ランスの孫。ウィルの忘却編   作:神崎風水

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8話 パラパラ杯、第一回戦の全戦

 

―将軍用VIPルーム―

 

 

『――な、ななな。なんと! ネイル選手。何もしないまま、7秒で勝利したぁ!!』

「ぶっ、わははは! 刀を抜かずに、運だけで勝ちやがった!」

「う~ん、おかしいですね。こんな筈では……?」

「そんな、ウィル殿が運でなんて……」

 

シュリの実況を聞きながら、舞台でおきた結末を見る。

普段のコルドバなら気付いたろうが、外道という先入観が目を曇らせる。

何もしないにしても、刀すら抜かない事実に疑問が浮ぶであろうことに。

エクスは実際に会ったことが無く、人伝いでしかウィルを知らず。

何もしない事に疑問をもつも、期待はずれといった感じだ。

ハウレーンは模擬戦による剣の手ほどきと、自身の癖を認識させた対処方を示してくれた相手。

かなり内心で美化されており、刀捌きをみれずに残念と思うと同時に、運で勝ったと思い込み失望の念が隠せない。

 

「ぬぅ? 先ほど、ドギ選手が妙な反応を……それに、刀を抜かずに平然と……変じゃのぅ」

「……見えましたか?」

「あ、リックも見えたのね。ええ、転び方も変だったわよね?」

 

バレスは流石隻眼の宿将。

冷静な目で先ほどの戦いの妙な点に気付き、周りが運と言ってる中作為的に行ったのではと思考する。

闘気法を扱えるリックとレイラは、ウィルの使った気弾が見えていた。

至極小さく速い『プチ・氷の矢』を見逃してはいるが、気弾を目視しただけに、ドギの転倒の不審点に気付いた様子。

 

(氷の矢で舞台に氷の膜を張って、転倒させたわねよ?)

(ですよぅ~。ルミちゃん、あの手放した斧って、作為的?)

(そうよ。アイツ、相変わらずエゲツナイよね。気弾なんて、普通の人は見えないもん)

 

ウィルの本質をよく知る三人は、ナニをしてドギを意図して事故に見せて殺した事を理解する。

ついでに、何故殺したかも予測していた。

ドギの趣味に『奴隷の躾』と有ったことから、奴隷が”美人な女性で”対戦前に奴隷契約をして、口封じと死人に口無しをしたのだと。

 

3人は他の勘違いや、なにやら気付いてる面子に説明する事にした。

別にどうでも良い事だが、やはり運だけで勝ったと思われるのは癪。

幸いにリックとレイラも気弾が見えていたので、魔法ビジョンの映像を逆再生しながらプリマが説明を完了した。

 

「なんだと!? 意図しての殺しは、反則で失格ではないか!」

「いや……それは難しいのぅ……中々の悪党じゃわい」

「ですね。転倒させた魔法は証明できますが、()でしたか? 一般人や其方の3人以外見えないのでは、説明できませんよ」

 

コルドバはウィルの失格を申請しようようとするが、バレスとエクスによってソレを阻止される。

バレスは殺した事は関心できないが、ルールの穴と手法に関心する。

プリマから奴隷の救出を聞いているので、悪党と言いつつも腕組して関心してるようにも見える。

剣や魔法等の戦い方は自由、殺しと装備変更や回復アイテム禁止以外問題はない。

故意にやった事故でも、意図して殺したと説明できなければルール違反にはならない。

不満をぼやくコルドバも、納得するしかなかった。

一方、ハウレーンは新たな事実にショックを隠せない。

 

「そんな……ウィル殿が、あのような殺し方をするなんて……」

「あ~……ハウレーン副将? ウィルを美化し過ぎだって。アイツ、目的の為には手段選ばないよ?」

「そうなのですよぉ~。それに、ルミも分かってるのだから、言うのも野暮なのですよ」

「ああ……そうね。そういう()で、下地を作った訳ね」

 

ルミールはハウレーンがウィルを美化してると言ってるがそうではない。

ザナックとの初デートに介入すると同時に、女性として武人として接したウィルが狡猾なのだ。

その事をナミールとプリマは大まかに、ウィルの下地を予測して納得する。

そうこうしている間に、次の試合が準備されていく。

 

 

―はの5番VIPルーム―

 

 

『――な、ななな。なんと! ネイル選手。何もしないで、7秒で勝利したぁ!!』

「おおー!! やったー!!」×一同

(ふぅ、勝つのはいいけど、エグイわね……)

 

