ランスの孫。ウィルの忘却編   作:神崎風水

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4話 城内捜索

 

―酒場【ぱとらっしゅ】―

 

 

カウンターには、ゴロッチの入ったグラスを手に酒を飲むランスがいる。

その椅子の横に【めでうさの盾】を置き、椅子に座り酒を頼む。

 

「ほれ、忘れ物だ。ミリーは傷痕も無く、完治させたからな」

「ふん……そうか」

 

ウィルの言葉に、顔も見ずに答えるランス。

ぶっきらぼうに答えているが、雰囲気が多少安堵したようにも見える。

 

「女を襲うのを止めろとは言わん。だが、襲ったらどうなるか、少し考えろよ」

「言われんでも分かってる。次からは失敗せん」

(いや、娘を襲うのは止めろよ……大丈夫か? こいつ等の頭は……恩人じゃなければ、追い出してるぞ)

(私は、ランスさんになら。何時でも、バッチコイ! なのに……結婚してくれたら、尚更……ポッ♪)

 

二人のやり取りに、酒場のオヤジが心の中で突っ込みを入れる。

パルプテンクスはランスに惚れてるようで、寧ろ喜んで状態。

準備してある婚姻届を、どうやってサインさせようか考えていたりする。

 

少しゆっくりした後、二人は手形を持って城内に乗り込んだ。

 

 

―コロシアム―

 

 

「ふぁ~……ずっと見てたが。戦ってる連中は、ドイツもコイツも、たいした事ない奴等ばかりだ……つまらん」

 

闘技場の観客席最後尾でアカメフルトを片手に頬張り、ピンクウニューンを飲みながら一時間ほど観戦していた。

城内に入ると、ウィルが先にコロシアムに用があると言い、売店で飲食物を買い渡し何処かに消えていった。

どうでも良かったのだが、有名なリーザスコロシアムの実力を見たい気持ちも有ったので素直に従っていた。

そこに、背後から女のカンシャクが聞こえてくる、

 

「ああ、もう! がっかりだわ! 折角パラパラ杯前の調整にと思ったのに、相手が弱すぎる!」

 

背後の柱にもたれ掛かり、腕を組み黄金の鎧に身を付けた女戦士が大声でぼやいてる。

まるで、周りの男達を馬鹿にするような言いよう。

 

「はぁ、最近の男はだらしないわ。闘っても……ねぇ」

「カチンッ……貴様、女の癖に生意気だぞ。男を舐めるな!」

 

本当に残念そうにため息をつき、男を馬鹿にする女戦士。

先ほどランスも同じ事を思って居たが、女に男全てや自分を馬鹿にされた様で腹が立つ。

席を立ち柱にいる女戦士の元へ移動し、生意気だと食って掛かる。

 

「あら、それじゃあ、貴方なら私に勝てるって言うの? クス、随分と信満々なのね……どう? 明日のパラパラ杯で勝負しない?」

「ふん! 上等だ!……パラパラ杯?」

 

女戦士の挑発にのってランスは答える。

しかし、リーザスパラパラ杯の事を知らず首を傾げる。

すると、小馬鹿にしたように女は笑い出す。

 

「あははは! コロシアムに居て知らないの? 年に一度の大会よ。もっとも、参加資格が、得れればだけどねぇ~」

「むかむか!……いいだろう、やってやる! どうすれば参加できる!」

「ああ、ランス。お前は既に、参加資格の品を持ってるぞ」

「ん? なんだと?」

「あら? 貴方は……確か……」

 

無知なランスを笑い、パラパラ杯は年に一度だけに参加資格が普段と違い、簡単に参加出来ないと馬鹿にする。

馬鹿にされて、怒りをあらわにして参加方法を問いただすと二人の会話に横槍が入り込む。

女は参加資格と言うのに対し、ウィルは既に参加資格の”品”を持ってるという。

ランスは声の主もそうだが、何故知ってるのかと疑問に思う。

女は振り向いた先に居る男を見ると見覚えがあったらしく、懐から明日の途中参加者プロフィール用紙を捲る。

 

「俺がお前に、一個100Gで持たせたモノ。モンスターの一部、7品が参加資格だ」

「おお! アレか! 役に立つからって採取させやがって……ん? 何で知ってるんだ?」

「ああ、やっぱり。どっかで見たことあると思ったら、ネイル・アート……ほんとに、保健医? 確かに、優男に見えるけど」

 

ウィルが語るのは、洞窟や街道で倒したモンスターの一部を採取させて持ち帰らせたこと。

ミスコーンの角、フィシャースネークの尻尾、ピクシー・フォックスの牙、フィールド・リンクスの爪、ブルー・ハニーの体の一部何処でも、マジック・スコルピオの髪、イモムシDXの触手。

それらの7品をランスは金を貰い、ほくほくとアイテム袋に入れてあるのだ。

そこで浮ぶ参加資格を知ってた疑問に、女が答える。

リーザスでの偽名と職業に写真付き、パラパラ杯の中間報告登録用紙を此方に見せながら。

 

「そう、俺も参加するのさ。チャンピオン、ユラン・ミラージュ」

「なに! コイツが、此処のチャンピオンだと!?」

「クスクス、知ってるのね。サインでも、欲しいのかしら?」

 

ウィルの言葉にランスが驚き、ユランはご機嫌になりチャンピオンの余裕を見せる。

 

「ふっ、いいや。井の中の蛙のサインなんて……不要さ」

「なんで、すって?」

 

しかし、鼻で笑い、ユランを馬鹿にして手を振ってサインを断る。

その言葉にチャンピオンフェイスが崩れ、周りのファンや観客の視線も忘れ笑顔が消えて怒りをあらわにする。

更に追い討ちをかけて、何故蛙なのかヒントを教える。

 

「貴女はココでは強い。だが、一体一のココでの戦いに慣れすぎている。技は見事だが、その力に頼りすぎている。ランスには敗れるのは必須だ」

「はんっ! 面白い挑発だねぇ……この私が、負けるって?」

 

ウィルの言葉の意味を理解せず、ただの挑発と取ったユラン。

 

