ランスの孫。ウィルの忘却編   作:神崎風水

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10話 白熱する準々決勝

 

―準々決勝Aブロック、第一試合―

 

 

二人の選手が入場入りをはたし、試合の合図を待つばかり。

会場が盛り上がる中、私的なシュリの解説が会場に響き渡っていた。

 

『さあ! いよいよ、Aブロックの勝ち残りを決める一戦です! 幸運のイケメン侍ネイル選手 VS 優勝候補筆頭の宿命(・・)を持ったボーダー選手。運と宿命、どちらに勝利が訪れるのでしょうか! やはり【運】でしょう!!』

『――ごぉらぁ!! シュリー!! 大概にしろよ! テメー、犯すぞ!!』

 

しかし、今回はその解説にボーダー本人からの苦情と怒声に脅しが飛び返る。

パニィのマイクを掻っ攫い、舞台の上からシュリに向けて指を刺し、プロレスの選手と間違えなくもない。

本人達にとっては必死なやり取りであるが、観客には笑いと非難の声が散乱する。

 

「あの~、ボーダーさん。マイク返してくださいよ~」

「あははは……(まあ、事実だけに。言われて頭に来るよな~、普通)」

 

パニィはボーダーの心情が理解出来るだけに、マイクを簡単に奪われたというか手渡した。

しかし、余りに過激な発言をマイクを使って言うので、流石に不味いと止めようとする。

ウィルも乾いた笑いをして、その様子を眺めている。

けれど、毎回優勝を出来ず、今回も自分に負けるのを理解してる筈だ。

それをシュリに言われて腹が立つだろうと、心の中で心情を見て予測する。

 

一方、シュリも今回は、流石にキレるだろう事を予測していた様子。

わざとらしく襲われそうな、か弱い女史を演じる。

 

『きゃ~~♪ ボーダー選手に、犯される~……と、このままでは私の貞操が危ないのですけど、準備は万端です! 特別ゲストから、一言どうぞ』

『……ボーダー……後で、お・は・な・し。しましょうね……』

『んなっ!? れ、レイチェル!! 何故、そこにいやがるんだ!!』

 

距離があるのと後で襲われる心配がないので、楽しそうにマイクを両手でもって演じる。

そして、フードを被った特別ベストに手をさし出し、観客の目が集中する。

フードの女性がマイクを取り喋り終えるとフードを取る。

ボーダーは声を聞いた時点で気付いていたが、やはり目で見て驚きが隠せない。

その様子に、またも観客の笑いが会場を包みこむ。

 

お笑い劇場な雰囲気の後、マイクを返し【斬馬刀】を背中から取り出し構える。

パニィも気を取り直しして、試合の合図をかける。

 

『それでは、試合始め!!』

「……むぅ……」

「……(あ~、やっぱしか。突っ込んでこんよなー)」

 

合図と同時に打ち合うか、動きを見せると思いきや、二人は全く動く気配は無い。

ボーダーは【斬馬刀】を石板に立てて、どうしたものかと唸り。

ウィルも今まで同様【村正】を抜かず仁王立ち。

今までの戦い方を見られており、流石に一般人と違い運で勝ってたとは思われてない。

どうしたものかと悩む中、パニィは動きの無い二人をあおる。

 

『どうしたんですか? 二人とも試合始まってますよ!』

 

それでも、両者は全く動く気配ない。

ボーダーは下手にせめて、観客に分からないままに「運」で負けたと思われる訳にもいかず。

ウィルも刀を抜く気はなく、どうやって勝とうか悩んでいる。

そのまま睨め合っても仕方ないと、ボーダーが話しかける。

 

「あのよ、ネイル(ウィル)。頼むからまともに戦って、派手に勝敗つけてくれねぇか?」

「あ~、やっぱしバレてた? 派手にか……やっぱり、”運”は駄目かぁ……仕方ない」

『え? へ? あれ? 二人はお知り合い?』

 

二人のやり取りを見て聞いて、パニィが疑問に思う中、二人は武器を構える。

ボーダーの言葉と「派手に勝敗」言葉を聞き、今までの試合の戦い方と、今回の勝敗の行き着く先の提示を読み取る。

 

『おおっと!? ネイル選手が今回初めて刀を抜いた! とうか、知り合いとはどう言う事でしょう? レイチェルさん』

『えぇ、何度かクエストを一緒にこなしてるのよ。後、ちょっとした師匠でもあるわね』

『うえぇ!? 師匠って、ネイル選手が!? と言う事は、ボーダーさんが負けますね!』

(レイチェルのヤツ、余計な事を……つか、シュリのヤツも好き勝手言いやがって!)

