ランスの孫。ウィルの忘却編   作:神崎風水

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5話 魔王たちと英雄たちの再会

 

 

―美樹の客間―

 

 

城の見張りに再度300Gを手渡し、既に1600Gも見張りに手渡し城内に潜入を果たす。

その足で、牢屋を通り過ぎて帰宅してるで在ろう、2人の男女に会うべく部屋に訪れる。

 

「ほぇ? 開いてるよぉ~。どうぞ」

「美樹ちゃん、また来たぞ」

 

部屋の扉をノックの音を聞き、美樹は雑談を止めて入室の許可を出す。

返事受け、ドアを開けて笑顔で入室する。

 

「あ、ウィルお兄ちゃん。お帰りなさ~い」

「え? お帰りって、誰?」

「美樹様、この方が?」

 

美樹が入室してきたウィルの顔を見ると、手を振りながら笑顔で出迎える。

男子は左を向き、ウィルを見ながら美樹の態度に迷った様子。

着物美人は右を振り向き、ウィルの容姿を見て話題の彼と判断する要領の良さが伺える。

どうやら、ウィルの訪問に気をよくした美樹が、二人に色々と先ほどまで話していたようだ。

 

「紹介するね。ヘルマンで助けて貰って、色々手助けや相談に乗ってくれた。ウィル・ラインのお兄ちゃん」

「あ、どうも、小川健太郎です(お兄ちゃんか……なんか、やだなぁ……)」

「初めまして、日光と申します。先日は美樹様を助けて頂き、また多くの道具類をありがとうございました。(この方強い……私よりも。それに、どこか美樹様に似てる?)」

「此方こそ、はじめまして。俺はウィル、二人にお会いしたかった。今回、頼みたい事があり再度訪問させてもらった。(ふっ、兄呼ばわりが気に入らんか。そして、流石は日光。気付いてるみたいだな)」

 

美樹の紹介に健太郎は微妙な顔して名を名乗る。

自分に向けられてた笑顔が、知らない優男に向けられて気に入らない様子。

日光は概ね理解してるようで、自己紹介と同時にお礼を述べて体を向き成り手を重ね畏まって頭を下げる。

顔を上げるとジッ と見つめ、強者だけにウィルの実力を見抜くと同時に、容姿や気配が似てることに気付く。

一方ウィルは軽く挨拶をして、洞窟に地に刺し置いて来た刀の回収を依頼したいと言う。

そして、毎度の『リーダー』を使用して、二人の表面意識を読み取り自分が知る通りの反応をしてる事を確かめる。

 

茶髪の青年は小川健太郎といい、美樹ちゃんの幼なじみ。

黒い長ズボンに黄色いTシャツの上に白と青のパーカーを着ている。

JAPANの凛々しく颯爽とした美人の日光は、二人の従者のようで姉のようでもある。

長い黒髪を動きに支障でないよう縛っており、白い着物に肌着は緑で肩に紫を主体とした肩当に装飾を施した格好をしている。

 

自己紹介も終わり、早速依頼の説明をすると健太郎が軽く反発をする。

 

「話は分かりました。けど、どうして僕が洞窟に刀を取りに行けないと、いけないんですか?」

「まあ、頼むよ。他のヤツに取られるのは惜しいんだ。しばらく用事あってな……うん、礼にその刀は君にやろう。明日の大会に使うと良い」

 

健太郎は確かに美樹ちゃんが世話になったと、聞く耳を持つ。

しかし、依頼の内容が小間使いな内容で軽く不満げだ。

健太郎の言い分も理解できるし心情も分かるが、どうしても洞窟に行ってもらわねばならない。

何かしら理由をこじつけて、刀の利用価値を示す為に、健太郎の大会に使用する武器に使えと進言する。

その言葉に、日光が気付き問いかける。

 

「ウィル殿も、参加されるのですか?」

「ああ、参加する。それに関係もするのだが。観戦する美樹ちゃんの側に、日光さんが居た方がいいだろう?」

 

ウィルもパラパラ杯に参加する事を答え、健太郎が試合してる時は日光が側に居ろと言う。

洞窟行き刀について関係する話に、大会中に日光が美樹の側に居る居ないは関係ない。

一般的な見方でみれば些細な一言だが、今の状況では日光は美樹が観戦時には側に居れない。

一瞬、同様を見せる日光だが、直ぐに冷静になり真意を問いかける。

 

「っ! どいう意味でしょうか?」

「深い意味ではない。健太郎君に使える刀が多い方が、刀が”折れた時”等に、便利だろうと思ってな」

 

美樹がウィルに信頼を寄せて魔王の事を話し、ヒララレモンを寄越して時点で信用できると判断した。

しかし、日光と健太郎は自分達の関係を美樹には言ってない。

故にウィルの言葉に対し深読みして問う。

頭では知ってる筈が無いと分かって居ても動揺してしまう。

それに対し、先の言葉の意味をはぐらかして、もしもの時の予備刀に使えば良いと言う。

 

日光の深読みは当っている。

ウィルは日光の事をよく知るからこそ、一般的な内容に事実を織り交ぜているのだから。

 

「……そうですか。健太郎様。お世話になっているのですし、取りに行きましょう」

「日光さんが言うなら、別に良いけど」

「行ってくれるか、ありがとう。アイテム屋に回復薬等も受け取りに寄ると良い。話は通してある。街道や洞窟にも、モンスターが結構いるからな」

 

気のせいなのだと自信に言い聞かせ、刀を取りに行く事を健太郎に進言する日光。

二人が納得してくれた事にお礼を言って、準備よくアイテム屋に回復道具を貰っていけという。

世色癌等はこの場で手渡せば良いのだが、あえてアイテム屋に行かせるのも意味がある。

 

