LoveLive Sunshine Pallas-Athene 作:クサナギ(ドレーク)
この話はざっくり言えば、ガンダム(プロットを見てて一番影響が強いと思ったのは、UC)とラブライブ!サンシャイン!!が組み合わさった、と考えていただければ、分かりやすいと思います。
基本的に前もって決めた大筋に沿って、辻褄合わせの設定を決めていく形なので、現実性(特に物理・宇宙といった理系分野)は余り考えていません。そこを突き詰めすぎると、「人型ロボット自体、必要なのか?」という根底にまで辿り着いてしまうと思うので。
また、Aqours含めて、原作登場キャラも人を殺す(=敵機を撃墜する)描写があります。ご注意ください。
目安に書いたプロットから考えると、かなりの長編になるかと思われます。気長にお待ちくださいませ。
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警告音が鳴り響き、艦内が赤いライトで照らされる。緊急事態を知らせるそれらのサインと「ゲートウェイ7付近にアンノウン艦捕捉。パイロットは発艦準備を始めてください」というアナウンスを受け、ベッドで束の間の休息を取っていた少女はすっくと立ちあがった。
宇宙開発の黎明期において、宇宙艦艇やワークスーツの機関に影響を及ぼす粒子が宇宙に存在することが確認され、その濃度が高い場所に艦艇を進ませると、最悪の場合、航行不能になることが発覚した。その上で成立したのが宇宙における航路である。その航路を外れても、絶対的な危険に繋がるわけではないが、当然リスクは高くなるのだから、宇宙航行のルートは粒子濃度が比較的低い空間を辿るのが原則となった。地球と違い山も谷もなく、どこまでも広がるように見えた宇宙に、粒子の壁という地形が誕生したのである。
そして、少女が所属する「水色の艦隊」が拠点とする旧扶桑コロニー区域は、周囲の粒子濃度が比較的高いという特徴があった。例えるならば、周りが峻険な山に囲まれた土地で、無謀な強行を行ったり、或いは計器の故障で濃粒子宙域に迷い込んだ幾多もの船舶が犠牲となっていた。しかし、完全な密室というわけではなく、20個余りの安定宙域が発見され、そこを「ゲートウェイ」すなわち玄関と呼び、番号を付けていたのである。
「旧」扶桑コロニー区域という名前が示すように、この宙域には既にコロニーらしきコロニーはほとんどない。半壊したコロニーや嘗てコロニーだった物体があるだけで、これといった軍事的価値のある物は「水色の艦隊」の本拠地を除いてはない。地球連邦の宇宙艦艇が進入を試みているのだとすれば、その動機が「水色の艦隊」の撃滅にあることは明白であった。
「絶対に生き延びてみせる…」
親友とのツーショット、お守り代わりの写真を見つめながら、アッシュグレーの髪の少女はその強い想いを確認した。
駆逐艦「かの」の第1艦艇指揮所には、次々と情報が集まっていた。無人哨戒システム或いは小型哨戒艇から齎された不明艦の情報である。モニターに映し出されるカメラの映像。そこから導き出される形状と大きさ。艦隊の頭脳部ともいえるこの艦艇指揮所には、すべての情報が集約されていた。「かの」の艦艇指揮所では、接近する不明艦への対応が話し合われていた。
「ゲートウェイ7、A11サーベイランスポイントからの映像です」
無人哨戒システムから不明艦の姿を明瞭に捉えた映像が届く。モニターを映し出された艦艇の形状は、時折通過していく輸送船とは異なる、明らかに軍事目的のものであった。そして、はっきりと映った艦の形から、その正体が明らかとなる。
「地球連邦軍第4艦隊所属『あしたか』と推定。」
「単艦任務だったのが不幸中の幸いだ。ASを出撃させて、追い払う。このまま、うろつかれても面倒だからな」
水色の艦隊の長である凪義彦の判断は早かった。すぐに、艦隊の態勢は戦闘モードへと移行される。
