ハリーとジャスミンは席が隣同士だ。ジャスミンが何か言いたいときは、手話で伝え、それをハリーが代弁する。
ジャスミンは幼少期に、衝撃的な場面を目撃してから、そのショックで失語症になってしまったため、話すことができない。検査の結果、咽頭や聴覚には異常がないのにもかかわらず、事件以後、発話することができなくなってしまった。おそらく、ショック症状によるものと思われる。回復の余地はあるのだろうが、精神的なものが原因である場合は、リハビリには時間がかかってしまうようだ。
今は、理科の授業中。今日はアトム(核)と放射能についての単元だ。授業がはじまって、数分後、ジャスミンは手を震わせながら額にびっしょりと汗をかいていた。
ハリーが驚いて、手話で(どうしたの?だいじょうぶ?)と尋ねる。ジャスミンは手話で(吐きそう・・・医務室に行きたい)と答えた。
「先生!ジャスミンが具合が悪いそうなので、医務室に連れて行きたいんですが」
教師もジャスミンの様子に気が付き
「私が連れて行こう」と言うと
「僕も一緒に行きます!」と、率先して手伝いを申し出た。
医務室のベッドに横たわったジャスミンは
(ハリー、ありがとう)と、手話で礼を表した。
「授業のノートは後で届けるから、ゆっくり休んで。帰りは僕が送って行くよ。」
ハリーの言葉に、ジャスミンはゆっくり頷いた。
教室に戻って、授業が終わるとムハマドがハリーに近づいてきた。
「ジャスミン、どうだった?」
「うん。ベッドに横になったら、震えは止まったみたいだけど、帰りは僕が送っていこうと思う。」
ジャスミンを心配してくれる、ムハマドの優しさがハリーは嬉しかった。
「ハリー、僕も一緒に送っていくよ」
ムハマドが申し出た。
「ありがとう!でも、検査に遅れちゃうんじゃないか?」
ハリーはムハマドの検査予定を心配した。
「大丈夫。今日は僕だけの検診だから、先生も時間の余裕をもって診てくれるから」
自分の体の心配より、ジャスミンの心配をするムハマド。
「ムハマド、ありがとな。でも、無理するなよ」
ムハマド、ハリー、ジャスミンは低学年の頃からずっとクラスも一緒で、3人でよく遊んだり、勉強を教え合ったりしていた。ムハマドも、ハリーも手話が解るため、ジャスミンにはとても心強く、優しさと思いやりでいっぱいの2人の男の子はかけがえのない友達だった。
授業が終わり、ムハマドとハリーは医務室に寄り、ハリーがジャスミンをおぶり、ムハマドはジャスミンのカバンを持って、家に送り届けた。
「ハリー、今日はサッカーする時間がなくなってしまったね。よかったら、これから一緒に僕の家にこないか?それでサッカーボール、しばらく預かってくれよ。僕はしばらく使えそうにないから。」
ムハマドの申し入れに、申し訳ないと思いながらも、ハリーは喜んで提案を受け入れた。
「ムハマド、ありがとう!恩に着るよ!!」
ムハマドから預かったボールが、形見分けになるとは、そのときは夢にも思わないハリーだった。
心優しいハリーとムハマド。2人の友情がジャスミンの失語症回復に大きな影響を与えていく。次回は、ハリーとムハマド、ジャスミンの3人の友情の証となるものを見つける。
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新部署でのお仕事は、とりあえず無事終わりました。
ばってん
ドキドキですよ・・・ジャスミンよろしく手がプルプル震えちゃいました・・・。
馴れ合いはいけませんが、新しいコトが始まるってのも、心臓に刺激が強すぎますね。
さて、2人の男子と一人の女子が、将来、世界に大きな影響を与えていくという、そのプロセスをみていくとしましょう。