ランスの孫。ウィルの忘却編   作:神崎風水

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3話 祝杯と修羅場

 

 

―酒場【ぱとらっしゅ】―

 

 

 

街に着き、パルプテンクスとフララに少女たちを連れて酒場に到着する。

酒場の扉を開けて入ろうとするランスの肩を掴み、少女たちを先に入れさせる。

 

「む? なんだ、何故止める」

「なに、今から起こる光景は、後ろから見るのがいいんだ」

 

扉を手で開けた状態で止められ、不満を漏らす。

最後の少女の背中を押して酒場に入れた後、手を離し反対側の戸枠に背を付けてもたれる。

ソウルとバウンドは「なんだろう?」といった感じに、覗き込む様に酒場の中を見る

 

「「「ぱ、パパァ! ママ!!」」」

「お、とうさん……お、かあさん。どうして?」

「ただいま。お父さん……」

「ああ、よく無事に戻った……」

 

少女たちが両親を見つけ、それぞれに駆けてゆき飛びつく。

フララも目に涙を浮かべながら歩み寄り、ひっしりと父と母に抱きつく。

酒場のオヤジとパルプテンクスはカウンター越しに再会を喜ぶといった、変わった再会を愛しんでいる。

ハンカチで涙を拭きながらその光景を見るソウルに、鼻をすすり涙目になるバウンド。

確かにいい光景だが、何故この場に攫われた娘たちの両親がいるのだと不信に思う。

 

「おい、これは一体どういう事だ? 何故、あの子たちの両親がいる?」

「簡単なこと。両親の名前と何処に住んでたか聞いて、ソレを知らせただけだ」

 

親子たちが再会を喜びあってる光景を横目に、ランスはどうしてこの光景が起こりえるのか問いかける。

さも気にした様子も見せず、少女たちから聞いて街にいる両親たちに知らせたと言ってのける。

経由が理解できても、方法とその相手が理解できない。

 

「そうじゃないわ! だから。それをどうやって! 誰が連れて来たかといっとるんだ!」

「……それは、私よ。ランス君」

「!! あ、貴女は……」

 

分からない事が腹だたしいランスは、声を荒げ何をどうして誰がやったかと問い正す。

すると、酒場の中から一人の女性が声を掛ける。

声に反応し振り向くと、ランスは驚いた。

確かに、ウィルがいるなら彼女がいるのは当然。

しかし、ここしばらく見てないので別かれたかと思ったがやはり違ったようだ。

 

「メルフェイスさん!」

「お久しぶり。ウィルから【テレパシー】で、あの娘たちの名前と両親の住んでる場所を聞いて、私が連れて来たのよ」

「私もいますよ、ランス様。一緒に分担して家を廻ったんですから」

「……と、まあそう言う事だ」

 

メルフェイスと呼ばれた金髪の美女。

赤い服に紫のショルダーガードにマントを着込み、胸部には魔力石が埋め込まれた魔法防具。

腕にも似たよな魔法具を付け、髪を左手でかき上げながら答える。

名をメルフェイス・プロムナードと言い、ウィルがもっとも信頼し、離れる事が出来ないパートナーだ。

 

メルフェイスの後ろからシィルがひょこりと顔をだし、自分も頑張ったと主張する。

二人が顔をだして詳しく説明するので、ウィルは少し残念そう。

説明されたのが残念ではなく、ランスをからかうのが終わった事が残念だったりする。

 

「あんた、ウィル兄ぃの何? なんか、すっごく親しげだ……」

「こら、ソウル失礼だぞ。けど、一体ウィル兄貴と、どういった関係で?」

「あら、取ったりはしないわ。関係わね……ソウルちゃんと同じよ♪」

 

ランスとのやり取りよりも、メルフェイスとウィルの様子を敏感に感じ取ったソウル。

ウィルの腕にしがみ付き、警戒しながら子犬のように唸る。

初対面に対し警戒して睨むソウルをたしなめ、自身もやはりどういう相手なのか気になり聞いてしまう。

二人が何を聞き、何を知りたいのか既に理解してるので、警戒を解いてもらえるように答える。

 

「え! わたし、名前言ってない。けど、同じ?」

「ああ、そういう関係ですかい」

「ええ、それにね。貴方達、二人のことはウィルから聞いてたわ。私もウィルが居ないと、生きていけないのよ」

 

名前を呼ばれて驚く、けれどいやな感じはしない。

同じと言われ、何を指して同じなのか頭を悩ませるソウル。

バウンドは流石に概ね理解し、特に気にするのをやめた。

そんな二人にもっと信頼してもらえうよう計らう。

前もってウィルに記憶を見せてもらった事を聞いたといい、二人と違う意味合であるが依存してる事を説明する。

警戒する必要がない、仲間だと解釈したレス兄妹はメルフェイスを受け入れる。

 

その後、メルフェイスとシィルが、ソウルとバウンドに自己紹介をし合う。

それが終わると、次は救出祝いの始まりだ。

前もって料理を準備してたマスターに、少女たちの母親が手伝いメルフェイスとシィルも料理を手伝った品々。

本日の酒場は貸切で、親子の再会を祝い楽しむ。

 

盗賊の洞窟で心が壊れかけてた少女たちも、バウンドの優しさで食事や水与えられ壊れずに済んだ。

治癒魔法とウィルの話術、今まで着たことのない可愛い服と水中遊泳で明るさを取り戻した。

そして、今は両親の再会と美味しい、母達の手作り料理の数々。

数日間あった地獄を忘れ、今はハシャギ楽しんでいる少女たち。

 

「ああ、いい光景だ……本当に、あんたらには……心から感謝する!」

「そう言われると嬉しいな。当初の予定から盗賊を壊滅させ、あの娘たちを救うつもりだった。こっちとしてはついでだったんだがな」

「そうよね。目的の子はいなくても、助けれる命は大事よ。それに、迷子の兄妹にも会えたわけだしね」

 

やはり酒場のオヤジも人の親。

少女たちが楽しそうに料理を食べ両親たちとたのしく話、笑顔を見せると涙ぐみ鼻をすする。

ゴン! とカウンターに頭を押し付け、娘ともども助けられた事に感謝の意を示す。

ウィルもグラス片手に酒をのみつまみを摘む、やはり言葉で感謝されるのは嬉しく照れる。

手形と他の娘たちの流れでパルプテンクスを助けたこと言って誤魔化す。

メルフェイスが命の大切さを語り、聞いてた通りに居た兄妹との再会を変わりに喜ぶ。

 

一方、ランスは美女二人に囲まれご満悦。

 

「はい、ランスさん、どうぞ~♪」

「おう、んぐ。がはははは。当然だ。おっとと、ぅぐん! 美味い!」

「あ、ランス様。お注ぎしますね」

 

パルプテンクスが酒のツマミを差し出し、ランスはヒョイと口に運びご機嫌で大笑いする。

シィルが開いたグラスにうすに薄めたゴロッチを注ぎ、ランスはそれを飲み絶賛する。

 

 

その一方、バウンドはというと、少女たちに囲まれ皿に料理や酒を注がれていた。

 

