東方仮面ライダーパラドクス GAME IS ANOTHER STAGE   作:桐生 勇太

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第16話:無限の戦術

 俺にとっての戦術(いくさじゅつ)とは

 

全てを使うこと。

 

(いくさ)とは、互いの全存在を賭けた生き残り戦。

 

生き残ったほうが勝ち。

それを念頭に置くならば………

 

「剣が無くなれば敗け………? 剣術(刀のみの闘争)など、不自由な肩書でしかない。俺にとっての闘争とは………」

 

 生き残ること。

 

どんな状況に陥っても、

どれだけ大怪我をしようとも、

生きている限り、戦いはまだ続く。

 

「まだ続けるぞ………」

 

 かつて、自分の力では絶対に関わない相手に立ち向かったことがある。

 

自身の全存在を賭けた攻撃をしても、命を絶てぬ相手。

 

その相手に、俺は言った。

 

「武士道は、死ぬことと見つけたり」と。

 

あの言葉が間違っているとは思わない。

 

だが、絶対な正解と奢ることもできない。

 

誰かを生かすため、己の命を使うこと。

 

その過程で生きれるのならば、絶対に生き残ること。

 

勝利を信じて、最後の最後まで。

 

………死ぬまで、戦いを続けること。

 

それが、最終的に生き残る手段だ。

 

 両の掌を握りこみ、顎の位置まで肘を上げる。

俺の構えは、拳法の構え。

 

「まさか………当身技………!?」

 

「かつての合戦の世では、ありふれた技術。それを用いて、お前を倒して見せよう」

 

 かつての戦国時代。

槍、弓、太刀、火縄銃、苦無、薙刀、脇差、………

 

 そして、大戦の世。

鉄砲、銃剣、手榴弾、爆弾、戦闘機、軍艦、戦車………

 

 人は武器を用いて戦う。

そんな戦争の真っ最中、アクシデントが起きる。

武器を取られた、失った。

そんな武器を失った時に、最後に残される人体最後の武器。

 それは、己の肉体。

 

 柔術という格闘技がある。

かつての合戦時代、武器を失った兵法者が使った格闘術。

相手に組み付き、関節をへし折り、首を踏みつけ、無力化する当身の技術。

 

「俺は………わが師、先代剣帝が剣術以外で戦っている姿を見たことがない」

 

 だから、これは、あるいは師が求めた道から外れるのかもしれない。

だがそれでも、歩みは止めない。師にとっての戦術とは、剣術。それのみだったのかもしれない。そうでなかったかもしれない。それは今や俺には分からない。

 

ならば、俺はどれだけ追い込まれようとも勝ち目を探す。それこそが、俺の戦術。俺の歩む道。

 

俺にとっての戦術は、生き残るための手段。

戦い続ける限り、まだ負けてはいない。

 

「来い………ここからは、剣帝竜戦士の戦術を見せてやる」

 

「………素手で、私に勝つつもりですか………本気で?」

 

 ………確かに、普通に考えれば正気の沙汰ではない。刀と素手で戦う。

一撃でも食らえば、重大な事件になりうる攻撃に対し、明らかに威力と間合いで劣る身一つでなどと………普通(・・)なら、恐怖ですくみ上るだろう。

だが、掠っただけで即死亡が確定するかつての師との戦いに比べれば、何と安全な事か(・・・・・・・)

 

恐怖などない。この道を、進のみ。

 

………それに、あの片手剣術に有利を取る方法も見つけた。

 

あとはそれを実践で爆発させるだけだ。

 

「じゃあ……俺から行くぞ」

 

 重心を落とし、抜重を使って限りなく最速で加速して犬走へ詰め寄る。

 

本当に武器持ち相手に突っかかってくるとは思っていなかったのだろう。一瞬犬走の体が緊張と驚きで少しだけ強張った。

 

しかし、気持ちを切り替える心の強さも流石と言ったところか。即座に反応し、刀を振り上げて俺の体を切り裂かんと迫ってくる。

 

…だが、刀の先端を弾き飛ばすことは難しくても、動いている根本をとらえるだけなら簡単だ。振り下ろした犬走の手首を掴み、まずは刀を封じる。

 

そして、刀の間合いが死ぬ範囲まで近づく。

 

間合いの有利は、武器によって異なる。

 

長さで言うなら、

 

銃、そして弓、苦無、投石、薙刀、槍、太刀、小刀、ナイフ、素手の順番と言ったところだ。

 

つまり、銃を持っていた方が100m以上離れた位置から剣術の達人に勝負を仕掛けた時、、どちらが有利かは言うまでもないだろう。

 

 では逆に、ガンマンと剣術の達人が半径1mほどの円の中で戦う場合どうだろうか。ガンマンがホルダーから銃を抜き、ハンマーを起こして引き金を引いて発射。

剣術、主に居合切りの達人であれば、恐らくガンマンがホルダーに触れた瞬間に胴体を切り裂くだろう。

接近戦では、刀に有利が傾く。

 

