東方仮面ライダーパラドクス GAME IS ANOTHER STAGE   作:桐生 勇太

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今回でグラファイト編は終了です。

次回からまたパラド編を行います………が、ちゃんとしたものを書くためにちょっと長考する可能性が高いです。

いくら長くても一週間で次話投稿ができると思いますが、上手くいけば2~3日で続きが出せるはずです。

どうぞ、パラド編も楽しみにしていただければ幸いです。

追記:そのうちベイオウルフ編も出します。
たぶんこちらは短めで、妹紅との出会い~グラファイト発見までで一区切りだと思います。


第23話:師の先を目指せ

グラファイト視点

 

「………それで、なぜまだここに居るんだ?」

 

「…む? 我か?」

 

 いやいや、お前以外居ないだろう。妖夢にあそこまで「歓迎しませんよ」オーラを飛ばされているのになぜまだここにいるのかが謎だ。

 息の根こそ止められなかったが俺の負けは明白だし、これ以上奴がここに居る理由がない。

 

「………貴様に伝えておくべきことがある………それを貴様が知るにふさわしいかどうかを確かめさせてもらった………貴様の先と、貴様の師、海帝についてだ……」

 

「………! まさかっ!? 海帝もこの世界に!?」

 

「残念だが、恐らくそれは無い………貴様がどうかは知らんが、ここに来れたのは死ぬときに何か大きな衝撃に見舞われた奴だけだ………我は自分で自分に故意に自爆の魔法を放った……貴様は?」

 

「………大技を出して………その代償で体が塵になって………」

 

「なら決まりだな。海帝は死んだ。あいつのゲームのルール、「一度でも攻撃を受ければゲームオーバー」は絶対だ。恐らく、我も貴様も自身に死ぬほどの衝撃や負荷をかけた結果としてここに飛んだのだろう。残念だが………」

 

「………………」

 

 師は死んだ。それを見送りもしたし、何度も飲み込んだ。

しかし一瞬でもまた会えるかもと淡い期待を抱き、それが打ち砕かれればこんなにも深い絶望が体を包む。やはり、俺も本当の意味で師の死を受け入れることができていなかったのだな…

 

「貴様の師、海帝には貴様以外に弟子が三人いた。一人はゲームの設定上の弟子、カイデン、そして実際に剣術を叩き込まれた、タドルファンタジーのラスボスバグスター、勇者ディーノ、最後に、基本の剣術を教わった後に海帝と立ち会い、勝利して免許を皆伝したObiパラドクスの三人だ」

 

「そうか…! 勇者ディーノも海帝の弟子だったのか…知らなかったな………」

 

「仮面ライダーたちと戦うことを決め、それぞれのラスボスバグスターは全員が修行に励んだ時期があった。ディーノは剣術を鍛え、ソル(ハイパー無敵のラスボス、ハイパー無敵ソルティ)は格闘術、そのほかのガルーダ(爆走バイクのラスボス)やキッド(ドレミファビートのラスボス)は自分にしかない特殊な能力を極めた………当然、貴様の師も自分を鍛え、様々な技を開発していた…」

 

 知らなかった連合の事実。考えてみれば当然だが、なるほど、元から何の修行もせずにあれほどの剣技が使えるわけがないか。てっきり先天的にゲームのラスボスとして備わったものかと思っていた…

 

「そして、貴様の師は自身の集大成の技、『奥義』の開発に取り掛かった…これにはObiやディーノ、そして我も武器を持っているという理由でかなり付き合わされたな」

 

「!!! ………まさか………お前、その奥義、知っているのか………?」

 

 聞きたい。その技を、そして何より、使えるようになりたい。

俺の剣帝流の戦術をより完成に導けるし、何より初めて聞く師の技。基本的な剣術のみで戦っているところしか見たことがなかったから、応用の技を俺は何一つ知らない。

 

それを知れば、間違いなく俺の修練の幅は間違いなく大革新するはずだ。

 

「………奥義の名は………『流氷』という名だ。どういう理屈でどういう技になるかは多分奴の頭にあったのだろうが………だが、海帝は結局奥義を開眼することはなかった………」

 

「何!? 何が起きたというのだ…! ま、まさか………その途中で俺が海帝と戦ったから………?」

 

 まさか、俺が海帝と最後に戦った時、あの時が奥義完成の直前だったとしたら…

 

