ甘いようね。
「つまんねーなァ、オイ! 派手に変身するからどれほどのモンかと思ったら、そんなショボい攻撃しかないワケ? 他に引き出し無いなら、そろそろ壊すよ?」
ちっ、言いたいこと言ってくれる。
「……火力が足りないなら、上げるしかない!」
え? イリヤ?
彼女はホルダーからカードを引き抜き、床に叩きつけるように置く。
『ですがイリヤさん!
「
限定展開じゃない…ってまさか!?
「出来る気がする…ううん、きっとできる!
使えるって、夢幻召喚!? だけどイリヤは、カードの契約は…いや、そうか! まだクロエと分かれる前、確かに使って見せていた! もしその感覚があるのなら、確かにカードを使えるのかも知れない!
「
かけ声と共に足元に魔法陣が輝き、光に覆われたイリヤのその姿を変えた。あの姿は、キャスターか。
くっ! だけど、それでもベアトリスには届かない。ベアトリスが使うカード、
……くそっ! ならばせめて、あたしが何かフォローしなくては! そう、この魔術礼装の山。この中に何か使えるアイテムでも埋もれてないか?
藁をも掴む気持ちで、あたしは礼装の山を漁り始める。何かないか!? 何か…!!
「超キてるよ。やっぱたまんないね。カード持ち同士の戦い。まるで…」
ベアトリスは限定展開を解き。
「
カードの真の力を発動させた。
「神話の中にいるみたいじゃん!!」
くぅっ、急がなくちゃ! あたしは逸る気持ちを抑えて、再び礼装の山…を……。
……え? どうしてこれがここに? いや、今は理由なんてどうでもいい。とにかく、全てを揃えて…!!
わたしは夢幻召喚して、カード回収の時にキャスターが使っていた砲撃の魔法陣を発動させた。するとベアトリスは限定展開を解いて、夢幻召喚し直す。アレは、ミユをさらったときの…。
あの時の雷撃はかなりの脅威だった。でも、ここで退くわけにはいかない!
「更に、二門追加ッ!! 絶対に撃ち勝つ!!」
「撃ち勝つ? 冗談っしょ? このあたしに!?」
ベアトリスが持つハンマーが、雷を纏っていく。
『マズいです、イリヤさん! あの手甲、あのハンマー、額に埋まった石…。あれがあの英霊だとすると、あのハンマーは…』
ルビーが説明するけど、今から破棄しても…。そう思った、その時。
「イリヤ。少しだけ踏ん張って」
リナがそう言って、ベアトリスの方にゆっくりと歩いていく。いったい…?
四界の闇を統べる王
汝の欠片の縁に従い…
……え? その呪文って…!?
汝ら
我に更なる力を与えよ!
『リナさん? 一体何を…?』
「はン! 何する気か知らないけど、あたしに勝てると思ってんの?
消し飛べ、元素の塵まで!」
ベアトリスが宝具を発動させる気だ。でも、それならわたしは、リナの期待に応えるだけ!
「五門壊砲…!」
わたし達が真名開放しようとしている一方で、リナは次の[
凍れる黒き虚ろの刃よ
我が力 我が身となりて
共に滅びの道を歩まん…
……やっぱり! リナが唱えているのはあの術だ!
わたしが確信を持った、その時。
「
ベアトリスの宝具が開放され、わたしも迎え撃つため。
「
『駄目です! 強度がまるで違う…! このままでは押し切られて…』
……うん。このままじゃおそらく押し切られるだろう。だけど。
「……大丈夫。わたしはしばらく持ち堪えればいいだけだから」
『イリヤさん?』
ルビーは疑問に思ってるみたいだけど、その答えはすぐにわかるはず。
神々の 魂すらも打ち砕き!
リナが、[
「
リナの両手の中にはショートソードくらいの、昏い闇の刃が生み出され、それをわたしの砲撃とぶつかり合っている雷撃へと叩き込んだ!