健太郎と日光が部屋を出て洞窟へと向った。

二人が部屋を出たので認識障害結界を室内に施し、健太郎と日光も出会えたので、次のステップに進むべく美樹に話を持ち出す。

 

「美樹ちゃん。日光さんだが……聖刀日光として、健太郎の刀だと、知ってるか?」

「ほぇ? 何言ってるの? 日光さんは刀じゃないよ?」

 

ウィルの言葉は、内容が内容だけに流石に信じない。

何言ってるの? と言いたげな顔して首をかしげ言われた言葉を否定する。

まあ、イキナリ信じてもらえるとは思っていない。

次の事実を突きつけ、美樹ちゃんに納得してもらう為の言葉を言う。

 

「日光さんが居る時、健太郎は竹刀袋を担ぎ。居ない時は腰に刀を差してるよな?」

「……え……ち、ちがうもん!」

 

ウィルの言葉に、今までの日光が居た時、居ない時を思いこす。

気にしてはいなかったが、何故そうなのかと気付こうとしていないが、ソレを言われて否定する。

美樹の反応を見て、一気に聖刀日光の特性や帯刀条件等を説明する。

 

「――う、嘘っ! 健太郎君は恋人だもん! そんなことしないもん!」

「嘘じゃない。美樹ちゃんは魔王継承したよな? 聖刀日光の知識も、あるんじゃないか?」

 

突きつけられた言葉に、信じられないと耳を塞ぎ頭を振って否定する。

尚も追い討ちをかけ、魔王継承した際に力と歴代魔王の記憶知識も得た筈だと言って責める。

 

「知らない、知らない! 知らないっ!! そんな事言う、お兄ちゃん……嫌いだぁ!!」

「くっ! 来たか! グガアァァ!!」

 

未覚醒の美樹は、普通の女の子の反応をして体を丸め聞こえない振りをし続ける。

そして、なんとなく理解をしてきたでのあろう。

これ以上事実を教えるな、と言わんばかりに顔を上げてウィルを睨む。

すると、その美樹の青い瞳が赤く真紅に染まり、体から黒い煙のような影みたいなモノが立ち上る。

美樹の目の色が変わると同時に、ウィルも瞳の色を真紅にさせ同じ黒い煙影を発生させる。

美樹が目を閉じて両手を握り「嫌い!」との叫びに、一斉にウィル襲いかかる黒い影。

ウィルも同じ能力を発動させて、迫る黒い影を同じ黒い影で迎撃する。

 

しばしの防戦の後、美樹が目をあけると、同じ目の色をして、同じ影で応戦するウィルを見て動きを止める。

 

「……えっ!……なんでお兄ちゃんも、使えるの?……スッ…………ソレは、どういう事だ?」

「……貴女は、誰だ? 美樹ちゃん……じゃぁ、ないな?」

 

美樹は同じ真紅の瞳に黒い影、ウィルが同じ姿で応戦してることに驚きの顔をする。

そしてカクン と、頭を下げしばらくすると雰囲気が変わり、口調まで違う人のようだ。

この展開は見ていたが、人格が変わった事を分からない振りして問いか掛ける。

 

「うむ、わかってるだろう? さっきウィルが言った、魔王継承記憶の人格……『プリンセス』とでも呼んでくれ」

「プリンセス様。美樹ちゃんは、どうなったんです?」

 

プリンセスと名乗る、魔王継承によって歴代魔王の記憶で生まれた人格。

ウィルの質問に答え、腕を組みして少女なのに存在が大きく見える。

 

「美樹は今、引っ込んで寝てる。知りたくない事実をお前が言ったので、存在を消す事で落ち着こうとした。だが、それに失敗し、行おうとした事実に押し潰され、お前の同じ姿形に戸惑い、思考停止したのだ」

 

プリンセスは説明する。

魔王にされ吸血鬼の能力により血や体液に敏感になった事で、健太郎と日光の関係は初見で理解したらしい。

同時に、日光から漂う数多の男達の体液履歴の気配から、人ではない事もわかってたようだ。

 

ヘルマンに置いて浮気されていても、頼れるのが健太郎と日光だけなので分からない振りをした。

初めてウィルに助けられた時も感謝はしたが、体から漂う多くの破瓜の気配に警戒していたらしい。

だが、自分を襲うような素振りも見せず、自身に似た気配もした事もあり気を許したとか。

 

リーザスでも、健太郎から何人かの女の香りがして浮気に気付いていたという。

久しぶりに再会したウィルから、ここ一ヶ月の間に乙女を数十人も散せた事に気づいて嫉妬と怒りが沸いたと言う。

そして、先ほど今まで気付かない振りをしていた事を、事実として知らしめるウィルに魔王の力を発動させた。

消してしまえば、それで「仕方ないよね?」で済ますつもりだった。

しかし、ウィルを殺し存在を消せていなく、今度消そうとした事実に苛まれる。

同時に、同じ姿形で抵抗する姿を見て考えがまとまらず、思考停止して眠りに付いたらしい。

 

「……それって、俺を殺そうとした?」

「当然だろう。幼馴染の健太郎を優先しているのに、理解したくない事を言うのだがら」

 

ウィルは流石に驚いた、良い関係を築き上げてたと思ったのに、健太郎との優先順位に負けて殺される所だったとは。

やはり、一朝一夕では幼馴染の恋人には、簡単に勝てないものだと納得もする。

そして、もう一つ気になる事を思い返す。

 

「……あり? もしかして、再会した時に肘が入ってたのは……わざと?」

「当たり前だ。折角信頼を寄せてた兄が、ヘルマンの時以上に破瓜の香りをまとって現れたんだぞ? 全力で突撃と肘くらい可愛いものだ。仮に、避けていたら魔力を籠めた手刀を、お見舞いしてたな」