シュリの実況を聞きながら、同時に払い出されるGOLDを見て、皆喜びの声を上げる。

勝つ事は知ってたが、実際に払いだされる金を見ると顔が緩む面々。

ただ、ドロシーはよく見えなくても、ウィルがナニを目的として、事故に見せかけ故意に殺したと理解している。

舞台と距離があるからよく見えなくても、魔法ビジョンがあるのでよく見えた。

 

「はぁ、やっと外せるわ……ンッ!! うん。清々したわ」

「ええ!? メルさんも外せるんですか? その奴隷の首輪を!」

 

ウィルの勝利を確認したメルディは、首輪の宝石部に魔力を籠めて破壊し取り外す。

もっと前に外してもいいのだが、一応契約に縛られているので外せなかった。

葉月は先日みた光景を又見たことに驚き、ゴミ箱にすてられた残骸を見つめる。

それと同時に、メルフェイスの実力を思い知る事になる。

 

ワイワイと払い出された金に喜びながら、次のおたま男VSチャネラー伊藤戦に金を賭ける。

そんな部屋にノックされて、祝いの飲み物が運び込まれる。

その給仕に見覚えがあり、美樹が歩み寄る。

 

「あれぇ~? 何時もパンを運んでくれる、メイドさん?」

「え? ああ、客間の美樹ちゃん? なんで此処に?」

「私達はネイル様の御好意で。貴女こそ、城の方はよろしいので?」

「あ、私? いや~、大会中の給仕って、給料いいのよねー。けど、チップの方は……少なそうね」

 

呼ばれて顔を振り向き美樹の顔を見て、パンメイドは客間に何時もいる娘と直ぐに理解する。

日光に質問されて、頬を指でかきながら白パン以外にも給金が良いバイトで金が欲しいと理由を述べる。

それと同時に、何時もの貴族連中ではないと分かり、裏給仕のチップは期待できないとがっかりする。

給仕の給料を貰いつつ、貴族の相手をする事で賭けで儲けた際のチップを当てにしてた様子。

既に兵士達の相手もしてるので、身持ち云々は関係ない。

 

(ねえ、魔樹ちゃん。この子って、常連だったのね)

(みたいだの。まったく、こんな如何わしい部屋につれてきて、腹立たしかったが。今の状況からみれば褒めるべきか?)

(そうだよぅ~。この人は期待してたみたいだけど、他の子はそうじゃないよ、きっと)

 

美樹は葉月の事が気になり、部屋については後回しにしたが、部屋に充満する過去の血と体液の気配に嫌気がさしていた。

この部屋の使用時間や目的を悟るが、他の面子が楽しそうにしてるので顔には出せずイライラしていた。

そこに顔見知りがきたことで、この部屋のもう一つの使用目的が果たされない事を再認識し、内面で内緒話をしている。

パンメイドががっかりしながら退出しようとすると、後ろから声がかかる。

 

「あら、そこの給仕さん。このチップで、簡単な儲けをしません?」

「はい? おおっ! 300Gもよろしいので!? と、儲けって?」

 

メルフェイスは多すぎるチップを手渡し、退室を食い止める。

両目を「G」に変えて、喜びメイド給仕は飛びつきチップを受け取とり、儲けの話しに関して首を傾げる。

メルはこの部屋の裏事情を知っており、ついでにVIP1~4番まで部屋に貴族たちがおり、彼女たちが料理を運ぶことを知っている。

VIPの4番まではベットとかは完備されてなくても、給仕女史を捕まえておく事はできる。

しかし、この部屋の方が優先されるので、彼女たちをとどませることは出来る。

ついでに、ドロシーの勝利表を元に、簡単儲けの話を持ちかける。

その後も、運ばれた料理をキチント平らげ、次々注文して給仕を部屋に集め続けた。

 

 

―選手控え室―

 

 

『――な、ななな。なんと! ネイル選手。何もしないで、7秒で勝利したぁ!!』

「……ちっ! あの野郎、くだらん勝ち方しやがって……」

 

ランスは待機部屋の椅子に座り、魔法ビジョンの映像を見て苛立ちを見せる。

魔法を普段使わなくても、その気配には気付くし気弾も見える。

今朝、寝ぼけながらサインしてしまったパルプテンクスの婚約届けを破り、酒場から逃げ出して来たのでウィル達と会ったのは待機部屋でのみ。

対戦者を殺した理由は知らないが、わざわざ事故に見せかけて小細工したんだ、裏があるのは理解している。

他の者が同じ真似をできるかと言えば難しい、ランスは可能かもしれなないが氷系が使えず余計に腹が立つようだ。

 