「いや………貴様は関係ない………貴様は、「ギリギリチャンバラ」と言うゲームをやったことはあるか?」

 

「………? いや………無いが………」

 

「ゲーム「ギリギリチャンバラ」のラスボスは剣帝武士海帝………これは当然知っているな………ゲームの展開では、破門した元弟子のカイデンを打ち取った主人公に興味を持った海帝が主人公に決闘を申し込むことで最終ステージに移行する………

そして海帝をプレイヤーが倒し、最後のエンディングテーマと共にムービーが流れ、海帝が「素晴らしい腕前であった。わしの刀を受け取れ。そなたこそ、刀の未来を担う者…」と言って画面が暗転し、ゲームクリアになる……つまり、元々奥義は存在しないのだ。海帝が自分で開発しようとした奥義………完成間近、もしくは完成していたのかもしれんが………結局奴がその技を披露することはなかった………」

 

「そ、それは、何故………?」

 

「海帝は我らラスボスバグスターの中で唯一、「元のゲームで老人だったキャラクター」なのだ。我々はほとんど同じタイミングに生まれ、人間と似たような短い幼少期をへて、そして成体へ成長し、ある一定のボーダーラインにたどり着くと急速な体の成長が止まった………そのボーダーライン、何かわかるか?」

 

「一定以上………まさかっ!?」

 

「気付いたか…そう、ボーダーラインは「原作ゲームに年齢が追いつくまで」だ。つまり、海帝の若い時代………全盛期は二週間と持たずに過ぎ去った。それまでの二週間で叩き上げた技が、海帝が貴様と戦う時に使っていた基本の技………そして、最終奥義の完成に間に合わず、先に海帝の体が老いた。結局海帝が目指した奥義は完成することなく泡沫の夢として消えたわけだ…」

 

 ………そうだったのか………

ラスボスバグスター…全員が同じタイミングに生まれていたにもかかわらず、中年程のガルーダや老体の海帝達が年齢に開きがあった理由………

原作のゲームに追いつくまで………か………

 

「ベイオウルフ、お前やハイパー無敵ソルティが若々しいにもかかわらず、海帝のみが老いていた理由………今更知ることになるとはな」

 

「不思議なものだ。我やソル、キッド、ガルーダは年齢が原作に近づくほどに強くなっていったというのに………海帝だけが、日を追うごとに弱く、ひと時ごとに脆く、一瞬ごとに儚くなっていった………」

 

「………そんなに弱った相手に対し………俺は………」

 

「奥義は、闇に消えた………だが、知っている可能性がある奴が、まだ残っているかもしれん」

 

「何…!? 居るのか!?」

 

「Obiだ。あいつは海帝を下し、免許皆伝した身………あるいは、奥義のヒント、もしくは奥義そのものを知っている可能性がある」

 

 そうだ………いつだったか、奴と戦った時に言っていた。「お前は愛刀を託されたが、俺もお前と同じように託されている」と。

 

「Obiパラドクスと融合したパラドか………俺と同じように、この世界に来ている可能性もあるか………」

 

「………む? Obiパラドクスと融合したパラドクス? Obiが取り込んだのではないのか?」

 

「…! そう……だったな………ベイオウルフ、お前に俺からも話がある………大事な事だ」

 

 俺は、ゆっくりと深呼吸をして話を始めようとした。

何かを察した妖夢が部屋から出ていこうとしたが、「これは俺自身の話でもある」と言い、妖夢を引き止めた。

 

 そして、俺は………

 

向こうの世界で俺が見た全ての物、

 

戦争の結末、

 

バグスター連合のバグスター全員の死を、たどたどしいながらも伝えた。

 

 

「………そうか………我が守るべき者は、もう消えた後か………」

 

「う、ウルフ………」

 

 同席していた藤原妹紅と言う女が遠慮がちにベイオウルフの背を撫でた。動揺しながら、どもりながらも「平気だ」とベイオウルフは答えたが………

 

「そうだ、ベイオウルフ………お前は、自分たちがどうやって世に現れたか知っているか?」

 

「………いや………考えもしなかったな………」

 

 個人的に、この話をするのはつらい。

何より、仲間が全員死んだということを聞かされた後にさらにとんでもない話をするのだ。まともに受け入れッれないかもしれんが………

 

