Fate/EXTRA Order   作:神凪颯

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第2話です。
1話を読んでくださった方、ありがとうございます。
お気づきかと思いますが、この作品、マシュは出ませんのであしからず。
マシュファンの方はごめんなさいm(_ _)m
あくまでこれは、EXTRA基準のFGOです。
また感想をくださった捌咫烏(2代目)様ありがとうございます。


第2節「炎上汚染都市 冬木」

2004年1月30日ーーー

日本冬木市において、歴史上秘密裏に行われた魔術儀式が存在する。

 

その名も、聖杯戦争ーーー

 

あらゆる願いを叶えるという万能の願望器である聖杯を求めて、7人の魔術師と7騎のサーヴァントによるバトルロワイヤルである。

 

ある世界線においては過去に5回行われているが、その事象はこの観測宇宙には存在しない。

 

この街で行われた聖杯戦争は、2004年の1度きりである。

バトルロワイヤルは決着し、1組のマスターとサーヴァントが、その願望器に願いを叶えた。

聖杯は、その願望器としての役目を果たしたのであった。

 

 

「ーーー私は、大金が欲しい。施設を運用するための電力を集めるため、そのための大金が欲しい。

君に願いはないのか?

聖杯戦争の勝者の特権だ。君にはひとつ、自由に願いを叶える権利がある。」

 

「願い……私の願いはーーーーー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーー微睡む意識は覚醒する

ーーーーー欠けた(ユメ)を見ていたようだ

 

 

 

目を覚ますと、そこは一面に広がる焼け続ける街並みだった。

ヒトの機能を失い、ただ燃え続ける街並みは1つの地獄とも思えた。

だが、ここはさっきまでのカルデアの管制室とは異なるようだ。

ならばここはーーー

 

がしゃん

 

聞きなれない音が聞こえた。

気づけば、ボロボロの剣や槍を携えた骸骨の兵隊に取り囲まれていた。

明らかに敵意を向けられている。

 

だが、サーヴァントを持たない自分には戦う術がない。

ここは逃げるしか…!

 

しかし、ぞろぞろと数が増える骸骨兵に対し生身で突破することは不可能に近い。

じりじりと距離を詰められていく。

 

このままこんなところでやられるものかーーー!

 

心が叫んでいても、実際には身体が簡単に答えてくれない。

目の前に迫る死という概念が迫っているからだ。

 

 

 

「馬鹿者!そなたの剣を忘れたか?

座して讃えよ!しかして聴き惚れるがよい!

そして叫ぶのだマスターよ!

そなたの剣の名を……!!」

 

 

荒れた土地に響く、美しい声だった。

自分はその声を知っている。

何度も隣で岸波白野を支え、共に闘ってきた彼女のことを…

欠けた記憶が埋まっていく感覚だった。

今ならわかる。知っている。思い出せる。

岸波白野は声を振り絞り叫ぶ。

かけがえのない大切なその名はーーー

 

 

来てくれ・・・セイバー!!

 

 

右手の令呪に熱が帯びるーーー

瞬間ーーー

 

自分の周囲を取り囲むようにいた骸骨兵はその形を保つことなく吹き飛ばされ眼前には1輪の薔薇が舞い降りる。

その顔を、その姿を覚えている。

 

セイバー―――――剣の英霊である彼女は何度も岸波白野を窮地から救ってくれた。

そんな大切なことを今まで忘れてしまったことを恥じ入りながらも素直にお礼を言った。

 

ありがとうセイバー、君のおかげで助かった。

 

「まったくだ奏者(マスター)よ。だが、1つ我慢ならないことがある。

そなたがムーンセルから消えたことを知り、別の世界に飛んでしまったことまではまだよい…しかし、しかしだ…!

余のことまで忘れてしまうとはどういうことだ奏者よ!!」

 

泣きそうな顔をして頬を赤くしながらセイバーが詰め寄ってくる。

それについては申し訳ないと思う。

いまではしっかりと思い出せるのに、さっきまで記憶になかなか出てこなかったことが不思議なくらいだ。

 

「うむ、たがこうして余が奏者と再び相見えることができただけでもよしとしよう。

まずは、この雑魚どもを蹴散らさねばならんからなっ!」

 

骸骨兵達がまた現れてくる。倒してもキリがなさそうな程にーーー。

 

セイバーが赤い大剣を携え様子を伺っている。

 

「奏者よ、指揮を任せるが、戦い方は覚えているな?」

 

