IS-Greedy beast-   作:reizen

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さて、タイトルは何を示唆しているでしょうか?





※財布は犠牲になったのだ。最新ゲーム機という犠牲のな。


#5 似合う似合わないは問題ではない

 眼が覚めたら4時半頃。俺は服を着替えてランニングをした後にシャワーを浴びてもう一度寝る。そして起きたら朝食の時間だ。

 着替えた俺は早速食堂を覗くと既にかなりの席が埋まっているようだ。

 

(………にしても、護衛の割にはかなり早くいなくなるな)

 

 まぁ大して期待はしていないが、更識楯無は昨日の今日で「仕事があるから先に出る」と言って部屋を出た。外から悲鳴が上がったけど死体がなかったので気にしないことにしたが、あれは一体なんだったんだろうか?

 

「なぁ……」

「………」

 

 そして俺の前では痴話喧嘩をしている二人。織斑一夏となんとか箒さんである。何故「なんとか」とか言っているのかって? 姓を知らないからさ。

 この二人、席がないからって俺のところに来てはさっきからこんな調子である。

 

「なぁって、いつまで怒ってるんだよ」

「………怒ってなどいない」

「顔が不機嫌そうじゃん」

「生まれつきだ」

 

 とまぁこんな感じのやり取りがされているが、状況がわからない俺には織斑が固い壁を押したり引いたりしているようにしか見えない。

 

「箒、これ美味いな!」

「………………」

 

 同じメニューを食べているが、さっきから会話が続いていない。大丈夫か、こいつら。

 

「どうやら同居人とは上手く行っていないようだな、織斑」

「………ええ。まぁ」

「…………貴様には関係ないだろう」

 

 そう言って俺を睨む箒さん。なるほど。そういうことか。

 

「おい箒、相手は年上なんだし、ちゃんと敬語をだな―――」

「ふん。このような下賤な男に敬語を使う気になれん」

「箒!」

「落ち着け織斑。そんなことよりだ―――お前はちゃんとダイブしたのか?」

 

 それを聞いた織斑が固まる。箒さんはわかっていないようだ………ということは。

 

「やってないのか?」

「い、いや、それは無理ですよ! もっとマシな奴はなかったんですか!?」

「後入れたのは、「山田先生を押し倒す」と「織斑先生をぶん殴る」だったかな」

「まともなのがない?! って言うか何で千冬姉をぶん殴る!?」

「だってそっちの方が面白そうだし」

「面白そうとかって理由で決めないでくださいよ!! 仮にもあれでも結婚前の女性なんですからね!?」

「そう言えばお前の姉貴って男いねえの?」

「……………さぁ。そう言えば聞いたことありませんね」

 

 俺と織斑は真剣に考える。いや、本当にあの女が男に惚れている姿なんて………考えただけで気持ち悪い。

 

「お、織斑君、桂木……さん。隣いいかな?」

 

 変な想像をしていると誰かが話しかけてきた。さっき俺のさん付けに時間がかかったのは、おそらく俺が嫌いだけどとりあえず付けとけみたいな感じだろう。

 

「ああ……別に良いけど」

 

 そう言うと一人は苛立ち、3人はガッツポーズをした。目的達成という所だろう。

 すると一人だけこっちに来て俺の席に座る。

 

「ああ~っ、私も早く声かけておけば良かった……」

「まだ、まだ二日目。大丈夫、まだ焦る段階じゃないわ」

「昨日の内に部屋に押し掛けた子もいるって話だよー」

「なんですって!?」

 

「……マジで?」

 

 周りの騒ぎ声に聞こえた言葉を確認すると、織斑は頷いた。なんというか……ご愁傷様?

 ちなみに俺の部屋には一人である。なお、そいつは更識が対応すると消えた。

 

「うわ、織斑君って朝すっごい食べるんだー」

「お、男の子だねっ」

「俺は夜少なめに取るタイプだから、朝沢山取らないと色々きついんだよ。……っていうか、女子って朝それだけしか食べないで平気なのか?」

 

 新たに現れた女子たちの分を見て織斑が尋ねる。それは聞かない方がいいんだけどなぁ。

 

「わ、私たちは、ねぇ?」

「う、うん。平気かなっ?」

「お菓子よく食べるし!」

 

 俺の隣にいる女子が元気よくそう言った。正面に座る織斑が爺臭そうな事を考えてそうな顔をしている。

 