「がははは! 当然、俺様が勝ー、つ! 勝ったら俺の女になれ。男ってモノを教えてやるわ!」

「面白い事言うわね……もしも勝てたら、アンタの女でも、何でもなってやるわよ。好きにしていいよ」

「よし! その言葉忘れるなよ!」

 

ランスの要求を簡単に呑み、好きにしていいと言って手の平を上に手招きして挑発する。

そんな挑発を気にもせず、勝つ事を前提で喜び、約束を確立させる。

つまらない観戦から美人の女とやれる約束を取り付け、ランスはご機嫌にその場を後にする。

 

大会参の加資格の7品を渡すために、受け付けへとやって来た。

 

「シュリさーん!」

「はいはい、ただいまー……あ、ネイルさん♪ 何か、御用ですか?」

「お、可愛いじゃないか」

「まあ! ありがとうございます」

(ふむ、シュリさんは処女か……そういえば、パニィにも『可愛い』と言ってたな、ふぅむ)

 

シュリを呼ぶと中から返事をして受付嬢が現れる。

ウィルを見た瞬間に微笑み、ランスの褒め言葉に手を頬に当てて喜ぶシュリ。

緑のショートヘアに白と青を主体にした服を着て、ミニスカートが似合った女性。

名をシュリ・セイハジュウ・ナガザキと言い、コロシアム受付定番の女の子だ。

二人のやり取りを見つつ、シュリと売店で会ったパニィの事をどうやって手出しをしようかと画策する。

一旦、ソッチの思案する考えを一時止め、本来の目的に戻る。

 

「パラパラ杯の参加受付、まだやってる?」

「えーと、ですね……はい、まだOKですよ。そちらの方が?」

「うむ、俺様が参加してやる。感謝しろよ」

 

ウィルの質問に用紙をパラパラめくり、参加可能を確認する。

ランスの我が物顔な反応に一瞬フリーズし、いつもどおりに受付対応をする。

長いこと受付嬢をして名声と金目当てで色々来るが、ここまで偉そうなのは初めてだったようだ。

 

「……えーと、何時もこうなのですか? では、予選の課題について、説明よろしいですか?」

「がはははは! 不要だ!」

 

シュリの言葉に大笑いしてドン と、参加資格の7品を受け付けの机に乗せる。

 

「これはこれは……えっと、ネイルさんが、手伝ってませんよね?」

「ええ、倒した後に、部位を採取するようにと。モンスターの種類と部位の場所を、指示しただけですので」

「当然だ。俺様がそんなズルをするか!」

 

説明前に部位品を出すので、流石に疑いの目をウィルに向ける。

ウィルはネイル好成年モードで話を進め、ランスが不正はないと断言する。

 

大会ルール説明を受けた後、参加用紙に名前・職業・趣味等軽いプロフィールを書いて写真を撮る。

受付を後にしてコロシアムを出たところで、ウィルが何をしてたのか問いただす。

 

「ああ、通行手形を闘技場で、熱狂してる貴族から盗んで来た。コレで酒場のオヤジに返せるし、他の子達にも渡せる」

「貴様、そんなことしてたのか。まあいい。ホレ、交換だ……つか、貴様どうやって参加資格を取りに此処に入った?」

 

ウィルは手に持った7個の手形を見せて、何をしてきたか語る。

呆れるランスも、昨日の話を思い出し、持ってた手形を取り出し交換する。

別に入城できれば手形は何でもいい、酒場のオヤジの記念手形に興味はかったからだ。

そして、手形がないのに、どうやって入城したのかと問う。

 

「生徒の親御さんに、観戦好きなのがいてな。お願いして入れてもらい、7品を納めた」

「なるほど、準備いいな……後、さっきのシュリさんとの口調、キモイぞ」

「……うるさい」

 

参加資格は意外と公表されており、外から情報屋で品を調べた事。

学園のコネを使い来たことを説明し、納得したランスは好成年モードを気味悪がる。

見た目を重視した言葉使いは、初見の女性には受けが良い。

ただ、元のウィルの言葉使いや性格とうを知るものにとっては、呆れるものである。

理解してても、ランスに変と言われ不機嫌になった。

 

 

―リーザス城内―

 

 

本来は城内にある娯楽施設、コロシアムやカジノを聞きまわり情報を入手するのが基本。

しかし、既に情報屋で聞いて手に入る情報を仕入れており、それをランスに伝え既に城内に入り込んでいた。

 

「貴様は……本当に何でも、金で済ませるな……」

「ん? 殺すより足が付かず、簡単でいいだろう?」

「まあな。町や街道なら関係ないが、城内での騒ぎは不味い」

 

先ほどの見張り番に見学したいからと、金を渡し入城を果たした事を思い返す。

城の見張りとはいえ給金がいい訳ではなく、最初は渋ったが1000Gとなると簡単に通してくれた。

ウィルの言葉にランスも納得する、城内での殺傷事件は動きがとれなくなり、捕まる可能性大だから。

そして、最初の左右の分かれ道に着いた。

 

「どっちがいい?」

「うーん……俺様は左だ! 女の子との出会いの予感がする!」

「なら、俺は右だ。手分けした方が早い。なるべく見回り兵士に見つかるな。後でココで落ち合おう」

「がははは、誰にもの言ってる。大丈夫だ。ソッチこそドジるなよ」

 

左右の道をウィルに問いかけられ、額に指を当て考え込むてランス。

メイドの多い方を勘で当てて、左の道を進む。

分かれたウィルも右の道を少し進むと、立ち止まり能力を使いビジョンを見てみた。

 

(……ふむ、ほんとにメイド達とヤルみたいだな……相変わらず、女絡みの勘は凄いな)

 

ランスの行動映像を先読みで見ると、面白い具合に事が進んでいる。

掃除をしているメイドを犯して、城の鍵を手に入れる。

パンの倉庫で盗みをしているメイドを犯し、牢屋の鍵とユランの弱点と対処方法を手に入れている。

序に、倉庫で魔法薬の黒い液体の入ったビンを見つけている映像も見た。

其れなりに時間を掛かるようで、自分も久しぶりに会う彼女との会話を楽しみに向った。

 

 

―客間、美樹の部屋―

 

 