こちらを振り向くことなくセイバーは尋ねてくる。それだけ岸波白野のことを信頼しているのだろう。

もちろん忘れてないと答える。

月でセイバーと共に過ごした時間はかけがえのないものであり、もう忘れてはいけないものだとしっかり認識している。

しかしひとつ問題がーーー

 

 

 

 

 

 

骸骨兵を倒しセイバーは軽やかな足取りでこちらに来る。

浮かない顔をしているのは、やはり自分と同じことを考えているのかもしれない。

 

「奏者よ。尋ねるが・・・余のレベルが初期値に戻っているのはなぜだ・・・!?」

 

その通りだ・・・それは自分にもわからない。

セイバーの戦い方やスキルは覚えているのに、全体的にレベルが初期値に下がっていて戦闘ひとつにも苦労してしまう。

 

「うむ・・・不便であるが仕方ない。なにせ奏者はいつもピンチ、大抵ピンチ、ピンチが常なマスターだから・・・致し方あるまい」

 

褒められてるのか貶されてるのかはよくわからないが、一緒に戦ってくれるなら力強い。

 

 

 

 

「きゃぁああああ!!!!」

 

 

 

燃え盛る街に突然悲鳴が響いた。

自分以外にもまだ人がいたのか!

 

今のは女性の叫び声だ。骸骨兵に襲われているのかもしれない。

 

「これは只事ではないな・・・ゆくぞ、奏者よ!」

 

セイバーに手を引かれ、サーヴァントの人並外れた運動力で周囲の骸骨兵を振り切り悲鳴の主のところまで駆け抜けていく。

 

人の脚力の何倍もあるサーヴァントの疾走は、その悲鳴の主の元にたどり着くのに時間はあまりかからなかった。

少し開けた場所にでると、その女性は骸骨兵に囲まれて今にも襲われそうになって体を震わせて座り込んでいた。必死に抵抗はしたようだが、あまり効果がなかったのかもしれない。

 

「助けるぞ、奏者よ」

 

もちろんだ。

セイバーにそう返すとその真紅の大剣を下段に構え骸骨兵に突進していく。

 

まず骸骨兵2体の間に身体を潜らせると通り過ぎ間際に真紅の大剣で一閃。骸骨兵の身体は半分となり消滅する。その剣戟に迷いはなく、レベルが下がっていようとも彼女は岸波白野のサーヴァントとしてあることに誇りを持っているようだ。

 

そして地を蹴ると座り込んでいる女性の上を跳び反対側の骸骨兵を上から叩きふせると左右にステップするように動き残りの骸骨兵を蹴散らしてしまった。

 

ひとまず骸骨兵を撃退したところで、その襲われていた女性に声をかけるために近寄る。

 

大丈夫・・・?

・・・って、どこかで見たような・・・

 

長い銀髪をまとめて威厳のありそうな服装のこの女性。

カルデア所長のオルガマリー・アニムスフィアその人だった。

 

「あ、あなた・・・!あの時の一般人候補生じゃないの・・・!

こんなところでなにをしているの?

レフは!?ほかのマスター候補生はどうなったの!?」

 

助けたのにこの仕打ちである。

いきなり詰め寄られてしまったが、まずは落ち着いて欲しい。

 

「そうだ。まずは落ち着くのだ、そこの女よ。

うむ、よく見ると、なかなかに余の好みな顔であるな。

その仏頂面でなければもっとよいのだが?」

 

「っ!まさか、サーヴァント・・・!?

あなた、サーヴァントと契約したっていうの!?

あなたみたいな一般人がどうしてこんなサーヴァントと契約できるのよ!

どんな横暴働いたってわけ!?」

 

誤解だ。誤解にも程がある。というより、この言われようこそ横暴だ。

自分にだって、どうしてセイバーを呼び出せたのかさえよくわかっていないのだから。

 

「ふっ・・・余の奏者だからなっ。

いつだって余がその声に応えるのは当然であろう?」

 

セイバー、話をややこしくしないでほしい。

 

「は?岸波、あなたそれってどういう・・・」

 

「っ!伏せろ!」

 

突然セイバーが前に出るとその剣を振るい何かを弾き落とした。

これは・・・剣?矢のように細いようだけど・・・

 

「おのれ、不意撃ちとは卑怯な!