「あははは! アンタの相方、面白い勝ち方するねぇ。強運じゃないかっ! あはははっ」

「あん? 相方じゃねぇ!!……つか、お前は試合をちゃんと見てたのか?」

「あ~、開始前にサイン強請られてね。書き終えて見たら、ドギが倒れて斧を頭にはやしてたねぇ~w」

 

ユランは笑いながらランスに近づき、ウィルの勝ち方が壺に嵌ったらしく、腹を押さえて笑い続ける。

相方呼ばわりされてカンにさわり怒鳴り返すが、それなりの実力者が見れば不審に思う戦いを「強運」というので不振に思う。

ランスの想像通りユランは試合を見てなかったので、先ほどの試合を運と勘違いしたと理解する。

ただ、イチイチ説明する義理はないと、笑い続けるユランを放置した。

 

 

一方、マッチョなオッサン。

 

 

「エグイ勝ち方してんな。アイツが居るのかよ……こりゃぁ、優勝は無理か。はぁ~……」

 

顔見知りの試合をみながら、ネイルの行った事を理解した様子。

今度の大会こそ! 優勝を目指して鍛えたのがウィルには勝てないと諦め、ため息を漏らす。

 

 

イケメン成年は。

 

 

「うわ~。闘気(・・)って、あんな事(・・・・)もできるんだ。日光さんが重要視するわけだよ」

 

魔法によって転倒は気付かず、昨日かるくかじった事で気弾を目視でき、闘気法の重要性を認識した。

日光の教えが正しい事を再認識し、対人戦を多く経験しようと両手を握り意気込む。

 

 

仲良し、元盗賊兄妹はというと。

 

「あははは。さっすが、兄ぃ。キッチリ仕留めたね♪」

「ホント、見事だよな……あんなことは、真似できんよ」

 

ただ、勝つだけとは思っていなかったが、事故に見せかけて仕留めた事を褒める少女。

注意深く試合を見てたことで、魔法と気弾を見て手腕に感服する。

妹は気弾を飛ばせるが、自身は身体強化までしかできない。

才能の差を悔しいと思いつつ、いずれは自分もあの領域にと夢を馳せる。

 

そして、次の試合が始まる。

 

 

―Aブロック、第二試合―

 

 

「残念でしたね。ハニワ神のお導きですよ」

「ぐっ、無念……」

「それまで! 勝者、おたま男選手!」

『おたま男選手のハニーフラッシュ炸裂。連発でチャネラー伊藤を近づける事無く、勝利しました!』

 

おたま男は伊藤の急所を突き、指一本で相手を沈める事を知っていた。

そのため、会得したハニーフラッシュ連発で勝利を収めた。

 

 

―Aブロック、第三試合―

 

 

「おりゃぁ!!」

「ぐふっ!? ま、まだ何も、ホラを……がくっ」

「それまで! 勝者、ボーダー選手!」

『流石、毎年優勝候補筆頭(・・・・)は伊達じゃない! サミー選手に一言もトークさせる事無く、一撃で撃破しました!』

「……をい。シュリの奴……嫌なところを主張しやがって」

 

バーダーの実力は本物で、トークを言う間も与えず勝利した。

シュリさんはボーターの顔見知り。

ボーダーの宿命をよく知るからこその解説。

因みに、オッズは1.1と3.0とボーダー優勢と規格外。

 

 

―Aブロック、第四試合―

 

 

「よいしょー! ありがとう御座いました」

「……ラー……」

「それまで! 勝者、健太郎選手!」

『イケメンの健太郎選手が難なくラフレシア頭巾選手を撃破。今大会は美形が多く、私は嬉しいです!』

 

健太郎も戸惑いはしたが、日光の教授のお陰で勝利を収める。

シュリはホントに解説に私情が入りまくり。

ただし、後半の解説には女性客が賛同し、男達の嫉妬の怨念が飛び交う。

 

 

―Bブロック、第一試合―

 

 

「ふんっ! 口だけでしたね」

「おー、のー……我が負けるとは……ウルルルゥ~」

「それまで! 勝者、チルディ選手!」

『おおっと、小柄なチルディ選手。ナニが気に入らないのか、瞬殺で勝利。カリギュラ選手の薔薇と衣装を切り刻んでの勝利です』

 

どうやら、自身によったカリギュラに苛立ちを感じ、ストレス発散をしたチルディ。

うつ伏せに倒れ、涙を流すカリギュラを見下ろす。

 

 

―Bブロック、第二試合―

 

 

