東方仮面ライダーパラドクス GAME IS ANOTHER STAGE 作:桐生 勇太
さめざめと涙を流す妖夢の前で膝をつき、努めて優しく肩に触れる。妖夢はゆっくりと顔を上げた。
「お前には才能がある。………これから、その才能を正しく伸ばせばいい」
「で、でも………私、今までも一生懸命やってきたんです………なのに、グラファイトさんの足元にも及びませんでした………」
「努力の仕方を間違えていただけだ。もしお前の祖父がこの場にいれば、俺と同じことを思ったはずだ………そこも含めて、教えられる限り、俺が教えよう」
妖夢の腕を取り、半ば強引に立ち上がらせて歩かせる。庭の端にある腰ほどの大きさの岩がある場所まで連れて行った。
刀を抜き、その大岩を二つに分断した。
「力量的にはお前にも同じことができるはずだ………やってみろ」
「は、はぁ………」
刀を抜いて前へ進もうとする妖夢の手を掴んで引っ張った。
「あ、あの…?」
「違う。俺がいた位置と同じ場所から動くな。そうすれば、さっきの俺の言っていた言葉が分かる」
妖夢は多少納得いっていないような表情をしながらも、素直に俺の言葉に従って刀を抜いたが、すぐにどうにもならない事態に直面していたことに気付いたようだ。
「あの………岩に刀が届きません………」
どうしろと言うのだ、と言う表情を浮かべる妖夢の目線を無視し、妖夢の若干後ろから刀を振り下ろして二つに割れた岩をさらに四つに分断した。
「俺は届くぞ」
……………何が言いたいんだこいつは、と言う視線を感じる………
「あー、ゴホン、これが、さっきお前に言った「努力ではどうにもならん事」だ。自分の祖父と並ぼうとするお前は、これに似る」
「こ、これに………ですか?」
「先ほど、俺はお前に「女だから無理」と言ったな。あの言葉は、「女は男に比べて劣っている」と言う意味ではない。男に出来る事、女にできる事がそれぞれあると言う意味だ」
「それぞれ、ですか………」
「例えば、俺とお前では、腕を含めての刀のリーチ、足の幅や筋肉の密度、体格が異なる。筋肉や骨密度くらいなら変えようがあるが、身長や体格の差を埋めることは実質的に不可能だ」
こういってはなんだが、妖夢の体格はお世辞にも恵まれているとはいいがたい。
小柄でいて華奢な彼女では、残念ながらどうしても無理なものが生まれてくる。
「俺の勝手な予想だが、お前の祖父は恐らく身長は1間(約180cm)より少し大きいくらいで、筋骨隆々な方だったのではないか?」
「す、すごい! 当たってます! でも、どうして………」
「お前が構えた時、聞いただろう?「長刀の方に、若干重心が持って行かれているようだが」と、そしてお前はこう答えた。「これが、祖父のいつもやっていた型でした」とな。なら答えは簡単だ。お前の祖父は、お前に扱えない長刀を支えられるほど力があり、かつそれを生かせるほど良い体格を持っていたということになる」
「すごい………たったあれだけで、そこまで………」
つまり、自分の体に合う筋量、構えを体得できれば、妖夢の伸びしろは無限大ともいえるわけだ。だが、それは………
「ハッキリ言って、お前がやっていた構えは、お前の物ではない。あれは、お前の祖父の物だ。自分に合う構え、戦い方を極めれば、お前の祖父を超えることも不可能ではないと思う」
「じゃ、じゃあ………!」
「だが………それは、お前の今まで行ってきたもの、全てを変えねばならない。微妙な型の違い、呼吸、構え、足の曲げ方。戦闘スタイルに至るまで………全てを完全に変えれば、お前は素晴らしく強くなるだろうが………それは、お前の祖父が行っていたものと、全く別の物になる。お前の祖父の剣術とはまるで別の剣術。妖夢流とでも言おうか………それでもいいか?」
「そ………それは………」
すぐに、決断しろと言うのは……さすがに酷か。妖夢の頭を優し気に撫で、我ながら不器用ながらも微笑んで見せた。
「すぐに答えは出さなくていい………ただ、これだけは覚えておけ………お前には、未来がある。………その未来にしっかりと走り出せば、きっといつかまた出会った時、お前の祖父も喜ぶと、俺は思う。………………すっかり日が昇ってしまったな。さあ、朝食にしようか」
「は、はい………………あ、あの!」
声をかけられ、俺は振り向いた。妖夢の目はまた輝きを取り戻していた。キラキラと星がちりばめられた瞳が、俺をしっかりと見つめる。
「今日から、よろしくお願いします! 師匠!!!」
「………お前の師は、お前の祖父だ………俺はあくまで、アドバイス程度しかできんぞ。悪いが、俺自身弟子を取ったことなどないし、そもそも修行中の身だ。………だが、朝食が終われば、ビシバシいくぞ。覚悟しろ」
「は、ハイ!!!」
結局弟子を取ったような状態になってしまったな………だが、ここまで大口を叩いたからには、俺自身もしっかりと一人前にならねばな………わが師、海帝殿………貴方の剣に対する流儀と誇り、それは俺の中で生きている………それを、俺はうまくまた次へ繋げられるだろうか………?
お読みいただきありがとうございました。