 

シュリの実況と問いかけに答え、盛り上がる実況席と観客。

しかし、観客はボーダー程実力者に、運だけイケメンが何を教えたのだろうと疑問に思う。

二人の交友関係を暴露され、ボーダーの額に # が浮ぶ。

確かに勝てる見込みは薄い、それでもいい様に言われ思われるのは癪と言える。

周りに運に負けた、師弟だから負けたと思われないよう、派手に立ち回る事にする。

剣を振ると風を切る轟音を慣らせ、薪を切る斧のように振り下ろす。

 

「ずおりゃ! むん! ふんっ!! せいやぁ!!」

「ん! ふ! ふ~、しゅ~、よっと」

『すごい、ボーダー選手は今までと比べられない、力強い攻撃。しかし、ネイル選手はそれを全て受け流している! まるで刀の円舞のようだ!』

 

振り下ろした後、受け流される。

それでも、ボーダーは大きな柄や鍔の無い剣を振り回し、斬りかかる。

上下左右、斜めに斬り、切り上げ連続攻撃を切り返す。

それを全て受け止めるのでなく、刀を傾け受け流す。

反らした斬撃の重さは、舞台の石板が砕けるので威力は一目瞭然。

何度も繰り出される気合が込められた重撃を、最初は苦して受け流していた。

けれど、何度か受けてる内に余裕をもって、円舞のように立ち振る舞う。  

 

 

―10数分後―

 

 

十数分に及ぶボーダーの猛攻とウィルの舞が、一旦止まる。

 

「――ぜぇ、はぁ、くっ! 相変わらず防御の受けが上手いな、コノ野郎。ちったー、息切らせろよ。ぜぇ、ぜぇ……」

「いやー、師弟とか言われたらな。其れなりに、余裕見せないとカッコ悪いだろ? イケメン侍と言われてるんだ。見た目も無様にできないさ」

『すごい、すごいぞ! ネイル選手! ボーダー選手の猛攻をモノともせず、息切らせることも無く余裕だぁ! とんでもない実力を隠していたようです!』

「きゃー!! カッコイイー!!」×女性達

(……なに? これ……ドレダケの実力差があるの? オカシすぎるわよ!?)

 

舞台をボロボロにする全力斬撃を繰り返し、肩で呼吸する。

なのに、目の前の男は平然として余裕なので腹立たしく文句を言う。

ウィルは一旦距離を取り、刀を納め軽く受け答えして顎に指当てボーズをとる。

シュリの実況に、つい見とれて見守っていた観客も遅れて歓声が沸き起こる。

当然、女性客や貴族の女学生から「ネイル先生ー♪」と歓声が聞こえて来た。

それは当然といえる状況、1回2回戦と運だけで勝ってたと思われた保健医が無様でなく、軽やかに美しい円舞のように戦っているのだから。

憧れる教師が、見た目だけでなく強いとくれば女生徒のテンションも上がるというもの。

一方、それなりに実力があるパニィには、今日初のボーダーの全力とネイルの実力の違いと差に驚く。

石板を砕く斬撃と速力を意図も簡単にさばく技量。

そして、動きが軽やかに踊るような動き。

その場に留まる事無く、流れるように動き受け流す。

どれを見ても、二試合を運で勝ったとは思えない動きだった。

 

「ふぃ~……そろそろ、運で負けたとか言われねぇだろう。しっかし、えらい黄色い歓声だな。流石、外道保健医(・・・・・)してるだけはあるな」

「んじゃ、そろそろ逝っとくか? それに、ボーダーにも歓声上がってるだろうが……外道は、余計なお世話だ」

「けっ、事情知ってなければ、もっと言ってるぞ。しかし、確かに俺も呼ばれてるがな? けど、ガイヤ(・・・)って何だ? 俺はボーダー・ガロアだぞ?」

 

呼吸を整え、構えを互いに解いてるのは知り合いなのと、勝敗が決まってる為か意表をついて先手を取ろうとかいう気配がない。

のん気に話しウィルの現職を言って嫌味を言い、パリス学園でナニしてるか知ってる口ぶり。

学園や女史達の黄色い歓声に、ボーダーの名や違う名前で呼ばれていたことを不思議がる。

そして、その疑問は後に知らされる事となる。

 

「……気にするな。初撃は防げよ? じゃないと、後が、全部無様になるぞ……」

「てめぇー、誤魔化したろ。後で教えろよ……うしっ、きやがれ!」

『えーっと、知り合いだけに、呼吸を整えるまで待ってたみたいです。どうやら、ネイル選手が攻めに出るようです』

 

ウィルは話をはぐらかして腰を落とし、鞘に収めた状態で柄に手を置き、居合いの構えを取る。

普段こんな構えはしないが、周りの目があるので必殺技を別の連撃に見せるための構え。

一方、ボーダも軽口の文句と事情を説明しろとぼやきながらも、両手でしっかり武器を構え、気合を入れる。

パニィは二人のやり取りを聞いてただけに、状況を観客やシュリに分かるように説明し、数歩後退する。

なんとなく、近くにいると危ない予感がしての行動。

それは、正しい選択と直ぐに分かる事となる。

 

「……(速力3/1、剣舞斬!)はっ!!」

「むぅ!? うおぉおぉおぉ!! おおぉ!! っ?! くそがぁぁぁ!!」

 

掴んだ鞘を クイクイ と動かし、鞘の角度をわざと斜め44度にし、斬撃の角度をボーダーに示す。

居合いの初撃を何とか防ぎ、次々と繰り出されるやっと見える連斬を防ぎ続ける。

しかし、3撃目を防ごうとした時に『斬馬刀』を切り落とされる。

壊れた武器を放棄し、叫びと共に気合を入れ、拳を握り両腕縦に合わせ首を心臓をガードする。

 

「ぐっ……ここ、までかぁ……」

『ダウン! えっと……勝者、ネイル選手!』

『うそぉ! っと、失礼。 顔と運だけを思われたネイル選手。目にも止まらぬ連続攻撃で、見事ボーダー選手を打ち倒した!!』

 