「いっつ、ギャラクシー!!」

「うくっ……お、良い歌が浮びました……」

「それまで! 勝者、ドルガーラ選手!」

『レーザーブレード強し! カキタロス選手のソードを焼き斬り? 見事勝利を収めました』

 

ドルガーラは、なにやらハイテンション。

カキタロスも負けてた経験を元に一句浮んだ様子。

シュリの解説は案外的を得ており、次の試合の参考になる一言だった。

 

 

―Bブロック、第三試合―

 

 

「う~、ヒック。弱すぎるのだ! つまらないのだ!」

「×××××××××!?@:&%$×××××××××」

「そ、それまどぇ。ショウシャ、アッシュ船首」

『……えーと、アッシュ扇子凄し! 可笑しいのですが、彼だからこそ勝てたと言えるでしょう?』

 

酒に酔いながら、勝利を収めたアッシュ。

彼以外勝てなかったを思える試合で、パニィやシュリは勿論、観客の口調や思考が麻痺する試合だったようだ。

シュリやパニィも後で録音ラレラレ石を見て、恥ずかしい思いをしたとか。

 

 

―Bブロック、第四試合―

 

 

「あんた……弱いね」

「ち、ちくしょー!」

「それまで! 勝者、大和選手!」

『意外な結果となりまりました。正直、ナチス選手が勝つと思われましたが、大和選手の勝利です』

 

ナチスの拳をヒラ、ヒラリと交わし投げ飛ばす。

飛んでは跳ね、蹴り、ド突く等してナチスを立てなくしての勝利。

吼える元気はあっても、体が起き上がれずに負けた。

 

 

―Cブロック、第一試合―

 

 

「ふぅ、良い試合だったよ」

「ず、ズビィム……」

「それまで! 勝者、ユラン選手!」

『流石はチャンピオン! 巨体なゲラーミン選手を華麗な動きで翻弄し、見事勝利を収めました』

 

ビームは厄介と理解してるユランは、巨体の周りを素早く動き蝶の様に舞い、蜂の様に刺す行動を続け勝利する。

拡散するビームでも、連射が出来ない為に大きな固定砲台的と化して舞台に伏せる。

 

 

―Cブロック、第二試合―

 

 

「まけ……負けられない」

「ぶ、ぶぁかなぁぁ!」

「それまで! 勝者、斉藤選手」

『美少年の勝利! 今大会は、本当に目の保養になります! このまま、勝ち続けて欲しいです! ただ、何故かたまに消えるのは、何故でしょう?」

 

影が薄い美少年斉藤は、持ち前のステルス? で、総統Kの目視外から攻撃し勝利を収めた。

Kの握力が常人の二千倍といわれていても、?まえたり当らければ意味が無いのだ。

シュリは今大会で一番の壊れようで、美少年の斉藤を褒めると同時に本音が駄々漏れ。

ただ、ネイルが学園から女生徒を呼んだ所為か、シュリの解説に黄色い歓声がよく上がる。

 

 

―Cブロック、第三試合―

 

 

「くっ!……ま、負けました」

「それまで! 勝利者、ソウル選手!」

「いっえ~い! わたしの勝ちー!」

『高速美少女対決は、ソウル選手に軍配が上がりました。本当に目で追うのが大変な試合でした!』

 

白井クナイの首にソウルが【連文節レイピア】を当てて、負けを宣言させる。

パニィが手を上げて勝敗宣言し、それを聞いて腰鞘に剣を仕舞いピョンピョン と、跳ねて喜ぶソウル。

シュリの解説通り、ふたりの少女は非常に早い速度で舞台を駆け抜ける。

クナイは【忍者】技能により速力を増し、ソウルは闘気法で速力を上げていた。

常識外な動きと速度に、観客は目で追うのがヤットな戦闘を繰り広げていたのだ。

 

「んじゃ、待機部屋で、やっすもーっと」

「あ、待ってください」

「うにゅ? 何か用?」

 

舞台を降りて入場口に向かうソウルを呼び止める。

クナイに呼び止められて振り返り2、3話をした後、二人は会場を後にする。

 

 

―はの5番VIPルーム―

 

 

もう、何度目かの掛け金払い出しに、部屋はアルコールが入ってないが宴会状態。

給仕女史達も多数雑ざり、ソウルの勝利を称え儲けを喜ぶ面々。

 

「――ああ、クナイちゃん、ソウルちゃん。大丈夫よね?」

 

そんな中、奈美は知り合いのクナイを心配する。

男性に負けた訳でないのでその危険はないが、ソウルの言う事を聞かなければならない。

普通大丈夫だが、ソウルには前例があるので不安が絶えない。

 

