拝啓、精霊を救える方へ   作:ブルーな気持ちのハシビロコウ

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拝啓、精霊を救える方へ

 

 

  朝になり、昼が過ぎ夕方となっていた。

  各々が決意と共に準備をしている中。

  神谷 恵の電話の主である彼女。

  柊 凛(ひいらぎ りん)は指の間に反対の手の指を入れて組み、そこに顎を置いて黙想していた。

 

  ーーーーーあの日を思い返せば、彼の顔は何か隠している様子はあった。しかしそれはあまりに自然で、精霊が現れて数時間前の出来事を隠すにしては、大きな矛盾があった。

 

  大きな爆発に平然としている少年・・・仮に相当気が据わっていたか、愚鈍だったとしてもあの落ち着きは違和感があった。匿っているにしても、演技力は抜きん出てる。

 

  何故匿うのか、それが引っ掛かっていたのだが、神谷恵の説明によって彼女は納得・・・することなかった。

(あの時、既に彼等は洗脳を受けていたわけか・・・?現状での確定事項は見た目のみ。能力や霊装は・・・神谷の話だけで断定するのには材料が足りない。仮に洗脳だとしたら既に現れて十数日、反応を消す事が可能で潜伏できる力があるなら、既に洗脳が街に行き渡っていてもおかしくはないのではいか・・・だとすれば能力が違う、もしくは酷似しているか、発動に特殊な条件があるかのどちらか...いや、もしかしたらやはり洗脳というのは間違いで。あの男や家族が物事に動じず、精霊に対して寛容だったらーーーーーーー?)

  柊はあらゆる場面を想定していた。

  全ては、勝つために。

  自分が考えうる範囲内で、そして未然に準備できる事は全て行う。それゆえに部隊長という座まで登り詰めた。

 

  故にだろうか、座右の銘は『備えあれば憂いなし』でもある。

  彼女が夜にすぐ襲撃しなかったのも、出来る限りの情報と最低限の時間が欲しいからだ。心の準備も含めて、たまに周囲から「臆病なだけ」と言ってくる奴等もいたが、それは実績で黙らせた。

 

  だが、と。柊は舌打ちをする。

(ーーーーーー流石に、少な過ぎるな)

  残念ながら今にかけて偵察班からの追加の連絡は来ない。精霊は個々が別の能力、性格から危険度を判断するが...初見ではどうしようもない。

  もっと大人数で向かうべきなのだから。しかしこの機関は一枚岩でもない、行動範囲は例え精霊でも限られてしまう。国民の命を盾に昇格や気に入らない者の無理矢理の左遷を目論む奴等もいる。

 

(同族で団結も出来ないのに精霊に勝とうなどと、しかし所詮は部隊長如きの私ではまだ機関洗える力もないしな)

  それならば少ない情報で、あるだけの人員でやるしかない。

 

「!」

  ドアをノックされ、入れ。と小さく返す。

「用件だけ手短に話せ」

「はい!隊長、準備が整いました。それと、恐らく潜伏していた班は、全滅したかと」

「連れてこられたか?」

「気絶しているだけでしたので、しかし使い物にはならないです」

  隊員の一人が報告をしに来た、その目には少しの落胆と、固い決意が感じられる。

  それに、時計を見るとまだ予定していた時間も幾分も早い。柊は部下の有能さに笑い、立ち上がって出口に彼女に一枚の紙を渡す。

 

「わかった。では私も向かうとしよう...それと、その間にこれに目を通させておけ」

「これは?」

「一応あるだけのメモだ。必要物資の確認や人員の班構成、作戦も何パターンもあるからな、目的地につくまでに全て確認、用意して覚えろ」

  覚えろ。その言葉に彼女は戸惑う。

「えと。作戦、四十近くもあるんですが...?」

「それでもかなり絞った方だ。本当なら二百は下らない、出来る限り、いや全て覚えろ。時間はできたことだしな」

「は、はい!失礼します」

  そう言って駆け足で消えていく彼女の背中を見て、柊は真逆の方へ歩んでいった。

(・・・精霊は、全員殺す)

  先程の彼女よりも。深く、冷たい覚悟を持って。

 

 ◆◇◆

 

「もしもし?」

『・・・もしもし、ユー君?』

「悪いな電話して、こんな夜分には」

『それは構わないけど・・・えっと、こんな時間にどうして起きてるのかな?』

「その言葉そっくり返すよ」

『・・・そう、だね。お互い様だね』

 

