IS-Greedy beast-   作:reizen

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#8 IS学園の授業風景

 オルコットはあの後、一週間前のことを謝りクラス代表を織斑に譲ることを表明した。元々頭のネジが緩んでいる集団だから案外あっさりと受け入れた………一名を除いて。

 

「な、何で俺がクラス代表なんだよ!?」

「落ち着け織斑。今はまだ慌てるところじゃない」

「慌てるところですよ!!」

 

 全く。少しは落ち着いてもらいたいところだ。

 

「良いか織斑。お前は弱い。実戦経験が圧倒的に不足している………だから、お前はクラス代表に選ばれた」

「それなら別にオルコットに勝った桂木さんでも良いじゃないですか!!」

「甘いな。俺の場合は―――セクハラをするかもしれないという事で出場停止だ!」

「アウト!! もうこの人アウト!!」

 

 まぁ、自重しろと言えばできなくはない。その代わり刀奈と毎日一緒にあんなことやこんなことをしないと気が済まないが。

 

「冗談だ。流石に俺もやり過ぎたとは思っている」

「良かった。桂木さんが反省してくれているんだ。だったら―――」

「周りがいるからできないなら、2人だけでするべきだったなって」

「反省するのはそこじゃないですから!!」

 

 にしても織斑のツッコミは様になったな。これも俺のボケのおかげか。

 

「それにオルコットは初日に色々な暴言を吐いてしまったから反省のために自重するという話だからな。必然的に織斑しかいなくなるんだ。それにこれは、何も俺一人の決定じゃないんだ」

「じゃあ、誰が―――」

「実は山田先生に頼んで密かに投票したんだが、やはり織斑の多かった」

「結局投票かよ!?」

「な? ぶっちゃけ戦う必要とか全くなかっただろ?」

 

 にしてもこいつ、弄ると面白いな。

 

「仕方あるまい。貴様らが如何にも戦うという雰囲気を出していたのだからな」

「それにオルコットの言い分もあながち間違いじゃないからなぁ。結局はクラス最弱の織斑になってしまったが、まぁ頑張れ」

「ご心配なく。わたくしが二人っきりで適切な指導をして差し上げますわ!」

「え? それなら俺は桂木さんに教えてほしいんだけど……」

 

 織斑に背を受けたオルコットは泣いてしまったので俺がフォローする。この野郎、ギャルゲーに置いてあるまじき行為……いや、実際正解ではあるんだけど、それでもちゃんとフォローはするべきだろう。

 

「わたくし、女性としての魅力がないのでしょうか………」

「大丈夫。それはないから」

 

 もし俺が刀奈の事が好きじゃなかったら従者共々やっているかもしれない。何をというのはやぶさかだぜ。

 

「オルコットに桂木、そろそろ座れ。続きが話せないだろう」

「へいへい」

 

 とりあえずオルコットを席に連れて行き、俺も座る。織斑がクラス代表になって他の連絡がされたけど、俺は次はどうやって織斑を弄ろうかということしか頭になかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ではこれよりISの基本的な飛行操縦を実践してもらおう。織斑、オルコット、桂木。試しに飛んでみろ」

 

 クラス代表を決める戦いが終わって2年。俺たちは順調に技量を身に着けて行った。………いや、まだ1週間と少ししか経ってないか。うん。経ってないな。

 どうでも良いことは置いといて、俺は破鋼を展開した。

 

「早くしろ。熟練したIS操縦者は展開まで1秒とかからないぞ。現に桂木は約0.3秒で展開している」

「あんな出鱈目な人と一緒にされては困ります!」

「出鱈目っておい……」

 

 近くでオルコットも頷いているし。あれ? もしかして俺に味方がいない?

 ともかく、なんとか展開し終えた織斑。全員が展開できたことを確認した織斑先生は―――

 

「よし、飛べ」

 

 まるで犬にフリスビーを取りに行かせるような物言いで言った。少し癪に思いながらも俺は遅れて上昇する。

 

『何をやっている。スペック上の出力ではブルー・ティアーズよりも白式の方が上だぞ』

 

 流石に破鋼には負けるようだ。オルコットが顔を引き攣らせているのは決して気のせいではないだろう。

 