「――むぅ? 奈美。何が心配なんだ?」

「ええ、彼女の家訓で、って、え? ウィルさん!? どうして此処に?」

 

二人を不安げに見送る奈美の横から声がかかる。

横を向くと居る筈のないウィルの顔が間近にあり驚くも、何故この部屋にいるのかと問いかける。

大会選手は待機室にいるはずで、この場にいるのはおかしいはずだ。

 

「ああ、彼女を連れて来たんでな」

「どうも、お邪魔してます」

 

ウィルは腕に抱きつく女性を指差し、女の子も奈美に対し頭を下げる。

白いドレスのような服を着て、オレンジ色の長い髪に羽飾りを付けた女性に一同の視線が集中する。

多くの者が、目の前の女性が誰なのか一瞬理解できす、メルとドロシーは直ぐに分かり手を差し出す。

 

「あら、意外に早かったわね。ようこそ、私はメルフェイス・プロムナードよ」

「いいじゃない、似合ってるわよ。私ドロシー・ノイマン。歓迎するわ」

「はい♪ こちらこそ、よろしく。コレ……ご主人さまに頂きました♪」

「ご、ご主人さま!?」×一同

 

二人の言葉に笑顔で答え握手を交わす女性。

ドロシーに褒められ、クルリと一回転して服をなびかせ爆弾発言をする。

ご主人さま発言に、一同が驚愕な顔してウィルに視線を向ける。

そして、葉月がいち早く気付き、女性の正体を言い当てる。

 

「あ、奴隷の首輪! ま、まさか。マニさん?」

「ええ。そうですけど……どうかしましたか? トーナメント表の前で、皆さんにお会いましたよ?」

「……うえぇぇぇ!? うそぉっ!」×一同

 

綺麗な服に似合わない首輪を見て、葉月がマニの名前を言い当てる。

マニは首をかしげ、自己紹介をしたわけはないが、名前は知ってる筈だと皆を見渡す。

一瞬の間の後、一同は驚きの声を上げる。

一見で気付かないのは無理も無い。

服が違う、肌や髪のツヤ質が良く、何より明るい見違える笑顔と表情や雰囲気が、まるで変わって別人に見えた。

同じ奴隷服に身を包まれ、暗い悲しそうな表情は何処にも存在しないのだから。

 

「は? ちょっと。奴隷の首輪外してあげなさいよ」

「いや~、俺も取ろうとしたんだけどな」

「駄目です! コレを取ったら、ご主人さまの側に居られませんっ!」

「……だってよ。大丈夫と言っても、聞く耳もたなくてよぉ~」

 

ドロシーが言われて不釣合いな奴隷の首輪に気付き、どうして解放してやらないのかと呆れる。

左手の人差し指で頭部後ろ、首と髪の襟足をポリポリ と掻きながら説明する。

すると、腕に抱きついてた手をいっそう強く抱き付き、首輪が絆と言ってるようだ。

 

 

―1時間30分前―

 

 

待機部屋についた後、涙目になりながら簡易ベットに寝そべるマニ。

悲しみと諦めた顔して投げやりに見える。

目を閉じて、その時を待っても触れられる事ない。

どうしたんだろう? と、目を開けると目の前にネイルの顔があり。

 

「可愛いな、マニ。安心して、俺に任せな……んっ」

「え! んっ、ん~、んぅ……」

 

マニを褒めながら頬を撫で、そのまま優しく口付けして負の感情をご馳走になるウィル。

マニは初めてイヤラシイ表現の篭ってない、容姿とマニ本人に対しての「可愛い」と言う言葉に虚をつかれた。

そのまま翻弄される中、胸に秘める悲しい気持ちが軽くなり安らぎを感じる。

今まで、ドギには暴力と恐怖によっての行為しかなかった。

しかし、今は逆に優しい言葉と褒め言葉。

まったく反対の行為に、戸惑いながらも変えられていった。

 

一回目が終わった後、水風呂による治癒効果で体を治してもらい。

二回目には自身から求め、終わる頃には重度の依存と酔愛に換わっていた。

 

 

―現在、VIPルーム―

 

 

マニの惚気を途中でドロシーが食い止める。

別にこのまま聞いていても良いのだが、この場には他者が多くいるし、親たちもいる。

一般的にそれは、聞いていて恥ずかしい内容だ。

 

「はぁ~、分かった。私たちが説得して、メルに外させるわよ」

「ああ、頼む。それより、ソウルの何が心配なんだ?」

「えっと……それは、その~……」

 