 

飛びつきと言うなの突撃に、何故か肘鉄が入っていてかなり痛かった。

まさか、昔お世話に成った元禄のように女性関係が筒抜けとは思わず、正直に全て話さないと命が危ういと確信する。

最後にプリンセスはさらっと、恐ろしい事も言ってのける。

なかなか怖い微笑みを見せた後、今も揺らめく黒い影と目について問いただす。

 

「それより、説明しろ。ソレはどう言う事で、お前は何者だ?」

「……俺は120年後の未来からやって来た。プリンセスの弟であり、息子で孫でもある存在です」

「なに? 未来だと? しかも、息子やら意味がわからん。ガイの娘でも、魔王と同じ力は持ってないぞ?」

 

プリンセスの威圧感を乗せた言葉に、ウィルは未来から来た事を話す。

理解力が高いお陰か、血縁関係だとは判断するも、仮に息子でも同じ魔王の力を持つのはおかしいという。

 

そして、ウィルは自身の吸収した技能効果以外、一部を除き語り出す。

氷結された祖母の名を伏せて現在から未来までの流れを説明し、自分の能力の有り様を語る。

特に、どうして多くの女性を必要とするのかを丁寧に説明する。

コレを納得してもらわねば、何時殺されてもおかしくないからだ。

 

「――いいだろう。信じよう。それならば、私と同じ力が使える理由にもなりえる。考え難いが、現状同じ力を有している」

「ありがとう御座います」

「つまり、お前の目的は私の体(魔王の技能)か。まあ、選ぶのは美樹だ。一応美樹と記憶統合するが、せいぜい頑張れよ」

 

何とかプリンセスには納得してもらえ、信用を得る事ができた。

膝を付き、頭を下げてやってるのは魔王と部下の光景にも見る。

プリンセスは魔王の記憶人格のせいか、技能を貰うとはどういう事か理解してる筈なのに、さらっと大事な事を簡単に言ってのける。

会話の内容がかなり斜めに進んできたので、美樹ちゃんにどう説明したものかと悩む。

 

「あの~……美樹ちゃんは、今までの会話を聞いないので?」

「もう少しで起きるが、今は寝ている。私も美樹も、お互いを知る事ができるし、隠す事もできるな」

「そうですか……(内緒話はでいきても、筒抜けに近いか……)」

 

別にのけ者にするわけではないが、歴代魔王との会話と美樹ちゃんとの会話は違うものにしたいと思える。

言いたい事を容易に読むプリンセスは、何を知りたいのか読み取り説明した。

ウィルは気付いてないが、リーダーを使用されて表面意識はプリンセスに駄々漏れである。

逆に、上位の存在な所為か、ウィルのリーダーは防がれて読めない。

 

その後、お互いに元の目と状態へ戻り、しばらくすると美樹の意識が表に戻る。

 

「――むぅ~……お兄ちゃんのエッチ……やっぱり、わたしのこと狙ってたんだ」

「あ~……なんつうか、すまん。けど、助けたい。守りたいと言う気持ちは、本当だぞ」

 

先ほどまで腕組して立ってたプリンセスだが、美樹に戻ると膝を曲げて座り込む。

唸りながら頬をプクリと膨らませ、見上げながらウィルを睨む。

ヘルマンで警戒した事が、正にその通りだった事実にショックと怒りが込み上げているようだ。

左手の人差し指で頭部後ろ、首と髪の襟足をポリポリ と、かきならが申し訳無さそうに答える。

やはり、元禄と違い美樹に女性関係を全て知られてる事で、能力について詳しく説明したのは痛い。

 

美樹の言うとおり狙っているのだが、守りたいと思う気持ちは本当だ。

祖母にも『怨んじゃ駄目よ? 彼女は無理やり責任押し付けられ、頼る人が少なく命を狙われてるのだから』といわれてた。

十数年も封印されていた事で、魔力や力と記憶も流れ込んだらしい。

そして、遺言の手紙にも「守ってあげて」と、書き示されていた。

それを見せれば信用されるだろう。

ただ、遺言の手紙は読み終わったら燃やすよう指示がされており、この世に残っていない。

 

「はぁ~……もう、いいよ。あー、あ~……知りたく、分かりたくなかったのに、お兄ちゃんの馬鹿ぁ~」

「いや、本当に、ごめん……つか、雰囲気違わなくないか?」

 

美樹は健太郎の浮気癖と日光との契約について理解してしまい、ご機嫌斜め。

女子会において、男は浮気者が多いと話題に上がった事があるらしい。

この世界で頼れるのが彼だけなので、分からない振りをしていた。

ウィルは事実を知らせて内輪もめを画策したが、マイナス方向に向かい謝るしかない。

同時に、今までと口調と態度が打って変り、お気楽な感じに見える。

 

「ん? こっちが本当のわたしよ。今までは、か弱いのを演出してたの。結構したたかよ? わたしって」

「そ、そうか……(なんだ? 見た内容と違う……美樹ちゃんて、こんなだったか?)」

 

学生時代は知らないが、継承の影響か精神年齢が高いようだ。

見た目より、今の美樹は大人びて見える気もする。

昔見た、流れと記憶にある美樹のこの時代では、最初の様に物静かだった。

しかし、今目の前にいるのはJAPANでランスが活躍してた時、祖母を氷付けにした時に近い。

 

考えても仕方ないので、明日のパラパラ杯について説明する。

 

「美樹ちゃんは明日、コロシアムに行くよな?」

「うん♪ 健太郎君の活躍を見に行くよ~♪」

 

話題を変えたことで、美樹に笑顔が戻り機嫌よく答える。

パリス学園の生徒達にも伝えてある事を、美樹にも教えようと資金について問いかける。

 