  他愛ない会話に、どこか隔てりを感じる。

『何の用って聞くのは、不粋かな?』

「まぁな。今そっちに気絶した偵察組行ったろ。それで?面倒だから聞くけどお前らはいつ襲ってくるんだ?」

『っ!...何の話かな?』

「いいよ誤魔化さなくても、わかってるから」

『・・・・質問を変えるね。ユー君はどこまで分かってるのかな?』

「神谷が機関とやらの仲間を引き連れて俺のダメな姉を拐っていくところまで」

『っえ、と・・・・ユー君あんな話信じたの?も~駄目だなぁ、あんなの冗談にきま』

「お前って知り合ってから思ったけど、嘘つくのは本当に下手くそだよな?」

  急な砕けた口調に、低いが強めの声色で言った。

『っ・・・ごめん』

「謝るなよお前が悪い訳じゃない。先に言っておくけど、俺はアイツが...リズが精霊だって知ってて付き合ってるよ」

『!!』

 

「それでも、まぁ良いんじゃないかって思ってる」

 

  その言葉に、神谷は声をあげる。

『えっ・・・いや。ダメ、だよ?』

「やっぱりアイツは馬鹿だけど。ほっとないんだよなぁ、あれだよ。雨の日にヤンキーが捨て猫に『お前も一人か』的な。あれ」

『違う・・・全然違うよ!』

  うんごめん神谷。俺もいっててよくわからなくなった。不良じゃないから気持ちわからないしあれ。

 

  でもまぁ、素直な気持ちは告げておこう。

「ま。とにかく俺は洗脳されても操られてもいない。そんな器用なことアイツはできない。れっきとした一人の人間としてあの馬鹿と接しているつもりだ、アイツもそれを望んでる...意外と、精霊にも色々事情があるのかもしれないぜ?」

『違う・・・!ユー君は操られてるんだよ!あの女に!精霊に!』

「大きい声出すなよ・・・キンキンする」

『っご、ゴメンね・・・・で、でもユー君。精霊はね、危ないんだよ、危険なんだよ?』

  まるで悪いことを諭すような口調に、俺は頷いた。

「知ってるよ。お前よりは絶対に知らないだろうが・・・・本題に戻すんだけど、俺達はお前らに徹底抗戦するつもりだ。そんで、だからいつくるか教えてくれないか?ずっと待機するのは風邪引くかもだからさ、早くしないと精霊どっか行くとは伝えておく」

  要するに、さっさと来いという事だ。

『やだ。教えない』

  回答は、断固としてのノーだった。

 

  まぁ、それもそうか。

「・・・それは残念だ。んじゃ切るよ」

『待ってよユー君!危ないんだよ!?わからないなら何度だって私は言うからね?』

「かもな・・・・まぁ鍛えてるし?滅茶苦茶対策するし?俺になにかあったら自己責任で」

『そんなの、勝手すぎるよ・・・』

「そうだな。でも勝手にやらせてもらうよ・・・ゴメンな、わざわざ無駄な気を遣わせて。次あったときは敵だ。んで、その次あったらまたクラスメイトで仲良くしてくれよ、それじゃ」

『まっ』

 

  勝手に切った。後で本気で謝ろうと心に決める。

  ふぅ、と一息ついてケータイと共に上げた腕を下ろした。

  すると背後からしゃがれた声がかかる。

「彼女との電話はすんだかの?」

「違う、超違うからじいちゃん。それ神谷に失礼だから」

  時々変な言動が見られるが、神谷は多感な時期の女の子である。そういうのにはとても敏感だ。

 

あんな完璧少女と付き合えたら幸運の反動で爆死する。

「それより、そっちも準備は終わったの?」

「まぁのぉ。後は糸に獲物がかかるのを待つだけじゃ」

「おーけー。んじゃ俺も行くことにするよ・・・どーせ神谷はあそこに来るだろうし」

 

  俺は頭を掻きながら、木刀を持った。

  う~ん、何故見学旅行とかで無性に買いたくなるんだろう、これ。

 

  木刀を握り、足を動かす。

「やっぱ、そうそう変わるもんじゃないんだろうなぁ...俺も、俺の『普通』も。皆も」

  夕方から、夜が近づいていた。

 

 ◆◇◆

 

 