急所を微妙に外し、静脈を斬りられ血が全身からにじみ出る。

斬撃が終わると後ろに倒れこみ、身動きを取れず大の字に寝転ぶボーダー。

パニィが慌てて駆け寄り、起き上がる気配のないボーダーを見てネイルの勝利を宣言する。

そして、会場に歓声が沸き起こり、同時に黄色い歓声も沸き起こる。

シュリはシュリで、舞台でのでき事が信じられない様子。

思わず否定な言葉を言い、それまでの状況解説をして思うままを実況する。

直ぐにドクターがやって来て、ボーダーの状態を確認する。

 

「ひょひょ?……うん? これは「爺さん、てばさき焼き追加な」うひょ!? うむ、重傷じゃの。医務室へ運ぶかのぅ~」

「……ぐっ、づ……い、いや、いい。自分で、ぐっ!」

(ナニ? また、ドクターを取り込んで。怪我がたいした事ない? ワザと負けたというの?)

 

ボーダーの傷を見て、不審に思うドクターにウィルが酒の肴の追加を言って遮る。

爺さんは見事に釣られ、診断を偽り医務室に運ぶように指示を出す。

言われてボーダーがのろのろと起き上がり、重傷のように振る舞い体勢を崩す。

一方、パニィは二度目のドクターとネイルの不審なやり取りに疑惑を抱く。

確かにボーダーの急所部分から血が出ているが、溢れるのでなく、滲み出る感じで血が付いてるだけに見えなくも無い。

先ほどの連撃はパニィでは見切ることはできず、一般人には刀を振った程度にしか見えない。

そんな攻防の中手加減をして、勝敗を偽装したとは思えないが、二人のやり取りがそれを確証している。

しかし、それを証明する事はパニィに出来ず、そのまま見送るしかできなかった。

 

「ほれ、医務室まで連れて行ってやるよ」

「ぐっ、すまねぇなぁ……ネイル(・・・)

 

ボーダーに肩を貸して舞台から降りる。

血が白い着物に付くのも気にせず、師弟の話が本当に見える男の友情。

ネイルに対し、中傷的な男の観客達も新の実力を知り、肩を貸して退場する姿に考えが改められる。

そこに、今まで激しかった黄色い歓声がいっそう音量を増す。

 

『ぶふぅぅ! もー、我慢できない! きゃー!! アート様! ガイヤ様!!』

 

シュリの暴走と同じように、その手の女性達から似た叫び声が聞こえてくる。

ネイルの名前は合ってるが、ボーダーの名前は一文字違う。

 

「……なぁ……どうも、名前が違うとか、そういう次元じゃねぇ。そんな気ー、するんだが……?」

「……知らない方が、良いと思ういいぞ? まあ、『鈴宮ぼたん』覚えてるか? 彼女が書いてる漫画に使われてるんだけどな……」

 

入場口に向かう中、ボーダーが歓声という叫びに嫌そうな顔して問いかける。

その言葉に、同じように口元をヒクつかせ、呼ばれる原因を作った女性を教える。

 

「あ~、あの小柄なわりに胸が大きい、洞察力あって鋭く賢く、力持ちのJAPANの可愛い嬢ちゃんか。お前の紹介で、クエストを何度か一緒になったな……」

 

言われて思いだす、紫の髪を紫のリボンと御揃いの袴を来た女の子を。

実力があり何度かクエストを共にしていたが、戦闘時や普段行動においても、妙に視線を常に向けられてた気がする。

ちょっと変わってるところもあったが、冒険者としての実力があったので仲間として好ましく思っていた。

しかし、その娘の書いた漫画がどうしてアンナ歓声になるのか不思議に思う。

 

「……大会終わったらな。さて、治療はどんな感じでする?」

「絶対に教えろよ? 気になってしょうがない。あ~、血はそのままで、傷だけ頼むわ。レイチェルを部屋で待って、いい訳するのに……な」

 

入場口を潜り観客の目がなくなったところで、肩を放し互いに分かれて歩き出す。

全身血だらけで、歩くのがやっとだったのが嘘のようだ、実際たいした傷ではなかったが。

「ほたん」については後で話すと後回しにして、斬り付けた傷の治療の方法を問う。

ヒーリングで傷を治し、水風呂で血を洗い流すかを質問してるのだ。

ついカッっとなってシュリに対して暴言を吐いてしまい、それをレイチェルとお・は・な・し、をしに戻る。

その際に、ウィルとの試合で大怪我したからと、話し合いの程度を抑えてもらう対策だった。

 

「――よし、完了。後、悪いな武器壊しちまって、代わりにコレをやるよ」

「おう、ありがとよ。別にいいって……ん! いいのか? かなり上等な剣に見えるが」

 

治療を終えて、試合で斬った武器の変わりに『スーパーソード』を取り出す。

礼を言いながら受け取ると、両刃剣を見て一振りして剣の質を実感する。

最初は断ろうとしたが、数少ない男でウィルの事情を知るボーダー。

くれるものは有り難く使わせて貰おうと背中に背負う。

その後、分かれ道で別々進み待機部屋へと向かって行った。

 

 

―将軍用VIPルーム―

 

 