「リーザスでの資金って、少ないよな? 賭けやらないか?」

「うん? 賭けって、何の?」

 

年一度の大会だけに、賞金もさることながらトトカルチョが盛大に行われる。

普段は毎戦時に勝者を賭けるのだが、優勝者をプロフィール等から予測して賭けるのも行われる。

毎戦のオッズは2倍がイイとこだが、優勝者を最初に賭ける場合10倍を超える。

優勝する自信(確信)があるウィルは、自分に賭けて見ないかと言うと。

 

「うん♪ 優勝はお兄ちゃんだしね。いいよ~♪」

「よし……? いや、健太郎が優勝するつもりで、出た筈じゃなかったのか?」

 

美樹が機嫌よく、いとも簡単に優勝がウィルすると言う事に疑問に思う。

普通は恋人が勝つ! と思うのが女の子心な筈。

すると、意外な答えと名前が出てきた。

 

「うーん、とね。最初はそうだったけど。プリちゃんと話した結果、無理と思うの」

「プリちゃん?」

「うん。『プリンセス』って言うのも、呼ばれるの嫌いなの。だから、略して『プリちゃん』」

「あ、ああ。そういう事か……で、何故健太郎ではなく、俺と言いきれる?」

 

何か、今回のウィルが言った説明で気になる所を見つけた様に聞こえる。

そして、継承人格が今まで表に出ることが無く、今回初登場だったようだ。

魔王になるのを否定してるので、別人格でも言われるのが嫌で名称を略したらしい。

再度、何故恋人より、先ほど嫌いになりつつあるウィルが優勝と決め付けたか問いかける。

 

「あのね。お兄ちゃんは、何でわたしを強引に襲わないの? 未覚醒なわたしなら奪える筈だよ?」

「いやいや。さっきの事を言うならギリギリだ。襲う前に俺が死ぬだろう」

 

かなりオープンにウィルが襲わない理由を聞いてくる。

未覚醒状態でも、魔王の風や魔王の鎧を防ぐのは指南の技で、もう少し防戦を続けたら危なかったと語る。

しかし、美樹はプリちゃんとの記憶統合で意外な結論も導き出していた。

 

「うーうん。今のお兄ちゃん(枷を付けた状態)は、確かに弱いよ?「うぐぅ、弱いか……」けど、能力と女の子を数を計算すると……500超えるよね?」

「!!……いや、普通無理だろう。俺は今77だ」

 

未覚醒でも魔王からするとウィルは弱いらしい。

流石にショックを受けて orz する。

そして、能力と吸血鬼の嗅覚で総数を計算して本来の数値を言い当てる。

言い当てられ驚くも、現在の数値を言って嘘ではないが誤魔化そうとする。

 

「わたしもそう思ったけど。プリちゃんが、今も尚、狩りを続けてるなら可能性はあるって。210年前に北条アクノって、前例があるみたいだし」

「うむむ。流石、魔王の記憶人格は賢いな……正解だ(つか、カイト達とのガチンコが、魔王にもばれてたのかよ……)」

 

美樹は見た目と気配で、ウィルが自分より弱いと認識している。

しかし、先ほどの統合した際にプリンセスの考えと意見を聞いて過去の人物を語る。

確かに先ほど命が惜しく能力を説明したが、見事本来の数値を言い当てられ観念する。

そして、前世のヤンチャした事が魔王ガイにも知られてた事実に、顔には出さず内心驚いている。

 

北条アクノはウィル・プラインの前世である。

GI 792頃、ハニー達に襲われていた北条マキコを助けた青年。

記憶喪失で自身の名も知らず、マキコを助けた功績で北条家の養子となる。

養子となり色々出来事解決するが、色々起こす問題児。

当時の北条層雲と犬猿の仲で、様々な事件を解決した後に、ある事件を切っ掛けに魔法大国ゼスに移住。

自由奔放に周りを多数の女性を巻き込み、ゼス貴族に潜り込む。

ある時、フル・カラーの報復に向う警備隊と共に、何日にも渡り戦い続ける中で、意気投合したり。

緑の里に来ていた、魔人カイトと出くわしタイマンバトルを行った。

人でありながら、何故か殴り無敵結界を看破する異常者でもあった。

魔人領を散策して、ケッセッルリンク城のメイドさんを口説こうとして、死闘を繰り広げたりした。

雷を通さないようにゴム手グローブをして、レイと殴り合いを楽しんだ。

ガルティアを餌付けしたり等などしてる時点で、魔王ガイが知らないはずも無く。

その当時、北条アクノはLV194と逸脱してる存在だった。

更に、ゼスを荒らしに来たケイブリスに挑み、手傷を負わせるもぼろ負けした。

その二年後、メディウサがゼスに来た時も挑んで被害を抑えるが、仕返しに使途のアレフガルドに妻を何人か攫われ恨みを持っている。

 

「(……う~む、記憶の棚を引き返してみたが、知られるよな~、普通)まあ、美樹ちゃんの言うとおりだ。弱く感じるのは体の負担を無くす為だ」

「やーっぱり、プリちゃんの言った通りなんだ。体の負担て?」

 

ウィルは過去の記憶を引き出して、魔王に知られる事をしでかしてると思い返す。

美樹に正直に話すべく、見立て通りの強さの理由を、体の負担とレベル低下を防いでいると説明しだした。

 

人類の才能限界はヘルマンの一人を除き、大抵100LV以下である。

脆弱な人類が100を超えないのは、強くしない目的もあるかもしれないが、肉体がレベルの強さに耐え切れないからと推測する。

実際、ウィルも200を超えた辺りから、体に不調を感じだす。

また、現在のレベルを維持するのにモンスターを多く狩るのにも苦労した。

そこで、レベルを制限する魔法具を作り、レベル低下を防ぐ効果と肉体の負担を無くす為に100以下になるようにした。

その旨を伝えながら、左腕のダイヤル付きの篭手を見せて説明した。

 

