Fate/EXTRA Order   作:神凪颯

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第5話です。
今回は突拍子のない展開と、かなりのご都合主義で展開されることをあらかじめ了承ください。


第5節「英霊召喚」

英霊召喚システム「フェイト」

 

そう呼ばれる施設、もとい装置がカルデア内に存在するという。

カルデアの電力をフル稼働して、新たな英霊を召喚するという。

聖杯戦争は通常マスター1人に対してサーヴァント1体だが、この装置により、サーヴァントからの魔力供給をカルデアの電力で代用することでマスターの負担を減らし、1人で何体ものサーヴァントが使役できるということだ。

 

1人で複数のサーヴァントを使役するのは、聖杯戦争を経験しているマスターでも、難しいものがあるだろう。

 

ではなぜ今この話をするか?

簡単なことだ。

この召喚ルームに岸波白野は呼ばれてしまったからだ。

 

「突然ごめんね、岸波くん。

我々にはどうしても戦力が足りないんだ。

今のカルデアもそうだし、これから特異点を解決するにあたり、冬木のように協力してくれるサーヴァントがいるとも限らない。それなら、戦力は多い方がいいと思う。

それにね、今この召喚システムは2体のサーヴァントを呼び出せるだけの電力が溜まってるんだ。

君に召喚をお願いしたいんだけどいいかな?」

 

もちろんだと答える。

しかし、地上の聖杯戦争は、英霊の召喚にはその英霊に関する触媒がないと召喚できないのでは・・・

 

「それに関しては仕方ないね。

触媒なしで召喚することは出来る。

でもこのシステムで呼び出される英霊は基本的にランダムで、自分で選ぶことが出来ないんだ。

何かしらの触媒があれば、その英霊を呼び出すことができるんだけどね。」

 

英霊の召喚に必要な触媒。

それは、その英雄に関連する聖遺物と呼ばれるアイテムのことだ。

例えば、アーサー王なら、本人に関連する聖剣や、その逸話のもの。

円卓の騎士ならば、その円卓に関連するアイテム。

円卓のテーブルの破片などがあれば円卓の騎士を呼ぶことができる。

 

では、ネロはどうして召喚されたのだろうか?

召喚触媒はなかったのだが・・・

 

「決まっているであろう?奏者よ。

余を呼び出すのに、触媒など要らぬ。

なぜなら、うむ。

奏者と余の縁こそが触媒となってるのだからなっ」

 

「それだ!」

 

突然ロマニが叫ぶ。

それって・・・どれ?

 

「岸波くんは未来の世界で聖杯戦争を体験していて、かつ記憶も保持されている。

それならば、君が聖杯戦争で出会ったサーヴァントと少なからず縁があるんじゃないのかな?」

 

月の聖杯戦争で戦ったサーヴァント。

海賊のライダーや緑衣のアーチャーのような対戦したサーヴァントは少なからず、岸波白野と対戦したという縁があるだろう。

だが、どうしても所々に記憶の欠損がある。

この身は1度ムーンセルに分解された身。

その際に記憶をどこかに置いてきてしまったようだ。

この記憶もどうにかしなければ・・・

 

「ほうほう、その記憶が触媒になってくれるのなら、こちらとしては大変結構。」

 

「む、貴様は・・・」

 

「私はレオナルド・ダ・ヴィンチ。

気軽にダ・ヴィンチちゃんと呼んでくれたまえ。」

 

「な、なんと・・・!

あのダ・ヴィンチがこのような姿だったとは・・・!」

 

そういえば、カルデアにはすでに召喚されているサーヴァントがいるという。

それがこのレオナルド・ダ・ヴィンチ。

クラスはキャスターだ。

 

しかし、歴史に記されているレオナルド・ダ・ヴィンチといえば、あの自画像のお爺さんの印象がとても強いが、もしかしてあのアーサー王のように実は女性だったとか言うのだろうか。

 

「ん?

私の本体はそりゃあの自画像で間違いないさ。

でも、ほら、サーヴァントとして召喚されるなら、万能の天才たる私は美しくいないといけないだろう?