姿を見せるがいい!」

 

しかしセイバーの声に反応するものはなかった。それでも矢は何度もこちらに狙い降り注いでくる。

セイバーは自分と所長を守るためにその攻撃を捌いてるのに精一杯でこちら側から手を出すことはできないでいた。

そしてセイバーのレベルがまだ低かったことが災いした。

飛んでくる矢を捌ききれずに後に通してしまった。

その矢はまっすぐ岸波白野の眼前に・・・

 

「っ!奏者ーーー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、その矢が岸波白野に当たることはなかった。

矢先が触れる寸前、突如燃え尽きたのだ。

これは並の魔術師ではなく、おそらくサーヴァントのものだ

 

「よぉ、危ねぇとこだったな坊主。」

 

飄々とした声がした。この声には聞き覚えがある。

確か・・・

 

「ここは奴の射程だ。離れるぞ」

 

えっ、ちょっ・・・!

 

いきなり小脇に抱えられてその場を素早く離脱する。

 

「ま、待つのだ貴様!余の奏者をどこへ連れていく!?」

 

セイバーは慌てて所長を担ぐと「ちょっと・・・!」と慌てるような声をあげるもセイバーはそれを無視して自分を連れ去ったサーヴァントを追いかけていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらくすると襲撃が止み、そこで自分を抱えていたサーヴァントは足を止めた。

 

「よぉ、無事だったみてぇだな坊主」

 

蒼いフードを被っていて表情はよくわからないがこのサーヴァントは自分の身を案じているようだった。

 

ありがとう。よくわからないけど助かった。

 

「礼なんざいらねぇよ。さっきの奴が気に食わなかったんでな。どうもお前さん、あいつらと敵対してるようだし、ちょいと加勢してやったまでよ。」

 

するとそこで後から追いかけてきたセイバーと無事合流した。

自分の身を第1に案じてくれるセイバーは本当に頼もしい。

頼もしいのだから、泣きそうな顔をしないで欲しい・・・

 

「とにかく無事でよかった、奏者よ・・・

ところで、そこのフードの男よ。貴様、ここのサーヴァントであろう?」

 

「ん?まぁな。」

 

「まったく・・・一体どうなっているの?

おそらくここは冬木で間違いないのだろうけど、あなたはこの冬木の聖杯戦争に参加していたサーヴァントで間違いないのね?」

 

混乱から落ち着いた所長が入ってきた。

やっぱりここは冬木の街だったようだ。

1度も訪れたことのない街だったからわからなかったが、意識を失う直前、レイシフトを行うというアナウンスが聞こえたことから、岸波白野とオルガマリー所長はレイシフトしてこの特異点である冬木に来てしまったのだろう。

しかし、あの地獄のような管制室の中で、所長が無事だったのが驚きだ。

 

「一応俺はキャスターのサーヴァントだ。真名は・・・まぁ、伏せさせてもらうぜ」

 

フードを脱いで顔を見せてくれた。クラスは違えどその風貌には見覚えがある。

整った顔立ちに蒼い髪、内なる焔を宿すような燃える瞳、そして赤枝の騎士である証のイヤリング。

月の聖杯戦争で召喚された遠坂凛(トオサカリン)のサーヴァント、ランサーだ。

真名はクーフーリン。アルスター伝説におけるケルトの大英雄である。

 

確かに彼は師匠スカサハに譲り受けた刺し穿つ死棘の槍(ゲイボルク)の他にルーン魔術を習得していたという伝承もあったはずだ。

今の彼の霊衣は月での出で立ちとは大きく異なりいかにも魔術師らしい姿になっている。

サーヴァントによっては、複数クラスに該当する場合そのどちらかの側面を持つクラスで召喚される。だから今回は槍術を扱うランサーではなく、ルーン魔術を扱うキャスターとして喚ばれたのだろう。

例えば、ギリシャ神話の大英雄ヘラクレスは、発狂することが多く狂化の側面が多いためバーサーカーとして召喚されることもれば、様々な武具を使いこなす側面も持っていることからアーチャーやランサーで召喚される可能性も存在する。

 

そしてそのことはセイバーも気づいているようで・・・

 

「ほほぅ?貴様、此度はキャスターでの現界か。

なるほど、自慢の槍が振るえなくてさぞ不服と見えるぞ?」

 

「てめぇ・・・気にしてることをベラベラと・・・」

 

「そんなことより、今ここがどうなっているのか説明してもらえる?」

 

イラついたように所長が間に割って入る。

 

「んなこたぁわかってる。それよりも先にアンタらだ。アンタらの話を先に聞かせろ。話はそれからだ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「カルデアねぇ。

なるほど、アンタらの事情は分かった。

ってことは、ここの本来の様子(あるべきすがた)は知ってるんだな?」

 

ラプラス(使い魔)による観測では、2004年の冬木において特殊な魔術儀式...聖杯戦争が行われていたと確認されているわ。」

 

聖杯戦争ーーー月ではムーンセルによって集められた128人のマスターとそれぞれのサーヴァントと組み、最後に残った者があらゆる願いを叶える万能の願望器である月の聖杯を求めて争うものだ。

だが、この地上においての聖杯戦争は...

