東方仮面ライダーパラドクス GAME IS ANOTHER STAGE 作:桐生 勇太
グラファイト視点
妖夢に暇を出してから一日が過ぎ、今日は久しぶりの一人きりでの稽古だ。
「妖夢は………いないな。よし………………培養」
【
「………………久しぶりだな」
変身したのは、本当に久しぶりだ。
ゲムデウスとの戦いでボロボロになった俺の体。
この一週間、ちょくちょく無理はしたが、傷も、疲労も癒えた。
そろそろ、修行するにしても怪人態でやったほうがいいだろう。
人間態も悪くないが、やはり筋力、耐久力、持久力共にケタが違う。
「フフ………妖夢が俺のこんな姿を見たら…卒倒するかもしれんな」
構えを取り、腰を置きく沈めながらエネルギーを刀身に送り込み、勢いをつけて刀を抜剣する。
「紅蓮!爆竜剣!!」
炎を纏った斬撃が大気を焼き焦がす。
前に使っていたファングと違い、やはり火力が心許ない。
かつての主力武器よりも切れ味が高いおかげで威力はむしろ上がっているが、肝心の炎がこれではおまけ以下だ。ただ単にエフェクトが派手な刀ではだめだ。
かつての、俺の紅蓮爆竜剣。
炎を纏った刀身から吹き出す、火で形作られた荒れ狂う火竜が相手の周りを飛び回り、やがて大きな爆発を起こす超大技。必要に応じて刀身のみに炎を纏わせ、近接攻撃のみにすることも、また火竜としてではなく火球として炎を発射することも可能な、いろいろと応用が利く技だったが…
「しょぼい火力、火球も火竜も出せない。………これでは、ただの表面に油を塗りたくって火をつけただけの刀と同じだ。やはり、まだ俺はこの刀を使いこなせていない………」
………………刀に合わせて俺が歩み寄るべきか、それとも俺が刀の手綱を引いて従わせるべきか………この刀が望む道を、俺が正確にくみ取らねば、真の俺の剣術は完成しない。
「妖夢、お前の意見も………って」
振り返っても、妖夢の姿がない。
いや、そもそもいるわけがないのだ。2日休めと言ったのは俺自身なのに、ふっと忘れているはずのない妖夢に話を振ってしまった。
「ここ何日も共に励んでいたからな………」
いつ何時でも、共にいるような気になってしまう。
そんな詮無き事を考えていても仕方ないと、頭を振って再び集中しようとした時、不意に誰かの気配を感じ、俺は慌てて変身を解除した。
「あの………グラファイトさん…」
来たのは妖夢だ。やはり稽古に参加させてくれともいうつもりだろうか。まあ、邪険に扱う意味もなし。普通に応対しよう。
「どうかしたか?」
「それが………グラファイトさんに、ぜひお会いしたいという方が………」
「客人? 俺にか? 俺は来たばかりで、ここらの地域に知り合いなんていないぞ?」
妖夢にそう聞き返すと、妖夢も困ったように「はあ…どこかでグラファイトさんの事を知ったらしくて…」とだけ答えた。
「たかが新米使用人に会いたがる者もいるわけがなかろうに…」
「そんな新米使用人の方が、『生命の二刀流』と名高い白玉楼の魂魄妖夢さんを打倒したのですから、当然貴方に手合わせをお願いしたい方はたくさんいますよ」
屋敷の角から声が響いた。
声のした方向を見ると、そこには山伏風の帽子(頭襟)を頭に乗せた短髪白髪の少女が立っていた。
服装は、白色の明るい袖貫が付いた巫女服のような上着を着ており、下半身は裾に赤白の飾りのついた黒いスカート、靴は………これは驚いた、高下駄か。
………………ん? 頭の帽子の横についているものは………耳?
「犬耳………コスプレ………?」
「白狼天狗です」
「む、これは失礼、つい思ったことが口から………って、天狗!?」
いるものなのか、天狗って………しかし、普通の天狗か烏天狗くらいしか知らなかった…
「ま、まあ、疑問に思うのは後に回そう。それで、俺と立ち会いたい………ということで間違いないか?」
「はい、相違ありません」
まあ、なんだか不思議な格好をしているが、いちいち突っ込んでも意味がないだろう。突っ込むと言えば、妖夢の周りをフヨフヨと漂っている白い魂のようなものの突っ込みも未消化だしな。
「俺は、来るもの拒まず、構わんが………立ち会う前にいくつか聞きたいことがある。………そちらは俺の事を知っているようだが、失礼だが俺は知らん。まず、名を聞いても?」
「確かに、失礼いたしました。名は、犬走椛、と申します。天狗の山の見回りを任されている白狼天狗です」
「これは、丁寧に、どうも………俺は、東国統一にして唯一無二剣帝武士、
「剣帝………また大仰な名ですね」
「フ………俺はそうではないが、わが師はその大仰な名とやらに負けぬほどの志士だった。今は俺が剣帝の名に泥を塗らぬようにと邁進する日々だ」
まあ、俺自身も「剣帝」の名にふさわしいほどになったなどと傲慢になる気はない。
ひとつ、今回はこの少女と戦い、先代剣帝の力の100万分の1でも覚えて帰ってもらおうか。
お読みいただきありがとうございました。