「ふへ~、そんな事になってるんだ」

「ああ、普通超える事がないし、俺を信じてもらうしかないけどな」

 

ウィルの説明を素直に、全て信じた美樹。

軽く手を握り口元に当てて、関心しながら見つめる。

この事に関して体験談を話してるのだが、比べる他者がいないので信用してもらうしかないと語る。

 

「えへへ。知りたくないこと知っちゃたけど。お兄ちゃんの事、色々知れたね」

「その件については、すまなかった……この後、予定があるんで、今日のところは失礼する」

 

健太郎と日光のことで不機嫌だった美樹だが、プリちゃんとウィルによってもたらされた知識に関心した様子。

プリちゃんの統合と助言によって、ウィルを信頼できる兄と再認識したようだ。

自分の目的のために、知りたくない事実を伝えてしまった事を反省し、腰を折って頭を下げ謝罪する。

この後、カジノで用があると部屋を出ようとした。

 

「ああ、常に美樹ちゃんの側にいない。だが、美樹ちゃんのピンチには、魔人達や人間たちから必ず守る。この俺がな」

「うん♪ 期待してるよ~☆」

 

健太郎の様に常に側には居れないが、本当の危機には駆けつけ助けると約束する。

そこらの一般人からそんな事を言われても当てにはしないが、ウィルなら大丈夫と笑顔で答える。

明日、コロシアムで会おうと約束すると、ウィルは部屋を出て行った。

 

「あーあ~……健太郎君とどんな顔して会えば、いいんだろ?」

《別に、普段どおりで良いと思うが?》

「そっかなー?」

 

ウィルが部屋を出て行くと、しばらくして独り言を言う美樹。

そのぼやきに、頭の中に直接答えが返ってくる。

継承儀式の時以来、ずっと会話をしてこなかった、もう一人の自分と会話する。

 

《それより、ウィルは健太郎より使える駒だ》

「駒って……酷いよ。それに、健太郎君はずっと居てくれるよ? どうして、お兄ちゃんのが良いの?」

 

魔王の記憶人格だけに、二人を駒扱いするプリンセス。

美樹は口元を引きつらせて、もう一人の自分を軽く嫌悪する。

確かに弱い健太郎だが、側に常に居てくれて嬉しいと思っている。

逆に、ウィルはポッ と、現れて常に居るわけではない。

色々してくれるが、何時また会えるか分からないと思っている。

 

美樹がプリンセスとの会話を、儀式の後に一度もしなかったのはこれが原因。

魔王の記憶だけに、幼馴染の恋人を見下して見るところ。

異世界から来て、何も知らない所に魔王の知識は役にたったが、その後は拒絶して表に出さなかった。

 

そんな、気持ちを思い出してる中、何が違うか説明しだす。

 

《ウィルのヤツ……さり気なく、普通に言ってのけた。魔王である私たちを、人類から守ると》

「ほぇ? 魔人さんたちは困るけど。人じゃ相手にならないよ?」

 

先ほど、ウィルは美樹を人類から守ると言った。

しかし、魔王である美樹には人類の攻撃は結界で意味が無い。

痛くも痒くもない相手に、何故守られるのかと疑問に思う。

 

《日光と対を成す、魔剣カオスがある。後、勇者が厄介だ。未覚醒だと危ない……だが、ウィルの強さなら抵抗できる》

「あ~……そっか。そうだったね」

 

魔王や魔人の無敵結界を看破する、もう一つの魔剣の存在。

覚醒してしまえば、よほど人口を減らさなければ問題ないが、勇者の存在は今の状況では危ないという。

その二つに対し、ウィルなら抵抗できる戦力ある駒と断言した。

 

《それに、魔王と知られたら、その人間たちを殺さなければならん。だが、健太郎は甘い》

「そこが、健太郎君の良いところだよ?」

 

もう一つの危惧は、人は弱く異質なものを追いやろうとする。

魔王と知られ、人類の大陸を追われると魔人領に戻る事になる。

それを防ぐ為には口封じもやむ終えない処置だが、健太郎では出来ないと言う。

しかし、それが健太郎の優しさと美樹がフォローを入れる。

 

《アイツは強い。2年前には、覚醒した魔王クラスの上位悪魔と戦い、その悪魔の血を浴びている》

「ええ!! 他の血に(乙女の血)気を取られて気付かなかったよ……」

 

プリンセスから語られる、異常な悪魔との戦いを血の気配から読見取られる。

美樹は大声を上げて驚く、見て感じた限りではウィルは弱く見えているので意外に思もったようだ。

 

《それと、あの77にしてる枷は、人でありたいんだろうな》

「ふぇ? 人でありたいって?」

 

ウィルの説明に、200を超えた時点で体に異常を感じたと言っていた。

なら、それより少し低くすればいい。

しかし、人類最強種の100以下でいるのは、人でありたい為だろうと予測した。

強すぎる力は危険視されて、バケモノ扱いされる。

実際すでに化け物の粋にあるのを、隠しているのは人として過ごしたいと思っていると。

 

《だから、健太郎より使える駒として、私はウィルを推すぞ》

「う~ん……どっちかじゃなくて、両方ってのは駄目なの?」

《……フッ。フハハハハ! 美樹もなかなか贅沢を言うな。しかし、それでいいだろうよ》

 

健太郎と、どうやって接して言いかの話から、変な終わり方をした内部会話。

プリンセスはウィルを選べと言い、美樹は二人とも大事と答える。

確かに伴侶とかではなく、助けてくれる存在を選ぶ必要はない。

今までどおりに、3人と歩めばいいと話がまとまり密談は終わった。

 