『ダウン! えっと……勝者、ネイル選手!』

「……信じられん……」

「……ぬぬぅ……あれ程とは……」

「……クク、楽しみです……」

 

パニィの勝利宣言と同時に、将軍達は各々の感想を述べる。

今まで馬鹿にしてたコルドバは勿論、バレスも顎ひげを指でなぞりながらネイルの実力に驚いている。

リックは口元を吊り上げ微笑み、大会の優勝者とのエキシビションマッチを楽しみな様子。

 

「流石、ウィル殿! アレこそ、あの方の実力!!」

「アイツらしい戦いよね~。(でも、最後のかなり手加減してたわよね。遅いもの)」

「いやはや、噂通りたいした実力です。そして、実に惜しい……軍に入隊してくれないのは……残念ですよ」

 

ハウレーンは前に剣の教授してくれた時の剣技を思い返し、下心を知らずに近づいた事を知らずウィルに憧れを抱いてる様子。

レイラも自身を奪って以後、闘気の扱い方と剣を合わせた日々を思い返す。

格下の相手をする時は常にしていた受け流し、自分のが上位である事を示すように振舞ってた事を思い出す。

そして、最後の居合いは別として、闘気を纏っている連撃の速度が遅い事に気付く。

エクスは噂にたがわぬ実力に関心し、腕組しながら頷く。

そして、その力を軍のために使ってくれない事を残念がる。

ウィルの事情をある程度理解してるので、勧誘しても断られる事は理解している為である。

 

 

―準々決勝Bブロック、第二試合―

 

 

割れた石板を交換した後、直ぐに次の選手が入場して試合が開始する。

 

『さあさあ! Aブロック代表ネイル選手な意外な戦いの後、こちらも面白いというか、どんな戦いになるか予想もつかない一戦! 華麗な美少女剣士チルディ選手 VS 酒飲みアッシュ選手の一戦が今、始まります!』

「うぃ~、ヒック。おお、ちいさいのだ。かわいいじょーちゃんなのだ。まいごしゅか~。おいちゃんと遊ぶのだ? うひゃひゃ」

「わ、わたくしが気にしてる事を……#……この、酔っ払いめ!……剣の錆にして、さしあげますわよ!」

『……それでは、試合始め!!』

 

先の戦いの意外性を残したまま、次の試合を開始しようとする。

シュリは先の戦いもそうだが、この一戦はどうなるか予想がつかないと思っている。

正統派チルディはいいとして、可笑しい試合をするアッシュがナニをするか予想つかず分からない。

アッシュは相変わらず酔っており、チルディの気にしてる身長を小さい言って馬鹿にする。

まるで、幼子を相手をするように話しかけ、馬鹿笑いする。

その言葉に怒りで体を震わせ短剣を抜き、剣先を向けてチルディは気合十分。

そのやり取りを見ていたパニィは、突っ込みたいのを我慢して試合を開始する。

 

「いやあぁぁ!」

「う~、ひょっと」

 

アシュに突撃して、フェンシングの様に突きを繰り出す。

勢いつけた攻撃をひらりとかわされるが、次いで連続斬りを繰り出す。

酔ってる癖に、いや、酔ってるからこそか ヒラヒラ と回避し逆に反撃をしてきた。

 

「きゃっ!……何故ですの! どうしてこんな酔っ払いに!」

「うぃ~、ヒック。攻撃が軽いのだ。たいした事ないのだ」

『酔ってるのに、凄いぞアッシュ選手! いえ、酔ってるからこそでしょうか。チルディ選手が軽くあしらわれてます!』

 

直撃は武器で受け止めたが、攻撃の重みで後ろに吹き飛ばされる。

体勢を立て直し、悔しそうに文句を言って虚勢をはる。

当らないのは腹立たしいが、一撃の威力の差は身に受けて痛感した。

アッシュは相変わらずマイペースで、酒を片手にチルディを弱いと馬鹿にする。

そのままアッシュが勝利すると思われたが、チルディの秘策にあえなく勝敗は決した。

 

「くっ……使いたくありませんでしたが、仕方ありません」

「うぃ~? オチビちゃん。どうかしたのだ!? そ、それは[みどり14.才]!!」

「あら、やはりご存知? ほーら、取ってきなさい~♪」

「うおおおぉ!! 酒ぇぇ!!」

『は?……じょ、場外! 勝者、チルディ選手!』

 

道具袋から取りだだした一本の酒。

アッシュは『みどり14.才』と言う日本酒に目が眩み、目が酒になって目線が酒に集中する。

チルディは当初、いやいや使おうとしたが、反応が面白くつい乗り気になって酒を投げる。

投げ出された酒を目と顔が追い、剣を放棄し叫び声を上げて投げられた酒を空中でキャッチする。

パニィも流石に目の前で起きた事が信じられなかった。

だが、酒を取る為舞台を飛び立ち、場外に降りるアッシュに対し勝敗の宣言をする。

唖然とした観客は、歓声でなく会場に笑い声が全体にこだまする。

しかし、アッシュはそんな事を気にせず、早速手に入れた酒を一口飲む。

「美味いのだ!」と、一言いって、そのまま待機部屋へと帰っていった。

 

チルディが投げた酒は滅多に手に入らない一品で、何故か部屋の前にメモと一緒に置かれていた。

 

≪もし勝ちたいのなら、コレを見せて場外に投げる事≫

 

