東方仮面ライダーパラドクス GAME IS ANOTHER STAGE 作:桐生 勇太
あの後、ぎくしゃくしている妖夢と共に夕食を作り、次の日の早朝、俺は幽々子の部屋にいた。
「あの子いつも朝早くから修行してるの。そろそろ始まるはずよ」
だそうだ。「ちょっと様子を見てくるわ」と言って、部屋から出て行ってしまった。
部屋で一人、瞑想をしているとパタパタと足音が響き、幽々子が襖を開けた。
「始まったわ。きて頂戴」
言われるがままに幽々子の後をついていくと、妖夢は昨日俺が稽古をしていた場所とほぼ同じ位置で修行を行っていた。二本の刀を懸命に振り回し、突き、薙ぎ払っている。
普段は何だか頼りなそうに見えていた目はキリッとし、遥か彼方、距離ではなく、思い出の中にある何かを追いかけていることがうかがえる。………俺と同じだな。
「我流………ではないようだが、もとは誰かの………?」
「あの子に剣術を教えたのは、あの子の祖父………先代庭師の、魂魄妖忌よ。ある時あの子に後を継がせてどこかへ行ってしまって………それから、ずっとあの子は祖父の面影に追いつこうとしているのよ」
幽々子の言葉を聞きながら、俺はじぃっと妖夢を………彼女を、見ていた。
一目見ればわかる。
その有り余る剣の才能が。
一目見ればわかる。
どれほど長い時間、努力を続け、邁進してきたかが。
一目見ればわかる。
その努力が、
一目見ればわかる。
本当は一本だったはずの道。それをどこまで
いたいけな少女が歩むにはあまりにも過酷で、無謀すぎた歩みを間近に感じ取り、俺の目から意図せず、涙が溢れた。
「………昨日、あの子に言われたの。「幽々子様、あの人、とんでもなく凄い剣士です」って………あなたからの言葉なら、あの子も素直に飲むはずよ」
「………………分かった」
乱暴に涙をぬぐい、裸足で庭へと降り立った。一歩ずつ、静かに歩んで近づく。
上り始めた朝日が妖夢の刀や汗を照らし、美しく輝いているような錯覚を受けた。
刀を薙ぎ払い、反転した妖夢と、目が合った。
「あ………」
「………………いい………動きだった………」
「あ…ありがとうございます………」
何を、言えばいいのか、俺は………分かっている。
どこまでも、残酷な知らせ。
………恨まれるだろうか?
………………それとも………
「お前の…主から……幽々子から、聞いた……祖父のような剣士に、………なりたいのだな」
「!は、はい!私、祖父のような立派な剣士になりたいです!………昨日は不躾に見てしまってすみません。グラファイトさんも、素晴らしい剣士だと思います………」
そこで、妖夢は一旦口をつぐみ、そして俺に問いかけた。
「わ、私は………祖父のような、剣士に、なれると………いつか、祖父と並んで立てるような剣士になれると思いますか………?」
その言葉は、きっとこの少女が常に疑問に思っていたこと。そして、身近に同じように剣を扱うものがいなかったため、誰にも聞けなかったこと。
俺は、自分なりに精一杯考え出した答えを、彼女に差し出した。
「………………それは無理だ………………お前がどれほど努力を積んでも………………お前は祖父のようになれはしない」
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