不明艦を敵艦と認定し、その撃退を決めた凪であったが、その内心は苦しい思いでいっぱいであった。その理由は、宇宙戦の事情に由来する。宇宙開発が進むにつれ、宇宙は人類共有の財産という認識は次第に薄れ、宇宙に眠る莫大な資源を巡り、国家間の対立が始まると、宇宙に配備するための兵器が開発・製造されたのだが、すぐに問題が発生した。遠隔誘導兵器、すなわちミサイルの動作に不具合が生じたのである。これも通行の妨害をするものと同一の粒子の影響であったが、ミサイルを封じられ、誘導通信を含む全ての通信が妨げられることが判明した宇宙空間の主力兵器として脚光を浴びたのがアーマードスーツと呼ばれる人型の兵器であった。ASとも呼ばれ、宇宙開発で使用された作業用パワードスーツを原型に開発されたこの兵器は、画期的な推進機関の発明により、「ロボット物のフィクションじゃあるまいし」という声を振り払って、宇宙戦の主役に躍り出てしまったのだ。そして、水色の艦隊も、当然その宇宙戦の原則に支配される。これまで幾つかの襲撃者を追い払ってきたが、撃退に最も大きく貢献したのはASであった。この場でも、凪はASに頼るほかない。ASのパイロットに組織の存続を委ねるほかない。そして、ASパイロットが4人しかいない水色の艦隊。しかも、間が悪いことに、ASの多くは整備中で、出撃可能なのはその少女のみ。年端もいかぬ少女に殺される恐怖と人を殺す苦悩を味合わせると分かっていながらも、彼女に全てを託すしかなかった。
「連邦艦のようだ。迎撃してほしい。よろしく頼む」
「分かりました、すぐ出撃します。…そんな顔しなくても、それが私の仕事、みんなが生き延びるために必要なことだって、分かってますから、大丈夫ですよ」
「こんなことを頼んでしまって、本当に申し訳ない…。曜さん」
モニターに映る、AS格納庫へと向かうパイロット、渡辺 曜(わたなべ よう)の気丈な言葉と笑みに、凪は改めて彼女の強さを感じた。
接近する地球連邦艦は「あしたか」。比較的旧型ではあったが、AS搭載改造が施され、連邦の主力艦として活躍する「あさま型」の五番艦だ。最大搭載数は、6機。建造思想において、AS搭載という概念がなかったためか、改造が行われたとはいえ、その搭載能力は低い上に、この数値はあくまでも最大であり、実際に搭載されているのは4~5機であった。とは言っても、水色の艦隊にはASパイロットが4人しかいない。宇宙空間を高速で飛び回るその機械の操縦はかなり特殊で、脳波から読み取った思考をベースに、操縦桿の動きやコンピュータプログラムがその補助や修正を行って、運動が決められる。しかし、多くの人間はこのシステムとの親和性が低く、脳波を翻訳していく際に、その情報が大きく歪んでしまうのである。その事実が判明して以来、ASのパイロットは、積み重ねられた訓練や戦闘経験よりも、個人の素質・才能によって選ばれる職業となった。限られた人間にしかできない仕事である以上、おいそれとパイロットを増やすことはできなかったのである。
「水色の艦隊」を支えるパイロットの一人である曜は、親和性検査でかなり高い数値を見せたことから、パイロットとしての能力を見込まれ、訓練を受けた。今では、この不安定かつ小規模な組織の屋台骨を支える存在となっている。
彼女が乗り込んだ機動AS「FM-63 ムツキ」がゆっくりとカタパルトにその歩を進める。
曜の希望で所々にライトブルーの彩色が施されたその機体は、少ない予算の中で、曜の持つ操縦能力を最大限発揮するためのカスタマイズがされた特別機であった。
いよいよ母艦を離れ、ASの迎撃に当たる。曜の心中にあるのは、今日起きるかもしれない死への恐怖よりも、生への執着であった。私は、ここで死ぬわけにはいかない。コックピットの空きスペースに作られたフォトボードに飾る写真を見ながら、その理由を確認する。3年前、行方が分からなくなった父親との写真。数年間共に遊び、その時間を共有し合った大切な親友との写真。再会のためには、今この場の危機を凌ぎ、生きなくてはならない。恐怖とは違う心をつぶす圧力を感じながらも、それを押し返すように、落ち着いた声で、発艦を申告した。
「…渡辺曜。ムツキ、発艦するっ!」
カタパルトが作動し、強烈なGを身に感じる。幾度となく経験してきたが、まだその感覚には慣れない。「水色の艦隊」の由来ともなったライトブルーの塗装が施された母艦「かの」を後方に見ながら、曜と彼女が操る「ムツキ」は、広大な宇宙空間へと飛び出していった。
無人哨戒システムが観測したデータを基に推測された情報がパイロットに伝わる。敵機と見られる物体は、4個。妨害粒子の存在により、レーダーの信頼性が絶対とは言えない以上、こうしたカメラの映像から敵機の位置を分析するしかない。
