IS-Greedy beast-   作:reizen

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#3 桂木悠夜の科学者理論

 ―――どうして俺がガキの茶番に付き合わないといけないんだ?

 

 その発言が馬の空気を悪くしたのはわかったが、だからと言ってこっちも引く気はない。

 

「こっちとしてはせっかくの新天地だし少しは譲歩してやろうと思ったが限界だな。でだ、織斑先生。言葉の意味が理解できないようならもう一度言ってやろうか?」

「………いや、言葉の意味は理解している。だが何故だ? クラス代表になれば少しで周りにアドバンテージが―――」

「生憎俺はリーダー気質じゃねえし、そもそも尻軽共を調教するほど暇じゃねえよ」

 

 アドバンテージ? 何それ美味しいの?

 織斑をクラス代表にする理由はまぁ理解できなくはない。容姿端麗でかの有名なブリュンヒルデの弟という事ならば今後の活躍も期待できるだろう。それに俺は整備科志望だし操縦技術なんて少し覚えていれば問題ないくらいだ。

 

「ちょっと! 私たちが尻軽ってどういうことよ!?」

「オルコットの発言に散々イラついていたくせに織斑がハンデの話をした時にあっさり手の平を返した奴を尻軽と言って何が悪い? むしろ、とっくの昔にハンデを背負っているのにさらにハンデを負おうとしているその姿勢に敬意を称するべきだろうよ」

 

 つまり馬鹿にしているんだけどな。

 

「お、織斑さんがハンデを負ってるですって!?」

「何だ自称エリート、気付いていなかったのか? そもそもISで戦う事自体がハンデを負っているじゃねえか。だがまぁ、オルコットは「素人にISで喧嘩を売った代表候補生」として汚名を着るからある意味対等か?」

 

 そう言うとオルコットはまるで今気付いたような顔をした。

 

「………それは………」

「それともあれか? 今の内に調子に乗りそうな男を潰しておこうという算段か? 確かにブリュンヒルデの弟を手駒もしくは手籠めにしていれば後々有利だろうしなぁ?」

「だ、黙りなさい! わたくしはそのような考えで行動しているわけじゃ―――大体、ここはIS学園。物事をISで片付けるのは一般的ですわ!」

「貴族目線で一般を語らないでくれませんかねぇ? にしても貴族の問題解決方法って物騒だな。小さな揉め事でIS使った代理戦争かよ。簡単な話し合いで済むって言うのにわざわざ一般市民を巻き込んで周囲を破壊するんだぁ。俺、貴族に生まれて来なくて良かったぁ」

 

 完全な煽り。一部ブーメランがあるがオルコットを煽るには十分だろう。

 

「………黙りなさい。今まで何も言わなかった弱い男の癖に!」

「そうよ! 突然喋ってあーだこーだって言ってさ!」

 

 ワイのワイのとテンションを上げる女たち。だから俺は黙らせるためにおもむろに窓を開け、前の席に座る女子の服を掴んで外に投げ捨てた。織斑先生までもまさかそんな行動に移るとは思わなかったようで驚きを露わにする。

 

「弱い男、ねぇ。全くもってお笑い草だ」

 

 なお、今俺たちがいるのは4階。そこから人間が落ちたらまず死ぬだろう。ま、ちゃんと手は打ってあるから問題ない。

 

「臆病だなんだって言うけどさ、それの何か悪いの? 危機的状況を回避したいと言う精神行動なんだから何もおかしくないだろ。そもそも臆病ならそれはお前ら女だろう? わざわざ同じ人間を相手にISという兵器を持ち出さなければ威張ることもできないんだ。それを臆病と言わず何と言うんだ? もしそうじゃないって言うんだったらさ―――」

 

 ―――裏稼業の奴らに裸で特攻しに行けよ

 

 ま、流石に俺もできないけどさ。そもそも俺は一般人。ただ、ちょっと想像力が高いだけのだ。

 

「それよりもだ、桂木。貴様は今自分がしたことがどういうことかわかっているのか?」

「だったら下をよく見てみろよ。ちゃんと生きてる」

 