闇の刃は何の抵抗も無く、雷撃を左右真っ二つに切り裂いた。そして方向の逸れた雷撃は、わたし達の後ろの壁に当たり、わたしの攻撃はベアトリスに直撃する。
衝撃で発生した煙が晴れると、衝撃で飛ばされたリナが頭を振りながら立ち上がり、ベアトリスは元の位置でハンマーを盾にして攻撃に耐えていた。そして後ろからは。
「なんだ…?」
「今の雷撃は…」
聞こえてきたのはギルくんとアンジェリカの声。雷撃で壁に開いた穴の向こうは、さっきまでいた地下室に繋がっていたみたいだ。
でも、ベアトリスは心ここに在らずって表情で呟いた。
「……なんだ、そりゃ?」
本当に、あり得ないものを見るような目で。
「元素まで分解される神の一撃。それを真正面から絶ち斬っただって? どうしてそうなる。なんでたかが人間がそんな事を出来る。
……アンタいったいナニモノだ?」
何者も何も、リナは美少女天才魔道士だ…? ん? リナ?
「『アンタいったいナニモノだ?』と聞かれたら、答えてやるのが世の情け!」
「ちょっとリナ!?」
それってロケット団の…!?
「冗談よ。さすがにこの先まで言ったら、ただのギャグになっちゃうし」
いや、知らない人でもかなりギリギリでギャグじゃないだけで、知ってる人からしたらそこでも充分ギャグだから。
なんて心の中でツッコミ入れてたけど、よく見るとリナの表情が冴えないのがわかる。……そうだった。あの垣間見た世界でも、ラグナ・ブレードを使った後のリナはかなり魔力を消費してたっけ。今のリナはきっと、ベアトリスやアンジェリカに気づかれないように、あんなふざけたこと言って煙に巻こうとしてたんだ。
「あたしは剣士にして天才魔道士の稲葉リナ! ベアトリスの雷撃を斬ったのは、異界の、全てを統べる王の術。その詳細は…秘密です♡」
リナは最後に人差し指を立てて、ゼロスさんの真似をして言った。まあ、混沌の海とか金色の魔王とか、こっちの根源と同じ様な存在なんて、この人達相手にはとても教えられないよね。
「まったく、なんて
あ。ギルくんは[スィーフィード世界]を知ってるからか、リナがどんな術を使ったか察しがついたみたい。
「……ま、なんでか知んないけど、アンタらがこれを手に入れてたおかげだけどね」
リナはそう言って、首から下げたネックレスの飾りをピンと弾く。そしてそれと同じ飾りは、両手首と腰を合わせた計4つ。そう。それはかつて、ゼロスさんを言いくるめて買い取った魔力増幅の礼装、[
「あんだぁ? ウチの礼装、盗んで使ってんのかァ!?」
「いやぁ、だってアンタ、ゴミの山って言ってたじゃない。リユースよ、リユース」
「ふっざけてんのか、オラァ!」
うん。ふざけてるね。まあ、自分のペースに持ってくためにワザとやってるんだろうけど。でもって、ベアトリスは見事に煽られまくってる。逆に冷静なのか関心が無いのか、まったく動じないアンジェリカ。むしろ。
「落ち着け、ベアトリス。敵の言動に惑わされてるぞ」
リナの狙いはあっさりと見抜かれたみたいだ。それでも魔力不足には気づいてないみたいだから、まだマシだけど。
そんな事を考えていたら。
ジャラ…
鎖の音が聞こえ、わたしの横を突っ切って行き。
「なっ!? ちょっ…!?」
リナの身体を絡め取り。
「のひゃあああ!?」
引っ張り上げられたその直後。ついさっきまでリナがいたその場所に、黒い手が伸びていた。そう。突然現れた暗殺者の手が。
「……葛木っ! って!?」
ずしゃあっ!
鎖に絡め取られたリナは、防御も取れずに床に叩きつけられる。わたしも慌ててギルくんの近くまで駆け寄った。
「……痛ひ」
「ごめんね、リナさん。でもあのままだったら…」
「うん、わかってるわ」
そう。わかってる。わたし達はその一角に視線を移す。
「……
リナは小さく呟くのだった。
今回のサブタイトル
神坂一「スレイヤーズ」増幅呪文の一節から
リナはついに、結界以外の魔力増幅手段を手に入れました。これで
ロケット団の口上は中の人ネタです。
次回「KUJIKENAIKARA!」
見てくんないと、暴れちゃうぞっ!