ウィルが部屋に入ると、一人の女の子が机に頬杖を付いて暇そうにしていた。

 

「誰? 健太……あ! ウィル、お兄ちゃん!」

「よぉ、美樹ちゃん。久し、ぐふッ!?……つっー!」

 

女の子は入室した相手を誰かと勘違いしてたようだが、振り返りウィル見ると飛び込み抱きついてきた。

左手を挙げ美樹の名を呼び、久しぶりの挨拶をしようとする。

しかし、飛びつきという名の強烈な体当たりを食らい、美樹を抱き受け止めながらズズズズッ と後退する。

小柄なわりに力があり、ウィルじゃなければ大怪我してただろう一撃だ。

 

美樹と呼ばれた少女は来水美樹と言い、ウィルと同じ長いピンク髪と青い瞳の色を持つ美少女。

一年前、ヘルマンでゴロツキに絡まれてたところを助け、食事をおごり仲良くなった。

その後、極寒の地に似合わない薄着に、旅をしてるのに準備が疎かで一緒に店を回ってあげた。

その際に下着・防寒着・回復道具・携帯食料・水等を出会いの記念にとプレゼントした。

二人で回った先で、見た目が似てる事から「仲の言い、兄妹だね~♪」と、おばちゃん、おじさんに言われて美樹もその気になった。

助けてくれて優しく、気前が良く色々親切にしてくれるので直ぐに気を許した美樹。

初めて会ったのに、何故か会った事があるような懐かしい、自分に似たような気配もしたので気を許したのだ。

 

その後、ヘルマンから此処まで旅をしてきた事。

リーザスで、しばらく前から此処に世話になってる事、経由をウィルに楽しそうに話した。

そろそろランスが来る頃なので、その前に贈り物を取り出す。

 

「美樹ちゃん。コレ、必要だよな?」

「ほぇ? あっ、ヒララレモン! お兄ちゃん、ありがとう~♪ 先日食べ終わって買いに行ったら。一個、200Gもしたの。サーサン山なら、自由に取れたのに……」

「それは、良かった。全部買い占めたからな。再仕入れは大分後になるそうだ」

「うん、判った♪ ほんとに何から何まで、ありがとう~♪」

 

道具屋で買い占めた7個中、6個を入れた袋を机の上に置く。

何だろうと? 受け取った袋を覗き込み、美樹にとって重要な果実を見て大喜びする。

食べたばかりで時間に余裕はあるが、なかなかの価格に手をこまねいていたらしい。

 

既に、ヘルマンの時にポロッ と「魔王になりたくないな~」と洩らした美樹。

普通は疑ったり怯えたりするが、ウィルは態度を変えず「大変だな、力になろう」と逆に相談に乗ってくれたのだ。

また、二人楽しく話してると、扉を開けてランスが入ってきた。

 

「この部屋に……む? 何故、貴様が此処にいる?」

「ウィルお兄ちゃん。このおじさんだれ?」

「ああ、コイツは「誰がおじさんだ、ゴラ!」ランスと言って、弟みたいなものだ」

「そうなの? よろしく、ランスお兄ちゃん」

「誰が弟だ! ちがうわぁ!」

 

ある物を取るという用件があり、この部屋に来たランス。

美樹の「おじさん」発言にウィルが答え、割り込み怒鳴るランス。

美樹に信用してもらう為にウィルが弟と言い、急にお兄ちゃんと呼ぶ。

しかし、今度は弟呼ばわりに否定して切れる。

 

ランスがこの部屋に来た理由は知ってるが、それを言うのは不味い。

それに、身をもって一度知ってもらわねば、今後ウィルの感知しきれない所で間違い起こすと後で困る。

ランスが失敗するのを待ち、様子を伺う。

 

「まあいい。知り合いの子なら、大丈夫だろう。君のパンティー! 俺様に寄こ「きゃー!」ぐわあぁ!!」

「ぐぅっ!……(流石、未覚醒と言えど、元祖魔王の風。たいした威力だ)」

 

知り合いなら多少無茶しても大丈夫と多寡をくくり、美樹のスカートをめくりパンツに手を掛けようとした。

女の子にそんな事をすれば当然嫌がるもの、ただ相手が悪くランスは魔力の突風に吹き飛ばされ外に追い出された。

ウィルはこうなる事を予想し、魔力を高め防御する。

自分も使えるだけに対処方法はわかるが、LV0とLV1では威力が違い何とか耐える。

ここで嫌われては後で困ると美樹にフォローを入れる。

 

「美樹ちゃん、ごめんな。あんまりに可愛い美少女だから、ツイ苛めたくなる男の子心なんだ。小学校でも、あったろ?」

「うぅ~……むぅ~……ウィルお兄ちゃんが言うなら……学校? うん、何回かあったよ」

「まあ、落ち着いて。ちょっと、叱ってくるから。後で、また来るよ」

「うん、ばいば~い♪」

 

ランスを吹き飛ばした方を涙目に睨んでる美樹に対し、可愛いと褒め、学校をお題に男子心と解く。

拗ねた子供の様に唸ってた美樹だが、ウィルに言われて何とか納得する。

体裁をつくろい、また後で来ると約束して、美樹に見送られて部屋をでて行った。

 

廊下に出ると、壁にめり込むランスが居た。

 

「ヒーリング……大丈夫か?」

「――ぐっ、うぐぐぐ……いってー! 何者だ? あの子。死ぬかと思ったぞ」

 

ウィルが回復をしながら声をかけると、軽く意識を失ってたランスが目を覚ます。

大分回復してくると意識がハッキリして、急に痛がると同時に壁から抜け出し飛び降りる。

背筋が凍るような恐怖がランスを襲い、本気で死ぬイメージすら脳裏に写ったようだ。

外傷は見当たらないが、内面的に体力が落ちたのを感じるランス。

素直に、ヒーリングを受け完治するまで大人しくしていた。

 

「まあ、ちょっと魔力が高い女の子だ。もう、襲ったりするなよ? あの子が本気になると……死ぬぞ」

「うっ、わ、分かった……あの恐怖は……本物だった。二度としない」

 

