Fate/kaleid caster ドラまた☆リナ   作:猿野ただすみ

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KUJIKENAIKARA!

≪リナside≫

あたし達は今、かなりヤバい状況に陥っている。アーチャーを夢幻召喚したアンジェリカ。バーサーカーを夢幻召喚したベアトリス。そしてアサシンを夢幻召喚した葛木。はっきり言って、そのどれもが一筋縄ではいかない英霊(あいて)である。

一方こちらは、魔力切れ寸前のあたしに、クロエと分離して以来最大魔力容量が3分の1となっているイリヤ、そして宝物庫(宝具)の中身が心許ない英雄王(ギル)

 

「……ねえ。聞くけど、実は結構危なかった?」

「そうだね。相手(アンジェリカ)の機転に、まだ打開策が思いついてなかった、ってとこかな」

 

むゆぅう。状況は、想像以上に悪いようだ。……ええい、仕方がない!

 

「今は、イリヤの流儀でいきましょう!」

「ふぇっ?」

 

某落とし神の、一方通行幼馴染みの様なセリフで驚くイリヤ。何故だか知んないが、その口癖は美遊に言ってほしい気がするけど、今はそれは置いといて。

あたしは素早く[混沌の言語(カオスワーズ)]を唱えると、イリヤとギルの手を取り。

 

翔封界(レイ・ウィング)!」

 

増幅(ブースト)をかけた翔封界で、天井に開いた穴から外へ飛び出す。

 

「なあああああ!? わたしの流儀って、別に逃げるのが流儀じゃないんだけどおおおおおっ!!」

 

いきなりの飛翔に驚きながらもツッコミを入れるイリヤ。もちろんあたしだって、そんな事はわかってる。ただの言葉のあやだが、説明するのも面倒なので聞き流しとこう。今はそれよりも。

あたしはそのまま高度を上げて、この城の一番高い塔、その最上階の窓の前に止まる。その硝子越しには。

 

「ミユ…」

 

呟くイリヤ。そう。彼女(美遊)が、喜びと悲しみを混ぜ合わせたような顔であたし達を見つめている。とはいえ、今窓を開けて救い出すことは、きっとできないだろう。何故だかわからないが、この城の扉は空間が捻れて繋がっているらしいからだ。たとえるなら、行き先が城内のどこかに固定された[どこでもドア]といったとこだろうか。

だからこの窓を開けたところで、この部屋には入れない。その筈である。美遊もそれがわかっているから、この表情を浮かべているのだろう。

美遊の口が動く。

 

---逃げて。

 

声は聞こえないが、そう言ったのは確かにわかった。それに対してあたしは。

 

「美遊。必ず助けに戻るからね!」

 

美遊に声が届かないのはわかっているが、はっきりとそう答える。それでも美遊は、しっかりとうなずいた。

それを見届けあたしは術を制御して、城を囲む結界の外へと飛び出した。

 

 

 

 

 

勢いよく結界を飛び出したのはいいものの。

 

「……ごめん。もう、魔力が持たないわ」

 

そう言ってあたしは、結界のすぐ近くへと降り立った。実際、夢幻召喚を10分近く維持した上に、不完全版とはいえ神滅斬を発動させたのだ。全盛期に及ばない今のあたしの魔力では、さすがにもう限界間近なのである。

 

「仕方がない。ここからは走って…。ところで[身隠しの布]は?」

「ベアトリスと戦ってるときに無くしちゃって…」

 

今更のように尋ねるギルに、イリヤが答えた。

 

「参ったな…。クレーターを出るまで、およそ1キロ。その(かん)、遮蔽物は一切無い…」

 

ギルが愚痴る。

 

「そのための地形だからなァ!!」

 

なっ!? もう追い着いて…っ!

ベアトリスは、手にした大槌をこちらに投げつける。

 

「この、蛮神がっ!!」

 

その大槌を、魔王剣でも斬れなかったあの鎖で防ぎ軌道を逸らす。

 

ぞわり

 

殺気とは違う、得も言われぬ悪寒。

 

限定展開(インクルード)! 光よっ!!」

 

何故かは自分でもわからないが、[烈光の剣(レプリカ)]ではなく限定展開の[光の剣]を発動させて、悪寒を感じた方へと振り抜いた。

 

ばじゅううう!