「はい、バウンドお兄ちゃん。コレたべて~」

「あぁ、ありがとう」

「はい、おさけ、いっぱいのんでね~」

「んぐ、ふぅ~。ありがとう」

 

25才と結構なギリギリな年だが、好意を持つ少女たちにとってはお兄ちゃん。

明るくまとわりつき、少女に思えない程にかいがいしく世話をしている。

その様子を、父親達は悔しがり、母親達は微笑ましく見ている。

元盗賊団の仲間だと聞いたら、この光景はない。

だが大丈夫、ランスにとって射程外な少女たちが何をしても余計な事は言わないだろう。

 

「へ~、そうなんだ。けど、それってありえるの?」

「うん、そうだよ。アノ人達にも、普通じゃないって言われた。けど、ウィル兄ぃはヤッテたよ」

「ふんふん。順番を守ればOK~、って事なんだ……けど、多いね」

「ぅ、うん。それがネックだね。けど、アノ人達と比べてもダンチだよ~♪」

 

一方、フララとソウルは歳が近い同士で、なにやら話していた。

フララは両親達と話を終え、両親達も他の両親達と雑談に花咲かせている。

ソウルは一部的に常識が欠けており、そのくせ素直である。

フララの質問に素直に答え、何がどのように違うか答えていた。

 

祝いの宴も終わり、一同がそれぞれの家にと帰宅し出す。

すると、思い出したかのようにランスに手形を差し出した。

 

「おっと。最後の報酬品を忘れた。受け取ってくれ」

「うむ。確かに(うっし、コレで城の中に入れる)」

「えっ、お父さんいいの? もう、お城の中に行けないよ?」

「いいんだ……もう、年だしな。参加できないし、見てるだけじゃな」

「ん? 参加?」

 

手形を受け取り、嬉しそうな顔するランス。

パルプテンクスが少し悲しい顔し、城にいけない事を問うとオヤジが何やら意味深な事を言う。

それに反応し、何だと首を傾げるウィル。

特にこの親子に対し深い詮索調べをしてないので、何を言ってるのか分からなかった。

 

「ああ、その手形をもって、城の中にあるコロシアムに参加してたのさ。昔は何回か優勝したんだぜ?」

「へ~、なるほど。そいつはすげぇな」

「ふん、今はそんな風に見えんぞ。ならどうして自分で、パルプテンクスちゃんを助けに行かなかった」

「それは仕方ないの! お父さん。昔私を庇って大怪我して……それで……」

「ふむ、そうか。懐かしい思い出の品でもあるのか……う~ん」

 

オヤジの元闘戦士話に、ウィルが関心しランスは信じない。

更には、モンスターを倒したとか口だけだと言ってたかと思いきや、実績あるのに何故あの程度の連中に挑まなかったと怒り気味。

そんなランスに昔モンスターに襲われた時に、庇った傷が元で立ってられるが戦うのは勿論、走るのや歩くのに多少の支障がでる事を説明する。

事情を聞き、手形に詰った思いを理解し、腕組して考え込むウィル。

 

「おいおい、今更返せといっても返さんぞ。俺様は必要なんだ」

「俺達な? まあ、そいつに関しては、明日何とかしよう」

「え! 何とか、なるんですか?」

「大丈夫よ。ウィルがこう言ってるからには多分、ね」

「無理しなくていいぞ。必要ないには、ちがいないんだから」

 

先ほどの流れとウィルの様子を見て、ランスは素早く手形を懐に仕舞いこむ。

こういう情的な流れの場合、過去において無理やり奪われた記憶が甦るようだ。

ランスの言葉に二人で必要なものと修正し、手形自体を何とかすると言い出した。

パルプテンクスは一瞬喜び、普通一般市民が手に入れることが出来ない品を、どうするのだろうかと尋ねる。

カウンターから乗り出すパルプテンクスの肩に手置き、メルフェイスが微笑みながら大丈夫と言う。

酒場のオヤジは確かに手形が戻ってくるなら嬉しいが、過去の思い出でも、無茶して迷惑かけたくないと言う。

 

それぞれが祝杯と料理を楽しみ、楽しい時間は早く過ぎていく。

少女たちも流石に眠気に負けて、両親たちの背中や腕の中で眠りについた。

食事会を解散し、皆それぞれの家に帰っていく。

シィルも門限をとっくに過ぎてるが、講師であるメルフェイスが同伴する事で問題を解決し共に寮へ帰る。

ウィル達は宿屋に向った。

 

 

 

宿屋【あいすくりーむ】

 

 

 

夜も更けて、閉まった宿の戸を叩く。

 

「はいはーい。あ、おかえりなさい。ネイルさんとランスさん……と、どちら様で?」

「がははは。ただいまもどったぞ、奈美さん」

「ただいま。こっちはバウンドとソウル、兄妹なんだ。よろしく頼む」

「初めまして、バウンド・レスです」

「わたしはソウル・レス。よっろしくー」

 

そろそろ帰って来るだろうと、奈美は元気よく戸を開けてネイル達を迎える。

二人の後ろに居る男女に目が行き問いかける。

ランスは何時もどおり、ネイルが二人を紹介し、レス兄妹も自己紹介する。

新規のお客様は大歓迎と喜んでと歓迎して宿に入ろうとすると。

 

「うん。奈美さん、その簪似合ってるぞ」

「あ♪ はい! ありがとう御座います。一生大切にしますね」

「む、おお。そういえば、髪型が違うぞ、何故だ?」

「今朝、20才の誕生日を迎えまして。その誕生日祝いにコレを()もらって……(ポッ」

 

ネイルの褒め言葉に顔を赤くする奈美。

ランスも言われて気付く、髪型が今朝と全く違う事に。

何時も黒髪を三つ網お下げだった。

今は旅館の女将たちがしてるように髪をたくし上げ、頭の上に団子を作りソコに豪華な装飾の簪をさしていた。

今朝ネイル達を送り出し部屋の掃除をしていると、ネイルの部屋にラッピングした包みがあり、奈美へのメッセージカードがあった。

3週間前にぽつりと言った誕生日を覚えており、今朝部屋に誕生祝いの品を部屋に置いていったのだ。

 

「両親を無くして、今まで何度か誕生日を迎えました。けど、一人寂しく迎えその日を終てました。こんな嬉しい誕生日は、初めてです」

「はは、何。結構長く世話になってるしな。その礼さ」

「ぬぐぐぐ……」

「さっすがぁ♪ ネイル兄ぃ」

「ああ、森でも……そうだった」

 

奈美の喜びの言葉にネイルが手を振り、たいした事ないと言う。

そのやり取りにランスが唸り、面白くないといった顔している。

ソウルも楽しそうに抱き付き、バウンドはカラーの森での事を思い出す。

誕生日という概念が薄かった彼女たちが喜んでいた事を。

 

各部屋に案内される中、ランスは宴の楽しんだ気持ちが吹っ飛び不機嫌だ。

奈美のウィルを向ける表情や言葉が気に入らない。

なんとかして、一泡吹かせてどうにか出来ないかと考えていた。

そこに、タイミングよく火種が起こる。

 