何者と言う質問をはぐらかし、いずれは魔王と分かるのだが今は知る時ではない。

ヘタにHな手出ししないように、真剣な表情と本気の目で忠告する。

ウィルの雰囲気と先ほど感じた、身が砕け散る程の明確な死のイメージ。

二つが重なり、流石のランスも襲わないと約束する。

そして、何故あんな事をしたのか問いかける。

 

「で、パンティなんか、どうしようとしたんだ? あの子はまだ14才だぞ?」

「ちっ、14か。いや、この魔法薬の呪文を知るためにだな……」

 

 

14才聞いて、射程外と舌打ちする。

倉庫で見つけた黒い液体が入ったビンを見せて説明する。

変態ネズミに効力を発動する呪文を聞くのに、向いの部屋にいる美樹のパンティを持って来いといわれた事。

それを聞いたウィルは即時答える。

 

「何だ、そんな事か。んじゃ、会って聞けばいい」

「はぁ? いや、殺したら元も子も無いぞ。ネズミだからすばしっこい、殺すのは簡単だが」

「ははは、所詮脳が小さいネズミ。まあ、任せろ」

 

ウィルの言葉に、ランスが困ったように答える。

人間相手には脅せばすむが、ネズミは脅しても無駄で、すばしっこく逃げる。

殺すのは簡単だが、捕まえ白状させるのは厳しいと語る。

しかし、ウィルは軽く笑い、ねず公ごとき相手ではないと言って胸を叩く。

 

隣の部屋に行きネズミに会うと。

 

「お、美樹ちゃんのパンティ持ってきたか? てか、あんちゃん誰だ?」

「気にするな。いや、この魔法薬の呪文なんだが、どういうものだ?」

「ん? それは、パンティ持って来てからだ」

「…………ふむ、どんな効果が有るのか、分かるか?」

「あんちゃん、しつこいな。だから持って来いよ、美樹ちゃんのパンティー!」

 

ランスの顔を見ると、変態ネズミがパンティを出せと請求する。

しかし、ウィルが変わりに答え、魔法薬の質問を繰り返す。

 

「…………なるほど。『鬼畜王』体力 『大日本帝国』魔力 『ぷろすちゅーでんと』一時魔力大幅増強に、コレクション300枚を城のメイド主流か……流石、変態ネズミ」

「!?*+¥#$!? ななな、なんでちゅーとぉー! ぶぎゃ!」

「……おい、どうやったんだ?」

 

質問を終えたウィル。

魔法薬の呪文と効果は勿論、300枚の下着隠し場所と出所までも言い当てる。

秘密を全て言い当てられ驚き、ねずみ語? を口走り、人語を叫ぶと同時に殴り飛ばされ、壁にぶつかり肉片と化した。

妹分美樹の下着を盗もうとした事や、盗んだ下着の中に知り合いのが混ざっており、生かしておくと危険と判断し木っ端微塵にした。

呪文の解読に対し流石に驚いた表情のランス、カラクリを問いかける。

黒色の液体魔法薬をランスに手渡し、説明する。

 

「何、リーダーで心を読んだだけだ。質問を繰り返せば、言われて表面意識に出て考えるだろ?」

「ぬぅ……くそ! 思いつかなかった」

 

リーダーの使用で簡単に読めたと説明され、ランスは悔しそうに足を地団駄する。

 

「ま、いいじゃないか。飲んだら『大日本帝国』と、言った方が良いと思うぞ?」

「む? 何故、それなんだ?」

 

ウィルは言えではなく、言った方がいいと選択肢を決めて言う。

命令口調ではないので、選んだ理由を聞いてくる。

 

「何、魔法封印してるのは、魔力量の少なさだろ? 確か今は雷の矢を5発か? 10発位打てるようになるらしい」

「むぅ、体力とかはいいのか?」

「いや、お前は頑丈で戦士だ。使える手札増やしに、丁度いいと思ってな」

「ふん、分かった。それにしてやる」

 

ウィルの魔力説明に納得したのか、素直に薬を飲んで『大日本帝国』と言った。

 

過去に魔法の指導を受けて、ライトニングレーザーまで打てる様になったランス。

しかし、レベルが低いのもあったが魔力量が少ない為に1、2発しか撃てず役に立たなかった。

しかも、1発でも撃つと疲労が多く、剣での戦いに影響が出た。

かといって、初級魔法では心もとない。

結局、扱いやすく威力や慣れてる剣で戦うようにした。

ただ、初級魔法を戦闘以外には使ってるが、それ以外封印状態だったのだ。

 

 

―牢屋―

 

 

牢屋の鍵を手に入れたランスに自慢されつつ、牢屋の前に来た二人。

緑髪のお下げにピンクの水着に、肩宛と篭手のみの薄着な牢番。

しかし、見事に牢番の水着女は寝ており、スルーして目的の牢屋に着いた。

 

牢屋にいた女性はヒカリより年上で、学園の生徒ではなかった。

牢屋に閉じ込められ、右足を拘束具と鎖でつながれた女の子。

青いストレートな長髪を腰まで伸ばし、上着とスカートを着てるが下着を着けてない。

全身に鞭で叩かれたような傷跡があり、ウィルが持つろうそくの火に眩しそうに右目を閉じる。

 

「む、ヒカリちゃんじゃなかったか……だが、可愛いな、グットだ!」

「な、に? 可愛いだと? 美人や美女じゃないのか?」

「……?……」

「む? ああ、可愛いぞ」

 

ランスが女性を見て「可愛い」と褒める。

しかし、ウィルがソレを聞いてギョッ と、驚きの顔をして美女でないかと問いかける。

一方、女性は衰弱して元気がなく、虚ろな瞳で二人のやり取りをぼーっと見ていた。

すると、ウィルは針金一本で牢屋の鍵を開け、中に入り込み【妃円の剣】を抜き上に掲げ、振り下ろし鎖を断ち切る。

 

「――ッ!?……何故?……」

「ん? 君が可愛いから助ける。それだけだ『ウォーターボール・キュア』」

「なにぃ!? 牢屋に掴ってるんだぞ! 何も聞かずに、そんなんでいいのか!」

「……?……ぁ……なに、これ……きもち、いぃ……」

 

