東方仮面ライダーパラドクス GAME IS ANOTHER STAGE   作:桐生 勇太

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第20話:剣帝vs魔王

グラファイト視点

 

「………それで、ここに何の用だ? かつての世界で戦った者同士、旧交を温めようというわけでもあるまい」

 

「新聞からの情報だが、貴様が自らの事を【剣帝流戦術の使い手】などとロクでもない大嘘を吹聴しているとあってな………」

 

「嘘ではない。俺は………」

 

「ほざけ。貴様が師と呼ぶ海帝は我の、バグスター連合の大隊長。貴様とは敵同士だろう。刀を持っている以上、弟子として認められたのかもしれんが、貴様が海帝の戦術にまともに触れたことは一度もない。違うか?」

 

「それは、そうだが………だが俺は、自分なりにいろいろな戦術、立ち回りを組み込んで俺なりの剣帝流戦術を完成させるつもりだ。嘘を吹聴しているつもりはない」

 

「元のは知らんけど、なんかやってみたらそれっぽいのができました。だから同じ戦術ってことでいいんじゃね? とでも言う気か? ふざけるのも大概にしろ」

 

「おいおい、ウルフ…流石に言い過ぎじゃないか? アタシから見るに、相手さんはそんなに不誠実な奴には見えないぞ?」

 

 正しくはあるものの、あまりにもあんまりな物言いにベイオウルフと共にここに来た女性がベイオウルフを静止しようとした。

 

「口を挟むな、妹紅。これは、海帝の上司である我と奴の問題だ。この場で我と奴に物言いができるのは、同じく我と奴だけだ」

 

「俺は俺なりに強くなる。剣帝の名に恥じぬように………俺がお前に言えるのは、これだけだ」

 

「口だけで解決する気などさらさらないこと、貴様自身がよく分かっているだろう? 強くなる? 完成させる? 口だけで虚勢を吐くなら餓鬼でもできる。………証明しろ………培養」

 

Infection!(インフェクション) Shit game!(シットゲーム) Bad game! (バッドゲーム) Dead game!(デッドゲーム) Fuck game!(ファックゲーム)

I'm a Bugstar!(アイムアバグスター)

 

 ベイオウルフの変身が完了した。人里から来た男はあまりの出来事に失神し、妖夢も思わず後ずさりするほどの恐怖状態になる。

 

無理もないだろう。2m40cmと言うただでさえ馬鹿げた大きさの相手が、変身が終わるとさらにフザけた5m越えの大きさになれば、誰だって驚くに決まっている。

 

 通常とは違うラスボスバグスターの中でも、特に異質。

超規格外の大きさを誇る、魔王。

 

頭にそびえる天を貫かんばかりの捻じれた二本の角。

 

暗い赤紫を基調にし、要所要所に澄んだ水色をちりばめたヘルムや鎧。

 

爛々と輝く真っ赤な瞳。

 

丸太を思わせる雄大でかつ、力強さを思わせる両足。

 

万力のような絶対的な力を連想させる、両の腕。

 

魔王の象徴とでも言おうか。所々が破れた、かなりの年季を彷彿とさせる漆黒のマント。

 

そして、最後に武器。超巨大な、両刃型の西洋刀。刃渡りは8m。持ち主よりも長い。一般的に大きな刀は相手を切るというより押しつぶす方に力を使うなまくら作りだが、ベイオウルフの持つ剣は、非常に薄くカミソリのような刀身に流麗で緻密な細工が施され、十字の部分に大きなサファイアをあしらっている。持ち主の大きな巨躯を持ち、豪傑な魔王と相反するような気品あふれる剣。

 

 西洋の大貴族が道楽で作った物と言われても信じられそうだ。

そんな芸術品とも見れる剣を鷲掴みにして片手で軽々と持ち上げて見せるその姿。まさしく【王家の剣と絶対王者】と題された一枚の絵のようだ。

 

「………さあ、貴様の戦術とやらで、我に地を舐めさせてみせろ。出来ぬというならここで死ね」

 

「………分かった。この勝負、受けて立つ………俺の覚悟、それをお前に見せてやる! 培養!!」

 

Infection!(インフェクション ) Let's game!(レッツゲーム) Bad game!(バッドゲーム) Dead game! (デッドゲーム)What your name?(ワッチャネーム)

The Bugster!(ザ・バグスター)

 

 爆炎を上げながら怪人態へと変身。変身した状態で戦うのは本当に久しぶりだ。

自分を奮い立たせるために地面を大きく踏みつけると、斜め後ろにいた妖夢が悲鳴を上げながら転んだ。

 

「む!? すまん、大丈夫か妖夢?」

 

「い、いえ……平気です………!! グラファイトさっ

 

「ん? ・・ッ!!」

 

 妖夢の方に一瞬気を取られた瞬間、嫌な予感がしてその場から飛び退く。

直前まで俺が立っていた場所にベイオウルフの刀が振り下ろされ、まるで隕石が墜ちたかのような衝撃が起き、砂利や砂が大量に舞った。

 