「綺麗なところだね。早く部屋にいって抱いてよ、ウィル兄ぃ。久しぶりだし、3発はやりたいよぅ」

「……は、はぃ? なに、を。ネイルさん? って?」

「あ、馬鹿ソウル。ウィル兄貴にネイルと呼べって、言われただろう……あっ」

 

洞窟育ちのソウルにとって、こういった綺麗なJAPAN風の宿は初めて。

つい気持ちが緩み言うべき所を間違え、言われてた偽名を忘れ口走る。

奈美がピタリとその場に止まり、ソウルの言葉にギギギ と、壊れた人形のように首を回し振り向く。

バウンドがフォローをしようとするが、見事に墓穴をほって取り返しつかなくした。

ランスは、チャンス! とばかりに奈美に全てを語り暴露する。

 

「がはははは! 奈美さん。ソイツの名前はウィル・ラインだ。ネイル・アートは偽名だ! それに、ソウルちゃんが10才の時に犯し、今も何人の女性を手出しする。ロリコンで変態の外道だぞ!」

「っ!!……う、嘘ですよね? 私、だけ……じゃぁ……」

「いいや、俺の本名はウィル・ライン。ネイルはリーザスでの偽名、保健医でなはく冒険者だ。4年前にソウルを抱いた。今も、多くの女性との関係がある。奈美、一人じゃない」

 

楽しそうに語るランスに、軽く目眩をしながら奈美が嘘と言って欲しい思いを乗せて問いかける。

しかし、返って来る答えは残酷な事実のみ。

偽名と一緒に本職までも白状する。

そのやり取りを見て「うしし、しめしめ」とランスは嬉しそうだ。

 

「酷い! 騙したんですね! 私の側に居てくれるって。ずっと一緒に宿を手伝ってくれると、信じてたのにぃ!!」

「すまんが、話が飛躍してる。俺は”付いてこれば”側にいると言っただけ。宿の手伝いもしたが、”ずっと”手伝うなど一言も言ってない。願望と現実を一緒にしないでくれ」

「あんたウィル兄ぃの何? 兄ぃは、あんたの一人のモノじゃないよ!」 

 

奈美がカンシャクを起こし、違う部分をウィルが自身の言った言葉で修正する。

奈美の言葉にカチン と、来たソウルがウィルの前に出て怒鳴り出す。

その場をソウルに任せ、ウィルは一歩下がり傍観する。

 

(ああ、懐かしいなこの光景。よくカラーの森でも、ウィル兄貴をソウルやカラー達が順番とか抜け駆けとか、言い争ってたっけ)

(ふむ、奈美は冷静さを欠いてもう駄目か? まあ、問題ない、何時もの事。ソウルは相変わらず熱くなって仕方ないヤツだ)

 

バウンドが昔を懐かしみ、ウィルは状況分析している。

この様な修羅場はウィルにとって日常茶飯事。

大勢と関係を持てば、必然と起こる事で毎回それを受け止め成り行きに任している。

奈美を一度抱いたウィルにとって、どう転ぼうが関係ない事になっている。

ドロシーが先日言った『初めてを奪っておけば。後は、用済みの癖に……』言葉そのままで、女性を食らう事は強くなる為の糧でしかない。

好意を寄せられてる間は全力を持って尽くすが、離れて行く者はいい訳も取り繕いもせず、追わずにそのまま。

ランスが言った通り「ロリコンで変態の外道」である。

 

そうこうしている間に、二人のやり取りはヒートアップする。

奈美が自分一人にこうしてくれた、こう言ってくれたと言う。

すると、ソウルがその言葉に「誰にでも、わたしにもしてくれたよ!」否定するように正す。

 

「だー、かー、らー! ウィル兄ぃは私や”森の”モダンさんやサクラさん、みんなのモノなの!」

「それはおかしいです! なんで、そんな事を受け入れる事ができるんですか!」

 

ソウルが森での事を言う序に、名前をあげて反論する。

奈美は他の女性の名を聞いて、いっそう血が上り不審点を逃がし認められないとソウルに顔を近づける。

ソウルは昔は手が早かったが、女同士の喧嘩に口以外出すなとウィルにキツク言い聞かされている。

そんな中、ソウル言葉に意外な声が脳内に響く。

 

《わ~い♪ ソウルちゃん。嬉しい事、言ってくれる~♪》 

(こらこら、勝手に出てくんな。後で会わせてやる)

《はーい。えへへ、楽しみ~♪》

「あ、アノ、兄貴、今髪が「バウンド」はいぃ~~~?」

 

響く声に、ウィルが嗜めその存在を引っ込める。

奈美とソウルのやり取りを見てたランスと違い、バウンドは3歩下がって見ていたのでウィルの変化に気付く。

後ろから見ていた為、一瞬ウィルのピンクの髪が水色の髪になり耳が尖ったていく様を見る。

その変化を問おうとすると、ウィルに名前を呼ばれると同時に両肩にポン と、手置かれズルズルをその場を押し後退される。

 

「バウンド。お前は何も見てない」

「え、でもさっき「い・い・な?」サー・イエッサー!!」

「む? どうかしたか? 貴様ら」

「いや、なんでもない」

 

ナニモノも言わせぬ威圧力で、バウンドを黙らせる。

場を離れて叫ぶ声にランスは反応するが「なんでもない」と元に戻った。

男3人の行動に気付かない二人、女性と少女はどんどん口論は進み。

 

「もぅ! わたしはまだだけど。森には、ウィル兄ぃの子供がたくさんいるんだから!」

「こ、こ、こ、こ、子供!? た、たくさん!!」

「うんわぁ~~、流石の俺様も……ソレには、引くぞ」

「ふぅ~、やれやれ。確かに、393人+5人いるぞ」

 

何を言って説明して納得しない奈美に、特大の爆弾を投下する。

定番のニワトリの真似をする奈美に、楽しそうに笑っていたランスが真顔になり軽蔑視する。

そこまでいったかと諦め、子供の人数を口にする。

 

「さんびゃ、398人?! 責任も取らないで捨てるなんて! 酷すぎる!!」

「いや、全員認知して責任取ってるぞ。まあ……今は、5人だけ責任取れないが……な」

「馬鹿か? 貴様は。3百人も責任を取れるわけないだろう。なめてるのか?」

「ちがうよ! ウィル兄ぃは責任? ちゃんと取って育て、遊んでるもん!」

「ソウル、お前しばらく黙ってろ「むぐぅ!」すまない、兄貴」

 

ありえない子供の人数に、奈美が顔を真赤にして怒鳴り散らす。

ウィルは責任取ってるといい、遠くを眺める目で5人について思い語る。

人数に呆れ軽蔑したまま、ある富豪の娘を妊娠させ後に中絶させてた事を思い出し、後味の悪さで怒りだす。

ソウルがあまり賢くない頭で正論を言おうとするが、今ひとつ的が外れている。

流石にこれ以上は不味いと、バウンドが手で口を押さえて、その場を離れる。

 