だが、これは言わなくてはならない事実。

 

ベイオウルフに、ラスボスバグスターは元人間の蛮野天十郎と言う男が仮面ライダー達との戦闘データを取るために作った存在だったことを伝えた。

 

 科学での説明が難解な心によって引き起こされる急激な成長を理解するため、あえて人間と同じように 弱者(ソシャゲバグスター ) 強者(ラスボスバグスター )、一般人と仮面ライダーの図と同じになるように意図して作られていたことも。

 

万が一ラスボスバグスター側が勝利してしまってはライダー達のデータが取れなくなるからと、ラスボスバグスター達の体内には爆弾がつけられていて、恐らくベイオウルフは最後にブレイブ達と戦っていた時に作動したこと、本当はエグゼイドとハイパー無敵ソルティの戦いではエグゼイドは負けていたはずだが、最後の瞬間に爆弾が作動してハイパー無敵ソルティが死んだこと…

 

戦争の勝者が、初めから決められていた出来レースだったことを伝えた。

 

そして何より、守るべき仲間を失い、失意のどん底に落ちたObiパラドクスはパラドに自分の記憶や力を預け、パラドと融合して取り込まれたこと………つまり、有り体に言えば孤独に絶望して自殺したと伝えた。

 

どれだけもがこうとも、例え正義のために戦っていても、団結していても、勝者は、初めから仮面ライダー側と言う筋書きだったことは、俺も初めて聞いた時は驚いた。

 

ベイオウルフにも、この話は大きなショックになるだろう。

 

「………飲み込む時間をくれ」

 

 そう譫言のように呟き、ベイオウルフは襖をあけて出ていった。

 

無理もないか。自分たちがただ仮面ライダーに倒されるためだけに作られた存在だったなど、簡単に受け入れられるはずがない。

 

哀れなのは奴らだが、こちらも命を賭けて対等に戦っていたつもりだった。

こっちの安全と勝利が100%完全に約束されていることも知らずに戦っていたと考えると、滑稽なのはむしろ俺達の側とも言えるしな。

 

 俺が不慮の事故で師であった海帝に勝ったのも、「運も実力のうち」と海帝は言っていたが、それも仕組まれたものだったのかもしれない………

何度も考えたが、未だに答えが出ない………

まあ、つまり考えても答えが出ないということだ。

 

 不意に襖を通して、庭からベイオウルフの悲し気な咆哮が響いた。

その声を聴き、座っていた藤原妹紅が立ち上がって庭へと出ていった。

 

「あの………グラファイトさん………グラファイトさんの話に出ていた海帝さん………グラファイトさんのお師匠様のお話、もっと聞かせてくれませんか…?」

 

 まあ、当然妖夢は気になるだろうな。

なんせ、俺が扱う剣帝流の開祖だ。

 

「ああ………いいだろう………」

 

 かつて、共に話し、言葉を交わしたのは恐らく一時間にも満たない程度の付き合いだったこと。

 

実際に立ち会ったのはたったの三度しかないこと。

 

それでも、戦うたびに刀を通じて語り合い、想いや誇りに触れていつしか尊敬していたこと。

 

最後に、海帝との決着も、話さねばな………

 

「………最後に海帝と戦った時………力やスピードでは俺が海帝を超えていた………あの時の俺は、てっきり自分が強くなったと勘違いしていたが………本当は俺の力量はさして変わらず、海帝が日々衰えていた」

 

「自分の技術や力が消えていく感覚って………一体どんな感じなのでしょう………」

 

 妖夢が少し暗い表情でぽつりと呟いた。

俺も同じ思いだ。

 培ってきたもの、丹念に練り上げ、積み上げ続けたものが見る見るうちに崩れ去る悲劇、なにより、それを止める手立てがないという無情。

 

 海帝の絶望はどれほど深かったのだろうか………

 

そして何より恐ろしいのが、いつしか俺や妖夢もそうなるということ。

ベイオウルフの言う通り、術は結局道具ともいえる。幾度も時が経ち続ければ、いつしか別れの時が来る。技術も人も、それは変わらない。

 

「………決着は、唐突だった。俺は力やスピードでは海帝に勝っていたが、技術で負けていた………その差を埋めようと、俺は自分の必殺技、【紅蓮爆龍剣】を発動した。その時の武器………ファング…両剣の武器の切っ先で突きを繰り出した………