ドロシーはため息を漏らしながら、短時間で堕ちたマニの説得を申し出る。

マニを彼女たちに任せ、それよりも先ほどの奈美の言葉が気になり問いかける。

奈美は、どう説明していいかと目を逸らし悩みながら、白井家のしきたりを話す。

 

「――惜しい!! 何で俺、のごぉ!? ぶごっ!?」

「「「黙れっ! この、女の敵!!」」」

 

ウィルが白井カタナやクナイの対戦を悔しがると、魔樹が足を踏み、奈美が裏拳を咽喉仏にかまし、メルが回し蹴りを食らわし壁に激突させる。

美樹と魔樹はこの部屋の使用目的で、腹立たしい思いをしていた。

更に初めて見る、連れて来たマニとナニしてたのかは嫌でも分かり、怒りを覚えた。

流石にこの場で血を噴出させるわけにはいかず、少女らしい行動を選んだ結果の行動。

奈美は心配してるのに「この人は!」と怒り、密集した状態で投げると迷惑かかるので、思いついた攻撃を加える。

メルは的確に邪魔にならない方向に蹴り飛ばし、今朝の一件を再度行う気かとご立腹。

 

「……え? み、美樹、さま?」

「……懲りない、お人ですね」

「そうよね。もう、諦めるしかないのよねぇ」

 

日光は、今まで見たことのない”美樹”を見て、驚きが隠せない。

口調や雰囲気は勿論、魔王の気配が強くなってる事に驚き、何でなのかと不安にかられ思案する。

甲州院の母娘はかなり悟った様子で、吹き飛ばされるウィルを眺める。

多分ナニを言っても、何度言っても無駄なのと、怒る気すら起きないようだ。

 

何時ものオシオキ? のお陰で、奈美は怒りで不安要素を忘れてしまった。

ソウルとフララの関係を、ソッチの毛が存在しておりクナイの行く末が身近に有る事に。

 

その後、ウィルは何事も無かったかのように、マニを任せ待機部屋に戻って行った。

 

 

―Cブロック、第四試合―

 

 

「でやあぁぁっ! ねーちん! 俺はやったぜ!」

「少年よ……見事なり」

「それまで! 勝者、アジマフ選手」

『魔法を放つ間を与えず、斬って切りまくり。何とか勝利をモノにしました!』

 

 

ワートナーの大魔法「てぃるとうぇいと」は精神集中と詠唱に時間がかかる。

それを知ってるからこそ、時間を与えず攻め続け勝利した。

負ければ姉の折檻の恐怖に、魔法に対する恐怖を克服したのかは不明なところ。

両手を掲げ、一勝の喜びを全身で表す。

 

 

―Dブロック、第一試合―

 

 

『よっしゃあぁー! いいぞ、レオー!』

「よし。バニラが居なくても、勝てた……」

「脳味噌……ぐっ……」

「それまで!勝者、レオパルド選手」

『またしても、美少年の勝利! 匠な鞭捌きで、辛くも勝利を収めました! 本当に今大会は豊作です!』

 

観客席から、一人の女の子から祝杯の声が飛んで来た。

此処に、ウィルによって活躍の場を奪われ、従魔がキャプテンバニラだけな少年が独りで勝利する。

クスシとバニラがテレポートゲートに取り込まれる際、一緒に居たウィルがとある世界に付いて行った為に活躍の場を奪われた青年。

シュリや女性観客、特にパリス学園生徒が喜ぶ試合であった。

 

 

―Dブロック、第二試合―

 

 

『さあさあ。盛り上がる次の試合は、イケメンVS変態マッチョの対決です! 私は是非バウント選手に勝って欲しい! 私だって似合うし、まだ履けるんだから!!』

「……えーと、私的な解説はいいとして。それでは、試合始め!!」

 

実況のシュリさんの解説に、またもや私的事情で応援している様子。

どうやら、ぶるま大使に「残念、貴女は年を取りすぎている。幼ければブルマが似合ったのに」と、言われた事を怒ってる様子。

パニィは、顔を渋めながら試合開始の合図をすると、3歩下がり二人の様子を確認する。

 

「ん! よし、それじゃ、行くか」

「むぅ?……おお、なんと可憐な少女達。ブルマがよく似合いそうですね」

「あん?……ナニ言ってる?」

 

VIPルームの方に目を向けると、手を振る少女達が見えるので手を振り【ライトソード】を抜き構えるバウンド。

無手のぶるま大使は構えたまま、手の振られた先を見る。

VIPルームの少女達を見つけ構えを解く。

真剣な顔でなにやら意味深な事を言うのでバウンドが問いかける。

 