「遊びに本気になって、私が馬鹿みたい……パチーン! 明日から来ないで下さい! う、うわあああぁぁ~~~ん!」

「ぷっ、がははは! 叩かれてやんの。 当然だ! ガキ作って捨ててるんだからな!」

「……(ふぅ、明日はドロシーのトコに泊り込むか。あの荒れ様はランスのヤツ、昔を思い出したな)……さて、どうするか」

 

ウィルの頬に紅葉を作り、奈美は泣きながら駆けてその場を後にする。

ランスが叩かれた顔を指差し、馬鹿笑いし子供について怒りドタドタ と、足音を立てて去っていく。

ウィルは頬を叩かれようが、何を言われようが表情に変化はない。

無表情の仮面を被り、感情を無くすのはお手の物。

今後をどうするかとランスの心境を考え、明日はどう接するかと悩む。

 

「あ、あの……ウィル兄ぃ、ごめん。わたし……」

「ん? ははは。ソウルは悪くないぞ。ほれ、風呂入ったら部屋行くぞ。懐かしい連中に会わせてやる」

 

修羅場が終わるとソウルがやっと冷静になり、余計な事を言い過ぎた事にやっと気づく。

肩や体を縮め、申し訳無さそうに謝る。

そんなソウルの髪を撫でながら笑顔で笑い、肩に手を回し部屋に連れて行く。

 

「あの、オレはどうしましょう?」

「部屋の場所まで連れて行ってやる。風呂も一緒に行けばいいだろ」

「あっ、ん! わ~い♪」「わかりやした」

 

宿について何も分からないバウンドに部屋と風呂場の場所と扱い方を説明する。

ソウルの胸を揉みながら歩きだし、バウンドの背中をポン と叩き部屋に向った。

 

 

 

―奈美の部屋―

 

 

 

盛大に喧嘩別れした奈美。

女将だけに酒が強いが、今回ばかりは飲む量が多く一升ビンが3本転がる。

 

「ひっく、しく、しく……う、う。うぅ~! ネイルさんの、ばかー!!」

 

持ってたグラスを投げ飛ばし、柱に当てて粉砕する。

荒れる奈美の部屋に、ランスがニヤケ顔で近づいていく。

 

「アレだけ派手に別れたら、へこんでるはずだ。失意の奈美さんの前に俺様登場! 慰めてやるぜ!」

 

1時間前の出来事を思い出し、奈美の心情を予測して優しい言葉を掛けて側に行き頂こうと考えてる。

火種こそソウルだが、油を注ぎ大火事にしたのはランスだ。

その後もソウルが爆弾を投げ入れ、ウィルが自分で自爆したようなもの。

先ほどまでは、子供の人数に怒りを露にしていたが、Hが関わると脳内のそんな事は簡単に忘れるのがランス。

部屋の前に来ると、丁寧にノックし奈美の反応を待つ。

 

「ぐふふふ……おっと、イカン。奈美さん。大丈夫か?」

「あ~、だーれー? 開いてるよ~」

 

声に反応し、奈美が入室の許可をだすとランスは部屋に入ってくる。

案の定、酔って落ち込む奈美は、すこしほけーとした様子でランスの顔を眺めてる。

そして、カニ釣りに出て死んだ兄とランスを重ねて抱きついた。

 

「あ、兄さん~♪ 聞いて酷いのよ。ネイルさん、私を騙してたの!」

「ふぉっ!? ああ、そうだな。って、ぐはっ! 酒くさ!(何だ? 俺様を兄と間違えてる? コレはコレで、ありか?)」

 

部屋に入ったランスを、丁度布団の上に抱き付き押し倒す。

甘える様にネイルに騙されたと愚痴り出す。

なかなかの飛びつきに押し倒され、何とか答えるも酒の匂いに驚きむせる。

そして、自分を兄と間違えられてる事に戸惑うも、甘える奈美を見てありかと思う。

部屋に転がる一升ビンの数を見て、再度驚き「大丈夫か?」と心配する。

 

「いったい、どんだけ……ひー、ふー、げ!! 日本酒三升!? 飲みすぎだぞ、奈美さん」

「んあ~? 兄さん。なー、に言ってるの? アハハハ。普通よ~、普通。酔~、ってないですぅー」

「いや、おかしいし、全然普通じゃない。どう見ても、酔ってるぞ」

 

M脚でお尻をペタンと布団に座りケタケタ と、笑いながら手招きの様に手を振る。

布団の上で胡坐をかいて、普段凛とした奈美が酔うと此処まで変わるものかと思いつつ取り繕おうとする。

泣いてた次は愚痴り、かと思えば笑い出し、今度はランスが待ち望んだ行動を起こす。

 

「アハハハ……う~……あー、つー、いー」

「お? おおお!! ナイス!」

 

着物の袖から手と腕を抜き上着を脱ぎ出し、丁半賭博のサイコロ振りの姐御サラシなし状態になる。

着物の中に下着をつけない奈美の柔らかそうな胸が露になる。

 

三つ網を解きすらっとしたストレートの黒髪、それに上半身裸状態。

手うちわをている様子を「おー、おー」言いながら、ランスは奈美の半裸をガン見する。

そのようすを「じーーー」と見つめてた奈美は、帯を解きだし。

 

「居る筈の無い兄さん……これは夢。抱いて……」

「(キター!!)いいのか? 愛してるよ、奈美……(よし! このまま!)」

「私が壊れるくらい……激しく、お願い……ぁ……あ、あぁぁ!!」

 

口に指を当てて考え、死んだ筈の兄を目の前に(ランスを目の前に)夢ならと着物を脱ぎ捨てる。

足を伸ばし、片手で上半身を支え起こした状態で、もう一方の手を差し出してランスを誘う。

内心で叫びながら奈美を布団に寝かせ、キザったらしいセリフを吐いて覆いかぶさる。

ランスの首に手を回し、今までの事や、先の出来事を忘れたいと願い抱きしめる。

「がははは」と笑うランスの声と、哀しく鳴く奈美の声が夜の部屋に響く。

 

 

 

―朝、PM4:00―

 

 

 

女将の技能により、奈美は目覚ましが無くても前日に何が起きようと、決まった時間に目を覚ます。

 

「ん……起きなくちゃ、いつっ、頭がいたい……」

 

目を覚まし、起きようとすると頭痛がして軽く頭に手を当てる。

女将は、酒においても酔うことは中々ない。

2升をラッパ飲みして、三升目をコップで飲むハイペースで酔えた。

しかし、鎖ほど二日酔いにならず多少頭痛がする程度である。

ふと横を見ると真っ裸で寝るランスがいた。

 

「!! は、裸?……え! ランスさん!? 何で……?」

 

上半身を起こしすと自分が裸な事に気づき、いびきをかいて横に寝るランスに驚く。

 

「んが~、んご~……うーん、奈美さん。いいぞ~……」

「っ! あっ、そっか……私、兄と間違えて、慰めてもらって……」

 

上半身を起こした事で、中から溢れる液体に気付く。

昨日の夢が現実で、自身の勘違いと相手を再認識して慰めてもらった事を思い出す。

 

