東方仮面ライダーパラドクス GAME IS ANOTHER STAGE   作:桐生 勇太

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第26話:引きこもり決定

 パラド視点

 

「いいですかパラドさん、この幻想郷はですね………」

 

「いや……もう何べんも聞いたし、そろそろ…な?」

 

「いいえ、パラドさんは分かってないです。そもそも…」

 

 あの後、箒女からドライバーを取り返した俺を引きずるように連れ帰った東風谷。帰ってから一気に始まったお説教タイム。この世界の仕組みを何度も何度も繰り返し繰り返し叩き込まれた。

 

1:ここは幻想郷と言う場所。外の世界では人の天下であるが、幻想郷では妖怪の天下となっている。

 

2:この幻想郷は博麗大結界と言う結界があり、外の世界と幻想郷の行き来をほとんど不可能にしている。幻想郷の内部で妖怪が権勢を保っていられるのはこの結界のおかげらしい。

 

3:そしてその結界を管理している存在が「博麗の巫女」つまりさっき俺が摘まみ上げた紅白巫女らしい。

 

4:博麗の巫女は結界の維持に必要な役職であると同時に、ここ幻想郷のバランスを保つ存在でもあるらしい。その巫女が持っている能力「空を飛ぶ程度の能力」とはありとあらゆるものから宙に浮き無敵になる能力らしく、巫女を最強たらしめている能力らしい。その巫女が最強で、人側にも妖怪側にもはっきりとはつかない中立的立場だからこそバランスが保たれているらしい。

 

5:そして、そんな幻想郷の秩序その物と言える存在を最強たらしめている能力を、いとも簡単に俺が触って(破って)しまった、と。

 

「永夢のムテキと戦わせたらどっちが勝つのかなぁ………両方とも時間制限なさそうだし………」

 

「………パラドさん?」

 

「んあ、聞いてるぞ」

 

 いや、言わないけどもう何べんも聞いたしさ。いい加減暗記したからもういいよ。100%好意で教えられてるんだろうから文句言えないけど、もう真面目に耳にタコができた。

 

「ならいいですけど………じゃあ、しばらく外出は禁止です」

 

「え、なんで!?」

 

「やっぱり聞いてないじゃないですか! いいですかパラドさん、パラドさんは異常に力が強かったり、いきなり綺麗な羽が生えたりして常識にとらわれてはいけないにしても非常識だなと思ってましたけど、この場合は次元が違うんです! 幻想郷で最速や最剛はばらけていても、ルール無用で戦った時の最強は、唯一絶対一人を指すと決まってるんです。パラドさんはまだ「どっち」かなんて決められませんよね?」

 

 同じ話ばかりだろうと思って途中から聞き流していたけど、かなり大切なことを話されていたみたいだ。まあちゃんと聞いてなかったから、「どっち」が何を指すのかが分からんのだが。

答えようがない問いに俺が視線を明後日の方向に向けて考えるふりをすると、東風谷が一つため息をついた。なぜ何も考えていないと分かる。読心術か。

 

「この幻想郷には普通の人以外にもいろいろな種類の妖怪・神・天人・幽霊の類が居ます。そして少数ではありますがその中には「人外たち」ではなく「人外の中で一種のみ」の天下を望む存在もいます。ですから………」

 

「………中立的立場で均衡を保ってた巫女を倒せる可能性がある俺が出てきたせいで、情勢が揺れる?」

 

「その通りです。多分パラドさんがどの派閥についても幻想郷のバランスは崩壊します」

 

 めんどくさっ! 核問題かよ! しかもその中心が俺って………

あまりの面倒くささに思わずその場に大の字になって足をばたつかせていると、子供のように暴れる俺を見かねた東風谷が俺の右手を引っ張って無理やり起き上がらせた。

 

「とにかく! 霊夢さんや魔理沙さん、当然文さんにも口止めをしておいたので現段階では大丈夫です! 普段はネタに貪欲な文さんも「今回に関しては私の手に余りますねぇ」と言ってましたし!」

 

「知らねぇよぉ。大体能力どうこう言われても分かんねぇし。第一「程度」ってなんだ? 無敵能力って程度って言うか?」

 

「パラドさんの「程度の能力を無効にする程度の能力?」の存在は秘匿にするべきです! 不用意に外出されてパラドさんの能力が広まるのが一番困るので、外出は控えてください!」

 

 帰る方法が現段階で無い場所に飛ばされて、他の手を探そうにも外出禁止。情報だけでも探りたいが、下手な行動をしたら最悪この世界(幻想郷)がひっくり返る………詰んだ。

 

「最悪なんですけど………って言うか、俺が自分で「俺は中立派だ!」と天下の往来で叫べばそれでOKとかない?」

 

「無理だと思いますよ? しつこく勧誘したら怒って追い返す霊夢さんと比べてパラドさんはずっと話が通じそうですし。仮にやっても今度は勧誘地獄…」

 

「壁ブチ破って「シンブンイカガッスカ」ってか?」

 

「そんな恐ろしい新聞勧誘知りませんよ…」

 

 流石の俺でも一晩中ギャーギャー言われればブチ切れる自信はあるが、それでなくともアピールしてくる連中は東風谷の言う通りにごまんと来るだろう。にしてもこれ、家事手伝い以外にやることが何もないごくつぶしになる予感が………

 

「俺の存在を秘匿にするのは分かったけどさ、どう考えてもここの神社に負担になるだろ。追い出した方がよくないか?」

 

「そんな薄情な事しませんよ。負担でないと言えばウソですけど、パラドさんが出ていった結果トラブルが起きて? パラドさんの能力が明るみに出て? 大パニックになるのが目に見えてますし。ただでさえ前の「博麗大結界崩壊異変」で皆さんピリピリしてるのに…」

 

 でも言われてみればそれもそうか。外で万が一俺が妖怪に絡まれて喧嘩になったり、そうでなくとも妖怪同士のトラブルに俺が巻き込まれない保証なんてないもんな。

暇でしょうがなくなりそうだけど、飲み込むしかないか。

 

「悪い。超迷惑かける。よろしくな、東風谷………いや、早苗」

 

 頭を乱暴に掻きながら頭を下げると、早苗は「やっと名前で呼んでくれましたね」と呟いて笑った。

 

「はい、こちらこそよろしくお願いします。神奈子様と諏訪子様にも伝えておきますね」

 

「ああ、よろしく(あれ、何か引っかかるな…)」

 

 ぺこりと行儀よくお辞儀をして出ていった早苗を見送って数瞬立った後になって、ようやく違和感の正体に気が付いた。

 

「………諏訪子って誰よ?」

 

 この世界に棲む上で最低限の常識は叩き込まれたが、この神社で厄介になる上での知識に欠けているのを改めて実感させてもらった。

 

 




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