 

「7人のマスターがサーヴァントを使役して争いあい、最後に残った者が所有者のどんな願いもを叶えるという万能の願望器「聖杯」を手にするという...それが聖杯戦争だ」

 

そうだったのか...

どうやらセイバーはすでにこの時代における基本知識は持ち合わせているようだ。

サーヴァントは召喚された場合、その時代で生活する際に必要な知識を聖杯から与えられる。

セイバーも、岸波白野に召喚された際に地上の聖杯戦争に関する知識を与えられたのかもしれない。

 

「あぁ。だが、俺たちが行っていた聖杯戦争は、いつの間にかまったく別のものにすり替わっていた。

街は一夜にして火の海に覆われ、サーヴァントだけを残して人間は消え去った。」

 

重々しい顔つきでラン...キャスターは語る。

しかし、通常マスターとサーヴァントは一心同体のようなものだ。

マスターが消えればサーヴァントはマスターからの魔力を得られずに消滅してしまうはずだ。

サーヴァントはマスターからの魔力供給なしには現界できないのだ。

それは、月でも地上でも同じはずだ。

 

つまり、キャスターのマスターはまだ生きてーーー

 

「いや、それはない。俺のマスターも例外なく消えた。確かに消えたんだが、今の俺は何か別のモノに繋ぎ止められてるって感じだな。

けどそんな中、真っ先に再開したのはセイバーのやつだ。

奴さん、水を得た魚のみてぇに暴れだしてよ。

次々にサーヴァントを倒していきやがった。

残ってんのは俺だけだ。」

 

この状況で聖杯戦争を再開した。

冬木の街からマスターを含めた人間がいなくなってしまったのなら、セイバーのマスターも例外ではないはずだ。

それでも戦いをやめない理由ーーー

そのセイバーが何の英雄かはわからないが、それだけ聖杯にかける願いが大きいのだろう。

 

「だが、セイバーに倒されたサーヴァントは、真っ黒い泥に汚染されてヤツの手駒になった。

俺以外のサーヴァントは全員そうでな、アンタらと合流する前にライダーとアサシンは倒した。

泥でなんとか形を保ってるだけの骸だったな。

そんでさっきの遠距離攻撃は間違いなくアーチャーだろう。」

 

アーチャーからの攻撃ならば、あの攻撃方法もうなずける。

遠距離からの狙撃や奇襲が主な戦い方だったのだから。あの緑衣のアーチャーがそうであったように。

そして現在残っているサーヴァントは5騎。

キャスターを除いて4騎になる。

 

ということは、そのすべてを突破することができれば...

 

「そいつは間違ってねぇが、1つ違う。

最悪倒すのはセイバーだけでいい。

ヤツが真っ先に起き上がったってことは半分黒幕はアイツのはずさ。

そのセイバーを倒しさえすればこの聖杯戦争は終わる。」

 

元凶となってしまったサーヴァント。それさえ倒せば事態は解決する。

しかし、他のサーヴァントがセイバーの駒になってしまったのならば、こちらを襲撃してくる可能性もあるはずだ。

なにより、先ほどのアーチャーがそうなのだから。

 

「あぁ。だからセイバーのとこに行くまでに邪魔が入るはずだ。

だが、バーサーカーに関しては心配しなくていい。

なんでかはわからねぇが、こっちから手を出さない限りは攻撃して来ないからよ。」

 

キャスターの言うことが真実ならば、バーサーカーと戦わないで済むのならばありがたい。

こちらはまだろくにレベルも上げられていないのに、これからサーヴァントと連戦になるのだ。

戦うのならばなるべく少ない方がいいだろう。

 

「なに、気にするでないぞ奏者よ。

万事余に任せておくがよい!」

 

 

セイバーは胸を張って答えてくれる。

今までの戦いがピンチの中で戦ってきたことの1つの信頼なのかもしれない。

 

「それはいいのだけど、いい加減教えてくれないかしら?」

 

「む?それは余のことか?」

 

「当然でしょ?あなたは一体どこの誰なの!?