しかし、感傷に浸ってる時間はない、この後朝食の支度をしなければならないのだ。

汗と体液の汚れを落とすべく、着物を着込みお風呂へと向おうとする。

 

「風呂、行かなくっちゃ……?……雰囲気が、あ、急がないと」

 

寝起きでまだ頭がはっきりせず、部屋の様子が違う事に気付くが時間が惜しいので部屋を出る。

 

 

 

―お風呂場―

 

 

 

風呂に入り、念入りに体と中を洗う。

湯に浸かり、昨晩のソウルと口論を思い出す。

 

「はぁ……なんで、気が付かなかったの……」

 

ため息を付いて、自分の勘違いと思い込みにさいなまれる。

ソウルは”森のみんな”と言っていた。

JAPANなら森と言っても問題ないが、極寒の地ヘルマンに森と呼べる場所はひとつしかない。

一般的知識から、あの森ならば数多くとの関係や子供が居てもおかしくない。

捕縛されて作らせられるのだから、しかも、ネイルなら異端な事をしでかしても不思議に思えない。

その異質性を一ヶ月間見て、感じ、味わったのだから。

 

昨晩ランスに慰めてもらい、胸に宿った嫉妬やイライラ等のもやもやはすっきりしている。

その代わりに物足りなさと喪失感に寂しさが奈美を襲っている。

コレらを満たされる事は無い、決別してしまったのだから。

 

「うん、だめだめ。お客様を待たせるわけにはいかないわ」

 

頬をパン と叩き、沈んだ気持ちを切り替える。

昨晩朝食の仕込みをしないで、呑んだくれた為に朝食までに時間が無い。

湯を上がろうとすると、着換えを忘れていた事を思い出す。

 

「あ! きがえ……お客さまの浴衣、借りないと」

 

無いものは仕方ないと脱衣場に向う。

先ほど脱いだ着物を篭の前に来ると、その横に着換えの着物が置いてある。

 

「え! 何で?……ぁ、なんで?」

 

何故、先ほどの寝巻きと違い、いつも着てる赤い着物がたたんであるのかと疑問に思う。

そして、置いてある理由が分かり、何故置かれてるのか再び疑問に思った。

その後、新しい着物に着換え台所に向う。

 

 

 

―調理場―

 

 

 

調理場に着くと奈美は再び驚く。

 

「な、ナンデ……ん、美味しい……なんで、なの?」

 

テーブルの上にには途中だった仕込が完全に終えて布巾が掛けてある。

冷蔵庫の中にもあり、鍋の中にある火をかけるだけの料理を味見して確信する。

 

先ほど奈美の部屋に散らばった割れたガラスが掃除されて、一升瓶も整頓されていた。

風呂場にあった着物、あれの場所を知り置ける存在。

今味見した料理、仕込みの経過を見て何を作るか分かり作れる人物は一人しか居ない。

一ヶ月の間に、ちょくちょく手伝ったネイルにしかできない事に気付く。

 

「どうして、今も……嬉しいけど、けど……」

 

 

 

―宿屋の前―

 

 

 

「がははは。行って来るぞ奈美さん」

「はい。気をつけて、行ってらっしゃい」

 

ご機嫌な朝を向え、足取り軽いランスに奈美は何時もどおりに見送りをする。

 

「ぐふふ。今夜もやろうな」

「ありがとう。でも、昨晩の事は忘れてください。お願いします……」

「むむ、まあ夜にな(夜這いすれば、そのまま鳴け崩しに……)ではな~」

 

ランスの誘いにお礼を言いながら、前で両手を組み頭を下げやんわり断る。

初日のような明らかな拒絶ではないが、有耶無耶に断られ不満に思いも表向きは納得するフリをする。

一度やってしまえば、夜這いをして鳴け崩しに再度美味しい思いを出来ると勝手な解釈をして宿を発つ。

昨晩、酒場で聞き損ねた情報を聞く為に、シィルに会いにパリス学園にと向った。

 

すぐ後ろから、ランスが出て行くのを待ってたかの様に3人の男女が現れる。

 

「じゃあ、奈美さん。一ヶ月世話になったな」

「んべー、早く行こ、ウィル兄ぃ」

「あ、朝食美味しかったです」

「あ……あの……見捨てないで……」

 

奈美に別れの挨拶を言うウィルの腕に絡みつきくソウル。

アカンベー をして、腕を引いてその場を早出に先を急かす。

バウンドは丁寧に一礼をして、朝食の感想を述べて後に続く。

奈美は慌てて駆け寄り、ソウルが掴む腕の反対の袖を掴み囁き声を出す

 

「ん? 確か、ランスに慰めてもらった筈だが? 顔も見たくなし、俺とは会いたくないだろう?」

「なにさ。まだウィル兄ぃに、文句あるの?」

「っ! ちが、う。聞きたい事が、子供って……人間ですか?」

 

ランスとの事をいい、軽く笑いながら答える。

ソウルがしがみ付いたまま、猫の様に「フシャー」と威嚇する。

昨晩の事実を追及され、体をビクッ と、振るわせソウルの威嚇に怯えながらも質問をする。

 

ソウルにはカラーの森でのこと、カラーとの生活は外に言わない様に教育してあるので言ってない。

一般的にカラーはクリスタルを手に入れる敵、掴れば餌にされると言う認識。

殺されるから言うなとキツク、頑なに言ってあるので問題なし。

ソウルの産まれに育ちと、喋った”森”から推測したのと判断し、ウィルは正直に答え序に聞いても居ない関係の数を伝える。

 

「へぇ、気付いたか……殆どは人間じゃないな。人の子は13人だ……因みに、抱いた人間の女は千人を超えるぞ?」

「それでも、13人……せ、千人も……」

「うひゃ~……ウィル兄ぃ、凄すぎ~♪」

「さ、流石。ウィル兄貴……感服します」

 

ウィルの言葉にショックを受けて、奈美は口に手を当てて3歩後ろによろけて後退する。

一方、感性が変わってるソウルは人数の多さを褒める。

バウンドも同じようで、呆れるどころか尊敬してる始末。

心折れそうになるも、なんとか気持ちを持ち直してこの場で一番適切な言葉を選び願いを言う。

 

「お願いします。私をソウルさんと同じ、ウィルさんの女にして下さい!」

「はぁ? 兄ぃを叩いておいて、何言い出すの。私と同じって、て、あ、あれ? どういうこと?」

 

奈美の言葉に、昨日と同じ独占するセリフと思いソウルが反発しようとする。

しかし、自分と同じ女と言われ戸惑い首をかしげる。

二人の様子をみながら昨日、頬を平手打ちされて別れを言われたが、仕込みをして置いてシレッ、とウィルは言う。

 

「俺も聞きたいな。嫌われる要素しか昨晩思い出せないが」

「……ずるい。部屋の掃除、風呂場での着換えに料理の仕込み。全部、ウィルさんでしょう?」

「確かに、手出しした。が、客に迷惑をかけるわけに行かないからだ。関係ないだろう」

 

さり気ない優しさと、手伝いをしてくれた事が嬉しかったと言う。

しかし、別れた相手に感謝されても、客の為と言って気にしない。

ウィルが聞きたいのは、先ほどの言葉の本当の理由だから。

 

