Fate/wizard of genesis 作:ゆーーーーん
「――告げる。
汝の身は我が下に、わが命運は汝の剣に。
聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ」
黒髪の少女、遠坂凛は唱える。
「誓いを此処に。我は常世総ての善と成る者」
魔力の流れによりカーテンはなびき、羊皮紙は舞う。
「我は常世総ての悪を敷く者。汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ。
我に従え!ならばこの命運、汝が剣に預けよう!」
眩い光が部屋の魔方陣に集まる。数々の偉業を成し遂げ、人々が憧れる英雄が今ここに顕現する。
「間違いなく最強のカードを引き当てた!」
自分の中の魔力がすべて抜けていくような感覚に期待と興奮に胸躍らせる遠坂凛の目の前には最良のサーヴァント、セイバーが現れる、、、はずだった。
しかしそこには長い青髪を一本の三つ編みにし、先端から植物の生えている杖を待ち、アラビアン風の衣装を身にまとった少年が立っていた。
「やあ、初めましてマスター、僕はアラジン。
キャスターのサーヴァントさ。」
「キャ、キャスタァァァァァァァァア!?」
セイバーどころか三大騎士クラスすら逃しよりによってキャスターを引き当てるなんて…
触媒はちゃんと用意すべきだった…
今更過ぎる後悔をするうっかり遠坂にアラジンは心配そうに話しかける。
「大丈夫かい、マスター?」
「ごめんなさい大丈夫よ、気にしないで。
それよりあなたの真名は千夜一夜物語の
アラジンなの?」
凛は立ち直ってはいないが目の前のサーヴァントに向き合うことにした。アラジンと言えば千夜一夜物語の物語のひとつ、アラジンと魔法のランプの主人公である。さらに、アラジンには最強とも言える魔神がついている。その力を使うことが出来るのなら聖杯戦争に勝利することが出来るかもしれない。しかし、凛の問に対しアラジンは首を横に振る。
「そのお兄さんとは同じ名前なだけさ。僕はマスターの世界では無名のサーヴァントになるね。」
凛の期待はことごとく裏切られる。さらに、無名のサーヴァントときた。
聖杯戦争にとって真名は重要な情報になる。知名度が高ければ補正がかかるが有名なほど弱点も知られやすくなってしまう。逆に無名ならばそういった心配はなくなるが補正はかからない。
「む、無名…」
無名のサーヴァントと聞いた凛は静かにため息をつく。
凛とは裏腹にアラジンは部屋にある儀式の道具に楽しそうに眺めていた。自信を無くしかけるマスターを従者は励ます。
「大丈夫だよ、マスター。君が呼び出したサーヴァントが弱いはずないじゃないか!それに、君はきっとそんなことで負けを認めて諦めたりなんかしないはずだよ!」
アラジンの言葉に凛は顔を上げ自らが呼び出したサーヴァントの目を見つめる。
「だって君はこんなにもすごい儀式をやってのけたじゃないか!」
子供みたいに笑いながら自分を褒めてくれたサーヴァント。そんなアラジンを見て凛はつい笑ってしまう。
「サーヴァントに慰められてるようじゃマスター失格ね。いいわ、あなたは最高のサーヴァントよ。改めて宜しくねアラジン。」
「うん!よろしくね、マスター!」
ここにうっかり魔術師と創世の魔法使いのコンビが誕生する。
「ところで、マスター?」
「なにかしら、アラジン?」
ここで、アラジン要らぬ疑問を抱いてしまった。
「マスターは女……の人なのかな?」
アラジンは凛の胸元を見ながらそう聞いてしまう。
何かを察した凛の顔はみるみる赤くなっていく。
「女に決まってるでしょうが!やっぱり最低のサーヴァントだわ!!!!」
顔を真っ赤にしながら撃たれた凛のガンドはアラジンの顔面に炸裂する。
「マ、マスターごめんよ…」
「もう知らない!」
ドアを強く閉め部屋を出ていく。
2人の始まりは最悪になってしまった。