鎖を断ち切られビクッ と体を振るわせ驚くも、ゆっくりとした動きでウィルを見つめ問いかける女性。

ウィルは簡単な理由「可愛いから(処女だから)」と助けると言い、水風呂魔法を使い治療と体を清める。

此処に来て、初めてではなかろうか? ランスが牢屋に掴ってる者を逃がしていいのかと正論を言ってきた。

ランスの言葉に「可愛い子は助けたい、それだけだ」といって、魔法制御に勤しんだ。

水球の中に閉じ込められても、もがく気配が無い女性。

体を洗われ、傷が癒えていくのを感じ、気持ち良さそうに目を瞑る。

 

傷が消え肌にツヤがでるが、長いこと日の光に当らなかった為か肌色が色白い。

治療が終わり、水風呂から抜けると、今度は背中のリュック(左腕の倉庫腕輪)からメイド服を出し手渡し着換えさせる。

次に、拘束具を針金で外して靴下と靴を履かせ、伊達メガネをかけさせる。

最後に、成れた手付きで女性の髪を後ろ手に縛り上げ髪をひっつめにした、掃除メイドと同じような団子にして髪飾りを付ける。

動く気力が無かった女性は、ウィルにあっという間に着換えと軽い変装をさせられた。

 

「俺はウィル・ライン。こっちはランス。君の名前は?」

「……ユキ……ユキ・デルです」

「……おい、いいのか? 鎖を斬って、侵入がばれるぞ? てか、最初から外せよ」

「ああ、ユキさんが自分で逃げたと思わせない為だ。侵入は今日の内に、調べ終えればいいだろ? 後、逃げるのに拘束具は目立つから邪魔だ」

 

ウィルの自己紹介に、少し瞳に力が宿ったユキが答える。

ランスは鎖を斬った不手際を指摘し、最初から拘束具を外せと突っ込む。

考えあっての行動で、ユキが鍵を外して自分で逃げた場合、捜索の目が城内や町に向いて動きづらいという。

他の侵入であれば、外にも目が行き捜索範囲が広がるという。

また、侵入にたいしては今日中に終わらせば良いと、さらっと言いのける。

 

「……あの、これをどうぞ……」

「ん? 【わら】か。ランス、コレ持ってメイドさん達に、会って来るといいぞ」

「はぁ? 【わら】なんか、どうするんだ?」

 

ユキの手を引き牢屋を出て行こうとする。

すると、持ち物が何もないが、せめてコレをと【わら】を差し出す。

ウィルは、先ほどビジョンで藁の流れを知ってるため、ランスに手渡しメイド巡りをしろと言う。

 

「わらしべ長者って話があってな。たぶん、良いモノがもらえるぞ?」

「本当だろうな。嘘だったら金を要求するぞ」

「何時もだろうが……」

 

JAPANの童話の話をして、この先に必要なモノが手に入ると言う。

ただのゴミをどうしろ、と言った感じに藁を見つめ、何もおきなければ金を寄越せとせびる。

 

その後、通路を歩き抜け、居眠り牢番の前を通り過ぎると。

 

「おいおい、マジか? まだ寝てるぞ……むむぅ、ヤリたいが、起きると面倒だからなぁ」

「ふぅん。『スリープ』1時間はOKだ。ただし、見つかりそうになったら逃げろよ」

 

水着居眠り門番の女の子は膝を立てて、うつ伏せになり両腕を左右に開いて寝ている。

門番の後ろに回り込み、ランスは持ち上がってるお尻を見て、指で顎を擦りながら残念がる。

すると、ウィルが手をかざし【スリープ】を水着の女の子に掛け、好きに出来ようにする。

 

「お! ナイスだ。ぐふふふ、どーれ、どれぇ~……」

「……いいんですか?……酷いよう、な……」

 

グッショブとウィルに向けて親指を立て、早速水着パンツを脱がし指で弄り出す。

そのやり取りを見て、ユキが不憫に思い口ごもると。

 

「この子は、ユキさんに何かしてくれたか? 話を聞いてくれたか?」

「ッ!……いえ、犯罪者、と……無実と言っても……信じて、くれません、でした……」

「なら、因果応報だろう。気にするな」

 

ウィルが目の前で眠らされ、ランスに犯される女の子が、ユキにどういった態度を取ったかと問いかける。

言われて思いだす悲しく、苦しい出来事の数々。

目の前の子や、男の守衛に食事を運んできた者達。

皆、無実を主張しても信じてもらえず、寧ろそれを王女に告げ口されて、一層酷い目にあった事を震えながら思いだす。

ウィルが因果応報というが、これは間違いだ。

サボった【オシオキ】とかなら当てはまるが、目の前の子は言われたまま仕事をしてるだけ。

普段も寝てる所を叱られたり、男の守衛に犯されているが、ランスに犯される理由にはならないだろう。

 

 

―城の入り口付近―

 

 

あの後、メイド姿のメガネを掛けたユキとウィルは、城の入り口で見張りの守衛と挨拶を交わす。

ただし、守衛に「又来るから、よろしく」と言って300Gを握らせその場を離れた。

そして、今は門近くの道から外れた木影に移動して、リュックからパリス学園学生服を手渡す。

 

「……あの……ここで、着替える?……」

「そうだ。あ~……着替え方、わからんか? んじゃ、俺が、もう一回やってやる」

「ッ!……い、いえ、自分で……きゃ……あ~れ~……」

 

制服を受け取り目線を落とし、次に周りを見回す。

確かに木の影になり見え難いが、牢屋と違い他者に見られるかもいれないと恥ずかしがる。

ウィルは何となくユキの言わんとする事を理解するが、覚悟を待つ時間もないので問答無用に服を脱がせにかかる。

 