「おお? アナタはブルマ教に興味が御ありで? あの子達にブルマを履かせ、アンナ事やコンナ事をするのですよ」

「!……せん……させんぞぉ!! この変態がぁ! あの子達はオレのモノだぁ!!」

(はぁ~……残念。イケメンと思ってたのに……どっちもドッチじゃない)

 

ぶるま大使の解説に、ハウンドが切れて似たもの同士な発言を叫ぶ。

ただ、会場は観客の活気に溢れ、二人の会話や叫びは聞こえない。

舞台で審判をするパニィと、読唇術を使う忍びの二人しか内容が分からない。

二人の残念な男達を見ながら、内心ため息ついてこの場から立ち去りたい気分の様子。

 

普段の温厚な雰囲気のバウンドは、荒々しい戦闘を開始する。

一度抜いたライトソードを鞘に収め、ぶるま大使を同じく素手で殴りかかる。

意外と冷静で、剣を持ったまま戦うと殺す可能性を見越しての判断。

 

体格差の関係でぶるま大使優勢と思われたが、バウンドは闘気法を使い接戦な試合をした。

 

「ぐふっ……お見事。じ、ジークぶるま!」

「それまで。勝者バウンド選手」

「ふぅ、はぁ……コイツ、使えない(・・・・)のに強かった」

『マッチョ対イケメンの殴り合い! バウンド選手が見事制しました! ありがとう!」

 

全身傷と痣だらけのぶるま大使は、お決まりのセリフを残し右手を天に掲げ舞台に倒れる。

それを確認して、パニィが勝者宣言をする。

荒い息を整えながら、まさか一回戦からこんなに苦労させられるとは思わず、気を使えて良かったと冷や汗を流す。

気とは違う「ぶるまじっくパワー」の効果で実力が均衡しており、どうにかレベル差で勝利したのだ。

 

 

―Dブロック、第三試合―

 

 

「ふんごぉぉ!!」

「ちっ、流石こんご。強いぜ……」

「それまで、勝者、こんご選手」

『えー……何時もの光景ですね。巨人だけに、サイボーグ松下選手を圧倒しました』

 

今回のカードは、普段のコロシアムでも行われている。

女性客には分からずとも、常に来てる者達にとって当然の結果。

オッズも1.3対1.7とこんご優勢だった。

 

 

―Dブロック、第四試合―

 

 

『いよいよ、一回戦最後の試合です。そして、本大会6美女最後の一人の対戦です。私としては、やはりカタナ選手の勝利を願います。女性は強い! と言う事を証明して欲しいです』

「おほ、白井カタナちゃん。間近でみると、いっそう可愛いではないか」

「……(負けられない。あの男の事を聞きだす為にも、こんな無名選手に負けるわけには行かない……私自身の為にも!!)」

「それでは、一回戦、最終試合……始め!」

 

シュリの相変わらずな表現と私的な解説。

やはり、初見で会った相手の印象で、ひいきな解説するのはどうかと思われる。

ランスは観客席から眺めてみた、JAPAN美女を間近かで見て「可愛いと」言い鼻の下を伸ばす。

一方、カタナは長刀(薙刀)使いと言われてるが、見た感じ「管槍」と言った方が近い槍の刃先を下に向け目を閉じている。

思うのは、この大会に出場した目的の男の行方。

そして、勝ち進む事と絶対に男に負けられない事情。

パニィの合図と同時に、お互いに距離を詰める。

 

「はああぁぁ! せいやぁ!!」

「むっ!? ぐ! やるな、カタナちゃん」

 

カタナの殺気と覚悟を乗せた一撃を、ランスはなんとか受け止める。

踏み込み、速度、威力共に申し分ない。

普通の戦士なら一撃で負ける程の攻撃だったが、一流であるランスを仕留めるには足りなかった。

 

「くっ!? せい! やぁ! はぁ!」

「ふっ! はっ! お? ん?」

 

一撃で仕留めるつもりが、防がれて表情に出るほど驚きつつ連続攻撃を浴びせる。

槍と剣の間合いの関係で受けにまわるランスだが、後半はなにやら余裕と疑問を見せる。

 

最初の一撃はランスでも気を抜けば負け、もしくは死ぬと思われるほどの一撃だった。

けれど、連続攻撃を受ける内に、その攻撃に殺気や力が入ってない事を不思議に思ったようだ。

その連続攻撃は、見た目には見事で型になっている。

しかし、最初の一撃に比べて劣るのが、受けてるランスにはよく分かる。

模擬戦をしてるような、演技の円舞を見てるような感覚に。

 