「もう始まっているぞ。何をよそ見している」

 

「………確かに、変身した時点で開始も同義か………いいだろう!」

 

 刀を抜いて構えを取り、妖夢と反対の方向へ距離を取る。

あの長いリーチの刀を振り回されたら、誰が巻き込まれるか分かったもんじゃない。

 

「退いてるだけでは勝利は無いぞ!!!」

 

 地を踏みぬき、地面を蹴散らしながら巨体が飛び掛かってくる。

力任せに再び振り下ろされる刀。

振り下ろした位置にまるで時限爆弾が置いてあったかのような衝撃が発生し、またしても砂利や砂が宙を舞う。

 

「………凄い衝撃だな………」

 

 奴の身長は5mと少し。身長≒両腕を広げた長さと考えると腕の長さが2m程。ちょうど真ん中を掴んでいる柄の持ち手が1m近く。剣の先端までの長さが8m。足の長さは平均的には身長の45%程。この場合は2m25cmくらいか。つまり飛び掛かることを考えると、一息(一歩)で詰められる間合いが3m強。

 つまり、簡単な計算で2+0.5+8+3

奴の最大の間合いはしめて13.5mになる。

 

 馬鹿げているにもほどがある。

槍や薙刀よりも遥かに遠い。投擲武器を使うべき間合いが通常とは………

 

「どうした!? かかって来い!」

 

 再び怒号と共にベイオウルフが再接近。今度は刀を横薙ぎに振りかぶる。

下半身が両断されるのを防ぐため、真上へと跳躍した瞬間、刀を振り回す右手とは別に何も持っていないがら空きの左腕に捕まれた。

 

「さあ…どうする………?」

 

 大きめのフィギュアにでもなった気分だ。胴体を鷲掴みにされ、ベイオウルフの巨大な指先が俺の筋肉にやすやすと食い込む。

 

「ぐぅ……ゴホッ!ゴホッ!!」

 

 体が一回りほど圧縮され、咳となって体から空気が抜ける。

負けた腹いせにコントローラーでも投げ飛ばすかのように力の限り地面に叩きつけられる。

 

体がバラバラになったと間違えるほどの衝撃と痛みが走り抜け、体が半分ほど地面に埋まる。おぼろげな視界に、地にうずもれた俺を踏みつぶさんとベイオウルフが足を上げているのが見えた。

 

あの巨体に踏みつけられたら死ぬ。

 

 麻痺する体を叱咤し、転がるようにして回避する。

 

立ち上がったその瞬間、再び横薙ぎの軌道でベイオウルフが剣を振る。

腰を大きく落とし、刀を縦に構えて防御の姿勢を作る。

 

ベイオウルフの剣が俺の刀と衝突し、勢いに負けて俺は大きく吹き飛んだ。

 

発射された砲弾もかくやと言う速度と勢いのまま、白玉楼の塀に激突する。

塀の真ん中ほどまでめり込み、身動きが取れなくなる。塀の上部に備え付けられた瓦がガラガラと落下し、俺の視界を一瞬ふさぐ。

 

 その落下する瓦を蹴散らし、ベイオウルフからの追加の前蹴りが俺を突く。

塀を突き抜け、森の中へ転がり込んだ俺を追いかけてきたベイオウルフがもう一度持ち上げ、屋敷に向かって投げ飛ばした。

 

 飛ぶことができず、ろくに体が動かない俺の身体は何の抵抗もできずに吸い込まれるように白玉楼に飛び込み、屋敷の引き戸を貫き、障子を破り、机を割り、屋敷の壁や柱すらも突き抜け、畳をばらばらにして床板にめり込んでようやく止まった。

 

「ぐ………ハァ………ハァ………」

 

 グルグルと回る視界、靄がかかった思考。浅い呼吸、動かない身体………

ろくに回らない脳で、ベイオウルフの剣を防御しようとし、そのまま吹き飛ばされた時の事を思い出す………

 

………防御がまるで通用しなかった。

 

………………間合い、勢い、力。全てで負けている………………

 

………………刀では、勝てない………………

 

 あの巨体が相手では、面や小手、胴も狙えない。

 

………当身だ。組み付くところまでいかずとも、あそこまで長い腕ならゼロ距離で戦えばまだ勝機はある。

 

「グラファイトさん!」

 

「妖夢………? 何故ここに………?」

 

 投げ飛ばされた俺を心配したのだろうか、妖夢が俺を助け起こす。何かきらきらした物が光った気がして良く見て見ると、妖夢は泣いていた。

 

「グラファイトさん…このままじゃ死んじゃいます………降参しましょう…!」

 

「妖夢………」

 

 ここで降参、か………だが、ここで俺が折れれば俺は嘘をついたことになる。俺が求めた、俺が憧れた師の力は、この世で一番強い。そんな存在になると誓った。そうなるとベイオウルフに啖呵を切った。

そして、自分もいつか師の元へ行く。そして、超えて見せる。

だから、まだ諦めるわけにはいかない。

 