ウィルの「もう一度」という、その言葉にユキが思い出すのは牢屋での出来ごと。

水風呂で清められ治療されて体は元気になったが、ユキの絶望した心の傷は完全に癒えなかった。

他人に王女の事を言えば、酷い目にあう。

助けを求めても誰も手を差し伸べてくれない、犯罪者扱いされ続けた。

鎖を斬って助けてくれたが、信じていいのかと悩んでいる間に裸にひん剥かれ、下着とメイド服を男性に着せられた。

思考が上手く回らない間の出来事だったが、今思い出すと恥ずかしい事この上ない。

一歩さがり自分で着替えようと思うが、なかなか着替える気配がなかったのでウィル迫る。

逃げようとするのを捕まえ、メイド服を脱がされる。

軽く悲鳴を上げると、あっ と、言う間に制服を着せられ、髪を三つ網ツインテールにされた。

 

「……ぅぅ……ひどぃ……あっ!」

「わりぃけどな。時間ねぇんだ。とっとと、目的地に行くぞ」

 

地べたに座り込み涙は流してないが、半泣き状態のユキをお姫様抱っこする。

まだこの後、カジノや美樹の部屋で二人と会わなければ成らないウィル。

ユキの感情表現を失いかけ眠っていたのが、呼び起こされつつあったのを喜びつつ、情報屋へと向った。

 

 

―情報屋―

 

 

情報屋では、何時もの様に菓子を口に加え、キーボードを打ち情報を引き出し操作をしているドロシー。

来店者に挨拶をしようと顔を向けると、自分の男が女生徒をお姫様抱っこで連れ込んできた。

 

「いらっし……!! いい度胸ね、ウィル……生徒を連れ込んで、ホテル代わり?」

「は? いや、彼女は違うぞ。落ち着け、ドロシー!」

「……?……」

 

ドロシーの言葉に、一瞬何の事かと首を傾げるが、慌てて説明しようとする。

ユキはウィルの腕の中で、何を話してるのだろうと大人しくしている。

額に # を浮かべ、手元に有ったジュース瓶を手に持ち、ウィル向って投げつける。

 

「問答無用!!」

「いづっ!……いつつ」

「……大丈夫です?……」

 

ユキを抱かかえてる為、飛んでくる瓶を避ける事が出来ず。

額に当り痛がるウィルに、ユキが見上げながら声を掛ける。

まだ、恥ずかしいと思っても、痛そうと思っても上手く感情が表せないようだ。

本来は首を横に上体を少しずらせば瓶程度は避けれるのだが、基本ウィルは女の八つ当たりやオシオキはその身に受ける。

幼い時に祖母や姉達に教育とオシオキが懐かしいと言うのと、こういうカンシャクの行動は受け止めた方が後で楽だから。

ユキを降ろし立たせ、メガネと三つ網を取り解き、顔を見せて説明する。

 

「――さ、さいしょから、言ってよ」

「いや、聞く耳無かったぞ? いいからほれ、地下室に案内してくれ」

「……?……」

 

ユキの顔を見ると、ドロシーは情報に有ったパン屋の時に取られた写真を思い出し、バツ悪そうに言って頬をかく。

先ほどまで赤く腫れてた額は、ヒーリングで治しさして気にた様子もなく、地下室を求める。

相変わらず感情表現が苦手なユキは、話が見えないので会話に参加しない。

その後、自己紹介を終えたドロシーは、ウィルとユキを連れて地下室に向う。

地下シェルターにもなる地下室は食料や水は勿論、トイレやシャワーも完備されている。

 

「ねえ、彼女。あまり、喋らないのね? もしかして、王女の所為で?」

「そうだろうな、仕方ないだろ? 酷い目に遭ってるんだからな」

「! あ、彼方達は、知ってるの?……わ、私に言わせて、くれなかったけれど……」

 

ウィルとドロシー会話の中で、言わせてもらっていない王女の名を出すので驚くユキ。

此処に来てやっと理解した、牢屋で王女名を出し忠告しようとした時の事を。

逃がそうとしてくれるウィルとランスに忠告するべく王女の名を出そうとした時に、ウィルにファーストキスを奪われ口を閉ざされた。

結局、牢屋に居る理由も、誰に傷付けられかも何も聞かない、言わせないまま此処まで連れてこられたユキ。

ウィルが既に知ってた事に気付く。

 

「彼女は天才な情報屋でな。ユキさんの事は、彼女から聞いた」

「そっ、私は天才! 情報屋よ。(よく言う。知ってても、今日まで放置してたくせに……)貴女は、しばらく此処で、隠れてなさいな。三日位で自由に出られるから」

「うっ、うぅ……ありがとう、ございます……」

 

ウィルはドロシーの情報網と言い、ドロシーがソレに答える。

此処に来て、やっと涙を流し喜ぶユキ。

 

ドロシーは内心ではウィルがランスと共に行く、今日この時まで恩を売るために放置してた事思う。

ドロシーも、そうだったのだから……ただ、他者がソノ事を知っても動くかと言えば、否。

大抵の者は自分の身が、自身の命が第一で、命を掛けて助ける事はまず無い。

相手は王族なのだから、黒と言えば黒に白と言えば白になるのが権力。

ドロシーの場合は組織が相手で、ドロシー独りでは太刀打ちできなかったのだから。

 

「三日間、我慢してくれ。必ず連れ出す」

「はい、大丈夫です。此処には……灯りや色々なものがありますから……」

 

ウィルの言葉に、牢屋よりも確実にマシだと答えるユキ。

飲食にベットや日時や時間がわかり、灯りが有るのは安心できる。

まだ、笑う事はできながユキは嬉しそうに見える。

 

「何かあったら、ソコのボタン押してね。状況見て来るから」

「あ、はい……ありが、とう」

 

ドロシーがボタンの説明をしながら水の入ったコップを手渡す。

言葉にユキが答えお礼を言い、水を飲み干すと、眠気が襲いベットに横になる。

すると、柔らかいベットと安心感からか、直ぐに目を閉じ寝息を立てて眠りにつく。

 

「寝た、わね。上に行くわよ……次は、アキちゃん?」

「ああ、その前に美樹ちゃんに会って、彼と彼女に会わないとな」

「ほんと、恐ろしく凄い相手に会ってるのね……彼女は魔王よ? それに、彼はいいけど、彼女は伝説の人。はぁ~……頭痛いわ」

「期待してるぞ、ドロシー。これからもな」

「ん♪ ええ、出来る限りね……」

 