 

―元盗賊の洞窟―

 

 

健太郎と聖刀状態の日光は、言われた洞窟の拷問部屋の前に到着した。

 

「えっと。この部屋だよね? 刀があるのって……あ、あったアレか」

 

健太郎は部屋を見回し、中央に刺さる刀を見つける。

さっそく近寄り刀に手を掛け引き抜こうとするが、地に刺さる刀を抜ける気配は一行にない。

 

「ぬぐぐぐぅ! なんだこれ、抜けないぞ」

『健太郎様、それでは刀が傷みます。私が抜きましょう』

「え? 日光さんが抜くの?」

(あ、来たみたいだね)

 

ウィルが闘気法を使い刺した刀は、普通に引き抜こうとしても抜ける気配はない。

日光はどうやって地に刀を刺したのか察知して、そのまま抜こうとすると折れたり刃こぼれする事を危惧して進言する。

人形に戻る日光を見て、健太朗が手を離して様子を見る。

そのやり取りを聞いて、約束の者が来たことを知るコンクリ男。

 

日光は刀に手をかけて闘気法を使い気を刀に流す。

気を纏った刀は、丈夫さと切れ味を増していとも簡単に引き抜ける。

刀を抜き見定める日光は、ただの日本刀になにかしらの付与がされてる事に気付く。

そんな時、直ぐ近くから声がする。

 

「お~い。そこ居るのは、日光かい!?」

「誰だ!?」

「っ! 誰です? 私を呼ぶのは……」

 

突然声をかけられ慌てる二人。

身構える健太郎に、日光も手にした刀を構え、静かにあたりを見回す。

しかし、辺りを見回しても人影は見当たらず二人は首を傾げる。

 

「ちがう、ちがう。こっち、こっち。下だよぅ~」

「「下?」」

 

再度声をかけられ、声がする腰下を見る二人。

すると、壁に生き埋めされた、くたびれ中年が居た。

見下ろし顔を見合すと、コンクリ男が再度名を呼ぶ。

 

「あぁ……間違いなく、日光だ。私だよぅ~、ブリティシュだよ! 懐かしいなぁ~」

「っ!……ま、さか。本当に、ブリティシュなの……?」

「日光さんの知り合い?」

 

目を合わせたブリティシュは嬉しそうに、手ふって懐かしさを表現する。

くたびれコンクリ男を見た日光は、額と目に手を当てて目眩を起こし、3歩後退する。

二人が知り合いと分かると警戒を解き、腰に手を当てて様子を伺う。

日光が冷静さを取り戻したのを確認すると、ブリティシュは昔話をしだす。

 

「懐かしいなぁ……嬉しいなぁ……仲間と、”日光とも”又会えるなんて……君とは、あの古代の遺跡で別かれて以来か……」

「えぇ、懐かしいですね………私達は、あの扉の向こうで、神と出会ったわ。そして……」

 

ブリティシュの昔話に流されるように、日光は古代遺跡の先で神に会ってからの事を語り出す。

カオスと日光が即時に「魔王や魔人を倒せる力」を求め、ホ・ラガは「全ての知識」を希望した。

その後、意識を失い地上に戻され、不老不死と今の体になった事を説明する。

そして、カフェについて口ごもると、ブリティシュが言葉を遮る。

 

「カフェは……すべての男性を魅了「ああ、彼女には会ったよ」え? 知ってるの?」

「うん。余り語ろうとしなかったけどね。アレだけ変わった美貌と、なんとなく見て分かったよ。ホ・ラガも、壮大な嘘をついてなかった、とね」

「そう……二人にも会ったのですね……」

 

ブリティシュの言葉に、先ほど”日光とも”会えたと言ってた事を思い出す。

そして、ブリティシュ自身もカフェの思いを理解してたようで、何故そうなったのか理解してる口ぶりだった。

カフェについて実際は、気付いていて気付かない振りをしてたのを、ウィルに説明されて理解したのだが。

その後、ホ・ラガから聞いた話を日光に語る。

ついでに、どうして自分がコンクリ男になったのか、誰にやられたのかを説明する。

日光のシンに情けをかけて峰打ちにしたせいで、この事体を引き起こした事を知り顔を下に向ける。

 

「暗い顔は君には、似合わないよぅ~。綺麗な君が台無しになるよぅ~」

「っ! 私は……綺麗なんかじゃ……もう、幾人もの「違うよ」……え?」

 

余り思い出したくない過去と、仲間の末路を聞き日光の表情が曇る。

ブリティシュが励まそうと「綺麗」と言うが日光の体がビクッ と震える。

そして、見た目と違い、聖刀であるがためにどんな行為をして来たのか語ろうとするの言葉を遮る。

途中で言葉を止められ、何が違うのかとブリティシュを見つめる。

 

「君は強い意思と力で、自身の目指す道を進んだだけ。過去どう歩んでいようと、今尚、魔王や魔人と戦おうとする姿勢と、その姿は凛々しく、とても綺麗だよ……だろう?」

「!! そ、そうですね。ありがとう御座います。私の存在意義が……認められた気分です……よ」

 

ブリティシュの言葉に軽く涙する日光。

先ほどはくたびれた中年だったのに、今は過去にリーダーであった頃の姿に見える。

ソレ程の強い意思の瞳を向けられ、日光の進んできた道が間違ってないと肯定する。

 

また、落ち着きを取り戻したところで、空気と化してた健太郎に声を掛ける。

 

「ごめんよぅ。健太郎君だったかな? 僕達の昔話を聞いてくれるかい?」

「あ、いえ。そんなに気を使わないでも。昔話ですか? お願いします」

(え? 何? 黙って指示を(昔話を)、聞いてくれ?)