初めは、どこの誰かの嫌がらせかと思ったが、アッシュの対策に頭を悩ませていた。

剣の腕を磨き勝てる自身を持って出場したが、初戦は快勝、二回会戦は苦戦していた。

そのため、初のデビュー戦を優勝で飾る為と割り切り、一応準備していたのだ。

 

 

―準々決勝Cブロック、第三試合―

 

 

『さあ、注目の女性対決。闘技場チャンピオンのユラン VS 彗星の如く現れた美少女、ソウル選手。勝利を掴むのはどちらでしょう! 正直、私も予測できない一戦です!』

「……油断できないね」

「あはは、あたしもタダじゃ負け(・・・・・・)ないよ~♪」

『それでは、試合始め!』

 

シュリのユランに関しては普通だが、ソウルの二つ名が言われず表現が変わった。

可愛いことには変わりないが、14才のわりに多才で実力がありすぎるため。

もしもの事は無いかもしれないし、あるかもしれないので勝敗が予想できない。

ユランも今までの戦いを見て、目の前の少女が油断ならない相手と認識している。

逆に、ソウルは何時も通りに明るい。

ただ、何やら負ける気に見えるのは気のせいだろうか。

 

「じゃ、行くよー! ソウルフィスト!!」

「っ!?」

 

互いに剣を抜き斬り合いと思いきや、ソウルは拳を突き出し必殺技の名を叫ぶ。

ユランの目には拳から放たれる気弾が見え、慌ててその場から横に飛ぶ。

蝙蝠のような気弾……ではなく、拳を炎が包む形の気弾。

舞台の石板に着弾すると爆発を起こし、石板を破壊する。

 

『な、なんだぁ!? ソウル選手が拳を振りかざし、ユラン選手が何かを(・・・)避けて背後の石板が爆発を起こしました!!』

「あ、やっぱり。見えるんだ。どんどん、イックよ~♪ ソウルフィストゥ!」

「見える? ナニを言って、くッ!!」

 

舞台で起きた目に見えない(・・・・・・)出来事を、驚きながら解説をする。

解説をされても、一般人には気弾(・・)が見えないので、ナニが起きてるのかまったく理解できず。

観客達はただ、舞台が爆発したとしか分からなかった。

ソウルは手加減した必殺技を避けたユランを見て、同じ技能LV2の存在と認識し楽しそうに攻撃を再開する。

一方、ユランは「幻夢剣」を使えても気の運用に関して無知なので、ソウルがナニを言ってるのか理解できず。

迫る炎の様な拳の直撃を受けると「危険!」と、勘で判断して回避に専念する。

観客達にはソウルが空拳をすると爆発が起き、ソレをユランが避けてるとしか分からなかった。

 

「チッ!(何なんだい! この飛び道具みたいなのは! 近づけやしない!)」

「キャハハ! ソウルフィスト! ソウルフィスト! ソウルフィストゥ!」

 

チャンピオンとして情けないとは思いつつも、現状では逃げるしか手段が見つからなかった。

ソウルはハイテンションになり、気弾を連射し確実にユランに向けて放つ。

その所為で舞台はボロボロ、彼方此方で爆発が起きてパニィはそれを舞台の下から傍観している。

 

(なんなのよ!? コノ試合は手品か、何かの奇劇なの!?)

 

何故審判が舞台から降りてるかというと、ソウルに「危ないから降りてて」とソウルに忠告されて退避した為。

最初は戸惑うも、先に見た爆発が自分の身に降りかかると聞き、素直に降りた。

 

「クソッ!(駄目だね。このままじゃ、ジリ貧だよ……仕方ない)」

 

強力な技には使用回数制限があるものと、ソウルの疲れを待っていたが、その気配は見えない。

必死に回避してる自分の方が息が切れてきた。

それもその筈、手加減して放って気を抑えてるソウルにとって連発は全く問題が無い。

逆に、一撃が致命傷に思える攻撃を必死に避けるユランのが体力を消費するのだ。

 

「ほらほら! ソウルフィスト!「きゃぁ!」当り~♪」

『おーっと!? 何かを避けてたユラン選手。直撃を受けて爆発したぞ、大丈夫でしょうか!』

 

気弾を食らい、ユランが吹き飛ばされソウルがご機嫌に喜ぶ。

シュリが心配しているように、ユランのファンも応援の声に力が入る。

 

回避し続けるのが困難と判断したユランは、見えている気弾を両手剣を盾にして防御した。

剣で防御し直撃は避けても、爆発余波のダメージは受ける。

ダウンは避けるものの、マントは所々千切れ鎧にヒビが入ってないものの黒味に汚れている。

ユラン自身もダメージの色が顔に隠せない。

ゆっくりと武器を構え足元がおぼつかないように見える。

 

「あはは、トドメ行くよ~!(うん、兄ぃの言う通りになったね。んじゃ、派手に逝こっか)

 

ユランの状態を見て、収めていた短剣を抜き構える。

ウィルに言われた流れを確認し、突撃体勢を取る。

 

「くっ、まだだよ……嬢ちゃんは強い、ソレは認めるよ……(来なさい。幻夢剣の餌食にしてあげるよ)」

 

