東方仮面ライダーパラドクス GAME IS ANOTHER STAGE   作:桐生 勇太

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今回は妖夢の視点で進みます。


第11話:妖夢の苦悩:1

妖夢視点

 

 最近、私はグラファイトさんに剣術を習っています。グラファイトさんは、あの日、私に仰っていたように私の剣術を一から見直して下さいました。

 

 グラファイトさんの剣術に対する熱意はとてつもないものがあり、前日に「明日から早朝稽古を始める。時間になったら起こしに行くぞ」と言われ、普段から日の出とともに起床してお稽古をしていたので、呼ばれる時間にはすでに全部の準備を済ませてしまおうなどと画策したのですが………

 

「朝だ。起きろ、妖夢。稽古を始めるぞ」

 

「ふにゃ?」

 

 なんと、お稽古が始まるのは日の出よりもはるかに先でした。初日は思わず「まだ日も登ってませんよ!?」と叫んでしまいましたが、最近は徐々に早起きにも慣れてきました。

 

 日の出よりも早く起床し、今日こそはグラファイトさんよりも早くお庭へと思いお布団をたたんでいると、外側の廊下からグラファイトさんが顔を出しました。

 

「妖夢。稽古を始めるぞ………って………起きていたのか」

 

 ………早い。これでもずいぶん早く起きているのですけど………どんなに早起きしても私よりはるかに先にグラファイトさんの支度が済んでいます。

 

「支度をして、すぐに庭へ向かいますので…」

 

「分かった。先に庭へ行っているぞ」

 

 結局グラファイトさんはさっさと先にお庭へ行ってしまいました。

うう…グラファイトさんって、ひょっとして睡眠が必要ない妖怪だったりするのでしょうか…

 

 ぱっぱと布団を襖に放り込み、簡単に寝ぐせを直してお庭に飛び出すとすでにグラファイトさんは準備運動を終えているようでした。

 

「すみません! 遅れました!」

 

「いや、いい。この時間からなら十分だ。………さて、今日は基礎体力を向上させることに重点を置く。刀は一旦置いておけ」

 

「はい!」

 

 言われてみれば、今日はグラファイトさんは刀を帯刀していません。縁側へ慌てて戻り、長刀の楼観剣と短刀の白楼剣をそれぞれ並べて置き、すぐにグラファイトさんのところに戻った。

 

「昨日も言ったが、お前の細腕では接近戦での打ち合いになった時に力負けしてしまう。そこで、それを補う力が必要だ。お前に最も適しているのは、やはりフットワークと持久力だと思う。出来る限り早く、細かく相手の周囲を動くことで自分なりのスタイルを目指せ」

 

「はい!」

 

「そのため、まずは走り込みから行う。幸い、ここ白玉楼の階段はバカ長い。階段ダッシュを上り下りの往復2周行う。自主的に初めから終わりまでの時間を数えておけ。それが終われば次は5分間の休憩をはさみ、反復横跳び10分間を6セットだ。俺はもう準備運動は終わっているから先に行く。準備運動が済み次第、お前も合流しろ」

 

「はい!」

 

 威勢よく返事をしたのはよいものの、ここの階段を?往復2周?と「え、本当にやる気ですか?」と聞く暇もなくグラファイトさんはさっさと階段を駆け下りて行ってしまいました。

 

もし降りてる途中に転んだらあるいは最終段まで一気に転がり落ちる可能性も………と恐怖しつつ、準備運動を終えて小走り程度の速度で駆け下りていくと、徐々に急な下り階段の進み方に慣れ始め、徐々に速度を追り上げていきました。

 

「う~ん、すっごく気持ちいい!」

 

 風を切るような速さで進み続け、とにかく高速で降りてみようと何段も飛ばしながら降りていると、下からグラファイトさんが上がってきて私にアドバイスしてくださいました。

 

「飛ばさずに一段一段丁寧に降りろ。そうした方が効率もいいし、何よりも足を細かく動かせるようになる」

 

「はい!」

 

 あまりに大股でドタドタと駆け下りていたせいか、私を見た時のグラファイトさんが少し驚いていたような気がします………恥ずかしい。

 

 一段一段に気を使って、足の上げ幅を最小限にして駆け下り、最終段までついてすぐにまた駆け上がりました。

 

 少し疲れ始めてしまいましたが、これくらいならまだまだ平気だと思い、下げるどころかペースをぐんぐん繰り上げて駆け上がっていると、最上段について反転したグラファイトさんを見つけました。

 

(おりょ、ひょっとして抜ける?)

 

と思い、走り続けているとグラファイトさんが急加速。尋常じゃない速度で駆け下りていきます。

 

「は、速………でも、追いつけないほどじゃない…!」

 

 こっちもさらに加速し、グラファイトさんの方へ迫ります。あと少しで追いつけるかとも思ったのですが、疲労が頂点に達してしまい意志に反して足が止まってしまいました。

 

「大丈夫か?」

 

 いつの間に戻ってきていたのでしょうか。グラファイトさんが心配そうな表情でこちらを覗き込んでいました。

 

「は………はい……ハァ…ハァ……何とかグラファイトさんに追いつこうと頑張ったんですけど…ハァ………体力が………持ちませんでした………ハァ…ハァ……」

 

「自分のペースで走ればいい。まずはゴールまで足を止めないことから始めろ。良いな?」

 

「はい………ハァ…ハァ………すみません………」

 

「今は、取りあえず歩いてでもいいから完走を目指せ。俺は先に行くぞ」

 

「はぃ………」

 

 グラファイトさんは再び走り出し、見る見るうちに小さくなってゆきました。

本気で走ったのに、巡航ペースで走っているグラファイトさんに追いつけなかった………

 

グラファイトさんは、やっぱりすごいです。

 

 そう思い、ゆっくり歩いていると徐々に体力も回復して、私は再び走り出しました。




お読みいただきありがとうございました。
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