東方仮面ライダーパラドクス GAME IS ANOTHER STAGE   作:桐生 勇太

12 / 32
私はとても大切なことを皆さんにお伝えしていませんでした。


小説のタイトルを分かりやすいように変えました。


第12話:妖夢の苦悩:2

妖夢視点

 

「十分間の休憩だ。すぐに運動を辞めると負荷がかかるから、軽い早歩きを1~2分ほどしておけ。柔軟体操が終われば、座って休んでいろ。俺は反復横跳び用に線を引いておく」

 

「はひぃ………」

 

 ………倒れてしまいたい………横になれるのなら、これ以上動かなくてよいなら、地面でも構わない。そんな私の気配を察してか、グラファイトさんから的確な指示が飛んできました。

 

心の中で通常の10倍ほどに感じる長い長い1分を数え、万感の思いでその場に倒れこんでいると、「休憩終了にはまだ早いが、先に説明だけするから来い」というお呼びの声が………

 

 何でそんなに生き生き動けるんですか………

 

「先ほど説明したように反復横跳びを行うが、通常のやり方ではなく、今回は抜重を使った反復横跳びを行う」

 

「抜重………ですか?」

 

 聞いたことのないものですが、道具か何かでしょうか?

 

「そうだ。古武術によく使用される移動法で、地面を「蹴る」のではなく「倒れる」力を使って無駄なく移動するための技術だ」

 

「そんな兵法が………! それをすれば、高速で動けるんですね!」

 

「いや、普通に横飛びをするのと大して変わらん」

 

「あれ?」

 

「このやり方は、最初の動作が「若干早くなる」のと「移動するのにたいして体力を使わない」と言う二点だけだ。だが、互角の力量の相手と戦う際、その「ほんの少し速い動き」と「ほんの少しケチった体力」で差が付く。覚えておいて損はない。………こういったものは、基本の素振りや型、基礎体力と同じだ。基本を手を抜かずにやった者が最終的に真の強者になる。一からお前のすべてを見直すぞ」

 

 なるほど………千里の道も一歩から、歩くのならば歩法から。と言うわけですね。基礎の基礎を見直して、最終的な実践と言う名の千里の果て(ゴール)に備えるというわけですね!

 

 グラファイトさんから簡単な抜重のやり方を説明していただき、反復横跳びの試練を行いました。

 

 最期の2セット当たりで体力の限界が見え始め、へばり始めた私にグラファイトさんから「後は2セット。たったの20分だ。頑張れ」と言う優しい鬼畜なお言葉を励みに、何とか最後までやり遂げました。

 

 搾れるだけ絞られた私が膝をついてヒィヒィ言っていると、ぼーっとした耳に

 

「………継続的な走り込みを毎回メニューに取り込んでみるか」

 

 と言うそら恐ろしいグラファイトさんのつぶやきを聞いたような気がしましたが、きっと気のせいです。そうでないと………私………半人半霊なのに…………完全な………幽霊に………

 

 そのまま30分ほど放置され、体力が戻ってきたあたりで早朝のお稽古が終わりました。

 

「よし、早朝稽古はここまでだ。ここからはお前が俺に指示をくれ」

 

「はい。ではこれから、いつもの通り幽々子様の朝食を作ります。幽々子様のお食事が済み次第、私たちの朝食を開始します。食べ終わったら、幽々子様と私たちの分の食器を洗って、それからお庭の手入れ、お屋敷の廊下を雑巾がけし、最後に小物類を磨きます。終わるころにはお昼なので、幽々子様の昼食、私達の食事、食器洗いを済ませれば、あとは自由時間となります」

 

「分かった。では午後からも稽古を入れよう。昼食を取った1時間後に開始だ。午後には実践方式の稽古を行う」

 

「はい!」

 

 ここからは、私がグラファイトさんにお教えする側です。

一生懸命私の剣術を指南していただいているのですから、私もグラファイトさんが一人前の使用人さんに慣れるように一生懸命ご指導しますよ!

 

――――――――――――――――

――――――――

――――

――

 

「妖夢、稽古を………」

 

「おはようございます! 支度はもう済んでますので、行きましょう!」

 

「………徐々に早いな」

 

 グラファイトさんは「朝起きるのが早くなった」と喜んでいますが、一生懸命早起きしているのに、毎回先に起きているグラファイトさんの方が100倍くらい偉い気がするのですが……

 

――――――――――――――――

――――――――

――――

――

 

「昨日は足腰を酷使しすぎたから、今日は腕立て、腹筋、体幹トレーニングを重点的に………」

 

「はい!」

 

 がくがく言っている膝が破裂するのではないかと怯えていましたが、今日は上半身を鍛えるそうです。心からほっとしつつ、意気揚々とお稽古を始めましたが………

 