モナ・リザなんて、私の求める美そのものだからねぇ」

 

つまりこの人、自分で生み出したモナ・リザが美人だからそのモナ・リザを自分の体に模して現界したというのか・・・

なんて・・・アレな人なんだ。

 

「うむ!

美しさを求めるその姿勢、褒めて遣わすぞ?」

 

そして認めちゃったよこの皇帝。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

召喚ルームの端に別の小さな召喚台が見える。

英霊を召喚するようなものではなさそうだが、これは一体・・・

 

「それかい?

それはマスターやサーヴァントに付属することの出来る概念礼装を生み出すものなのさ。

サーヴァントやマスターの記憶や縁、それらを媒介にして概念礼装とすることで、君たちをサポートしてくれるんだ。」

 

つまりはステータス補正が付くということだ。

むしろ英霊を呼ぶより基礎ステータスの補正の方が早くないだろうか?

 

「岸波くんが言うならしかたないかな。

じゃあ、まずはそれを一度やってみようか。

そっちの方が、英霊を呼ぶより電力が少なくて済むしね。」

 

概念礼装は省エネだった。

 

「よし、では始めよう。」

 

概念礼装を創り出すのにはとくに触媒は必要なく、自分やネロがその場にいればいいのだという。

 

召喚の炉心が光輝き、ひとつの概念礼装が築かれる。

 

 

 

その瞬間ーーー

 

一瞬、瞬きに等しいその瞬間時間が停止した。

 

 

 

 

『はーい☆

終焉する人類の皆さんこんにちはー☆

グレートスイートな頼れるラスボス系後輩です♪

 

え?どうして私がいるのかですって?

ムーンセルだって一大事なんですから、そりゃあもう私だって復活させられるわけなんですよ?

そして奇跡的に編纂事象に存在する哀れなセンパイに頼れる後輩からささやかなプレゼントです、受け取ってください♪

 

中身はなんと〜?

そう!サルベージしたセンパイの月の記憶ですっ!

ご丁寧に裏側の記憶や、記録宇宙で見つけたセンパイの月の可能性の記憶も同梱のバリューセット!

 

センパイったら一度ムーンセルに溶けちゃってるんですもの、ポロポロと記憶なくすのもいけないんですよ〜?

いやぁ、私もまさかセンパイが月を離れて地上の人類なんかまで助けようとしてしまうなんて考えてもいませんでした。

あまりの人の良さに、さすがの私もドン引きです。

 

せっかく久しぶりにセンパイの顔が見られると思っていたのに、こうして時間を停止させてそちらの時間に干渉しないとコンタクトもとれないなんてなんて不便なんでしょう。

 

ですけど、安心してください?

またすぐに会えますから・・・だから、私のことも、忘れないでくださいね、先輩。』

 

 

 

 

一瞬時間が止まった中で何が起きたのかわからなかった。

でも、わかることがあった。

岸波白野の記憶が完全に復活してる。自身が体験した記憶以外の記憶も何故かある。

月の裏側の記憶まで丁寧に取り戻されている。

 

それにさっきのーーー

夕焼けの校舎がとても似合う彼女は・・・

彼女のことを岸波白野は知っている。

戻された記憶、その中のひとつに、彼女はとても大切な人だったという認識がある。

 

「奏者よ、泣いているのか?」

 

ネロが自分を気遣ってその時に気付いた。

マスターとして彼女と繋がっている以上、おそらく自分と同じ体験をしているはずだ。

ネロもおそらく、月での記憶が全て戻っている。

 

気が付いたら自分は涙を流していた。

手が届きそうだったもの。だけど差し伸べた手は空を切り、届くことはなかったあの時の彼女のことを・・・

あぁ、どうして忘れてしまっていたのだろうか。

 

それはいつか消え去るはずの記憶。

あってはならない月の裏側の話。

1人の、純粋な恋の話ーーー

 

 

 

 

 

「うーん、一応概念礼装は摘出されたみたいだね。」

 

ロマニが摘出された礼装を持ってくる。

これは、腕章だろうか。

そこには大きく「会長」と書かれている。

 

あぁ・・・なんてものを寄越してくれるんだ、彼女は・・・

 