「………織斑、私は先に行くぞ」

「ん? ああ。また後でな」

 

 気が付けば篠ノ之は食事を終わらせており、素早くどこかに行ってしまった。

 

「織斑君って、篠ノ之さんと仲が良いの?」

「お、同じ部屋だって聞いたけど……」

「ああ、まぁ、幼馴染だし」

 

 ……それ、あんまり気安く言わない方が良いだろ。

 もし篠ノ之が質問攻めにされたら逆ギレして相手を一方的に潰すイメージしか湧かない。

 

「え、それじゃあ―――」

 

 何かを聞こうとした女子の声をなんと織斑先生が遮った。

 

「いつまで食べている! 食事は迅速に効率よく取れ! 遅刻したらグラウンド10周させるぞ!」

 

 その言葉に織斑の会話に聞き耳を立てていた奴らは急いで食事に戻った。まぁここのグラウンドって1周だけでも5㎞あるし、気持ちはわからなくもない。

 

(………それにしても、()()()か)

 

 まさかなと思いながら俺も食事を進めることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 イケメンとは、得ばかりではないようだ。

 2時限目まではもちろん、3時限目の時点でさらに追い込まれた織斑は女子たちから質問攻めされていた。しかも有料。やったね織斑。その金を巻き上げられるよ。

 

(………そして篠ノ之は遠くから静観………いや、動けよ)

 

 そこは華麗に攫えよとは思う。昨日のひと悶着で女子から接触がない俺にとって二人がどうなるかは昼ドラ気分で見ている。

 

「千冬お姉様って自宅ではどんな感じなの!?」

「え? 案外だらしな―――」

 

 織斑が殴られたけど流石に同情できねえわ。自業自得だ諦めろ。

 

「休み時間は終わりだ。散れ」

 

 まだ5分程あるけどな。それにしてもだらしないのか。今度あの女の部屋のチェックでも―――

 

「桂木、もし余計な事を考えているなら―――死ぬことになるぞ?」

 

 できなくはないが、命は大事に。俺は素手で裏系の事務所を何十個も潰して回る化け物じゃないからな。

 

「ところで織斑。お前のISだが準備まで時間がかかる」

「へ?」

「予備機がない。だから、少し待て。学園で専用機を用意するそうだ」

 

 ああ。そう言えばそんな話をしていたな。俺のは発覚した時期が時期だからまだ準備できていないとかなんとか。

 

「せ、専用機!? 1年の、しかもこの時期に!?」

「つまりそれって政府からの支援が出るってことで……」

「ああ~。いいなぁ……。私も早く専用機欲しいなぁ」

 

 ……やはり女子でも専用機って憧れるのか。でもさぁ、ISの専用機持ちって大体は国からの支給品で結果を出さないと切られるんだぜ? その点、まだどこにも所属がないロボットのならそう簡単には切られない。後は、わかるな?

 なんて一人で馬鹿な事を思っていると、織斑の前にオルコットが現れた。

 

「それを聞いて安心しましたわ。クラス代表の決定戦、わたくしとあなたとでは勝負は見えていますけど、流石にわたくしが専用機、あなたが訓練機ではフェアじゃありませんものね」

 

 …………いや、お前………。

 オルコットの発言に俺は心から引いた。

 

「お前も専用機ってのを持ってるのか?」

「ご存じないの? よろしいですわ! 庶民のあなたに教えて差し上げましょう」

 

 自信満々に言うオルコット。そんなことよりも俺は声を大にして突っ込みたいことがある。

 

「このわたくし、セシリア・オルコットはイギリス代表候補生。そして現時点で専用機を持っていますの」

 

 …………それって、いざって時に切り捨てられるとかって理由じゃないのか?