「腕立ての一番きついポイント、腕を曲げきる中間で20秒停止しろ。その腕立てを50回だ」

 

「は、はいぃぃ………」

 

 地獄でした。なんですかこれ、最初手の段階で「腰を上げ過ぎだ」とか「反動や勢いをつけるな。ゆっくり、自分の力だけでやれ」といろいろ手直しをされた時点で「あれ? ひょっとして腕立てって私が思ってる以上にハード?」とは思っていましたが………まさか、さらに負荷追加とは………

 

「よし、では次、腹筋の………って、大丈夫か? 50は多すぎたか………少し休め。10分間の休憩にする」

 

「………うひぃ……………」

 

 ああ、あ…もう……なにも、考えられない………意識が……とお…く………に…

 

――――――――――――――――

――――――――

――――

――

 

「刀の構え、やって見せろ」

 

「こ、こうでしょうか………?」

 

 自分の構えをいつも通りに行ってみると、グラファイトさんは私の構えを自分でも取ってみたりしていろいろ考え、指示を出しました。

 

「そうだな………もう少し腰を下ろしてみろ。踏み込み具合は変わるか?」

 

「あ、少し速度に乗りやすいです」

 

「ならばそれに合わせて構えを………」

 

――――――――――――――――

――――――――

――――

――

 

「前への移動は早くなったが、左右への移動速度が落ちたな………また構えを見直してみるか」

 

 腰を落とした分、前のめりの体勢になったまではよかったのですが、今度は別の問題が。やはり、さらに良い変化を生み出すというのは、難しいですね………

 

「う~ん、もうちょっと私の足が長ければ助かるんですけどね~」

 

「足の長さか………待てよ、大股に足を開いて開いた足を抜重として利用すれば………」

 

「あ、初速が乗るおかげで速く左右にも動けます!」

 

「うん………よし、これで行こう」

 

 こうして、新しい私の基本の構えが決まりました。

 

――――――――――――――――

――――――――

――――

――

 

「ん………ん! お稽古の時間!」

 

 お布団から飛び起きて、てきぱきとお布団を畳んでしまい、廊下にに飛び出すとグラファイトさんはまだ来ていませんでした。

 

「こ、これは………ひょっとして、速・早起き達成!?」

 

 グラファイトさんのお部屋に行ってみると、すでにグラファイトさんはお部屋から出ていたようです。

 

「………な~んだ。この感じだと、もっと早くから起きてたみたい………」

 

 しかし、はて…それでは、肝心のグラファイトさんは、今どこに? と思い、ぐるっと白玉楼を回っているとグラファイトさんを見つけました。

 

「グラファイトさん、おはようございます!」

 

「おお、とうとうここまで来たか………」

 

 こんなところで、何をしているのでしょう……? 心なしか、髪が濡れているような…汗でしょうか………! ひょっとして、私に内緒の秘密の特訓とかでしょうか!? こ、これは何としても明日はめちゃめちゃに早起きしてその特訓に混ぜさせていただきましょう!

 

――――――――――――――――

――――――――

――――

――

 

 そして、次の日の朝。

 

目を覚ました私は、お布団も畳まずにお部屋から飛び出し、昨日グラファイトさんを見つけた場所へと急ぎました。さあ、何をやっているのか見せてもらいますよ、グラファイトさん!

 

「グラファイトさん、おは………!!!!!!!!」

 

「ん?」

 

 グラファイトさんは、何も着ていませんでした。

俗にいう、全裸、と言う状態です。お、男の人の裸、お爺ちゃん以外で初めて………

 

あ、あれ? なんだか、体が熱い………頭も、ぐらぐらする………

 

 なんだか………気が………遠く………

 

「お、おい! 妖夢!? 大丈夫か!?」

 

――――――――――――――――

――――――――

――――

――

 

「ん………んぅ?………あ……」

 

「………起きたか…………」

 

 気が付くと、私はお布団の中にいて、グラファイトさんがお布団の横に座り込んで私を見ていました。

 

「す、済みません……! 今日のお稽古が………」

 

 障子から漏れ出る光の光量が、完全に日が昇りきってしまっていることを伝える。午前中のお稽古が、丸々吹き飛んでしまったということだ。

 

「す、すぐにお食事の準備を…!」

 

「いや、俺がもう作っておいた。気にせず、今は休め」

 

「す………すみません………グラファイトさんに…私、ご迷惑を…!」

 

「妙なものを見せてしまったのは俺の方だ。気にしなくていい。午後の稽古は……どうする? やめておくか?」

 

「い、いえ! やります! やらせてください!」

 

「そうか…分かった。無理はするなよ。今から食事を運んでくるから、それを食べてもう一時間横になったら稽古をするぞ」

 

「はい」

 

 この時の私は気づいていませんでした。そう、この後、私は原因不明の不調に苦しめられることになるのです。




お読みいただきありがとうございました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。