 

ブリティシュが忘れてた健太郎を気遣い、昔話をすると言い出す。

日光の涙というレアなものを見て、見惚れていた健太郎。

知り合いの昔話と聞いて、興味を持ったのかその場に座り話を聞く状態になる。

一方、会話を聞きしながら、昔パーティー時代の手合図を見て何かと思いつつ、昔話を聞く体勢を取る。

 

その後、健太郎に対しパーティー時代に起きた出来事を語る。

健太郎が知らない日光や出来事を聞き、楽しそうに興味津々な顔する。

その話を、日光は顔にも言葉にも出さず、黙って聞ている。

そして、自分の知る記憶に存在しない、ピンク髪の少女が何者だろうと考える。

自由奔放であり、鋭く、先を読み、強く、常に手助けしてくれた女の子。

そんな子は居なかった、何故そんな少女の事を語るのか意味が分からなかった。

その意味は、最後の合図で理解する事になる。

 

「――と、こんな出来とが、あったんだよ」

「へ~、凄いですね。意外な日光さんを知れました」

 

ブリティシュの昔話を聞き、健太郎が知らなかった事をしり、日光の事も色々知れてご満悦。

指示通りに、黙って話を聞き続けてくれた日光の顔を見て、最後の仕上げをする。

 

「うん。それは、よかったよぅ。あ、日光。鏡を見てよ~く、昔話を思い返すと言いよ」

「はぁ?……(鏡? 私を見て? 違う、反対……あ! ピンク髪の男の子?……ッ!! まさか!)」

 

ブリティシュの言葉に、何を言ってるのだろうと首を傾げる。

鏡と聞いて、思考を廻らせると対象、自分を写す、反対。

先の昔話に出た少女が、男の子かと思う。

 

ピンク髪の男子など、そうは居ない……そして、思い浮かべるは昔話の内容に合う少年。

正確には成人であるが、日光達からみれば子供も同然。

昔話の内容が、すべて彼の事を説明していたのだと確証つける。

そして、今日の出会いが仕組まれ、先の未来の関係を示されていた事に驚く。

流石に日光の驚きが顔に出るのを見て、ブリティシュが次の言葉を言う。

 

「あ~、そうそう、その刀だけどね。部屋の隅に、鞘がある筈だよぅ~」

「鞘?……コレですか……?」

 

ブリティシュの言葉に、鞘を見つけ手に取る。

すると、鞘の中にメモが有り、中を確認すると直ぐに紙を握り潰し袖に仕舞う。

刀を鞘に収め、鞘についてた小袋も袖に仕舞いこむ。

 

「ん~……もう、話す事は~、無いかな?」

「あ、そうですか。それじゃ、御いとま……ああ、良かったらコレどうぞ」

 

ブリティシュの言葉に健太郎が帰宅の準備をする。

部屋を出ようとすると、アイテム屋でもらった重いオマケを取り出す。

 

「んぅ~? なんだい? そのハニーの置物は」

「アイテム屋のオマケで貰ったんですけど。大きくて部屋に不要なので、良かったらどうぞ」

 

取り出したハニーの置物は、目と口が大きく開けたモノ。

アイテム屋で貰った、年度と日時が分かる時計だ。

健太郎達の部屋には時計があり不要で、旅をするのには邪魔に成る大きさ。

コンクリから抜け出す事が出来ないなら、せめて時間が判ればと差し出した。

 

「おぉ~~、ありがたいよぅ~。此処には、何もなくてつまらなかったんだよぅ~」

「そんなに喜ばれると、こっちが恐縮します。では、いい話をありがとう」

「……では、また何時か会いましょう」

 

部屋の隅に、ブリティシュの目線に合わせて置かれた時計。

どんな動力してるのか不明だが、時間によって手やトライデンを動かす面白い置物。

ブリティシュの喜ぶ姿に、健太郎は逆に押し付けたみたいで悪いと思い、軽く謝りお礼を言う。

日光は意味深な顔して、再会を願い別れを言う。

 

二人が洞窟を出て行くと、ブリティシュは独り目を閉じ模索する。

 

(凄いね、彼は……日光との再会。そして、日光の呪いによる胸内の傷まで、癒す言葉を残すとは……)

 

ウィルに伝えられた事実によって、日光がどんな目に遭ったかを、知ってるからこそ言えた言葉。

ブリティシュが言った言葉であっても、アレは言わされたに近いもの。

エターナルヒーローと呼ばれた、伝説の呪われし5人。

4人の苦労も知らず、こんなところで嘆いていた自分が恥ずかしいと、つい歯軋りしてしまう。

自分を閉じ込めたシンですら、利用されたに過ぎない事も聞いた。

そして、約束を果たす為の日時を知るために、用意された時計を見て思う。

健太郎の性格からして、演技は出来ないだろう。

わざわざ重く大きい時計を、場所を取る時計だからこそこの場に置く為に、運んできたとは知らないだろうと。

そして、楽しみになる。

解放される日を待ち望み、日付が分かる事で彼女が何時来るか分かる事に。

 

(ジュリアちゃんか~……どんな子だろうな~……)

 

剣の教授する事を聞いた、楽しい出来事は既に聞いている。

その彼女が色々話し相手や食事を運んでくれる事が待ちどうしい。

ただ、どんな容姿でどんな娘かは知らされてない。

彼女に会ったとき、ブリティシュはどんな顔をするのであろうか……。

 

 

―街道、第3地区―

 

 

街道を歩く二人。

本来既に帯刀状態に筈の日光が、並んで歩んでいる。

 

「凄い……もう、1日に3時間のリミット、越えてるよ?」

「ええ……本当ですね……」

 