 

「世界でISは467機。その中でも、専用機を持つ者は全人類の中でもエリート中のエリートなのですわ!」

「よ、467機……? たった……?」

 

 織斑。驚くところはそこじゃない。

 

「って言うかそれ以前に、オルコットは素人相手に専用機で戦うつもりだったのかよ。やっぱこれ茶番じゃねえか」

 

 小さくガッツポーズしたが、空気は凍った。

 

「し、仕方ありませんわ! わたくしにはとても重要な―――」

「あー、はいはい。わかってますよオルコットさん。どーせアンタは怖がりでビビりで素人相手にも専用機を使わないと戦えないんですね。かわいそ……ぷっ」

 

 オルコットは顔を赤くして俺を睨む。

 

「だ、大体あなた、昨日と言い今日と言い、碌に喧嘩もできずにただ殴られるだけのサンドバッグの癖に図々しいですわ! 口だけで何もできないんですの!?」

「そのとーり。だから俺はアンタの後ろでさっきから見下ろしている鬼に対して何にもできないんですわ」

「へ?」

 

 オルコットの脳天に出席簿がめり込んだ気がした。

 

「さっき私は言ったはずだが?」

「………わ、わたくしは―――」

「何だ?」

「い、いえ、何でもありませんわ……オホホホホ……」

 

 軽く笑って俺の方を睨みながら自分の席に移動する。

 

「オルコットが先程言った通り、ISは467機しかない。そのこともあって本来ならIS専用機は国家あるいは企業に所属する人間しか与えられないが、お前の場合は状況が状況なのでデータ収集を目的として専用機が用意されることになった。理解できたか?」

「……な、なんとなく……」

 

 たぶん織斑は今言われたことをそのまま頭にセーブしているかもしれない。

 

「え? じゃあ桂木さんにも専用機が?」

「いや、桂木の場合は動かした時期が時期だからな。それにだ………桂木が希望した機体は技術不足で作成が難しいという話だ」

「ちょっと待ってください! まさかあの程度のことで音を上げるんですか!?」

「………あの程度、か。BT兵器にマルチロックオンシステム、さらには可変機構を要求するなど無茶な注文にも程がある」

 

 いや、待て待て待て。おかしいだろ? 何でどれもできていないんだよ。

 

「な、何ですって!? 織斑先生、この男がそれらを要求したというのは本当ですか!?」

「………本当だ。おいオルコット―――」

 

 まさかの技術不足と言われた俺は頭を抱えていると、急に机が叩かれた。

 

「あなたふざけていますの!? よくそんな無茶を言えましたわね?!」

「至極真面目に聞いたが? しかし流石は女が先導するクソ機体共だ。黒鋼1機すらまともに作り上げられないなんてありえねえよ。そんなんでよく女が優れているなんて言えたわ。個々じゃ女が優れているかもしれねえがロマン力は圧倒的に足りてねぇじゃねえか」

 

 俺は過去にSRs―――スーパーロボッツという自分たちの技術で作り上げたプラモと設定でデータを作り上げて戦うゲームの大会に優勝している。その時の機体の名前が「黒鋼」だ。

 実はその機体にはある意味未来を映し出す凶悪なシステムが搭載されているが、流石にそれは要求しなかった。

 

(………やっぱり整備科志望して正解だな)

 

 確かに俺は凡人だが、仮にも天才の息子で天才の親友なんだ。俺の環境が伊達だと言わせてたまるか。

 

「あ! あの! 先生! 篠ノ之さんってもしかして篠ノ之博士の関係者なんでしょうか!?」

 

 悪くなった空気を戻すためか、1人の女生徒が織斑先生に尋ねた。

 

「そうだ。篠ノ之はアイツの妹だ」

 

 驚くオルコット、そして教室は湧いた。どうやら篠ノ之があの篠ノ之束博士の妹だという事が珍しいらしい。

 

(………でもなぁ)

 

 それは当人にとっちゃはっきり言って迷惑だ。だから―――

 

「あの人は関係ない!」

 

 叫ぶ気持ちは心から理解できた。

 

「………大声を出して済まない。だが、私はあの人じゃない。教えられるようなことは何もない」

 

 そう言って篠ノ之は窓の外に顔を向ける。これ以上はこいつらと関わり合いたくないという意思表示だろうか。

 正直、その気持ちはわかる。たぶん、これまでの価値観を大きく変えたから俺よりも恐ろしい目に遭っているのだろう。

 

(………ある意味、似た者同士か)

 

 そう思いながら、俺は織斑先生が山田先生に進行を渡したのを聞いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 オルコットがまた織斑の方に言ったが、俺はわざわざ自分から狩られに行く趣味はないので先に食堂に向かった。しばらくすると織斑が篠ノ之の手を握って現れたのが話題になった。

 

