向日葵畑の向こうに(完)   作:coltysolty

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ハリーの願いは届くのか・・・


追悼の日

小さい棺に寝かされた

ムハマドの表情は穏やかだった。

 

参列者は続々と棺の中に花を手向けた。

泣きじゃくるジャスミンの肩を抱きながら

ハリーは一輪の百合の花をムハマドの頬の横に置いた。

 

教会は悲しみに包まれていた。

ジャスミンを助けた後、一旦は回復したムハマドだったが

持病だった白血病が悪化し、体調が急変した。

 

骨髄移植をすれば回復の可能性もあったが、ドナーが現れず

その夢も叶わなかった。

 

「一緒に遊ぼうって言ったのに・・・

サッカーボール一緒に蹴ろうって思ってたのに」

 

ハリーは無念さでいっぱいの心をもてあました。

結局自分が何もできなかったもどかしさをどう

処理してよいのかさえもわからないでいた。

 

その時、ムハマドの父がハリーとジャスミンに

近づいてきた。

 

「ハリー、ジャスミン。今日は参列してくれて

ありがとう。いつもムハマドから話をきいていたよ。」

 

「おじさん・・・ぼく・・・」

言葉をつまらせるハリーに、ムハマドの父は

ハリーの肩にそっと手を置いた。

 

「ムハマドがいつも褒めていたよ。ハリーは男らしくて

正義感あふれる子だって。運動神経もよいし、やさしいし。

友達でいてくれてありがとう。ムハマドは、君たちと一緒に

過ごすことができて、幸せだったんだよ。」

 

ジャスミンは泣きはらした目を真っ赤にし

しゃくりながらムハマドの父を見上げた。

 

「ジャスミン、これを君に」

ムハマドの父が1冊の本を差し出した。

 

「これ・・・?」

ジャスミンはムハマドの父から渡された本を受け取って

開いてみた。

 

するとそれは幸せの四つ葉のクローバーの話がかかれた

絵本だった。

 

「ムハマドは小さい頃からこの本が好きでね。

何度も何度も読んでいたんだよ」

ムハマドの父は包み込むようなやさしい声で、ジャスミンにささやいた。

 

「それから、これはハリー。君に」

ムハマドが大事にしていたサッカーボールだった。

ハリーが預かっていたものだったが、お見舞いにきたときに

一旦ムハマドに返した、そのボールだった。

 

「大人になっても、ずっとサッカーを続けておくれ」

 

涙をこらえながら、ハリーはだまって頷いた。

 

 

 

教会の鐘が鳴り響き、参列者達はムハマドを送った。

 

 

***************************

 

 

大切な友を失ったジャスミン・ミルタンとハリーは奨学金を得て

特待生として上級学校に進み、医学部へと進学した。

 

2人は病理学を専攻し、原子力の核から生じる放射能がもたらす白血病について

研究し、論文を発表しようとしていた。2人の共同研究は

後に白血病の権威となり、2人は日々研究に労力を費やすのであった。

 

ところが研究の過程で、今度はジャスミンが白血病を患ってしまう。

ドナーを捜している時に、ハリーと骨髄が一致することがわかった。

赤血球の型は違っていたが、HLAという白血球の型が一致していたため

骨髄移植が可能という結論に至った。

 

 




まだ若い命の火が消えてしまうことは悲しいですね。
その悲しさをバネに、ハリーとジャスミンは研究に勤しむことを
決心したのでしょう。

2人の努力が人々のためになることを祈って。
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