健太郎と日光は、左手の薬指に嵌めた指輪の効果に驚きを隠せない。

日光が人型をとれるのは1日に3時間が限界で、それをもう過ぎてるはずなのに今も維持している。

その秘密は先ほど手に入れた、小袋の中に有った指輪の効果で、名称は【状態維持固定の指輪】という。

そのままの意味で、日光の人型状態を維持し固定しておく指輪。

 

洞窟を出て、袋の中身を取り出し説明書を読み指輪をはめた。

更に日本刀の付与にゾンビ・ムシ効果が有る事も書いてあった。

序に、左手薬指という説明は、ウィルの冗談で書いた内容だったりする。

 

「健太郎様。明日の大会には、独りで参加を願えますか?」

「え? ああ、別に良いけど何で?」

 

当初は美樹に留守番してもらい、二人で大会に参加する予定だった。

今回、人型を取り続ける事ができるなら、美樹の護衛と試合観戦したいと願う。

 

「まだ、私に頼る節があります。対人戦闘の良い経験になります」

「う~ん。日光さんが言うなら、いいけど……優勝は厳しいかもよ?」

 

日光は既に優勝して、賞金を獲得すると言う目的は諦めている。

健太郎に対人経験を積ませ、いざという時の糧に成るようにとすすめる。

渋々納得するも、優勝を逃す可能性を懸念する。

 

「誠に、申し上げ難いのですけど……優勝は、二人でも出来ません。ウィル殿に負けます」

「ええ!! 嘘だぁ~」

 

言いにくそうに目線を反らし、現状無理な事を告げる。

軽く突き放す言いように、大声で驚きをショックを受けると同時に、ウィルの見た目に負けると思えない声を上げる。

 

健太郎と日光は人刀一対のようなもの。

モンスター等の特徴や弱点、狙い時を支援されながら戦うのがスタイル。

盗賊等も日光のフォローの下、剣道の腕と指示で今まで上手くいっていた。

聖刀という威力に頼ってもいるが、今まで弱った魔王や魔人も罠に掛けて勝利している。

ウィルの見た目、自分も負けてないイケメンが、そんなに強いとは思えないらしい。

しかし、日光の言葉には納得するしかない。

 

「残念ですけど、先ほど刀を抜けない時点で駄目です。健太郎様も使える素養はありますが、闘気法を使えなければ、まず勝てません」

「この刀? 闘気法?」

 

日光の言葉に、何を言ってるのか分からない様子。

何故、地に刺さった刀が抜けないと駄目で、闘気法なる技? を使えないと勝てないのか分からない。

そして、説明されて何となく理解した。

 

闘気法とは、戦闘系技能LV2が使う必殺技の一種。

まだ、必殺技を使う相手と対峙した事無い健太郎には意味が分からない。

先ほどの光景を、もう一度再現されて何となく理解した。

日光が刀に気を流し、もやのようなものが刀を覆うのが健太朗にも見える。

それを地に刺すと、豆腐に刺すようにストン と刺さる。

それを健太郎が抜こうとするも抜けず、日光が再度闘気法で刀に気を通し容易く抜く事が出来た。

コレにより、使える者と使えない者の差大きいと説明されてやっと納得した。

 

ただ、理由はそれだけではなかった。

 

「健太郎様は25LVですね。私は50ですが……ウィル殿は私以上です」

「うぞ? マジで?「マジです」うわ~、見えないよぉ」

 

レベル屋に行かないとウィルは分からないが、健太郎と日光は自身のレベルは知っている。

ウィルのレベルを聞いて、健太郎は信じられないと言った顔をする。

日光の突っ込みに、素直な感想をいって空を見上げる。

 

「――ですので、資金繰りは他の手を考えて。対人経験を積んで下さい」

「わかった。しばらくモンスター狩って、今日の食事代とか稼ごう」

「はい、付け焼刃になりますが。闘気法の身体強化の訓練と参りましょう」

 

賞金目的の大会だったが、人生経験に切り替える。

資金調達に勤しみながら、今まで教えなかった闘気法を教える事にした日光。

今まで教える事がなかったのは、闘気法を使うと3時間のリミットが極端に短くなる為。

美樹との会う時間を減らすのは都合が悪いので、今まで教えれなかった。

しかし、今は指輪のお陰でその問題はない。

もう一つは、昔なら使える者がある程度居た闘気法を、ウィルが使ってる事に驚き焦ってもいる。

必殺技を使う者が居ても、身体強化を意図して使い、刀に気を通す事をするものは1000年間は現れなかったのだ。

 

それに、ブリティシュの昔話の事もある。

信用できるみたいだが、もしも剣を向けられたら二人を守りきれない。

明日、会ってキチント話をしなければと、健太郎がモンスターと戦う姿を見て思うのだった。

 

 

 





   ≪アイテム≫

  【ハニーの置物時計】(オリ)

動力は無尽蔵自然エネルギーらしい。
ハニーの形をしている、年・月・日・時間・分が分かる優れもの。
健太郎はアイテム屋のパティからオマケで貰ったと思ってるが、実はウィルがパティに金で手配した時計。
ブリティシュに今何時で、何が起きてるか分かるようにするために贈った時計。


 【状態維持固定の指輪】(オリ)

刀が本来の姿の日光を、人間の姿を維持させる効果を持つ指輪。
ウィルが魔法具生成によって生み出した指輪。

名称にあるように、状態を維持固定する効果は重い病気にも効果を発揮。
弱体病や緑化病の症状を固定し、いずれはゲンフルエンザにも使う予定な指輪。
緑化病について状態維持と体の成長は別もので、ある程度身体が発育すれば完治させて、メープル街に移住させている。
よって、緑化病は世間で知られることなく、不治の病ではなくなっている。
ただ、事実を知るとゼス貴族のクズが沸くので、秘密にしてる。
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