『・・・ありがとう。充実した活動でした。

 勝手な話ですが、次期生徒会長は貴方にお任せしますね。』

 

そういう風に自分に託してくれたことも、あった。

 

あの金髪の王は、岸波白野を信じたように。

この腕章は、月の裏側での自分のなした事を雄弁に語るようだ。

 

ならば、この腕章はその岸波白野へ彼女や彼らからの餞別と受け取ろう。

 

「マスター用の概念礼装だけど、ステータスは・・・え、相手のスキルに合わせて発動すると高確率でスタンって・・・な、なんだこの強力な礼装は!僕はしらないぞ!?」

 

次の特異点探索は波乱がありそうだと思いながら、ロマニからその腕章を受け取る。

 

うーん・・・カルデア制服は白地だから黒い腕章は少しだけ違和感が・・・

 

「うんうん、そういう前衛的なファッションもいいと思うよ?」

 

ダ・ヴィンチちゃん、それはフォローになっていない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ、気を取り直して準備もできたし、始めてもらっていいかな?」

 

礼装や記憶のひと騒動があった後、召喚の準備は改めて整った。

記憶が戻ったことは、このあとロマニに報告しよう。

彼らが準備を進めてきたのならば、それを今止めてしまうのは違う気がする。

そういえば、召喚する際に呪文とかの詠唱は必要なのだろうか。

 

「それについては問題ない。

全ての術式はこのシステムに組み込まれているから、岸波くんは召喚陣に魔力を流してもらうだけで召喚できるんだ。」

 

聖杯戦争も便利になったものだと思いながらも、月の聖杯戦争もムーンセルがサーヴァントを用意するのでなんとも言えない。

 

「じゃあ、始めようか。岸波くん。」

 

ロマニがコンソールを動かし、召喚システム「フェイト」の炉心が動き始める。

次第にそれは高速に回転していき、自分はそこに自身の魔力を送り込む。

この魔力が触媒となり、サーヴァントを引き寄せる。

 

「な、なんだこの数値は・・・

初めての召喚でこんなことが有り得るのか!」

 

ロマニが驚いているが何が起きているのかはよくわからない。

というより、先程の腕章と言い、サプライズがすごすぎないか。

それにわかるとすれば、魔力を流してからシステムの回転する炉心が虹色の光を帯びているということしか・・・

 

「すごい!これは間違いなく最高位のサーヴァントを引き当てるぞ・・・!」

 

自分が出会ったサーヴァントの中で、最高位のサーヴァント・・・どの英霊も並外れたものだったので、思い当たるものが多すぎる。

 

やがて炉心は大きな光を放ち、召喚されるサーヴァントのセイントグラフが映し出される。

そのクラスはキャスターだった。

 

 

 

 

「来た来た来た!

ご主人様からのご指名来たー!!!

お待ちしておりましたー☆」

 

 

 

 

召喚ルームに姦しい声が響く。

あぁ、このシリアスを壊しに来る声は・・・

 

霊基が安定し、その姿が構築されていく。

胸を大きく露出させて崩した着物を着こなし、明るい桃色の髪に狐の耳と尻尾。

そしてこの、被っているのが猫なのかなんなのかわからない声は・・・

 

 

 

 

「雨天決行!

花も嵐も踏み越えて、ご主人様への愛に一直線!

この身は黄帝陵墓の守護者にして、崑侖よりの運気を導く陰の気脈!金色の陽光弾く水面の鏡!

 

自他共に認めるご主人様の良妻サーヴァント、キャスター、玉藻の前!ここに罷りこしましたー!

 

・・・あ、あれ?もしかしてわたくし、空気読めてない感じですか?」

 

 

 

 

 

玉藻の前といえば、日本において有名な英霊だ。

 

日本の平安時代末期に、鳥羽上皇に仕えたと言われる絶世の美女であり、白面金毛九尾の狐が化けたものであるとも言われた。日本三大化生の一角。

 

玉藻の前の正体は、アマテラス(天照大神)から分かれた御魂・神の表情の一つである。

 

鳥羽上皇が病に倒れた際、原因を調べた陰陽師、安倍某によって「人間ではない」ことが発覚。宮中から追い払われる結果となる。その後、朝廷の討伐軍と那須野の地で激突。一度目は8万からなる軍勢を退けたが二度目の戦いで敗北し、その骸は「殺生石」と呼ばれる毒を放つ石になったと言われる。

 

そう、即ち彼女は英霊であるにも関わらず、神霊級のサーヴァントであるということになる。

 

「あぁ、やっぱり!