冬木のサーヴァントでもない、岸波に召喚されたサーヴァントだっていうのならば、その素性を明かしなさい!」

 

所長が自分とセイバーを半ば睨みつけている。

無理もない。素性のわからないサーヴァントとそれを使役する岸波白野。

だが、ここで別世界から来た月のウィザードだと言ったところで信じてもらえるはずがない。

下手に自分のことを話すことは控えよう。

 

セイバーはというと...少しだけ神妙な面持ちをしたのち、こちらを振り返り視線を送ってくる。

あれは自分に確認をとっているのだ。

「真名を明かしても構わないか」と。

 

もちろんと頷いてセイバーの目を見る。

互いの意思確認はこれだけで事足りる。

それだけ岸波白野は彼女を信頼してるのだから。

 

「ふむ。あまり気は乗らぬが、尋ねられたからには答えてやるのが皇帝たる余の務め。

 

よいか!

余こそは至高の芸術にして名器、オリンピアの華!

奏者たる岸波白野のサーヴァントにして余が誇るは我が故郷華のローマ!

我が名はネロ!

ローマ帝国第5代皇帝ーーー

ネロ・クラウディウス・カエサル・アウグストゥス・ゲルマニクスである!!」

 

ネロ・クラウディウスーーー

古代ローマ帝国にその名を残す第5代皇帝

あらゆる快楽、あらゆる芸術を湯水のように楽しんだ皇帝の名。

宗教を弾圧し、帝政ローマの根幹にあたる元老院制度を解体しようとし、皇帝である前に芸術家として放蕩しーーー

その報いとして

反乱によって皇帝の座から退き、逃亡の最中

自らの命を絶ったという

暴君ネロ

 

それがセイバーの真名である。

初めてその名をセイバーから告げられたのは月の聖杯戦争5回戦だった。

あのときのセイバーも自分に真名を告げることをギリギリまでためらっていた。

それは、仕方のないことだと思う。

自分のパートナーが、暴君として後世に語られた存在であることで、拒絶されるのではないかという考えがセイバーにあったからだ。

 

そして今もまた、こうして真名を明かすことに少なからず怯えていることが、あの小さな背中から伝わってくる。

それを感じることが出来たのは、自分がマスターだったからだろう。

 

「そう...ネロ・クラウディウス...それじゃ真名を伏せたるのは当然ね...

でも、それがあなたの真名ならば構わないわ。

不安要素の1つが消えるだけなのだから。」

 

所長は意外にもあっさりと受け入れた。

セイバー...ネロは反英雄としての側面をもつ可能性があるサーヴァントだ。

それが近くにいるのならむしろ岸波白野のことをさらに敵視するのかと思っていたのだが...

 

「いいじゃねぇか。

こんな壊れた聖杯戦争なんざ、暴君サマの暴れっぷりでなくなっちまった方が逆にスッキリするもんさ。

そうだろ?お嬢ちゃん?」

 

「勘違いしないでもらえる?

今は一刻を争う状況なの。真名がなんであれ、それを利用するのが私たちなのよ。」

 

どうやら、ネロが真名を明かすことが重要で、真名如何はあまり見られていなかったようだ。

 

「奏者よ...余の真名に対する反応が些か薄いのだが...」

 

それに関しては...すまない…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで、キャスターのサーヴァント。

改めて訊きます。

私たちの目的・利害は一致しています。

ならば我々に協力しなさい。

いいですね?」

 

唐突に所長はそう話を切り出した。

事態を解決するためとはいえ、いくらなんでも乱暴すぎるのではーーー

 

「いい?

これは人間の義務であり権利。

そしてこの状況下において最善だということを。」

 

特異点解決による人理修復。それこそがカルデアの使命であり、今なすべきことだ。

選択の余地はなく、考えている時間もない。

今まさに人理崩壊が迫っているのだから。

 

そればらば、岸波白野ができることはひとつしかない。

元々そのつもりで月から来たのだから。

 

「ま、その通りだな。

よろしく頼むぜ」

 

キャスターは簡潔にそう答え、視線を冬木の奥にある山、円蔵山を見据える。

 

「そんじゃ、戦力も増えたんだ。

セイバーの根城に殴り込みにでも行くか。

それに特異点とやらになった原因があるとしたら、あそこ以外ありえない。」

 

キャスターの杖。ドルイドの神秘を持つ杖を持ち歩き始める。

 

「この土地の心臓部...大聖杯だ」

 

 




第2話終了です
ありがとうございました。
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