 全員が窓側に寄って来たので壁を使って回避。俺が放り投げた奴は俺が予め仕込んでおいた超強度ワイヤーによって空中で停止し、壁に叩きつけられる前に同じタイミングで仕込んでおいたクッションが起動して受け止められていた。今も自動で壁で制服が破けてないように間に透明なシートを挟んで上げている。

 

「あ、そいつを殺したくなければ俺が開けた窓を動かすなよ」

 

 忠告すると殺しの片棒は担ぎたくないのか、一斉に離れていく。

 しばらくして俺に投げ捨てられた女子は上の窓に到着した。

 

「………許さない。覚えておきなさい! この復讐はいつか絶対に―――」

 

 引き上げられた生徒は俺に向かって悪態を吐く―――が、エアガンを額に突きつけられたことで黙った。

 

「ちなみにこれって改造エアガンでさ、当たっても死にはしないけど―――物凄く痛いよ?」

 

 腰を抜かす生徒を見てエアガンをしまおうとしたが、後ろから振り下ろされた出席簿を防いだ。

 

「没収だ」

「別にどうぞ」

 

 そう言って俺は織斑先生にエアガンを渡そうとしたが、あることを思い出して少し避けてからちゃんとセーフティをセットして渡した。

 

「それと桂木、先程の暴言や行動は問題に問われる。その奉仕として今度の試合に出ろ」

「断る権利は?」

「ない」

「じゃあ、条件を提示させてもらいましょうか」

「その権限も―――」

 

 俺は織斑先生の足を踏んで止めた。

 

「……貴様」

「なぁに。別にアンタの身体に触れようとか、オルコットにこれまでのことに関してその賠償を請求する気はさらさらありませんよ。それにだ―――どうせ効いてないだろ? そもそもこれはアンタの我儘から始まった出来事。ならば嫌がる奴には出す条件として何か言う事を聞くのは交渉の基本だぜ」

「それは今回の件を不問に―――」

「デモンストレーションを不問にする阿呆がどこにいる? それとも、3年前に玉座を捨てたことで話す術を忘れたか? ランプの精は3つも願いを叶えるんだ。女であるアンタは5つ……いや、オルコットに1つ負担させてやることで4つを叶えるのは妥当だよなぁ? 無理だとは言わせねえぞ、ブリュンヒルデ……いや、ブリュンヒルデだったものと言った方が良いか?」

 

 何かを察した顔をする。というかようやく気付いたのか。さっきのはすべて「(お前ら)よりも技術力と力は上だ」と証明するものに過ぎない。

 

「………何が望みだ?」

「まぁそれは追々、だ」

「待ちなさい。何故わたくしがあなたの言う事を聞かなければなりませんの!?」

「じゃあ俺との勝負方法を変えるか、もしくは俺の参戦自体をなかったことにしたらどうだ? そうすれば俺からの条件を無しにしてやっても構わない。まぁ、代表候補生様がまさか俺から出される条件に怯えて尻尾を巻いて逃げるなんて真似はしないだろうがな」

 

 オルコットは反論の手立てを失ったようで黙ってしまう。

 

「………それで、条件というのは……?」

「俺が試合当日で提案したことを無条件で受け入れることだ」

 

 その言葉に全員が驚き、唖然とする。中には小さく「変態」と呟く奴もいるが、まぁ良いだろう。

 

「どうした? 臆したのか? どのような条件を出されてもただ勝てば良いだけの話。それとも、俺と戦うことに自信がないと? まぁそれも良い。今すぐお前が織斑先生に抗議して俺の出場を無くせばいい。本来、それをするのが代表候補生としてのお前の役目であり、それをしなかったが故に俺の前の席の奴が死にかけたがな」

「それはあなたが勝手にやったことでしょう!?」

「そうだな。だがその原因はお前らが煽ったことだろう? だから俺は見せてやっただけだ。「ISを持たない女なんて弱い男でも簡単に殺せる」という証拠をな」

「でも殺していませんわよね?」

「死んでほしかったのか?」

「そ、そうじゃありませんわ!? ただ―――」

「なるほど。では今度は誰を殺そうか。なぁに。高が一人死んだところで子孫繁栄になんら影響はない。例え貴様が死んだところでいずれ財産が別の奴に渡るか国に寄付して下らないことに使われるのがオチだろうよ」