要は自分の長所を活かす間合いを取れば、上にあげた武器全てはそれぞれ他の武器に対し十分に有利を取れる可能性があるわけだ。

 

銃なら50~200mの間合い。

弓なら50~100mの間合い。

苦無なら25~50mの間合い。

投石なら5~25mの間合い。

薙刀なら3~5mの間合い。

槍なら2~3mの間合い。

太刀なら1~2mの間合い。

小刀なら60cmから1mの間合い。

ナイフなら50~60cmの間合い。

素手なら0~腕の先端、足の先端まで。

 

 この場合に俺の間合いで、犬走の間合いの外側。

 

刀が最も効力を発揮する間合いは、腕を伸ばし、刀を振り下ろす動作があってこそ。逆に考えれば、体と刀身の中間、つまり刀を支える腕の場所も間合いの外側となる。間合いを完全に潰す位置取り。

 

そう。刀を振るう初動を止められるほどの近距離。

0~1mの間合い。刀の真正面のみ。

 

「間合いの利は死んだ。そして武器の利もな」

 

 盾も同じ。自分に対し正面からくる攻撃を止めるための物。

目の前で張り付いてくる相手を遠ざける手段としては使えない。

 

「くっ…!」

 

 犬走は下がろうとする。俺はそれに追いすがる。

こうなると今度は逆だ。俺は犬走を追いかけるだけでいい。

この距離で剣術による攻撃は絶無。

 

空に逃げることもできない。何故なら、飛んでしまえば俺は犬走の下を潜って刀を拾って仕切りなおせばいいだけだからだ。結果的に武器を奪ったせいで、逆に自分の行動選択が狭まっている。

 

 とある高名な格闘家が言った言葉。「武器を持った相手は危険ではない」と。理由を聞かれて曰く、「武器しか使わぬから」剣術を使うなら、剣術のみを旨としている相手なら、逆に使うのは武器のみ。

 

武器の間合いが死ぬ範囲で、武器しか使えぬ相手に負ける道理はない。

 

そして、俺が使うのは戦術。

 

 しびれを切らした犬走が低く浮遊し、高速で俺から距離を取った。

 

戦術とは、かつての兵法者が使うもの。

 

馬上術、剣術、弓術、武芸百般、やれぬことなどない。

 

そして、戦の場と道場ではまるで変るものがある。

 

足場。すなわち地面。

 

板の間で、平らで、足が引っかかる者なんて何もない。何も落ちていない。

 

それとは一線を画すこの場。

 

戦の場では、卑怯すら許される。

 

生き残るため、自分の全存在を賭けるからだ。

 

賢さ、力、勇気、速さ、果ては悪知恵に至るまで。

 

崖上から強襲しようが、兵糧攻めにしようが、それこそ主君を裏切ろうが、勝った方が生き残る。

 

 間合いを取りなおし、刀を振り上げた犬走の顔面に何かが衝突した。

 

砂だ。

 

俺が蹴り上げた白玉楼の庭に敷き詰められていた大量の砂利が、犬走の顔面に大量に降り注いだ。

 

「きゃあ!」

 

 急に視界が塞がれて犬走がたたらを踏む。

 

開いた間合いを再度詰め、後ろに回り込んで尻尾をむんずと掴み、思いきり後方へ引っ張る。

 

「きゃわぁ!?」

 

 情けない悲鳴を上げ、倒れまいと前に必死で体重をかけたその瞬間、今度は不意に尻尾から手を放し、バランスを崩したところに左の足を足払い。

 

軸足が右足だけになり、しかも前に体重をかけていたために犬走の体が前へとつんのめる。

 

すかさずもう一度正面に回り込み、つんのめった上半身に体を滑り込ませ、右腕を肘にのせ、犬走の体を自分の腰に乗せて一気に投げ飛ばす。

 

一本背負い。またシャッター音がしたな…大体どこにいるのか掴めてきたぞ。

 

背中から地面に衝突し、一瞬肺から空気が消え、軽い呼吸困難になる。

 

動きが止まったその瞬間に盾を持つ左腕に十字固めの体勢を取り、小声で「折るぞ」と声をかけた。

 

瞬間、危険を察知した犬走が右手に持った刀を放し、折られまいと左腕の手首をしっかりと掴んだ。

 

「………ウソだ」

 

「へ?」

 

 狙いは放した犬走の刀。

両足で器用に挟んで持ち上げ、空いた腕で刀を掴んで犬走の首筋に押し付けた。

 

「………生殺与奪、我にあり………まだやるか?」

 

「………………ま、参りました………」

最後にまたシャッター音が連続で響く。前には気づかれなかったから油断しているんだろうが、あれだけ連射したら気付かないわけがないだろう。馬鹿め。




今回は完全に作者の趣味が出ましたね。
武器対素手って………いいよね。

お読みいただきありがとうございました。
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