顔をしかめ、やっと構えを取るフリをする。

ソウルが自分より強者なのを認め、自身の切り札を準備にかかる。

ユランにとって、今の現状は賭けだった。

気弾を食らわせ接近してくるか、そのまま気弾で追い討ちをかけて来るのかは。

半分の確率に賭け、いや闘士として最後は剣でトドメを刺しに来るだろうと思いこんでいた。

 

「はぁぁ!!」

「軌道、正に夢幻の如し……」

 

短剣を構えつつ、防御に闘気を回し速度は普通に突撃するソウル。

両手剣を構え、お決まりの言霊を言って構えをとり備える。

 

「はっ! 幻夢剣!!」

「きゃあぁぁぁ!?(これが、兄ぃが言ってた【幻夢剣】次は破って見せるよ!)」

 

接近して来たソウルが射程内に入ると必殺技を繰り出す。

両手剣と短剣ではリーチが違う、カウンターにもってこいとユランの読みは当り迎撃する。

しかし、目を凝らして(・・・・・)軌道を見極めようとするソウル。

全部は無理でも一部を短剣で防ぎ、吹き飛ばされながらも再戦に燃える。

 

『それまで! 勝者! ユラン選手!』

『あーっと、流石チャンピオン。劣勢をお決まりの必殺技で見事、ソウル選手を下し、勝利を収めました!!』

 

パニィの宣言にユランの勝利にファンや会場が歓声に包まれ。

ソウルに出来たファン達が、残念そうに頭を下げる。

そして、呼んでも居ないのに、ドクターが自然と舞台に上がり診断と治療を開始する。

 

(ほれ、お嬢ちゃん。ネイル殿から薬、預かってるぞぃ)

(ん♪ お爺ーちゃん、ありがと)

 

舞台に寝そべるソウルに、診察しながら薬を手渡す。

薬を受け取り飲み干すと、怪我が一瞬で完治する。

既に決められ話を聞いてた二人と勝敗。

懐柔済みのドクターに試合の流れを説明し、ソウルに薬を渡すよう手配していた。

ソウルもあのまま気弾を続ければ勝利できたが、一回当てた後突撃して負ける様に言われてた。

初めは反対したが、ご褒美に釣られ簡単に言う事聞いたのだ。

 

「……ちょっと……なんで『幻夢剣』食らって、そんなに元気なの?」

「え~っと……お爺さんが優秀だから? だよ!」

「いや、疑問系だったじゃない!」

 

ソウルの現状に、ユランがもっともな疑問を投げ掛ける。

流石にウィル兄から決められたシナリオと、治療法や対処してたと話すわけにもいかず。

決められてた言葉を言う事は出来ても、こういった対処は苦手というか頭が働かない。

少し考えた結果、隣にいるドクターが優秀と言って誤魔化す。

パニィはソウルの誤魔化しに、激しくツッコミを入れる。

先ほど、何やら不審な動きをしてた二人を後ろから見てたので、余計に言いたい事に力が入る。

 

「……か、勝ったのは、ソッチだからいいじゃない! あたしは部屋に待ってる兄ぃと、友達が居るの! んじゃねー」

 

一生懸命考えていい訳をしたが、納得いかない二人の視線にソウルは一歩後退する。

そして、今度は勝利した事実を突きつけて誤魔化し、部屋に逃げる理由を言って会場を走り去る。

その走る速度に、観客するらも疑問に思う。

チャンピオンの切り札を受けて、何故アンナ速度で立ち去れるのかと。

 

「……納得いかない」

「不自然すぎですよー……あの娘(ドクターも変。呼んでも居ないのに既に、待機してたし)」

 

走り去るソウルを見ながら、呆然と立ちながらユランは愚痴をこぼす。

今大会をまじかで見続けてるパニィは、ソウルは勿論不審に思う。

そして、色々な不審なところや可笑しいと所を見ていたため、今の試合が勝敗が八百長にすら感じていた。

 

 

―準々決勝Dブロック、第四試合―

 

 

『さあさあ! 準々決勝最後の試合。これまた、イケメンのバウンド選手 VS イケメンのランス選手の試合。Cブロックは美人、美少女が集まり。Dブロックは美形、美少年が集まったブロック。偶然にしては出来すぎですが、見て楽しければ、盛り上がれば良いのです! さあ、間も無く試合開始です!』

「ふんっ! コイツと同じにされたて気分わるいぞ!」

「あー、ランスさん。褒められてるわけですし、そう、不機嫌にならなくとも……」

 

シュリの解説に、ランスがハウンドとイケメンと言われても同類にされて不機嫌。

自分と同じと言う事が気に入らない様子。

一方、バウンドは特に気にした様子はなく、宥めようと励む。

年上なのに、何故ここまで腰が低いのか。

理由は簡単、兄貴より対応手段を聞いているのと、それを外すと命の危険も聞いてる為。

 

「うるさい! 黙れ! 俺様に指図する気か!!」

(ほんと、口悪いよー、この人。ハウンドさんが勝たないかな……)

 

文句や注意された訳ではないが、軽い意見でも言われる事に不機嫌になる。

そのやり取りを見て、パニィは心の中でバウンドを応援する。

入場した時は、待機部屋でイイコトして機嫌よかった。

しかし、シュリの言葉を聞いて一気に感情が反転、不機嫌になり二人に当り散らす。

下手に触れない方が良いと、試合開始まで関わらないようにした。

 