 

 その存在が死んだところで精々ちょっとした復讐心と悲しみが生まれる程度。世界規模で見れば億単位いる人間の中でたった1つの命が消滅した程度でしかない。

 それにだ。極論で言えば歳の差があれど初潮を向かえた少女でも子どもは作れるんだ。既に0歳から15歳の少女が確認されている時点で子孫繁栄には何の影響もない。

 

「何度も言うが、この状況はお前ら女が招いたことだ。これに懲りたら今後余計なことはしないようにな」

 

 そう言って俺は席に着く。クラスのほとんどからヘイトを集めたが、授業はかなり駆け足気味に進んだこと意外は平和だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「桂木さん、少し話が―――」

「何だ織斑。似合わないシリアスな雰囲気を出してくるな」

「大事な話なんです。その、3年前のモンド―――」

 

 織斑の眉間にペンを突き立てて黙らせる。

 

「織斑」

「………何ですか?」

「この際だから言っておくが、さっきはああ言ったが俺はお前の姉が成した偉業を否定する気はない。例え3年前の大会の時に何があったとしても、だ。というかどうでもいい。そんなことよりもだ」

 

 俺はパーティゲームの一つであるウォーノを出して織斑を誘った。

 

「これでもして遊ぶか。本来なら勉強しなくてはいけないが、今日は今日で疲れただろう?」

「……それはそうですが。でも―――」

「ああ。もしかして条件のことか? 安心しろ。俺は年上には興味がない。よってお前の姉に身体だけの関係を強要する気はない。いや、マジで。というか冷静に考えてみろよ」

「何がですか」

「年上の身体って古臭いって感じがして嫌だろ」

 

 顔を引きつらせる織斑。俺は気にせず紙とペンを織斑に渡した。

 

「これは?」

「せっかくだ。ただやるのはつまらないし、何か軽めな罰ゲームを考えよう。終わったらバレないように紙を負ってこの箱に入れれば良い」

「わかりました」

 

 俺たちはそれぞれ罰ゲームを考えて箱に入れる。そしてゲームを始めたが、

 

「俺の勝ちだ」

「つ、強すぎません?」

 

 このゲームは場と呼ばれるものが存在し、一番上に置かれているカードと同じ色か同じ数字が合えば場に出せるというゲームだ。今回は俺と親友の零司がやっている特別ルールを採用せずにやったが、それでも弱かった。

 

「たまたまだ。それに俺は駆け引きが苦手だ………さて、引け」

 

 罰ゲームが入った箱を差し出す。ちなみにそれぞれ5枚ほど書いたが、果たしてこいつは何を引くだろうか。

 

「……よし、これだ! …………桂木さん」

「何だ? どんな罰ゲームが出た―――流石は織斑。やってくれる」

「やってくれるじゃないですよ?! 何を書いているんですか?!」

 

 織斑が引いたのは、「1年1組の教室の最前列の左端(窓側)に座る女生徒のおっぱいにダイブして顔を埋めて揉みしだく」というものだった。

 

「本来なら、俺が負けた時の保険として入れたものだがな。よくやった織斑。骨はお前の姉が拾ってくれる」

「しかも千冬姉に丸投げ!? って、最初から箒の胸を狙っていたんですか!?」

「そうだな。今時珍しいだろう? あれだけの重りを持っていて綺麗な背筋をしている女子など早々いない」

「………桂木さんって、かなり変態ですよね?」

「否定はしない。というかそもそも、これが人として正しい在り方だ。はっきり言って、同性同士の子どもの作り方が判明していない今という状態で過度な女尊男卑なぞヒト族が消滅するだけだ」

「そして色々と考えてぶっ飛んでいますよね。まるで束さんみたいだ」

 

 どうやら俺と同じ思考を持った奴が他にもいるようだ。何それ怖い。

 