凛々しいお姿とそのイケ魂!

やはりわたくしのご主人様ですねーっ☆」

 

「帰れキャス狐!

よりにもよって召喚されるのが貴様だと?

そんな色目で余の奏者を誑かそうなどと・・・そうはさせんぞ!」

 

「はぁ?なんです?セイバーさん。

わたくしとご主人様との逢瀬を邪魔しないでいただけます?

ほらほらご主人様、こんなサブサーヴァントはほっておいてわたくしとマイルームという名の新居で新しい生活を・・・ぎゃん!」

 

つい手が出てしまった・・・

とりあえず落ち着こう。

 

 

 

 

「な、なるほど・・・・つまり、玉藻さんは、以前岸波くんが月での聖杯戦争で召喚したかもしれないサーヴァント、なんだね?」

 

「かもしれないではありませんっ

わたくしはご主人様のイケ魂による魂の叫び!

いえ、愛の告白をこの身に仰せつかりまして参上したのならば、月の表側、引いては裏側までご一緒し、愛の四畳半で慎ましやかに暮らしていたはずなのです!」

 

半分合っているから困る。

玉藻が話してる内容は、言い方はあれど、いくつか合っている。

岸波白野はこのキャスターを召喚し、聖杯戦争を共に戦った。

これも先程の出来事・・・彼女が言っていた記録宇宙に存在する岸波白野なのだろう。

キャスターがこうして消されるべき記憶の月の裏側の出来事を覚えていることは、そういうことなのだろう。

 

正直、1度に色々なことが起こりすぎて頭が痛くなる。

なぜなら、ネロと玉藻が先程から何度も睨み合っているからだ。

 

「キャス狐、そなたも大変だな?

そうして妄言を吐いて奏者を困らせるのはいい加減にするがいい。

それに、サブサーヴァントは貴様であろう?

3回戦だか4回戦あたりで奏者を色香で惑わそうとしたのを余は知っているぞ?」

 

「あれはあの時の汚魂マスターのせいです。

わたくしの運命の相手はご主人様以外いないんです!

あと、わたくし忘れていませんからね?

熾天の檻への階段でセイバーさんがわたくしを後ろから騙し討ちで突き落としたことも。」

 

「・・・な、なーんのことだキャス狐。

もとよりそれはメインたる余の務め、サブのキャス狐の出番は終わりで当然であろう?」

 

あぁ・・・後ろから「納得いかねぇぇぇぇぇ!!!」と怨嗟の声が聞こえたけどやっぱりそうだったのか。

 

とりあえず2人が喧嘩していて収集が着きそうにない。仕方ない。

鉄拳制裁!喧嘩両成敗!

 

「ぐはっ!」

「みこーん!?」

 

「い、痛いぞ奏者!なにをする!」

 

「ご、ご主人様?いたいけな良妻になにをなさるのですか!」

 

2人とも、それぞれが岸波白野と共に戦った記憶があって、張り合いたくなるような気持ちもわかる。

でも、今はカルデアで共に戦う仲間なんだ。

ネロも玉藻も、2人ともとても頼りになるサーヴァントだということは、そのマスターの自分が1番よくわかっている。

ならばこそ、メインだのサブだの関係ない。

岸波白野にとっては2人とも立派なメインサーヴァントだ。

 

「奏者・・・」

「ご主人様・・・」

 

・・・どうだろう、わかってもらえただろうか。

 

「う、うむ。

奏者にそこまで言われるのであれば、余とて引き下がらなければならぬな。」

 

「あぁ・・・さすがご主人様です。

なんてイケ魂・・・この玉藻、感服致しました・・・っ!」

 

よかった。なんとか理解してもらえたようだ。

 

「さ、さすがは岸波くんだ・・・こんな状況なのに丸く収めてしまうなんて。」

 