ユキの寝顔を見ながらドロシー達は部屋を出る。

ユキの妹、アキを直ぐに連れて来るの言葉に、先に会うべき3人がいると語る。

美樹の名を聞き、残りの二人についてため息を漏らし、額に手を当てるドロシー。

階段を登りながら、ドロシーの肩に手を置き抱き寄せキスをする。

その後、時間を惜しむウィルは情報屋を後に、再度リーザス城に潜り込む。

 

 

―アキ・デル、サイド―

 

 

私の名前はアキ・デル。

私達姉妹は、城下町でパン屋をしていました。

けれどある日、突然リーザスの兵が店にやって来て私を拘束しました。

王女暗殺未遂を企てたと、身に覚えが無い事でしたが、私の言葉に聞く耳を持たない兵士達に牢屋へ投獄されました。

牢屋に入る前、聞かれる事も調べる事もなく服をと下着も脱がされ、汚い上着とスカートを男の守衛にされました。

その夜、王女様がやってきて私を鞭で何度も、何度も、何度も、何度も……悲鳴を上げる私を楽しむ様に気絶するまで打ち続けました。

痛みに耐えながら、牢番や食事の配給係り、たまに来る守衛の人に無実を訴えても、皆に跳ね除けられました。

そして、私の言った事は全て王女様に筒抜けで、その度に鞭以外に拷問に近い仕打ちを受けました。

そんな日々が毎日続き、一体今が何時で、何日たったかも分かりません。

ただ、ある日。

私を無実で捕まえた理由を知る事はできました。

 

「アハハハハ。そうね、もう、教えてもいいかしら? 貴女が私に似た顔や髪をして。楽しそうに笑って、パン屋をしてたのがイライラしたのよ!」

「!?……そ、そんな! そんな理由で、私を……こんな目に……!? 貴女は!」

「アハハハハ! 良い目ね。そうよ、そうでなくちゃ。私が貴女を、気にいらないんだから。こうなって当然よ!」

 

頭が真っ白になる思いでした。

本当に、本当にくだらない理由で、何も悪い事もしてないのに。

似てると言う理由で、パン屋で働いてた事が気に入らないなんて、どうすればいいと言うのでしょうか。

そして、その時怒りで食って掛かりましたが、抵抗虚しく打ちのめされました。

次の日には、私は全てを諦めてしまいました。

王族の権力の元、王女の些細な理由で、こんなことが許されるのですから。

私は生きる事も、死ぬ事も出来ず、ただ、流されるままになっていました。

毎日まずい食事を食べ、痛めつけられ、寝て、喋る事すら忘れ……。

 

 

そんな、ある日。

あの人が来たのです。

 

 

通路から話し声と灯りが向って来ました。

何の関心も無い私に灯りが向けられ、眩しく目を瞑りました。

茶色髪の男性と、ピンクの長い髪の男性。

私にとってそのくらいの認識しか、その時は持てませんでした。

 

「む、ヒカリちゃんじゃなかったか……だが、可愛いな、グットだ!」

「な、に? 可愛いだと? 美女じゃないのか?」

「……?……」

 

二人は私を誰かと勘違いしてるようで、可愛いと言われても、それが何の意味があるだろうと思ってました。

そして、牢屋の鍵を開け中に入って来たピンク髪の人が剣を抜きました。

ああ、私、殺されるんだ……そんな風にただ眺めて目を閉じ、その時が来るのを待ちました。

キン! という、金属音に思わず体が震えます。

目を開けると、鎖が断ち切られていて、どうしてこんな事をするのだろうと聞いてみました。

 

「ッ!?……何故?……」

「ん? 君が可愛いから助ける。それだけだ『ウォーターボール・キュア』」

「なにぃ!? 牢屋に掴ってるんだぞ! 何も聞かずに、そんなんでいいのか!」

 

ピンクの人は私が可愛いからと言い、私に手を向けて聞いた事無い魔法を唱え、私は球体の水に閉じ込められました。

何か、可愛いと言った時に妙なニュアンスでしたが、気にも成りません。

私にとって、どうでもいい事です。

何かもめてるようでしたが、水の中で妙な感覚が体を襲いました。

むずがゆいような、水に擦られて全身を洗われてるような感触。

それと同時に、傷の痛みが引いて治っていき、体のだるさが楽になる感覚も分かりました。

忘れていたお風呂の感触、どこか心も軽くなるような気さえします。

 

球体から出ると、あっと言う間についてるだけの上着とスカートを脱がされ、ブラを付けられ下着を履かされました。

少し気持ち良い余韻で「ほぅ」としてる間に、メイド服まで着せられました。

恥ずかしいと思う隙間も与えずに。

男性なのに、どうしてこんなに手馴れ上手なのだろうと、恥ずかしいよりそちらが気になりました。

髪を纏める手付きも上手く、髪型を変えられ伊達メガネまで掛けられると名前を名乗ってきます。

 

「俺はウィル・ライン。こっちはランス。君の名前は?」

「……ユキ。ユキ・デルです」

 

ウィルさんとランスさん対し久しぶりに喋り、名前を言う事が出来ました。

逃げないように固定していた、足の拘束具を針金一本で簡単に外すウィルさん。

助けてくれるのは、嬉しいと思えます。

けれど、相手が悪すぎます、逃げる事はできないのです。

逃げ出しても、直ぐに見つかり連れ戻される可能性があるからです。

逃げるために、色々してくれるのは嬉しいです。

けど、相手が誰で敵わなく迷惑しか掛からないと思い、私はここにいる理由と相手の名を口にしようとしました。

 

「……私は、濡れ衣を着せられ……投獄されてます。相手は、おうじ!? んっ! んぅ~!」

「貴様! 俺様が狙ってたのに、よくも!」

「んっ……大丈夫。ユキさんは、俺たちを信じて付いてこれば良い」

「んっ……はい……」

 

私は、ファーストキスを奪われました。

ランスさんが何か怒ってましたけど、耳に内容が入ってきません。

ウィルさんは口を離すと、私を見て話し手を差し出してくれました。

慣れたキスに翻弄されて、私は「はい」と答えるのがやっとで牢屋を出ました。

途中、ランスさんが何か、色々と文句を言ってましたが、ウィルさんは気にした様子もなく答えてました。

その時、少しおかしいと思える会話を覚えてます。

 

「貴様、鍵開けがそんなに得意なら。盗賊か泥棒でもやれよ」

「ふっ、盗賊は遠慮するが、泥棒はいいな……泥棒なら、ユキさんの心を盗む事が出来る」

「……あん? アホか、貴様は……」

 

私はウィルさんの言ってる意味が理解できませんでした。

けど、後の私なら分かるでしょうか?