「遅くなってすみません。二人とも………どうしたんですか、織斑君!? 顔が真っ赤ですよ!?」

「確かに遅いな。勉強がまた進んだぞ。あ、ちなみに織斑の顔が赤いのは思春期特有の興奮だ」

「えっ!?」

「ちょっ、桂木さん!!」

 

 照れる織斑と山田先生。そう。俺たちが残っていたのは教師共に教室に残っておくように言われたからだ。

 

「それで山田先生。俺たちを残した理由って一体なんですか?」

「えっとですね。寮の部屋が決まりました」

 

 やっとか。

 これまで俺はホテルで暮らしていたから解放された気分だ。

 

「あれ? 俺の部屋はまだ決まっていないんじゃなかったですか? 前に聞いた話だと、一週間は自宅から通学してもらうって話でしたけど」

「そうなんですけど、事情が事情なので一時的な措置として部屋割りを無理矢理変更したらしいです。……織斑君、その辺りのことって政府から聞いてます?」

 

 なるほど。おそらく俺と織斑の部屋が別なのってその辺りに理由があるかもしれないな。渡された時に見えたがここで敢えて指摘すまい。

 

「そういうわけで、とにかく寮に入れるのを最優先したみたいです。一か月もすればそれぞれ個室の方が用意できますから、しばらくは相部屋で我慢してください」

「俺たちに個室を用意してくれるのか。贅沢だが有り難いな」

 

 パンフレットからの情報だが、あの規模ならばベッドが一つないだけでかなり良さげな工房になる。

 

「それで、部屋はわかりましたけど、荷物は一回家に帰らないと準備できないですし、今日はもう帰って良いですか?」

「あ、いえ、荷物なら―――」

「私が手配をしておいた。ありがたく思え」

 

 というかそもそも、機体を持っていない奴を簡単に外に出すと言う発想があったのがおかしいだろう。

 

「ど、どうもありがとうございます………」

「まぁ、生活必需品だけだがな。着替えと、携帯電話の充電器があればいいだろう」

「ん? 織斑先生、織斑はエロ本を持っていないんですか?」

「流石に年齢的にアウトだ」

「仕方ない。後でエロゲーを貸してやろう」

「年齢的にアウトだと言っているだろう!」

「自作したものをプレイすることに何か問題でも?」

 

 まぁ、させるのはアウトだろうけどな。だが事実上の女子校に通うならそれなりに耐性を付けておく必要はあるだろう。

 

「じゃ、じゃあ、時間を見て部屋に行ってくださいね。夕食は6時から7時。寮の一年生食堂を使ってください。ちなみに各部屋にはシャワーとバスユニットがありますが、大浴場もあります。学年ごとに使える時間が違いますけど……えっと、お二人は今のところ使えません」

「え? 何でですか?」

 

 そうだそうだ! 改善を要求する!

 

「アホかお前は。まさか同年代の女子と一緒に風呂に入りたいのか?」

「アホは貴様らだろう? 別に同じ時間に入らずとも、時間をズラして入らせるとは考えなかったのか? まさか女子が入った後に入って湯水を呑むかもしれないという変態的な思考をしたならば―――俺がその場で引導を渡してやらんでもない」

 

 はっきり言ってそんなことを考えられることこそ気持ち悪い。何故見ず知らずの奴の者を呑まねばならんのか。

 

「そうは言ったがな。聞き入れん奴もいる。特に桂木、お前がそうすると考えている者が数多くいた」

「…………そうか。是非そんな奴らは―――この世から消えてもらいたいな」

 

 怒りを露わにしてそう答えてやった。

 

「ま、まぁ、えっとそれじゃあ私たちはまた会議があるのでこれで。二人とも、ちゃんと寮に帰るんですよ。道草くっちゃダメですよ!」

「そうだな。今日は馬鹿共の相手をして疲れたから真っ直ぐ帰るか」

「そうですね。ところで先輩、さっき言っていたエロゲ? 何ですが―――」

「幼馴染モノもちゃんと抑えてあるぞ?」

「違います!」

 

 どうやら織斑はエロに対する耐性はない様だ。

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