「うんうん、この天才もさすがにびっくりだねぇ。

おっと、カルデアで修羅場は勘弁してもらいたいかな。

騒がしいのは構わないけどね?」

 

そんなつもりはないけど、そうはならないと思う。

一緒に戦う仲間なのに修羅場は勘弁してもらいたい。

月でも・・・喧嘩してたような気もする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ岸波くん、残り1騎、召喚してみようか。」

 

頷いて再び召喚の準備をする。

次に自分に召喚されるサーヴァントはどのような人物なのだろうか。

やはり、月で知り合ったサーヴァントの誰かになるはずだが。

 

「奏者よ、次はキャス狐のような女怪ではなく美少女を頼むぞ!」

 

「ご主人様?おわかりかと思いますけど、くれぐれも召喚なされる方にはご注意くださいませ?

なぜって?ご主人様にこれ以上邪魔な虫を寄せ付けるわけにはいきませんから♪」

 

あー・・・とりあえず喧嘩しないで落ち着いてほしい。

召喚するサーヴァントはこちらで選ぶことはできないのだ。

自分の声に応えてくれるサーヴァントだからこそ、ネロや玉藻のような信頼出来るサーヴァントが喚ぶことができるのだから。

 

「と、とりあえずやろうか?」

 

ネロと玉藻の一触即発状態に冷や汗をかきながらロマニは聞いてくるが、自分も気持ちはとりあけず決まってるので、召喚をしてしまおう。

 

炉心に電力がそそがれて回転を始める。

そこに自分の魔力を流していくと炉心が金色に輝いて大きな光を放つと、そこに現れたセイントグラフはアーチャーだった。

 

霊基が登録され、その姿が現れる。

背が高く、鍛え上げられた肉体。

赤い外套に身を包み、白髪をオールバックにした青年だった。

 

 

 

 

「サーヴァント、アーチャー。

召喚に従い参上した。

私のことは無銘と呼んでくれ。

あえて名乗るのであれば、そうだな・・・エミヤ、と呼んでくれたまえ。

とにかく、よろしく頼むぞ、マスター。」

 

召喚されたのは赤い外套のアーチャーだった。

 

あぁ、彼のことも覚えている。というよりは知っている。

共に月の聖杯戦争で戦った月の可能性のひとつ。

アリーナやつきの裏側を共にしたパートナーだ。

霊長の守護者としてサーヴァントになった名もなき一般人の代表者。

生前は魔術師だったらしく、投影魔術を用いて遠近両用の戦いに長けるアーチャーのサーヴァント。

理想に焦がれ、その理想にかつて裏切られた人物。

今の彼は、正義の味方の志は今も持ち続けているのだろうか。

月の裏側を経験している自分にとっては、彼の活躍は正しく正義の味方だったと思っている。

 

「ほう?ほうほうほう。

そこなアーチャーよ、貴様、先の戦いで奏者を殺しにかかったことを覚えてないとは言わせんぞ?」

 

「みこっ!そうなんですか?

ご主人様お怪我はありませんか?

ちょっとアーチャーさん!ご主人様に何があったら座に還っても呪いますからね・・・!」

 

「すまないが、私にその記憶はない。

記録で後で閲覧させてもらえるなら確認するが・・・そうか、それならば、その時の私が失礼した。

今はきっちり、このマスターのサーヴァントだ。

期待に応えられるよう努力しよう。」

 

たしかに冬木の地では黒くなった彼に襲われてしまったが・・・

よかった・・・とにかく彼は仲間のようだ。

ところでアーチャー・・・いや、エミヤ、君は、岸波白野と共に戦場をかけたことを覚えているだろうか。

 

「もちろんだとも。

それは記憶している。通常、座から召喚されるサーヴァントに記憶が引き継がれることは無いが、召喚の際に、どうやら記憶を付与されたらしくてな。

些か混乱はしているよ。

なにせ、君と共に聖杯戦争を戦い抜いた記憶もあれば、君と対戦して敗れた記憶も存在するのだからね。

その時のマスターは・・・ふ、さて、誰だったかな。」

 

自嘲気味に、でもどこか懐かしむような声で彼は自分を見ている。

やはり、以前脳裏に浮かんだ光景ーーー

彼とともに敗者として地に伏せたあの記憶は本当だったのだ。

そう、その記憶の主はーーー

 

「ほほぅ、さすがにそれは余も知らなかったな。」

 

「わたくしもでございます。

まさかご主人様が他の方とも契約されていることがあっただなんて・・・およよ、わたくしだけではなかったのですね。」

 

なんというか・・・うん、騒ぎだけは起こさないでくれ。

 

「い、色々事情があるみたいだけど、強力なサーヴァントが2騎も来てくれたんだ!