そして、言えるでしょうか?「盗まれたい」と。

 

 

 

 

牢屋の通路を抜けて、牢番の水着姿の女の子をランスが犯そうとしてます。

先ほどウィルさんがスリープの魔法で深い眠りに付かせて。

人生を諦め、感情が無くなったと思ってましたけど、二人を酷い人達と思いました。

 

「お! ナイスだ。ぐふふふ、どーれ、どれぇ~」

「……いいんですか?……酷いよう、な……」

 

女の子の大切な部分を覗き込み、指で弄るランスさん。

可哀想と思う私の言葉に、ウィルさんが辛い記憶を呼び起こし、恐怖と憎しみを思い出させます。

 

「この子は、ユキさんに何かしてくれたか? 話を聞いてくれたか?」

「ッ!……いえ、犯罪者、と……無実と言っても……信じて、くれません、でした……」

「なら、因果応報だろう。気にするな」

 

ウィルさんの無慈悲な言葉。

けど、彼女達は助けてくれず、酷い目に遭った記憶を体が思い出し震え出します。

ウィルさんの言葉が合ってると思えません。

けど、その時はこれが当然だと思ってしまいました。

 

 

 

 

 

城門近くでは、没落前に一年だけ通った懐かしいパリス学園の制服を手渡されました。

 

「……あの……ここで、着替える?……」

 

けれど、木の影になるとはいっても、外で着換えは恥ずかしいです。

迷っている間に、またメイド服を脱がされ、制服を着替えさせられました。

牢屋でも思ったのですけど、手馴れてるのもありますが、それより女として見られて無いのでしょうか?

着せ替え人形のように髪を三つ網にしたり手際よすぎます。

そうかと思えば、抱き抱えらえずんずんと城門に連れて行かれました。

 

「……ふぅ……」

「おい、その娘どうしたんだ?」

 

門を潜る最中に水色髪の門番兵の女性は、兵士らしい口調で抱き抱えられた私に目を向けてきます。

実は、牢屋に投獄されて動かなかったので、久しぶりに歩いて疲れてしまいため息が出て、疲れた様子が顔に出てた見たいです。

それを、制服を着せて学園の保健医の偽名を使いやり過ごすようです。

 

「私はネイル・アート。パリス学園の保健医です。彼女がコロシアムを見てる最中体調を崩してしまい、診療所に連れて行くところです」

「! それはいけなじゃない! 早く連れて行ってあげないと」

「ええ。では、失礼します」

 

体調が悪いと分かると、女性門番兵士は口調が素に戻り心配してくれます。

投獄されてた時は、他の女性兵士にも心配すらされませんでした。

やっぱり、初見の見た目は大事だと実感させられます。

 

 

 

 

情報屋では、ウィルさんが額にビンを当てられてました。

どうやら情報屋の彼女は誤解してたようです。

その時「ああ、やっぱり、彼女は居るんだ」と思うと同時に、胸が少し痛む感じがしました。

 

その後、案内された地下室で驚く事実を知ります。

 

「ねえ、彼女。あまり、喋らないのね? もしかして、王女の所為で?」

「そうだろうな、仕方ないだろ。酷い目に遭ってるんだからな」

 

ウィルさんとドロシーさんの会話には、衝撃を受ける内容です。

私が何故・誰に・何を・されていたのかを事細かくドロシーさんが語ります。

だた、説明序に熱く語るウンチク。

世界特有の生機融合機械やら分かりません。

愛称が【マリオット】と言い、コンピュータの情報は凄いんだな~と、関心するくらいです。

 

「うっ、うぅ……ありがとう、ございます……」

 

分かったのは、ウィルさんは私の事情を知って助けてくれた事。

この時、初めて救われたのだと理解し、枯れてたと思っていた涙が溢れてきました。

落ち着いた後、コップに入れられた水(幻想希欲薬&睡眠薬入り)を貰うと、眠くなってベットに寝てしまいます。

夢の中で、私は妹をパンやを営み、ウィルさんも一緒にパン屋で働く夢を見ました。

この楽しい生活が、何時までも続けば良いのに……心から、そう思える夢でした……。

 

 




   ≪武器≫

  【妃円の剣】

妃円屋敷応接間の暖炉に隠されていた、リーザス最強の剣か上位3に入るとも言える業物。
数年の間に、ウィルが何度か窓から妃円屋敷に侵入した際に手に入れた剣。
厨房に有った盾と客間の鎧は既に「倉庫腕輪」の中に納まっている。

ウィルは武器防具を多種持っており、気分と場所によりちょくちょく装備を変更する。


  ≪アイテム≫

 【黒い魔法液のビン】

魔法薬で、飲んだ後に唱える呪文で効果の変わる薬。
本作では『鬼畜王』体力『大日本帝国』魔力『ぷろすちゅーでんと』一時、魔力増幅増強。
この3種の作品名の呪文にした。

原作では
「鬼畜○英」体力「大日本帝国」魔力「ごるごんごん」魔力増幅一時期だったのを、作品名に変更。


  【わら】

本来、掃除メイドに渡し「みかん」を貰う物。
ドロシー相手なので、貴重な一般人にはゴミな機械部品やお菓子に変わるはずのアイテム。
ランスは違うモノを要求して、ウィルが後で頭を悩ませる。


 【ヒララレモン】

とっても酸っぱい柑橘系の食物。
日常的に料理に使われる食物だが、食べると気力体力が全快する効果もある。
サーレン山頂上でしか採れない珍しい食物で、ヘルマンでは何個か?ぎ取っていた。
美樹の魔王覚醒を半年抑制する効果があり、アイテム屋に買いに行ったが、一つ200Gと高額で手出しを迷ったらしい。

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