海帝は、俺の攻撃を弾くでもかき消すでもなく、受け止めようとした。刀を横一文字に構え、俺の突き技と衝突した………

あの時、俺は負けを確信した。全力で突き出した技の後隙は直ぐに反撃から逃れられるようなものではない…殺されると………思った」

 

 ………だが、事実として………それは起こらなかった。

俺が恐らく一生忘れることのできない、苦い記憶。

 

「突き出した俺のファングが真っ二つに裂けて………そのまま海帝に突き刺さった………防がれていたはずの攻撃、それが………海帝の刀のあまりの切れ味のせいで、逆に持ち主である海帝から命を奪う結果になった………負けていたはずの戦い、生き残ったのは………俺だった」

 

 得られるはずのない勝利が、いきなり、求めてもいないのに転がり込んできたときのあの手に残る嫌な感触、今でも鮮明に思い出す。

 

 懸命に、命のやり取りをして対等に戦ったからこそ、あんなふざけた決着は訪れてほしくはなかった。

 

本当なら、死んでいたのは俺のはず………しかも、俺の勝った原因は、「自分の武器の方が相手より脆かったから」という禄でもないものだった。

 

「本当なら………死んでいたのは俺だった。だが俺はいやしくも生き残り………刀を海帝から受け継いで、今は半ば勝手に弟子を名乗らせてもらっている。

………俺と師の話は………まあ、大体こんなところだ」

 

 俺も俺で辛い記憶………

しかし、これはあくまで俺が一方的に悲しんでいるだけだ。

最期の瞬間………海帝は笑っていた。

あれほど武士として悲しい終わりはなかったはずなのに、

 

力を失い、最後の決着すら、実力での決着ではなかった。

 

それでも、刀を継いだ俺の姿を見て、満足げに微笑んでいた。

 

あの笑顔に報いるためにも………

 

俺はまだまだ強くならなければならない。

 

「だから、俺は師の扱う技術のほとんどを知らない。基本的な剣術やら組手の技術は本から得た知識の方が多いし、何より型に関しては完璧に我流だ。だから妖夢、お前に教えているときも俺が持っている技術よりも、お前が元から持っている技術を伸ばす方に力を込めたつもりだ」

 

 これも事実だ。俺はあくまでまだ刀を持ってからひと月も過ぎていない程度。いうなればほとんど初心者だ。「こんな奴が指南役では不安だろう?」と冗談めかして呟くと妖夢は

 

「いえ! 私はグラファイトさんがいいんです!」

 

 と元気な返事が返ってきた。

なんだか嬉しい限りだな………

 

…! そうか………俺が妖夢の稽古に付き合う本当の理由、

妖夢を助けたいと思ったことも嘘ではないが、それ以上の理由、

 

俺は、海帝とこういう師弟のような関係になりたかったのだな………

 

「フ………我ながら、気付くのが遅いというか………そうだ、妖夢、明日、俺は人里に行こうと思う。後から幽々子にも話すが、明日お前は一人で仕事をすることになるが………いいか}

 

「え? 一日くらいなら構いませんけど………何をしに行かれるんですか?」

 

「そうだな………ベイオウルフの話を聞いて、あいつもここに居るのではと思ってな………」

 

「あいつ………ですか?」

 

 俺、ベイオウルフ、そして、もう一人、死んだと思っていた奴がいる………そして、俺はあいつが死んだところをこの目で確かめてはいない。

 

だから………あるいは、この世界に俺と同じように来ているかもしれないのだ。

 

「俺の親友………パラドを探してみようと思う」

 

 Obiパラドクスと融合したパラド………ベイオウルフの言った通りなら、海帝の奥義について知っている可能性が高いからな。




お読みいただきありがとうございました。

グラファイトの師匠、海帝との物語は毎度どうも仮面ライダーエグゼイド THE GAME IS NEXT STAGEhttps://syosetu.org/novel/132984/
に描かれています。(ある程度必要な情報は本作で説明が済んでいるので、読まなくても全然OKです)

※Obiパラドクスについて
こちらに関してはパラド編でもう少し詳しく説明を挟もうと思っているので、今理解できずとも全然大丈夫です。今はまだもう一人のパラド、(もう一人の影の自分)のような簡単な認識で大丈夫です。
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