「関係なくないです。それと。そ、その……も、もの足りないから……」

「ふっふふ。何がだ?」

 

さり気ない気遣いが嬉しいのと、ゴニョゴニョと小声で何かを言う。

それが分かったウィルは楽しそうに笑い問いかける。

 

「ッー!! ウィルさんのが良いんです! 欲しいからです!」

「ぷっ、ぷははは! OK! よく言った。ソウル、バウンド。お前達は今日、奈美の宿を手伝って仕事を覚えろ」

「「「……は、はいぃ?」」」

 

ウィルの反応を見て、新しい鬼畜な一面を知った奈美。

それでも尚、顔を真赤にして、恥ずかしいセリフを大声で叫ぶ。

ランスとの腕の差を聞いて、満足げに笑い奈美の申し出と要望を受け入れる。

奈美からの求める一言が欲したっかのだ。

イキナリ態度が変わり、3人は声揃えて「何事?」と首をかしげた。

 

先程まで仮面のすまし顔から、うって変わり楽しそうに語り出す。

明日、行われる年に一度の大会【第50回 リーザスパラパラ杯の剣魔武闘大会】に出場する事。

奈美に冒険者としての実力を見せるためにコロシアムに来させるには、宿の仕事があり時間的に無理がある。

それを、ソウルとバウンドにできる仕事をさせて人手を補い、コロシアムに来る時間を作る為と語る。

 

「えー、っと。わたしに、できるかな?」

「オレも、たいした事、できやせんよ?」

「ああ、大丈夫だ。一通り奈美ができる事をやらせ、判断する。二人ならできる! 森でも、結構色々やらせてたろう」

「はい。任せてください」

「「あ! そっか」」

 

やった事無い宿仕事に、レス兄妹は不安がる。

そんな二人に大丈夫と方法手段をいい、森での生活で様々な雑用をさせていた事を語る。

 

3人に納得させたところで、レベル屋と武器屋に行くことを説明し、レス兄妹を連れて宿を発とうとする。

ウィルに恥ずかしい告白をし、口車に乗せられた感がある奈美は疑問を投げかける。

 

「何で、昨日あんな事になったのに。今朝からの事や、今こんな事を? どうして、昨日言ってくれなかったのですか?」

「ふむ、もっともだ。が、簡単な事だ。あの様な修羅場は何時もの事で、別に嫌われ別れても構わんかった……しかし……部屋の状態を見てな、惜しくなった。故に、奈美の気持ちを後押した」

「っ! ひ、酷い人……それに、ズルイ……」 

 

奈美の疑問に振り返り、腕を組んでウィルが答える。

その説明に、弄ばれ捨てられそうになった事を知りショックを受ける。

気まぐれで手の上で踊り、感情を誘導された事に気付く……。

 

「ははは。なら別れるか構わんぞ? 後、酷い序に教えてやる。俺とランスには避妊魔法が掛けてあり、子供は出来ないからな」

「今更、酷い! 私、別れません!……へ? あ! はぃ、ありがとう御座います……」

 

ショックを受けて俯く奈美に追い討ちをかける。

落ち込むかと思われたが反発して元気に吼える。

後半の言葉に一瞬「何?」とほけるが、言わんとしてる真意を理解してお礼を言う。

上げて落とすか、落として上げるのがウィルがヤル何時もの手である。

奈美の先の不安や心配を無くし、何時も以上の笑顔を取り戻させた。

 

あの避妊魔法一言は、色々な意味を含んでいた。

奈美がその気でも、ウィルにはなく生まれた子に幸せはあるだろうか。

自暴自棄になって、想いの無いランスとの子は不幸としか言えず。

ウィルとランスは不幸を産まない為の対処はしていると言ってるもの。

ただし、いくら避妊しようと女性の初めてや体を奪う行為事体は、一般的な男として最悪である。

奈美が風呂場で遅いと思っても、念入りに洗ったのはそのため。

遠まわしに遊びだったと言われたようなものだが、一番心配していた事を解消されたのは大きかった。

 

 

―レベル屋―

 

 

 

昨日、盗賊退治やモンスターを狩った事で、経験地を多く手に入れ(魂を多く取り込み)4レベルアップし20LVと成った。

 

「ランスさん。すごい、すごい。優秀なんですね」

「がははは、当然だ。俺様にかかればチョロイもんだ」

 

レベル屋の女性に褒められ、大笑いしながらランスは機嫌よく拳を掲げる。

パリス学園でシィルから情報を得て、城入りの重要性を再認識した。

コロシアムの話を聞いていたので、もしもの為にとレベルアップに来ていたのだ。

 

レベル屋の女性の容姿は、腰の下まである見事な長い赤髪に、灰色の長袖のスパッツスーツを着て茶色の皮服が胸と腰を覆う服装。

皮着が少し破れているのは、リーザスでのレベル屋として苦労してる証拠か、祖先より代々受け継がれた水晶とセットな服なのか不明。

彼女の名をウィリスと言う。

水晶玉を使い見ると、レベルを上げに来たランスのそれまでの経験地に関わる行動や行い(戦闘や可愛い子とのH) も全てわかるらしい。

ランスの行いを見た時(可愛い子とのH)を見た時は「あなたって、とってもエッチね」と言って顔を赤らめていた。

しかし、神昇進試験を控えており、少しでも優秀な冒険者がレベル屋に来て貰える様に取り込む必要があった。

レベル上げる回数や上位者の高いレベルを上げる功績が神昇進試験に成っており、ランスを獲物と思ってたりする。

ただ、その判断が正解か、不正解かは……後にウィリス自身が知る事と成る。

 

ソコに、レス兄妹を連れたウィルが現れる。

 

「ん? ランスも来てたのか。調子はどうだ?」

「がははは。20レベルになったぞ! どうだ!」

「ほう、やるな。おめでとう」

 

ウィルの問いに自慢げにレベルを言う。

感心した素振りを見せて、祝いの言葉を言う。

しかし、ソウルとバウンドのレベルアップの儀式を見て、唖然としパカン、と口を空ける事に成る。

 

「おめでとうございます。バウンドさんは、5レベル上がって18レベルになりました」

「どうも、ありがとう」

「何! 俺様より上がったレベルが1、多いだと? ま、まあ。レベル自体は勝ったな(ぬぬぬ、コイツ意外にやるのか)」

 

宙に浮いた水晶玉に電流がパリパリ と、走り、光がバウンドを包む。

ウィリスの言葉にバウンドがお礼を言い、ランスが一度に上がったレベルの数に負けたことに驚く。

レベル差2あり、バウンドのが低いので問題なかったが、もしも勝ってたら切りかかって居ただろう。

次に、ソウルのレベルアップの儀式を行った。

しかし、ウィリスの様子が少しおかしかった。

 

「す、すごい……こ、これは(な、何コレ!? ソウルさんがウィルさんを!!)お、オメデトウ御座います。ソウルさんは、11レベル上がり23レベルです……」

「えへへ~♪ ありがと。ウィル兄ぃのお陰だね♪」

「そんな馬鹿な!! ありえん! 俺様が負けるだと!? どう言う事だ!!」

 

ウィリスはソウルのレベルアップよりも、昨晩してたであろう経験地に関わる行為を見て驚愕してた。

ソウルは教えを守り余計な事を喋らず、ご機嫌だ。

ランスは驚くと言うより、怒り荒れ捲くる。

ウィリスに「何かの間違いだ」と詰め寄ると、横からウィルがソレを遮る。

 

「いや、ありえるだろう。ソウルの戦い見たな? レベルの量は盗賊やって、レベル屋に来なかったからだ」

「んぐぐぐ! 確かにこのガキも「ガキじゃないもん!」ふん、確かに使えてた……貴様が教えたんだな?」

「ああ、そうだ。才能あったから教えた」

(才能? 確かに剣戦闘LV2とシーフLV2と投擲LV1は上位者にあたる。必殺技でも教えたのかしら? それに、さっきのイメージ、アレは何?)