「一夏さん、イメージは所詮イメージ。自分がやりやすい方法を模索する方が建設的でしてよ」

「そう言われてもなぁ。大体、空を飛ぶ感覚自体がまだあやふやなんだよ。何で浮いているんだ、これ」

「……そういう織斑にとっておきの言葉を送ってやろう」

「何です?」

「考えるな。感じるんだ」

「どうせそんなことじゃないかと思いましたよ! って言うかまさか、桂木さんはそれで早く動いているんですか!?」

「よくわかったな。じゃあ逆に聞くが、お前は有名なアニメの戦闘シーンで「どうしてあいつら、常識的に考えてあり得ないくらい滞空しているんだろう?」とか思ったことあるか? 思ったとしても「そういうもんだ」と思うだろ? それと一緒だ。それに元々破鋼は「高機動惨滅型」として考えられていた機体だからな。ヒットアンドアウェイや一撃離脱、それを連続で相手の行動を観察した上でタイミングを図りながらダメージを食らわせる簡単な戦闘パターンだ」

「………なるほど。前回の出鱈目なパターンは―――」

「適当に動きました」

 

 空中で膝を抱えて泣くという貴重なシーンを平然とやってのけたオルコット。あの敗北、彼女にとってどれだけ悔しかったのだろうか。

 

「まぁまぁ。あの時は負けたって言ってもどこぞの金ぴか慢心王並みに慢心してたし、仕方ないって。それに俺みたいな素人とは違ってオルコットは知識も豊富なんだから、これからも織斑の指導に精を出してくれたらいいさ」

「そ、そうですわね! 一夏さん、よろしければまた放課後に指導してさしあげますわ! その時は、その………二人きりで―――」

 

 オルコットが地味に俺をハブって誘っていると、下から地声ではなく通信機で篠ノ之の声が俺たちに届いた。

 

『一夏っ! いつまでそんなところにいる! 早く降りて来い!!』

 

 そして織斑先生に殴られる篠ノ之。涙目になりながら山田先生にインカムを渡している。………舐められすぎだろ、山田先生。

 

『3人共、急下降と完全停止をやって見せろ。目標は地表から10㎝だ』

「了解です。ではお二人とも、お先に」

 

 オルコットは加速しながら地上に向かう。かなりスピードを出しているが、それでも華麗に停止して織斑先生から褒められていた。

 

「んじゃ、俺も」

 

 今度は織斑が行った。オルコットと同じように加速するが何故か止まらずにそのまま地面に激突した。

 

『馬鹿者。誰が地上に激突しろと言った。グラウンドに穴を開けてどうする』

『……すみません』

 

 項垂れる織斑。素人だししょうがない。それに昨日はその練習をしようと言っているのに美人2人が喧嘩してなかなかできなかったらかならぁ。

 

『情けないぞ、一夏。昨日私が教えてやっただろう』

『え? あの擬音ってそういうことだったのか?!』

『……ほう』

「篠ノ之、そこを動くなよ!」

『桂木さん? 一体何を―――』

 

 2人が降りたところから少し離れた俺はそこから下降を始めた。そのまま地上10㎝の所まで移動してすぐに変形して飛鳥形態になって滑空。織斑がいるところに迫ると全装甲を消して回転しながら飛び出し、織斑の上に降り立った。

 おもちゃの弓と矢を出して構える姿をし、

 

「恋のキューピッドのポーズ」

 

 そう言って織斑先生の方に向ける。ちなみに意味はない。

 

「………言いたいことはあるか、桂木」

「滑空場所、そして織斑の頭上から10㎝だから問題ありません。偉い人はそれがわからんのですよ!!」

 

 全力で殴られたので軽く2、3mは飛んだ気がする。

 

「真面目にやれ」

「はーい………」

 

 真面目にやらないと人は死ぬからね。今もできると思って頑張りました。

 その端では誰も俺の事を心配してくれず、オルコットと篠ノ之が喧嘩をしていたので出席簿で叩かれていた。

 

「だいじょうぶ~?」

「うん。まぁね」

 

 一人だけ心配してくれる人がいたので撫でる。もちろん撫でる時は濡れタオルを展開して砂を拭っている。

 

「織斑。武装を展開しろ。それくらいなら自在にできるようになっただろう」

「……………」

「ん? どうした?」

「いえ、地獄の日々を思い出しただけです」

 

 織斑が俺に聞いたのが悪い。

 というのも、俺が武装を自在に展開できるのを見て教えてほしいと寄って来た織斑に「瞬時に出せなかったら腕立て10回」と言った。最初の頃は余裕でこなしていったが、時間が経つにつれて苦しくなっていったのだ。当然だ。最初に測ったタイムより遅いたびに10回させたんだから。

 

「ほう。0.3秒か」

「次は他の格好に挑戦するか」

 

 全力で首を振る織斑。もう俺との特訓はコリゴリらしい。

 

「なら桂木、貴様は―――言うまでもなかったか」

「当たり前じゃないですか」

 