 

そんな音を響かせながら、葛木は左手で光の刃を掴み取っている。おそらく手に魔力を纏わせ、魔族(セイグラム)のキャパシティ任せに抑え込んでいるのだろう。もちろん、下級魔族(セイグラム)程度なら一刀のもとに斬り伏せられるだけの威力があるが、ほんの僅かでも耐えられればいいと、無茶を承知でやってのけたに違いない。そう。あたしの命を刈るために。

葛木はあたしの首許めがけて右手を伸ばし、あたしは光の刃を消して右へと避ける。しかしその手は、あたしを追いかけて…。

 

砲射(フォイア)!」

「……(ヴォイド)

 

上手く隙を作れたと思ったのだが、イリヤの攻撃は空間渡りで躱されてしまった。ちっ、面倒な。

葛木が再び現れた先は、あたし達を追いかけてきたベアトリスとアンジェリカの一歩後ろ。

 

「そろそろわかれっての! あたし達からは逃げられねぇって!」

 

そう言ってベアトリスは、大槌を上空にかざす。

 

「さっきは悪かったなァ。城内なんで、帯雷ナシで撃っちゃった。けど次は、ちゃんとぶっ壊してあげる♪」

『ハンマーの力の倍加!?』

「ウソ…、あれ以上なんて…」

 

あまりのことに、ルビーもイリヤも慌てている。いや、とーぜんあたしも慌ててる!

 

「あれぇ、今度は撃ち合わないのォ?」

 

無茶言うな。……いや、確かにあれくらいなら、不完全版の神滅斬でもおそらく断ち斬れるだろう。だが今のあたしには、神滅斬を発動させるだけの魔力が無い。それに今度の雷撃相手だと、さすがに一か八かの部分が大きくなりすぎるのだ。

 

「これじゃあ一方的に壊しちゃうなァ!!」

「ルビー! 魔術障壁と、物理保護を…」

 

イリヤは言うが。

 

『無理です! あのハンマーは遥か格上、防ぎきれませんっ!!』

 

そう。ミョルニル…通称トールハンマー。その名のとおり、北欧神話の雷神トールの武器である。いくら魔法使いが造った破格の魔術礼装カレイドステッキだとしても、神の武器に敵いはしないだろう。……しかし。

だったらどうすればいいんだああああ!?

 

「消し飛べ!

悉く打ち砕く(ミョル)---」

 

ベアトリスが、まさに振り抜こうとしたその時。

 

カツッ!

 

飛来した矢が大槌に当たり。

 

ドゴオッ!

 

爆発をした! ……ってこの攻撃は!

 

壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)!?」

「……って事は、クロ!?」

 

あたしとイリヤが驚き、声を上げている間にも、次々と矢は撃ち込まれ爆発を繰り返す。

 

()()()()()だ」

()()かよ!」

 

また? という事はクロエが…いや、アンジェリカは「あのカード」と言っていた。という事は、クロエの核となってるカードの英霊の方を言っている? もしかしたら、カードが向こうの世界に流れ着く前に何かあったのか?

 

「誰だか知らねェが、コソコソちまちまと…。この屑カードがっ!! テメェから消してやるっ!!!」

 

ぶち切れたベアトリスが、大槌へ更に雷を纏わせるっ!

 

『更に、強化!?』

「そんな…、どこまで…」

 

本当に、どこまで強化できるのか。はっきり言ってさっきのぶつかり合い、この威力を噛まされてたら()()()()神滅斬じゃ対処できなかっただろう。

そして、ここからは視認できないほどに離れた場所にいるクロエでも、こんなの喰らえば消し炭さえ残らないはずだ。どうする? どう対処すればいい?

そんな思考を巡らせてる中。

 

「壊れろっ!!」

 

ベアトリスが宝具を放たんとしたその時。

 

---下がれ、ベアトリス!!

 

突如響いた、その声。途端にベアトリスは冷静さを取り戻し、宝具の発動を停止する。

 

---小さな淑女(レディ)達の帰路を邪魔してはいけないよ。

 

優しく言い聞かせるような口調とは裏腹に、その声は強い強制力を感じさせた。

 

「この声…、どこから…?」

『音ではありません。魔術で遠隔から送られてます』

「つまり親玉はまだ、城の中ってワケね」

 

あたしが言うと、ギルがニヤリと笑う。

 

「さすが勘が良いね。この声を良く聞いておきなよ。こいつは…」

 

---名乗るのが遅れてしまったね。私はダリウス・エインズワース。エインズワース家の当主だ。

 

「君達の本当の敵だ」

 

そうか。この声の主が…。

 

---うちの使用人が失礼をした。彼女らにも悪気は無いんだよ。許してあげてくれ。

 

……ものは言い様である。つまりは「今は見逃してやるから、よけーな事しないでとっとと帰りやがれぃ! ぺぺぺのぺいっ!」という事だ。

はっきり言って、相手にいいように踊らされた挙げ句にお情けで見逃されてるようなこの状況、ひじょーにムカつく事この上ないが、特攻仕掛けて無駄に命を散らすような趣味も、あたしは持ち合わせてはいない。

 

「また壊し合おうぜ」

 

ベアトリスが煽ってくるが、とーぜん無視。

 

---それではごきげんよう、イリヤスフィールくん。リナくん。

 

ダリウスがそう言い残すのと共に、ドールズ達は結界の中へと消えていった。とりあえずは、助かったようだ。

 

「行こう。イリヤさん、リナさん。これ以上留まっても…」

 

ギルが言うとおり。とりあえずは街へ戻って体を休めて、……と、その前にどこか拠点を…。いや、それはクロエと合流すればなんとかなるか?