 

ウィルの言葉にシブシブ納得する。

ランスの「ガキ」発言に反発するも、女の子だからか特にお咎めなし。

ソウルの戦っていた時に使ってた【闘気法】を見ていたので、納得し教授したのがウィルと理解する。

二人の会話にウィリスは疑問に思う。

技能は2LVと高いので必殺技の事かと思うが、それよりビジョンのが気になって仕方ない。

そんなウィリスの様子を察知したのか、ウィルが二人を武器屋に追いやろうとする。

 

「ソウル、バウンド。装備が色々と痛んでるな? 金やるから武器屋で新調して来い」

「あ、は~い♪ 分かったよ」

「へい、分かりやした」

 

金の入った袋をバウンドに渡し、二人が答えてレベル屋を後にしようとする。

そこに、唸ってたランスが思い出したように、盾をせびる。

 

「! そうだ! 俺様にも盾寄越せ!」

「む? つい先日やったろ?」

「コレを見ろ! 壊れてるだろうが」

 

ランスの言葉にやったと返すが、盗賊達の攻撃で傷つき、パックリ と割れた【めでうさの盾】を見せる。

リーザスの武器屋で最高位の強化鏡で出来た優秀な盾だが、ライハルトの鎌によって割れたようだ。

仕方ないと200GOLDをランスに手渡す。

序に意外な事を聞きなおしてきた。

 

「おい、偽名は何処で使ってる?」

「リーザスでは全部だが? ウィリスには偽名と分かるし、後は冒険者と行ってる酒場と情報屋位か」

「なるほどな(うしし、ミリーやパティに言ったろ。上手く言えば)」

 

偽名の使用場所を問い、聞いて場所を特定する。

一度上手く言った事は、二度もある可能性あり。

ランスは内心で言いふらし、上手くヤル事を画策をする。

 

その後、3人は装備を整えるために武器屋に向った。

レベル屋に残った二人は。

 

「ウィリス……ソウルから見たな?」

「……ええ、アレは何をしてたんですか?」

「……1、無知のままで居るのと。2、知っても黙ってるのと。3、誰かに喋り、喋った相手共々殺されると。どれがいい?」

「な、なんですか!? その物騒な選択肢!」

 

ウィルの問いにウィリスが素直に答える。

3個の選択肢を出すが、3番が非情に物騒なのでウィリスが焦りながら、声を張り上げる。

アンに知らない方が良いと言ってるようなもの、2と3は流れで繋がっている。

Lv12の僧侶彼氏とのデートで舞い上がり、ポロッ と、喋ったら殺すと言ってるのだ。

ウィルのレベルを知ってるウィリスは、有限実行が即可能な事を理解する。

 

「い、1番にしておきます。けど、何か見返りが欲しいです。どう見ても、アレは異常です」

「ふむ、確かに普通じゃないな。ああ、神昇進試験がもう直ぐあるな。その時に俺は来ないが、何人か寄越す。それでいいか?」

「え、ええ。何人ってのが曖昧ですが、少しでも可能性あがるなら……」

 

渋々今は知らない事にしたが、余りに異常すぎる内容に見返りを求める。

レベル屋がイイノカ? と思えるが、ウィルは了承し試験の支援を約束する。

 

「交渉成立。まあ、レベル神になれたら話してやる」

「あ! その時は契約してくださいね! ウィルさんはすっごく、優秀なんですから」

「ああ、いいだろう」

 

秘密も神昇進試験に合格したならば、話そうと約束した。

今、黙っていれば合格と階級アップの獲物を捉まえようと現金に約束を取り付ける。

ウィルの担当は契約年数を過ぎたので、今はフリーと聞いている。

一ヶ月で2レベル上げる程なので、速度は遅くとも確実に上がるだろうと優良株にお手付きする。

 

不安要素を取り除き、ウィルは向いにある情報屋に向った。

 

 

 

―情報屋―

 

 

 

「いらっしゃ、あっ♪……と、コホン。何か用?」

「いや、今喜んだろ。すまし顔しても遅いぞ」

「う、うるさい。で、何が聞きたいの?」

 

お菓子を咥えながらがキーボードを打っていたドロシーが、ウィルを見て笑顔になるが直ぐに商売顔に戻る。

ウィルの突っ込みに、自身でも理解してるのか、誤魔化す様に何の情報を知りたいかと質問する。

昨日と違い、嫌味もなく話が進む。

ただ、顔が緩んでる部分を抜けばドロシーらしいところ。

 

「デル姉妹の一般的に聞く情報と、明日の大会出場者の弱点や素性だな」

「OK! でも、何でわざわざ聞くの? 貴方は分かるでしょ? それに対戦相手の情報はウィルの実力なら、関係ないでしょ?」

 

城に入ってからの情報を前倒しで聞く。

ドロシーは嬉しげにキーボードを叩き、情報を引き出していく。

ふと、前は情報料と会いに来る理由つけであったが、今はそのお膳立ては必要なくなった。

なぜ、不必要と思える事を聞くのかと疑問に思って問いただす。

 

「確かに使えば分かるが、今回も大筋しか見てない。結構頻繁に調べないと運命は変わる。すべてを知ると、もう新しい刺激は何もない。分からないこそ楽しい事があるんだ」

「ふーん、そういうものなの? 私は知りたいと思うけどね。お陰でウィルと……たし」

 

ウィルが使えるモノを使わずにいる理由を述べると、ドロシーは知ること全てと言った感じだ。

後半、そのお陰で上手く言ったと小声で囁く。

そこに、意外な事実を言いだした。

 

「そうそう。ドロシーを連れてくってのは運命になかった。一年後に襲われるトコを助ける筈だった」

「ええ! そうなの? そぅ、なの……よかった」

「んじゃ、ま、行くか?」

「……うん……」

 

行動を起こしたからこそ、変わる未来と運命。

宿命は変えれないが運命は変えれると言う。

両手を重ね、嬉しそうにしてるドロシーを抱かかえ、奥の部屋へと向った。

 

数分後には準備万端なドロシー。

さて、本番ってところで、ウィルが待ったをかけた。

 