『それでは、試合。初め!!』

「おらぁ! 死ねぇ!!」

「くっ!!」

 

試合開始と同時に飛び上がり、バウンドに斬りかかる。

慌てず剣で受け止め、ランスの豪剣を耐える。

追撃をするかと思われたが、意外にもランスが距離を取り構えなおす。

 

「……おい。何故、貴様も使える(・・・)んだ?」

「ソウル程ではないですが、おれも使えますよ。少し、ですけどね」

 

不機嫌そうに何故、闘気が使えるのかと問いかける。

構えたまま妹には劣るものの、同じように使える事を言うが理由になってない。

何をそんなに警戒するのかというと、ランスの20LVにバウンドのLV18の差。

それと、身体の地力の差と飛び上がった重量差を、闘気でバウンドが身体強化して受け止めたのを感じ取った為警戒したのだ。

答えになってないが、理由は簡単。

ランスも教わった相手が、目の前の男に教えただけの事。

ただ、技能が低い為に今まで気付かなかったのだと、頭を切り替える。

 

「ちっ、面倒な……一気に決めるか……」

「や、勘弁してくださいよ。応援されてるんだし、試合をしましょうや」

 

男相手は一撃で、勝負を決めようとしていたランス。

闘気法で身体能力を高め、全身から気が溢れ出す。

同じく気で身体能力を高め、ランスより劣るものの気を気で押し返す。

互いに準備が整うと、剣の打ち合いが始まる。

 

『す、凄い! ランス選手とバウンド選手。一歩も引かず、激しい打ち合いをしているぞ! とういか、二人はどんな豪剣の持ち主か! 先の試合で折角直した石板が、所々割れたりヒビが入る音が聞こえてくるようだ!』

「こ、この二人も凄い……」

 

手数はランスが数歩リードしているが、負けずとバウンドも攻防を繰り返す。

互いに躱すと言った事は頭に無いようだ。

剣を受け、斬りかかると攻防を繰り広げ続けている。

 

「ちっ、弱いくせに。やるな、お前!」

「ぐっ、どうも。見られて、応援されてるので。ただただ、無様に負けられ(・・・・)ませんので」

 

互いの剣を受け止めると、受け止めた側足場の石板にヒビが入る。

傍目に見えるように、ランスがバウンドを押していた。

観客たちも打ち合う度に火花が散る、激しい金属音に歓喜する。

それほど二人の試合は、準々決勝のコレまでと同じように興奮する一戦。

毎年行われるパラパラ杯だが、今年ほど異常に強者が集い、見応えある試合はお目にかかれないと思えるものだった。

 

「ふんっ! 飽きた。次で決めてやる!」

「勘弁してくださいよ……(アレが、来るか。まあ、これだけ粘れば、負けても大丈夫だろう)」

『おーっと! お互いに距離を取ったぞ! なにやら、ランス選手が仕掛けるようだぁ!』

 

流石に軽く呼吸が乱れる二人。

ランスが跳び下がると、同じように距離を取る。

ただ、やはりバウンドの方が疲労が激しく、肩で呼吸をしている。

実力は自分のが勝っているが、中々バウンドが粘るのでランスが勝負に出る。

ランスの言葉に、兄貴より聞いてた必殺技(・・・)が来ると軽口叩きながら防御に気を回す。

 

バウンドもソウル同様、ここまでの流れをウィルより聞いていた。

そして、バウンドも試合のルール(・・・・・)なら、ランスに勝てるといわれてた。

殺し合いに置いては分が悪いが、ルールを上手く利用すれば勝てると。

豪剣、大振りなのがランスの戦い方。

勝つだけなら、場外を使えば言いと。

ただ、試合に勝つのは都合が悪いのと、その後「殺されるから止めておけと」念押しされた。

 

そして、話しに聞いたとおりに、試合開始時よりも高くランスが飛び上がる。

 

「勿体ないが、サービズだ。受け取れぇ! ランスアタァック!!」

「っ! うわあぁぁ!!」

 

高く飛び上がりながら、バウンドに文言を述べる。

全身に気を充満させ、強烈な一撃を落下しながら振り下ろす。

バウンドは、後ろに跳び退きながらも防御し叫び声を上げる。

ランスアタックの爆発衝撃波に吹き飛ばされ舞台の隅まで飛ばされる。

そして、剣を手放し舞台に倒れ込む。

 

『それまで! 勝者、ランス選手!!』

「がはははは! 軽い軽い。当然の結果だ」

「…………(凄い威力。対処をいらなければ、危なかった)」

『豪剣勝負は、ランス選手が勝利を収めました! もの凄い一撃です! 石板どころが、舞台にクレータができるほどの威力!!』

 

バウンドに駆け寄り、気絶してるのを確認するとパニィが勝利宣言をする。

剣を肩に掛け、大笑いして勝利を満喫する。

バウンドは気絶した振りを(・・・・・・・)して、ドクターに担架で医務室に運ばれる。

兄貴との約束を守りワザとまけたが、必殺技の威力に驚く。

そして、試合でなく実戦だとゾッとする。

準々決勝なのに決勝と思える程の歓声が会場を包み込む。

今大会のレベルが高い事は、毎日行われるコロシアムを見てる面々には理解できる。

それに、ランスの放った必殺技の破壊力に、盛り上がるのは当然であろう。

 