「桂木さん、一緒に座っても良いですか? その、箒もいますけど」

「別にいい。あと織斑」

「何です?」

「俺は篠ノ之に詮索するような趣味はないぞ。確かに篠ノ之束がしたことは偉業と言えば偉業だが、だからと言って妹を通じて姉に機体を作れと頼む気は毛頭ねえよ。安心しろ。…………まぁ、仮に―――仮に篠ノ之の姉の背が低くて甘え上手で抱きしめたくなるほど可愛いというならやぶさかではないがな。紳士の嗜みとも言っていい」

 

 むしろ失礼だと言っておこう。

 2人は引いてはいるが、どこか安堵したような雰囲気を出す。

 

「そう言えば箒、ISのこと教えてくれないか? このままじゃ来週の勝負で何もできずに負けそうだ」

「…下らない挑発に乗るからだ、馬鹿め」

 

 それに関しては大いに同意する。

 

「まぁ、織斑って簡単なことですぐにキレるよな。オルコットの発言なんて然るべき場所に送れば即刻本国に強制送還した後に全財産没収されて路頭に迷って獣たちに回されるルートなんて簡単に構築できたのに」

「…………貴様はそう言うのが好きなのか?」

「言っておくが、ロリ系は実年齢が大人ならそういうルートに行くが、基本的に俺は紳士だからしても頬にキスぐらいだぞ?」

 

 そこは勘違いしてもらっちゃいけない。

 ロリコンは未成熟な子どもに手を出そうとする犯罪者予備軍という認識が強いが、正しきロリコンは精々見守る程度であって性的暴行を加えることはまずしない。むしろ、同士討ちなんて何のその。最悪とあるボールすら破壊する。

 

「とまぁ、話は脱線したが……織斑、言っておくが篠ノ之は―――」

「ねぇ。君って噂の子でしょ?」

「篠ノ之はISに詳しくないぞ」

 

 わざわざ俺の言葉に被せてくるとはいい度胸だ。潰そう―――と思って振り向くと3年生だった。

 

「……はぁ、たぶん」

 

 おい織斑。適当にあしらえよ。篠ノ之の機嫌が悪くなったぞ。

 

「代表候補生の子と勝負するって聞いたけど、ほんと?」

「はい、そうですけ―――」

「織斑」

 

 織斑の意識をこちらに向けさせると、3年の女は俺を睨んだ。

 

「どうせこの女はお前に「ISを教えてあげる」という話をしに来たが、止めておけ」

「何でですか!? とても良い人じゃないですか!」

「……甘いな織斑。現実の女は男のある部分にのみ忠誠を誓わない奴以外は基本的に下心しかない」

 

 誓ったところで下心しかないがな。

 

「は? 何言ってるのよあなた―――」

「そもそもおかしいとは思わないか? 何故この女はわざわざお前にだけ話を持ち掛けてきたんだ? メリットがあるからに決まっているだろう。だとすれば―――ターゲットは織斑千冬かお前自身だろうよ。「教えたんだから代償を払え」とか言って後から色々と要求してくる」

 

 そう言うと織斑は頬を引き攣らせた。

 

「そ、そんなわけ―――」

「織斑。現実を見ろ。そして篠ノ之とその女のおっぱいを見比べてみろ―――篠ノ之の方が大きいだろ?」

「大きさなんて関係ないわよ!?」

 

 その意見に関しては同意しよう。だがな、それとこれとは話が別だ。

 

「というわけだ、先輩。とっとと帰って黒幕の乳でも吸ってな」

「ふざけんじゃないわよ! 大体何なのよあなた! あなたには関係ない―――」

「聞いたか織斑。俺はちょっと口が回るだけの哀れな子羊という名の被害者Aだというのにこの言われようだ。織斑姉弟とオルコットのせいで茶番でサンドバッグを演じさせられると言うのに………なんて酷い女なんだ!」

 

 そう言われると、女は何も言えなくなる。

 もしここで口を開いて余計な事を言ったら織斑からの信頼はなくなってしまう。つまり八方塞がりなのだ。

 

「きょ、今日はこれで!」

 

 そう言って先輩はどこかに消えてしまう。それを確認した俺は篠ノ之にウインクすると、篠ノ之はため息を吐いた。

 

「………今日の放課後、剣道場に来い。腕が鈍っていないか見てやる」

「え? ……いや、俺はISの事を―――」

「見てやる」

「………わかったよ」

 

 ………織斑よりも先に篠ノ之に女性らしさが必要なんじゃないかと思ったとある昼休みだった。




そう、合図に気付かせるのが重要である。
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