「はぁ、うっ、く、あぁ……もう、来て」

「ああ、ドロシー、行くぞ……!! っ! すまん。今日はお預けだ!」

「ぁ……って! どうして!?」

 

ドロシーが求め、接触すると同時にウィルが離れる。

なにやらビジョンを見たらしく、慌ててズボンを履き出した。

寸止めされて、体を起こし理由を問うと。

 

「すまん! ランスのヤツがミリーを襲う」

「もう、ランスが女性襲うのは、今更……ミリー? ミリー・リンクル!? ま、不味いでしょ、彼女はっ!」

 

ランスが武器屋のミリーを襲うのビジョンを見たらしく慌てる。

ドロシーも「何時もの事でしょ」と、たかをくくってたが、ミリーの名前に焦り出す。

 

「そうだ、俺が変なHの仕方教えたことで、爆弾のスイッチを押す指が滅茶苦茶ユルイ! 【小判】を渡してあるが、急いで行かないと死ぬ」

「ウィルが変なこと教えるからよ。早く行って」

「ああ、すまん。埋め合わせは必ずする!」

 

どうやら、ウィルがミリーを抱く為に、変な抱き方をしたのが原因。

元々、自殺願望があったミリーは簡単に爆弾のボタンを押す様になっていた。

ドロシーに追い出され、ウィルは急ぎ武器屋に向って行った。

 

 

 

―武器屋―

 

 

 

ウィルの偽名を言っても「それが、何か?」と、全く気にした様子がなかった。

その跳ね除ける態度にランスはカチンと来て、爆弾を持つミリーに襲い掛かった。

すると、逃げるように背を向けると、いとも簡単に前屈みに爆弾のスイッチを押して自爆した。

 

「――んな!? ほ、ホントに自爆しやがった……し、しらん。俺様はしらんぞ!」

「――! 何、今の凄い音、って、ミリーさん! ミリーさん! しっかりして!」

「!? ソウル、ヘタに動かすな止血だ、タオル探して来い!」

「……ごふっ! ふふ、これで”また”死ねる……うふふ、ぶほっ!」

 

軽く吹っ飛ぶミリーを目の前に、ランスは驚き焦り、武器屋を飛び出した。

音に反応して店内を散策してたソウルがやって来て、血だらけのミリーに駆け寄る。

バウンドも遅れてきて、状態を見て直ぐに止血の為の指示を出す。

一方、ミリーリンクスは吐き血をしながら、楽しそうに見えなくもない。

 

『大丈夫、私が身代わりになってやる』

 

そして、どこからか声が聞こえると、ミリーの体が光に包まれる。

血で汚れて見難いが、一命を取り留める範囲の破損した臓器が修復される。

すると、そこにランスと入れ違いになるようにウィルがやってくる。

 

「ミリー、無事か! 今治す」

「うふふ、来たわね……ごふっ、抱いて」

「おし、もうすこ……いや、ソウルとバウンドが居るし、無理だろ」

「そ、そうだよ。こんな時に冗談いってる場合じゃ」

 

血塗れたミリーに近寄り、ヒーリングをかける。

ウィルを確認すると黒い喪服のようなワンピースを破いて脱ぎ出す。

二人に見ながらするのは気が引けるのと断ると、ソウルも流石におかしいという。

 

「ゴホッ、ソウルちゃんから聞いてる。寧ろ見られながらも興奮する。ぐふっ」

「兄ぃ……もしかして、この状態で?」

「あ~……まあ、な」

 

ミリーは吐血しながら答える。

ソウルからウィルとの関係を聞き、それとなく自分も話していた。

その言葉を聞いて先程会話を思い出し、ジド目でウィルに問いかける。

頬を指でかきながら、どのような状況でしてたか説明する。

 

死にたがり屋のミリーをどうやって抱こうか考えたウィル。

懐に【復活小判】をしのばせ、抱きしめながらボタンの押す指に上から重ねて押させた。

ミリーは一度死に、小判の効果で瀕死の重傷として復活。

死を与え、生と死の狭間の状態でミリーを抱いた。

ウィル自身は闘気法で防御したので、怪我を負っても回復魔法で直ぐに完治。

ミリーの状態を見ながらヒーリングしながら抱くという、おかしな方法を取った事でミリーに変な性癖を覚えさせてしまった。

お陰で【復活小判】の恩恵による死の体験ができると、迫る男が居れば爆弾で脅し無駄なら簡単に爆死するのだ。

 

その後、レス兄妹に見慣れながら抱き。

前のミリーと治療の意識に二人の視線、3つの意識を回しながら頑張った。

治療と水風呂を終えて着替え終わったミリーと対峙する。

どういう経由でこうなったか説明された。

 

「私は、他の男に犯されるなら死を選ぶ。ウィルさんのことはドロシーから聞いてた。ついでに『ウィルなら、死ぬ前に助けてくれるよ』と言ってたし」

「なるほど、だからって簡単に爆死するな。来れなかったらどうする」

「その時は、貴方を怨んで死ぬだけ……うふ、うふふふ……」

「兄ぃ、がんばって」

「兄貴、責任とりやしょうや」

「ぐお、お前たちまで……」

 

ミリーに事情と心情を聞いてドロシー、恐るべしとか思うウィル。

感知できるが、もしもがあると困る死ぬなと注意する。

やはり死にたがり屋ミリー、怖い微笑みをして聞く気が全くない様子。

二人に左右から肩をポン されて、見事にミリーの味方されて追い込まれた。

 

その後、ソウルとバウンドの装備を買い揃え宿屋に送り出す。

ミリー【復活小判】を渡し、明日の大会の事を説明して武器屋を出た。

 

 

 





  《魔法》

 【テレパシー】(オリ)

コールの上位系で、魔法LV3が使える通信手段。
距離は遠く、相手も特定できて他者に聞かれる事がない。


  《アイテム》

  【旧式 リヴ】(オリ)

普通のリヴより性能が劣るのでなく、逆に強力過ぎる禁忌の秘薬。
魔法LVを1上げ、魔力を増大させ、才能限界を3倍にする。
代償として二ヶ月に一回、自分よりレベルマイナス3か、強い男に抱かれないと気が狂って死ぬ。
普通のリヴと違い、最初に抱かれた男以外の精を受け付けない。
解毒魔法薬があるが、3年間後に呪いを解かないと、それ以前に呪いと解くと死亡する。

本来、男性用と女性用があり、二つセットで使用していたが、レベル調整と様々な問題から廃止された禁忌の秘薬。
(ぶちゃけ、メルフェイスを独占と、ウィルのチートについていける様に作った秘薬)
序にもう一人、ウィル以外のモノに騙され、飲む嵌めになる女子がいる。


  【復活小判】

死ぬ程の重傷を1割~5割程度ランダムで回復されるアイテム。
自動使用される時『大丈夫、私が身代わりになってやる』と小判が喋る。
ミリーの場合、爆弾で破壊された臓器が延命できる範囲まで修復復元される。
闘神2から流用で、未来からシィルの形見の指輪に99個入っていた。
現在の世界では生産されてない、数年後に発売されるハピネス製薬の一品。

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