単純なAS戦力比は1:4。友軍機はなく、1機で4機を相手にする。本来であるならば、無謀ともいえる戦いであったが、負ける気は微塵たりとも存在しなかった。敵機の内、3機は連邦軍の主力機動ASとして、広く採用されている「FM-64 フブキ」。「ムツキ」が一部のパイロットにしか扱えないことが分かり、性能をできるだけ維持しながらも、より操縦し易い主力機を目指して開発された機体である。主力機たる安定性と操縦のし易さが特徴であるものの、その代償として「ムツキ」よりも機動性が多少低い。曜が得意とする、高速機動を繰り返し敵を攪乱させた後に撃破する戦闘スタイルとは相性が良かった。
「3機は『フブキ』…。これなら、行ける…!」
後の1機の詳細がわからない以上、油断は禁物であるが、過度に身構えるべき強敵でもない。そう曜は判断した。平常心を失った者は、真っ先に命を落とす。AS操縦を教えてくれた「お姉ちゃん」の言葉であった。それを心に刻みながら、曜は1機の「フブキ」にターゲットを定めた。
デブリだらけのこの宙域では速度を出すことは難しい。実際、連邦軍の部隊は、通常戦闘よりも遅い速度で、「かの」に向かっていた。しかし、渡辺曜と彼女専用にカスタマイズされた「ムツキ」にとって、デブリは機動を妨げる障害物ではなかった。移動ルート上に存在する適当なデブリを見つけては、それを蹴り、その反動で加速する。ただでさえ高い「ムツキ」の機動性を更に増してくれる推進剤のようなもの。刻々と変化するデブリの移動と自機の速度や運動方向を計算しながら、どのデブリを避け、どのデブリを加速に使うかを決めていく。当然、幾分かのコンピュータの助けは借りていたが、それはあくまでも補助であり、自分の目と感覚で判断しなければならない。まさに至難の業であったが、曜はそのデブリ加速術を操ることができた。
妨害粒子の壁を利用しつつ、レーダーに探知されないように、素早く後ろに回り込む。無人哨戒システムの映像であったが、部隊の動きとパイロットの心情は手に取るように分かった。辺りを警戒するその様子からは、パイロットの緊張が機体を通して伝わってくるようだ。「ムツキ」が発艦した、という情報はおそらく手に入れているのだろう。そして、その撃破へと向かったが、その途中で「ムツキ」を見失ってしまった。レーダーが上手く働かない宇宙空間において、敵を見失うことは珍しいことではないが、どこから来るか分からない、というのは言い知れぬ恐怖であり、警戒を怠れば格好の的、敵の攻撃の餌食となってしまうことは明らかだ。そんな恐怖に怯える連邦軍のパイロットに同情しながらも、その目に映るターゲットに一直線で向かっていった。
「…居場所を教えてあげる。ここだよ!」
「お姉ちゃん」がよくやっていた言い回しを口にして、デブリに身を隠しながら、「フブキ」に接近する。ターゲットは、逆三角形状のフォーメーションを組んだ3機の内の後続。先陣を行く機体のサポートを行うのが仕事である。だが、曜の眼に捉えられたその機体は、獲物であった。デブリが遮蔽物となって、その位置を認めるのが遅れたようだ。左腕の統合兵装シールドに取り付けられたビーム刃を展開し、その機体を切り裂こうとする「ムツキ」に対して、狙いを定められた「フブキ」はようやく振り返ろうとするところであった。「遅い!」と曜が叫び、「ムツキ」のビーム刃が「フブキ」を両断する。真っ二つとなった背中の推進機関の切断面から液体が漏れ出す。機体が爆散する前に「ムツキ」は敵機の下半身を蹴って、急転回し、その爆炎から逃れた。機体とパイロット諸共飲み込み、桃色に輝く光が目に飛込む。慣れたくはなかったけど、もう慣れてしまった「人を殺した」という感覚。それでも、もう新兵ではないのだから、そんな感傷や苦悩に浸っている暇などない。残る3機を片付けるにはどうするか…、曜の頭にあるのは、ただそれだけであった。
友軍機の撃破により、残る3機も位置を特定したのか、光線が飛んでくる。「ムツキ」自慢の機動力で難なくそれを交わしながらも、曜は奇妙な感覚を覚えた。光線の内の1つが異様に筋が良い。的確に「ムツキ」のスピードと運動方向を捉え、正確に偏差を計算し、射撃をしているように感じる。これまで戦ってきた連邦軍パイロットの中で一番ではないか、というくらいの腕に思えた。そのビームの発射源は、データベースにもなかった詳細不明の機体。