そんな事を考えていると、突然イリヤが結界に向かって駆け出した!? イリヤは結界との堺の前に立ち。

 

「今は…、敵わなくても…届かなくても…。

いつか必ず助け出す!! ミユは、あなた達の道具じゃない!!!

 

イリヤ…。そうか。そうだった。あたし達は美遊を助け出さなきゃなんない。だったら街に戻る前に、もうひとつやる事がある。

あたしは歩き出して、イリヤの横に立ち。

 

「アンジェリカ。ベアトリス。葛木。そしてダリウス! アンタ達はとんでもないミスを犯したわ。それはこの天才魔道士、稲葉リナにケンカを売った事よ!

アンタ達! いずれぎったんぎったんにのしてやるから、それまでに首を洗って待ってなさいっ!!!

 

盛大に啖呵を切ってやった。これはあたし達の誓いにして、彼らへの宣戦布告だ。

あたしは隣のイリヤを見る。

 

「イリヤ。よく言ったわね」

「うん。こんな所で挫けてられないから。ミユを助けるまで…ううん、この事件を解決するまで、絶対に諦めない!」

 

イリヤは、本当に強くなったと思う。ほんの数ヶ月前までは、サブカル好きなただの小学生だったのに。

あたしはイリヤの頭に片手を置き、軽く髪の毛を掻きむしる。

 

「わひゃあっ。もう、リナってば。……あ、そういえばこれって、ガウリイさんがたまにリナにやってたことだったんだね?」

「へっ!?」

 

突然イリヤがニヤけた顔で、ジト目で見つめながら言ってきた。これにはあたしも一瞬、言葉に詰まる。

 

「並行世界とはいえ、[スィーフィード世界]のリナを見てたら何度かそんなシーンがあったから♡」

 

ぐぬぅ、まさかイリヤからこんなイジり方される日が来ようとは。そっちの意味でも、成長したわね…。

と。

 

びゅおぅ!

 

という風を切る音と共に、1本のごく普通の矢が飛来して、あたし達のすぐ傍に突き刺さる。その矢には1枚の紙が下がっていて。

 

---イチャコラしてないで、とっとと来やがれっ!!

 

と書かれていた。ご丁寧にも、青筋マークまで書かれている。こりゃ、多分に嫉妬が含まれてるわね。

 

「お姉さん達、向こうのお姉さんもご立腹のようだし、そろそろ行かない?」

「「了解です!」」

 

ギルにまで言われ、あたし達は声を揃えて了承するのだった。

 

 

 

 

 

およそ1キロの距離を歩き、ようやくクレーターを抜けたあたし達。その目の前には先程の予想通りクロエが、更にはバゼットさんもいた。

 

「クロ!」

「クロエ、バゼットさん」

 

イリヤ、そしてあたしが声をかけると、クロエは不機嫌そうに。

 

「まったく、イリヤとイチャコラするくらいなら、わたしとしてくれればいいのに」

 

……別にそーゆーのじゃないんだが。

 

「な…。あ、いえ、そういうセクシュアルな問題に口を挟むわけには…」

 

バゼットさんが何やら勘違いしてる。と言うか、普段のバサカ女な発言と違って、こういうのはけっこぉウブなんだ。

とはいえとりあえず、誤解は解いておこう。

 

「いや。あたしもイリヤも、そーいった趣味ないし。クロエが一方的に言ってるだけだから」

 

美遊も何とか留まってるみたいだし、問題なのは現状クロエだけだ。

 

「あ、ああ、そうですか」

 

バゼットさんは少しだけ安堵している。この人にもこういう一般人的な所もあるんだ、などと変なところで感心してみたり。

 

「……リナのいけず」

「まあまあ、クロ」

 

イリヤが苦笑いを浮かべながら、よしよしとクロエの頭を撫でている。いつもと違って今回は、イリヤが姉的ポジションの様だ。

この状況を見て気持ちの弛んだあたしは、小さく息を吐く。……って、あれ?

 

『「「「リナ」」」さん!?』

 

あたしはフラリとよろけ、ギル以外のみんなが声をあげる中、そのまま倒れ込み。咄嗟に支えるバゼットさんの姿を確認した直後、あたしは意識を手放した。




今回のサブタイトル
アニメ「スレイヤーズ」EDから

という訳で、意識を失ったのはリナの方でした。
イリヤが無事だったのは、リナがいたお陰で心に余裕があったことと、魔力供給があるとはいえ魔力消費が抑えられたこと、治癒(リジェネレーション)があるとはいえダメージもあまり受けなかったことで、肉体・精神的疲労が原作より少なかったためです。その分リナにシワ寄せがあったわけですが。

次回「星の涙ポ・ロ・ロ・ン」
見てくんないと、暴れちゃうぞっ!
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