東方仮面ライダーパラドクス GAME IS ANOTHER STAGE 作:桐生 勇太
第4話:大食いの化け物・西行寺幽々子
「じゃあ、今日からあなたは妖夢の後輩ね。しっかり働いてもらうわ」
「ああ………よろしく頼む」
「妖夢!食事にしましょう!彼が手伝ってくれるわ」
手伝うも何も、すでに三人前の料理が用意されているではないかと突っ込みたいところだが、ひょっとしたら後出しのくだものや運び終えていない御櫃の類でも運べということだろうかと思い直し、障子を開けて先ほどの妖夢と呼ばれた少女を探すと、またしても目の前に立っていた。
「さあ、行きましょうグラファイトさん!やることが盛りだくさんですよ!」
「お、おう………」
見たところ、ここまで大きな屋敷のわりに、どうやら住んでいるのは二人だけのようだ。この庭や屋敷内の備品の手入れ、掃除を勘定に入れれば、確かにやるべきことはいくらでもありそうだ。
………それにしても………
「さっきの話、盗み聞きしていたな?」
「みょん!? そ、そんなこと、ありませんよ!」
「ならなぜ俺の名前を知ってる。まだ名乗った覚えはないぞ」
「そ、それは先ほど幽々子様が大きな声で……」
「「彼が手伝ってくれる」としか言っていなかった。俺の名を知るには、俺が最初に名乗った時、つまりお前の主と俺が二人きりで話しているときに盗み聞きする以外にはない」
「うう………すみません。ちょっとだけ、聞いてしまいました………」
「俺は別に構わないが、下がれといわれたのに会話を盗み聞きしてしまっては、後でバレたら面倒なことになるだろう?」
「はい………」
別にここまで叱るほどでもないとは思うが、本当に聞いてはいけない会話に首を突っ込まれても困るからな………
「さて、で、俺は何を手伝えばいいんだ?」
「はい、調理は私がするので、グラファイトさんは厨房の外に置いてある材料を私の隣にドンドン積んでください!」
言われたとおりに裏口に回ってみるが、屋敷の壁を覆うようにダンボールの箱が積み上げられており、どれがどれだかわからない。
「どれを運べばいいんだ?」
「右端から順番にお願いします!」
「………………全部でどれくらい運べばいい?」
「外にあるの全部、お願いします!」
中型のトラック1台分ほどもあるダンボールを、運ぶ、運ぶ、運ぶ………
積み込み作業のアルバイトでもやっている気分になりながら、とにかく無心で運び続ける。
(三人しかいないのになぜこんな大量の食材の必要が……?いや、俺が気付かなかっただけで実は4~50人ほど使用人がいるのやも………いやいや、ならばなぜ調理担当があの娘一人なのだ)
途中で不要な事を考えつつも、半分ほどを運んだあたりで妖夢が「料理を運びますよ!」と声をかけてきた。畳半分ほどの大きさの非常識な皿を差し出され、嫌な予感がするが、指示通りに先ほどの幽々子の部屋へ料理を運びこんだ。
「ありがと。そこに置いておいて頂戴」
自分を救ってくれた恩人の屋敷の主、こんな恩知らずなことを言ってはいけないが、そこには餓鬼のように明らかに自身の体積以上の食材を口に放り込む幽々子の姿があった。
大食いフードファイターですら裸足で逃げ出しそうな勢いで食べている。
ふと気が付くと、先ほどまでてんこ盛りになっていたはずの俺が運んできた超う大皿の料理が半分以下に………ッ!? い、一瞬で料理が消えた………?
「空いた皿を片付けて頂戴」
「あ、ああ………」
今見ている光景を、到底現実とは受け入れがたい。自分は、本当はまだ目覚めてなどおらず、白昼夢かはたまた明晰夢、それとも悪夢?もしやすると地獄の垣間見でもしている気分になりながら、とにかく皿を積みに積んで部屋を後にする。
厨房に戻ると、妖夢はまだ料理を続けていた。
信じられん………あの女、まだ食う気か!
しばらく料理を運び、ひと段落すればまた食材が入った段ボールの厨房への積み込み作業。そして料理運び………繰り返し続け、とうとう外の塀を覆い尽くすほど積み上げられていた料理がなくなる直前と言うタイミングで、遂に「ご馳走様!」という声が屋敷に響いた。
「お疲れ様です!グラファイトさん!」
「あ、ああ………………失礼だが、その………いつもこれぐらいの量を?」
毎日三食これが続くとなると並ではない。しかも今回おれがやったのは運搬作業のみ。
折れる気は毛頭ないが、それでも少々めまいを起こしそうだ。
「いえ、普段はここまでは………ただ、週に一度のたくさん食べたい日が今日だっただけです」
「そ、それは………良かった………」
「普段は、この半分です」
半分……………と言うとつまり………
「軽トラ丸々一台分………………………」
なんという量か。元々傷が完全に癒えていないことも手伝ってか、めまいを覚えた俺はふらふらとその場に沈み込んだ。
「さ、私達のご飯にしましょう!」
………………すっかり忘れていたな。
お読みいただきありがとうございました。