「…にしては、敵意を感じないのは何故…?」
自分でも原理はわからなかったが、曜は相手が自分に抱く想いを感じ取ることができた。超能力のような思っていることを当てるほどの精密さはないが、少なくとも相手が自分のことを好いているのか、嫌っているのか、はたまた興味がないのか。言葉では言い表せない不思議な感覚によって、それを読むことができたのである。当然、先ほど撃破した機体も含めて、3機の「フブキ」からは敵意が伝わってきた。今、現に敵として対峙しているのだから、当たり前の話である。ただ、謎の機体から伝わってくるのは、敵意でも好意でもない。かといって、関心がないわけでもない。何を想って、「ムツキ」を見つめているのだろう。変な哲学的思考の循環に囚われそうになる頭を切り替え、曜は次のターゲットを指揮官仕様の「フブキ」に定めた。
ビーム速射砲を高出力モードに切り替えながら、死角へと動いた。広角カメラとセンサーが全方を見張るASに死角はないのだが、動かしているのは人間であり、反応には当然ラグが生じる。デブリ帯を自由自在に飛び回りながら、敵を搔き乱し、そして一つの隙を見つけた。謎の機体からの正確な偏差射撃をシールドで往なしながら、照準を合わせ、速射砲からピンク色の閃光を放った。多くのエネルギーを掛けて放つため、発射速度は遅いものの、威力は抜群の一発だ。回避する間もなく、粒子ビームは「フブキ 指揮官仕様」の頭部を直撃。二つ目の閃光が戦場に瞬いた。
と同時に、曜の視界の端に眩しい光線が出現する。その源は、「水色の艦隊」所属の駆逐艦「みはま」の主砲で、狙いは連邦軍AS部隊の母艦「あしたか」。曜の「ムツキ」がAS部隊を引き付けている間に、艦の側面に回り込んだ「みはま」が攻撃を仕掛けたのだった。艦の横腹に直撃した粒子ビームは、その装甲を溶かし、貫く。艦内の弾薬か燃料にでも火が付いたのであろう。ASのものとは比べ物にならない程大きな爆炎が出現し、「あしたか」を飲み込んだ。
「…あとは、帰る場所を失ったASを片付ける、だけ!」
母艦を失ったASに目を向けると、最後の「フブキ」が突進をかけてきたのが見えた。多くの戦友を失い、冷静さを失ったのだろうか。母艦が沈められ、あとは諦めて捕虜となるか、自害代わりに破れかぶれの突撃をかけるか、「フブキ」のパイロットが選んだのは後者であった。
「そんな落ち着きのない攻撃じゃ…」
何があっても、戦場で冷静さを失ってはいけない。「お姉ちゃん」から教えてもらった鉄則を思い出しながら、左腕のシールドを構える。怒りと絶望に塗れたその攻撃に対応するのは容易だった。シールドで突撃を受け止め、右手に隠し持ったビームサーベルで「フブキ」を討とうとした。刃が展開されてない状態のビームサーベルは拳に収まる程の白い棒、冷静さを失った敵は気付かないだろう。心中で衝突までのカウントをしながら、待ち構える。そして、もう少しでぶつかる…。そう感じて身構え、攻撃の動作に入った曜の目の前に映ったのは、ビーム刃に腹を突き刺された「フブキ」であった。「…まさか、裏切り!?」と驚愕しながらも、「フブキ」の爆炎から逃れるために距離を取る。これまで、数回ASの母艦を撃沈してきたが、帰るべき場所を失ったASが味方のASに攻撃を仕掛けたのは、未経験の事態であった。降伏の手土産とでも思っているとしたら、余りにも甘く、冷酷すぎる。そう思いながらも、戦闘の意思がないことを表明してきたその機体を撃つわけにもいかず、曜は共通通信チャンネルを通じて呼びかけた。
「…ASのパイロット。どういうつもり?まさか、今ので何か見返りを貰えると思ってるの?」
「感謝するわ。連邦軍なんて直ぐに抜け出したい、と思っていたから。それに、あなたなら信頼できそうだし」
返ってきた声は、少女の声。年齢は自分と同じくらい。親和性を優先する余り、各国で強行されている少年兵・少女兵のAS搭乗が問題になっていることは知っていたが、こうしてそのことを実感するのは初めて。だった。曜は「信頼って…まだ一言も話してないのに」と訝しむ。これが後に「堕天使ヨハネ」と名乗る永年の戦友との出会いであった。