ただ、舞台修復係が嬉しい涙を流す。

今大会は活躍する出番が多く嬉しいが、此処まで破壊されると泣けてくる。

しかも、まだ3回戦もあるのだ。

残りの試合はどうなるのかと、不安がよぎる。

そして、舞台の修理に一時間の修復時間が必要になった。

 

 

―将軍用VIPルーム―

 

 

『それまで! 勝者、ランス選手!!』

「凄いの~。レス兄妹と、あのランスにも声を掛けねばいかんの」

「まったくだ、あの男二人なら、俺たちのしごきにも耐えそうだ」

「……クッ、ククク……ああ、自分と戦うのが。楽しみです」

 

バレスはスカウトの目星が増えたと喜ぶ。

コルドバも力強い二人の打ち合いに、好感を持って褒める。

一方、赤い死神は久々に見る強者達にスイッチが入る。

対戦相手は予測してるものの、ここまで強者が揃っていると高揚感が止まらない。

三者三様、今の試合は楽しい身のある一戦だったようだ。

 

 

―はの5番VIPルーム―

 

 

『それまで! 勝者、ランス選手!!』

「あーん! 本当にバウンドお兄ちゃんが、負けちゃったよ~」×少女達と両親たち)

 

パニィの宣言に、少女たちと両親が残念がる。

ただ、負ける事は聞いてたので、ショックはそれほど深くない。

 

「言ったでしょう? けど、アレはワザと負けたんだから。気にしないの」

「むぅ~……はーい」×少女たち)

 

ドロシーの言葉に渋々納得する面々。

ただし、ランスに賭けてたのでバウンドが負けた事で金を損した者はいない。

最初は勝者の発表に不満を漏らしたが、ドロシーの説明にメルフェイスと美樹が加わり納得させた。

事務的なドロシーの言葉と、負ける原因を作ったウィルの説明をするメル。

美樹が少女達の気持ちになって問いたので、一同は何とか納得した。

 

「でも、ホントにウィルさんが、本当にそんな指示を出したんですか?」

「ええ、ウィルはランス君とユランさんを対戦させたいのよ」

「何故そのような事を? レス兄妹が、可哀想ではありませんか」

 

奈美がメルに問いかけ、答えた内容にカタナが不満を漏らす。

二人の言い分には、周りの女性達も頷き同意する。

賭けによる儲けというならば、見返りがあり納得多少できる。

けれど、ランスとチャンピオンを対戦させる為と言われると、何故そんな必要があるのかと疑問に思うのは当然だ。

しかし、次の一言で簡単に納得させる事が、カタナと一部を除いて出来た。

 

「あら? ユラン選手とウィルが対戦して、勝って良いの?」

「!? 駄目に決まってます!!」×女性陣)

「……はい?」×カタナ&給仕たち)

 

何をどうとかというより、ウィルが関わるとタダではすまないと理解してる面々。

ランスがユラン勝つなら、そこで繋がりが切れると納得する。

まだ、ウィルの本質と偽名しか知らない面子は、何を言ってるのか理解できず。

首をかしげて、何をそんなに興奮してるのだろうと困惑する。

理由を聞こうとしたが、知ってる皆に。

 

「いいの、知らない方が幸せよ」

 

と、揃って何度も言われて押し切られた。

納得しない面々も、そういわれたら反論しずらい。

そのまま、この話は終わりにされて、運ばれてきた料理を楽しんだ。

 

 

因みに、ソウルは試合の後ウィルの部屋に行き、ご褒美を貰い自分の部屋に戻る。

その間クナイはコダチに教え込まれ、帰ってきたソウルと大会終わるまで楽しみ努力した。

 

 

 




    ≪技≫

  【ソウルフィスト】

ソウルの放出系、拳で放つ必殺技。
元ネタは、言うまでもなく。
ソウルの名前に必殺技というとコレが浮んだ。

ソウル=魂=炎=拳を包む魂

拳のエフェクトに炎が包み込み、相手に向かって跳ぶ気弾。
誘導性はなく、直線的な軌道を進む。
爆発特性もあり、着弾点に気爆波を起こし多少周りに居てもダメージを受ける。


   【幻夢剣】

ユランの制約系、変則斬撃の必殺技。

タメと集中力を必要とするため、連発することは出来ない。
軌道が読みにくく躱すことは困難であり、ソウルは軌道の一部を防ぐのがやっとだった。
また、レベル上位の相手には、威力が三倍以上になるという特殊効果の制約を持っている。
ただし、ランスがメイドに聞いて既に対策済みだが、ヒララレモンの汁で滑るという弱点も持つ。


  【ランスアタック】

ランスの近距離爆発系の必殺技。
剣を両手持ちし、頭上から渾身の力で振り下ろす。
飛び上がる事でその威力と効果範囲を広げる。
全身に気を巡られるので、跳躍力が通常より高く跳べる。
直撃すれば当然相手を打ち倒し、周りに発生する衝撃波を食らっても大ダメージを受ける。
本人は、気でカードしてるので自爆は無い。


  ≪アイテム、酒≫

  【みどり14.才】

伝説の日本酒。厳選されたうら若き娘ばかりで製造している酒。

チルディの部屋の前においてあったお酒。
勿論、要したのは誰だか想像するまでもない。
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