戦力としてはとても心強いよ!」

 

ロマニが喜んでいる。

これから先、解決していく特異点は不安もあるだろう。

だけど、この3人のサーヴァントとならうまく行けると思う。

喧嘩しそうになるのが玉に瑕だが、岸波白野に不安はなかった。

 

「では、改めてよろしく頼むよ玉藻さん、エミヤくん。

僕はロマニ・アーキマン。」

 

「私はレオナルド・ダ・ヴィンチだ。

気軽にダ・ヴィンチちゃんと呼びたまえ?

うーん、エミヤくんはなかなかのハンサム顔だね?」

 

「おやおや、高名なダ・ヴィンチ女史からそのように言われるとはね。

何分至らない英霊だ。

これもマスターのためと思い、尽力させてもらうよ。」

 

「うん、よろしいっ。」

 

「えーと、いいかな?

とりあえず、僕達は第1の特異点、オルレアンへのレイシフトを開始する。

今日のところは休んでもらって、準備が出来次第、出発しよう。」

 

了解だと頷く。

これより岸波白野とセイバーのネロ、キャスターの玉藻、アーチャーのエミヤの3人で特異点に向かうことになる。

波乱はありそうだが、自分にそれを躊躇うことも、後ろに戻ることも出来ない。

常に足元は崖っぷちで、引き下がることはできないのだから。

 

それと、月の記憶が完全に戻ったということを、このあとロマニたちに伝えなければならない。

自分にとって開示出来る情報は、なるべく伝えないといけない。

これから共に戦う仲間として、共有出来る情報は多い方がいい。

 

ロマニに話したら、マイルームへ戻ろう。

 

 

 

 

 

マイルームへの通路を歩く。

ロマニやダ・ヴィンチちゃんに記憶が戻ったことを伝えたところ、まずは驚かれた。

どうやらあの声は自分にだけしか聞こえなかったようだからだ。それは信じてもらえるかはわからなかった。

でも、それよりも2人とも自分に記憶が戻ったことを喜んでくれたことだ。

 

やはり、記憶が戻ったことで戦力になるサーヴァントとの縁が回復するからだろうか。

 

「それは違うよ。

記憶というのは、その人がどういう人生を歩んだかを示す道しるべなんだ。

だから、記憶が欠落していた岸波くんは、その道しるべが見えにくい状態だったと僕は思う。

 

でも、今の君は記憶がはっきりと戻って、しかも全ての可能性を備えた君は、今とても自身に満ち溢れている。

召喚ルームに入る前と後で顔つきが大きく変わっているのがその証拠さ。

うん、君のバイタルもとても向上しているし、やる気に満ち溢れているその姿は、僕達も励まされるよ。

だからこそ、一緒に頑張ろう!」

 

それが話したあとのロマニの感想だった。

それをダ・ヴィンチちゃんが少し冷やかしていたが、とてもいいことを言っていたと思う。

少なくとも、岸波白野は信用され、最後のマスターとして託されている。

ならば、岸波白野はそれに向かっていくだけだ。

 

 

 

 

 

 

マイルームに入り、支給されているベッドに横になろうとする。

 

「そ、奏者よ。今日は余が労ってやろう。

うむ、具体的に言うと膝枕をしてやるので余の膝に頭を置くと良いぞ?」

 

「ご主人様?

本日はわたくしとの久しぶりのめぐり逢いなんですし?