それもその筈、カタナはクナイとしかまともに長く剣を交えてない。

旅をする間や道場に来る道場破りを撃退する時、一撃の元で倒して来た。

今してる連続攻撃は、クナイとの模擬戦に使う連撃。

覚悟と殺気を込めるには、一歩足りない部分があった。

 

「うおおぉ! りゃあっ!」

「っ! なぁ!?」

 

カタナの上段からの斬り下ろしに対し、ランスは気合と共に突撃して紙一重で避ける。

そして、気を剣に纏わせ柄の部分を切り落とす。

カタナは二つに分けられた長刀を見て、驚きを隠せない。

 

「くっ! まだ、負けてない!」

「ふん! 意気込みはいいが、おわりだぁ!!」

 

一旦後退するカタナは、刃先の方を持ち換えリーチの差を無くし刀と同じ構えを取る。

心意気は認めるが、長刀と刀では扱いが慣れてないのは目に見える。

一気に突撃して剣を振り上げ切りかかる。

 

「っ!(最後のチャンス! 勢いを利用して、そのまま場外に!)」

「もらっ、む!?(やばい! この構え、この感じは何処かで……あ!!)」

 

接近すると同時に長刀を放かり、ランスの両腕の服を掴みそのまま後ろに倒れ込む。

ランスは武器を捨てたカタナに「自棄になったか?」と思うが、直ぐにその考えを改める。

カタナの構えと気配に危機感を覚え、過去の記憶を思い起こす。

そして、つい先日投げ飛ばされた事を思い出し、剣と盾を放棄する。

 

「このまま、巴投げ!」

「(奈美さんより遅い。技のキレが甘い!)なんのぉ!! ランストルネード!!」

 

柔道の巴投げで場外を狙うカタナ。

しかし、ランスは奈美という柔道の上位者に、同じ技で投げられた経験がある。

思い出すと同時に、カタナの投げに隙と対策を直感で考え体が反応する。

足を広げ体を回転させて、先ほど突撃してきた勢いをずらす。

そのままカタナの両手袖を掴み、一緒に横に倒れ込む。

 

「きゃあ!」

「いってー! が、なことより! とおー!」

「いたたた……え? くっ、ま、参りました」

「それまで! 勝者ランス!」

『おーっと! 長刀を真っ二つにされ、カタナ選手の投げに持ち込んだのを辛くも防ぎ。ランス選手が勝利を収めました!』

 

背中を強打するが、鎧のお陰で衝撃のみ。

痛みを堪えて先ほど捨てた剣を取り、変な体制で倒れたカタナに剣先を突きつける。

流石に巴投げをアンナ方法で防がれるとわ思わなかったカタナ。

肩と背中を打ち痛みに耐えながら起き上がるが、目の前には剣がある。

この状況を打破する事はできないと、悔しみながら負けを宣言する。

観客の多くが白井カタナの負けを残念がり、多くのものが賭けに負けた。

無名と有名の差でオッズでも、勝者はランスとは思われてなかった。

 

その後、白井カタナも入場口に戻るランスの元に駆け寄り。

 

「あの、お、話があるのですが……」

「ん? なんだ? 言ってみろ」

「此処では……待機部屋の方で……」

「まあ……別に、いいけどな」

 

妹のクナイと同じようにランスに話があると呼びとめ、一緒に勝者の部屋に向かった。

ただ、カタナの負けた男の相手はランス。

この後、カタナに不幸が訪れるとは本人は思っても居ない。

一応、負けたことで覚悟は決めていたのだが……。

 

 

 





   ≪武器≫

  【連文節レイピア】

カラーが好んで使うレイピア。
軽さ・長さ・しなり・命中率に速力付与がされた武器。
ソウルの身軽な戦闘方法にあった武器で、あの夜の後にウィルから渡された武器の一つ。


  【ライトソード】
  
シードより譲り受けた中々の名剣。
切れ味と耐久力は中々の一品。
多少荒っぽいバウンドに丁度良いと渡した剣。


   ≪技≫

 【ランストルネード】

単に、脚を開いて体を回転させただけ。
投げの勢いを違う方向に向ける為の行動で、なんとなく名づけた技?


  ≪余談豆知識≫

  【剣戦闘】について

剣戦闘は斧・槍・刀・短剣の最上位スキル。
剣戦闘が有れば、大抵の武器を扱えるものと独自設定。
刀も扱え、刀戦闘があれば扱いがより上手くなると認定。

それ故、ソウルが短剣を上手く扱う理由付け。
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