 日頃から物の出し入れしているんだもの。

 

「オルコット、武装を展開しろ」

「はい」

 

 返事をするとすぐに左手を肩の高さ、そして横に付き出す。どこかの鍵型の剣を持つ奴らみたいに平然と武器を出した。右手も遊ばせることなく弾倉をセットし終えている。

 

 ―――もっとも、その構えには問題があるが

 

「流石だな、代表候補生。ただしそのポーズは止めろ。攻撃と反応した桂木がお前の胸を揉みしだこうと狙っているぞ」

「か、桂木さん?!」

「全く。一体誰に向けて攻撃する気だい、君。それとも欲望のままに揉みしだかれたいというのかい?」

 

 ニヤニヤしながら接近する。全力で俺から離れるオルコット。

 

「あのポーズのままでは味方を撃つ恐れがある。ましてや今回のことでその脅威が増しただろう? 直せ」

「わかりました。全力で矯正しますので桂木さんを止めてくださいまし!!」

「桂木」

「わかりましたよ」

 

 大人しくさっきの位置に戻ると、織斑先生はオルコットに近接武装を出すように言ったが、何故か慌てる。その理由はすぐにわかったが。

 

「まだか?」

「す、すぐです。―――ああ、もうっ! 《インターセプタ―》!」

 

 武装名を叫ぶオルコット。教科書には初心者用と書かれているけど、教科書の著者はロマンを理解していないと思った。

 

「……何秒かかっている。お前は、実戦でも相手に待ってもらうのか?」

「じ、実戦では近接の間合いに入らせませんわ! ですから、問題ありません!」

「そうか。ではすぐにオルコットと桂木で試合をしてもらおう。桂木、揉みしだいて構わん」

「わたくしが間違っていましたわ!!」

 

 ちょっ、どれだけトラウマになっているんだコイツ?!

 

「わかったならすぐに近接武装を展開できるように練習しておけ」

「はい!」

 

 教師ですら俺をこんな扱いか。俺、織斑先生には興味ないんだけどなぁ……。

 

「時間だな。今日の授業はここまでだ。織斑はグラウンドを片付けておけよ」

「うっ………」

 

 まぁ、自業自得だな。

 俺もなんとか無事にできたし、今日はさっさと去ろうか。

 

「か、桂木さーん………」

 

 俺に縋ろうとする織斑。しかし俺は織斑に笑顔を向け、

 

「ガンバ!」

「桂木さんの薄情もの!!」

「自業自得というものだ」

 

 そう言って手を振って俺は去る。篠ノ之の姿はないようだ。何をしているんだ、アイツは。

 こういう時に手伝って2人きりになって距離を縮めるというのに。

 

(……まぁいいか)

 

 俺がここで焦ったところで仕方ないし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 放課後になってからしばらく経ち、辺りが暗くなってIS学園内の街灯が明かりを灯す。

 その頃になってボストンバッグを肩にかけた少女が駅から歩いてきた。

 

「ふうん。ここがそうなんだ………」

 

 お洒落な校門を眺めながら入ったその少女。時間も遅いこともあって校門前に待機しているはずの警備員には捕まらない。だが、今回はそれが裏目に出た。

 

「本校舎一回総合事務受付………ってどこにあるのよ!!」

 

 少し歩いたが少女の目的の場所が見当たらない。業を煮やしてISを展開しようとした時、急に肩を叩かれたため、少女は弾くように飛んで反転する。

 

「誰?」

「―――驚かせてごめんなさい。まさかそんな反応をするとは思わなかったわ」

 

 汗に濡れたシャツ。ポニーテールをシュシュでくくっているがそれでも肩の下に伸びている髪。ショートパンツにサイズが合わなっていないのかさらに脛辺りまで伸びたスパッツに―――可愛らしい顔。身長は高いがそれでも気にしない人はいないだろう。

 

「もしかして、ここの生徒かしら?」

「ええ。今はトレーニングを終えて帰るところだったのけれど、途中で騒がしかったから興味本位で覗いてみたんだけど」

「ちょうど良かったわ。本校舎一階の総合事務受付ってどこにあるのか教えてくれない?」

「良いわよ」

 

 快諾した長身少女に付いて行く小柄な少女。長身の割にはスレンダーな体型をしているという感想だが、それでもモテそうだと思ったその少女は自分との差にコンプレックスを抱いた。

 

「着いたわよ」

「あ、ありがとう」

 

 走りながら去っていくその少女。次会う時はどうしてそんなになったのか聞いてみたいと思ったが―――翌日に会えることは彼女はまだ知らない。

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