もふもふしていきませんか?具体的にはこの尻尾を枕にしていただいで・・・♪」

 

ゆっくりと休めそうにない。

でも、今日だけはーーー

 

「ひゃっ!ご、ご主人様?そ、そんなに勢いよく尻尾をもふられると心の準備というものがですねっ?」

 

すまない。だがここはモフる。

なんと言おうと自分はMO☆FU☆RU

 

「あー!ずるいぞキャス狐!余の目の前で奏者とイチャつくなどと!」

 

「こ、これも正妻の特権ですから☆」

 

「生娘みたいに顔を真っ赤にして、なーにが正妻だ!」

 

大丈夫、ネロのこともちゃんと考えている。

玉藻の尻尾にモフりながら膝枕してもらう。

 

「そ、奏者・・・!

うむ!それでよいのだぞ?

まぁ、キャス狐の尻尾で奏者の寝顔が見られんのが残念だが・・・ま、まぁ余は?寛大だから?それくらいは見逃してやるけどなっ」

 

「セイバーさんだって生娘みたいに顔真っ赤じゃないですか。」

 

「余はよいのだ!なにせ皇帝だからなっ」

 

「うわぁ、皇帝もなにもありませんよ、そのザマ。」

 

「マスター、夜食にと軽食を持ってきたが・・・やれやれ、君たち、マスターは疲れているんだ。ゆっくり休ませてやろうという気持ちはないのかね?」

 

エミヤ・・・いないと思ったら夜食を作ってくれたのか。

なんだろう、すごくいい匂いがする。

 

「みこっ!

エミヤさんが何気にポイント稼ぎですか!?

小姑みたいなバトラーのサーヴァントの癖して・・・

ご主人様?わたくしもお料理教室に通った腕前を披露する時がきっとできますので、今しばらくお待ちくださいな?」

 

「余だって、できるぞ!

・・・たぶん。」

 

うん、それは楽しみにしている。

なんだろう・・・

あぁ、安心した・・・

そんな気がする。

とても賑やかで、落ち着いていて、今が世界の危機の真っ只中にいることなんて忘れてしまいそうになる。

 

「ゆっくりと休みたまえ、マスター。

明日からは激務だ。

つかの間のひと時が、それを感受できる今がとても幸福なのだからな。」

 

「うむ。余も言おうと思ったことだ。

何はともあれ、今は休め。

奏者の働きっぷりには、余も期待している。

余たちがいれば、敗北などありえぬからなっ

奏者ならば、人理修復など簡単なはずだ!」

 

「良妻英霊のわたくしとしましては、ご主人様とぬくぬくとマイルーム生活を送りたいところですが、人理焼却されてしまっては、それも叶わぬ夢・・・なればこそ、ご主人様を信頼するわたくしたちを信じてくださいまし?

この身はサーヴァントである前に、ご主人様と共にすると決めた有志なのですから。

ですから、ご主人様が不穏に思うことはなにもありません。」

 

ありがとう。

そう簡単な言葉しか思いつかなかった。

岸波白野は至らないマスターだ。

聖杯戦争を勝ち抜いたとはいえ、それでも仲間や、なによりサーヴァントが隣にいてくれたことだ。

不安がないといえば嘘になる。

でも、心から信頼することのできるサーヴァントがこうして共にいてくれるのならば、岸波白野は恐れることなく戦うことが出来る。

 

だから、今はこの虚構のような束の間の幸福を、その時が目を覚ましても欠けることがないようにと祈りながら、ゆっくりと眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの、ネロさん?

そろそろ膝枕代わっていただけませんか?

わたくしもご主人様の寝顔を拝見したいのですが・・・」

 

「なにを言う。

そなたは今モフられる枕としてその役目を果たしてるではないか。

奏者の寝顔は余の特権だ。貴様にはやらん。」

 

「むむ、その顔に一発ばーんとやってやりたいですが、ご主人様のお休みを邪魔するわけにもいきませんし、我慢して差し上げます。」

 

「ふふん、わかればよいのだ。」

 

「ーーー君たち、喧嘩するのは構わないが、いい加減休んだらどうだね。」




第5話終了です。
かなり突拍子もないようなご都合主義な展開で申し訳ありませんでした。
白野のメインサーヴァントは基本この3人で行きますのでよろしくお願いします。
次回からオルレアンです。
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