「妖夢………」

 

 それに何より、妖夢のため…今日まで俺の指導に全力で付いてきてくれたこの健気な弟子のため、師である俺がこんなところで倒れるわけにはいかない。

 

「妖夢………これを………お前に持っていてほしい…俺が、師から授かった愛刀だ」

 

 蓬莱海・真打を妖夢に渡した。

妖夢は何か言いたげだったが、一つ頷いて抱きしめるようにして俺の刀を受け取った。

 

「妖夢………俺から目を離すな。………愛しい弟子が見守っている。それだけで俺は二倍も三倍も強くなれる………俺を見ていてくれ」

 

「………! はい…!」

 

 妖夢は少し照れたのか顔を赤くし、少しだけ微笑んだ。

震える足にむち打ち、自力で立ち上がる。

 

足を引きずりながらも庭へと出ると、庭の中央で腕を組んで仁王立ちしたベイオウルフと目が合った。

 

「………待たせてしまったな………」

 

「フン……妹紅が屋敷内で暴れるなと喚くからな…待ってもらった礼が言いたいのなら、こいつに言え」

 

「引き留めてくれていたようだな、申し訳ない」

 

 素直に謝罪し、深く妹紅と呼ばれた女性に頭を下げる。女性は小さく「気にすんな」とだけ返事をした。

 

「さて………武器がないようだが………?」

 

「………ここからは、素手で行かせてもらう」

 

「ほぉ………当身技か」

 

 腕が長ければ長いほど、懐に飛び込めさえすれば勝機はあるはず。ここは、当身で正解のはずだ。

拳を握りこみ、肘を顎の位置まで上げて拳法の構えを取る。

 

俺の刀と奴の剣では有利は奴にあったが、俺の拳が相手ではどうなるか。

 

「………いくぞっ!! ぬぅえい!!!」

 

 真正面に振り下ろされる剣、斜めに走ることで回避しながらベイオウルフの懐に潜り込む。

股の下を潜り、後ろに回り込んで左の足首に連続でキックを叩き込む。

 

「…チッ…」

 

 舌打ちをしながらベイオウルフが反転するが、俺もベイオウルフの回転に合わせて同じように回る。この背後の有利、簡単に手放すつもりはない。

 

 ………やはり、脚力や肩の力で移動や攻撃の速度そのものは早いが、大きいゆえに動きの起こりがよく見える。それさえ見逃さなければ、あの巨大な剣は脅威ではない。

 

何より、剣で切ることにこだわりすぎている。

攻撃を仕掛けてくる対象が一つだけなら、躱すのはたやすい。

 

力任せの単純な攻撃なら、未熟な俺でも見切れる。

 

隙を見計らい、膝に思い切り体当たりをする。

 

体勢を崩したベイオウルフが膝をついたタイミングを見計らい、正面に回って下腹部に拳の雨を降らせる。

 

「グッ…! おのれ……!」

 

 ベイオウルフが正面に回った俺を斬ろうと剣を振り下ろそうとした。

 

「…! そこ!」

 

 剣を振り下ろしきる直前に拳に握りこんでいた砂を頭上に振り撒き、ベイオウルフの顔面に浴びせる。

一瞬視界が封殺されたベイオウルフが剣を振り下ろしきる直前に動きを止めた。

 

「今だっ!!」

 

 遠心力と体重を乗せた最強の蹴り技。後ろ回し蹴りをベイオウルフの剣を持つ右腕の手首にぶつける。

手放された剣は少し遠くに飛んだ。

 

視界を見失い、武器の利も失ったベイオウルフの左腕が俺に掴みかかろうと迫ってくる。

 

「………この時を待っていた!」

 

 俺の身長はベイオウルフの半分以下。だから、どんなに高い部分を狙ってもせいぜいが太ももから腰までしか狙えない。

だが、膝をつき、前に背を曲げ、俺を掴むために体を前に傾けるこの瞬間、

ベイオウルフの頭が俺の制空権に触れる。

 

腰を捻る、回し蹴りのハイキック。

 

ベイオウルフの顎を的確にとらえた。

 

大きくなっても弱点は変わらない。顎が揺さぶられれば、脳も揺れる。

 

力が抜けた巨体がぐらりとバランスを失い、砂埃を上げながら倒れこんだ。

 

「………手応えあり………」

 

「やった! グラファイトさん!」

 

 妖夢の喜びに満ちた声が聞こえる。

 

声のする方向に振り向こうとしたその瞬間、

 

不意に視界が反転した。

 

「………フム、まともに顎を叩かれたのは初めてだぞ。一瞬眩んだ………が、完全に気絶するほどではないな」

 

 直後に理解する。起き上がったベイオウルフが俺の足を掴んで持ち上げたのだ。

渾身の蹴り………数瞬昏倒させるのが限界だと…!?

 

「意外と善戦したな………どれグラファイト、我から貴様に、武術の限界を見せてやろう」

 

 




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