「お前達よく集まってくれた。細かいものは全て事前に紙に書いてお前達の頭にあるだろう、だからここで言える命令は一つ。人命最優先だ。人は死ぬず殺さず...殺すのは精霊だけ、それだけで帰ってくるんだ」

  ハイッ!と揃った声が聞こえる。

 

  余談だがそこにいるのは、例外なく女性だった。

「では一番隊から七番隊は行け!」

 

『ハッ!』

  そういって、訓練された三人一組のチームが三隊、森に空中含む別方向から駆けていった。

 

  そしてーーーーーーー

 

「キャア!?」

「何、これ!?」

  数分後に、早速洗礼を浴びた。

  数名の黄色い悲鳴と共に、戦争は始まった。

 

 

 

「・・・先程出発した陸チーム既に二分の一が先頭不能です...連絡によると、森のあらゆる場所に罠があると!?」

「空中で向かったチームも何らかの攻撃を受けて足止めを食らっております!?これも精霊の力なの・・?」

「想定内だが、予想以上だな。作戦をDに移せ。八番隊は準備だ」

「「ハッ!」」

「思った倍は早かったな、何者だ・・・・?」

  柊が軽く眉を寄せると、その横で神谷恵は下唇を噛んだ。

「ユー君・・・っ!」

  そして、森へと駆けた。

「なっ!?戻りなさい神谷さん!...くっ!すぐに追いかけ」

「いやいい。許可する、その方がいいからな(・・・・・)。神谷がいなくてもいいようにしてある、作戦はそのまま続行だ」

「は・・・?」

  数人が走ろうした体勢で固まる。

  訳がわからない、といった顔だ。

「理由なら後で教えてやる、今は作戦の通り動け・・・全く、わざわざ調査を名乗り出る事に疑問を持ち、調べてないと思ったのか?若いな」

  ポツリと呟いた。

 

 ◆◇◆

 

 

「・・・機械は苦手なんだけどねぇ。いくら手があっても足りないしねぇ」

  そう言いながら、ばあちゃんこと遠藤 美恵は家の中で上空にいる彼女達を狙いながらリモコンを操っていた。

「動かないでくださいっ!動いたら撃ちます!」

  そこに、なんとか罠を掻い潜った一人の少女が家に入り。非殺傷の銃を向けた。所謂ゴム弾だった。

 

  しかしは美恵は、まるで孫をみたかのように笑う。

「あらあら、見つかったみたいねぇ」

  全く動じないその姿に、少女は『危険』と即座に判断して引き金に掛ける指をに力を入れる。

「ーーーーえっ?」

  そして、少女が引金を引く前に視界が逆転した。

  数瞬後に背中に衝撃が走る。

「っ!く。ま、まだーーーーー」

  しかし彼女も厳しい訓練をこなしている身、直ぐに体勢を戻そうとしてーーーー

「ゴム弾か。だが娘を奪おうとした挙げ句、ワシの女に銃で撃とうとしたんじゃ。撃たれても文句言うまい?」

「なっ」

  先程までいなかったはずの老人が、自分が持っていたはずの銃口を向けていた。

  いつの間に、そう口にする隙もなく。

  明るい居間にに乾いた銃声が響いた。

 

  静寂の中、老人は額に丸の痕をつけて「きゅ~」と唸っている少女を背負い、そして家のすぐ隣に、同じように罠にかかった彼女達と同じ場所に運ぶ。

「・・・ばあさん。そろそろ畳下の部屋に隠れていなさい、こっからはワシがやろう」

  その目は老いていて尚、鷹のように鋭かった。

  愛する人を避難させるべく言った言葉に、笑われる。

「あらあら、甘く見られたものねぇ」

「?」

「そのあなたの選んだ女が、こんな簡単にへばるとでも思ってるのかい?」

  そう言ってコントローラーを動かすと、背後から「きゃっ!?」と黄色い悲鳴と共に屋根から黒い影が落ちた。

  反射的に振り返って見ると、目をぐるぐる回して既に無力化した少女の姿が。

「なんとっ」

  音もなく寄っていたにも関わらず、何故気づいたのか。唖然として愛する人を見る老人に、老婆はイタズラに笑った。

 

 ◆◇◆

 

  俺は一人、例の場所に立っていた。

 

  先程聞こえた銃声にも関わらず、まるで湖の底ように心は静かだったーーーーーーーとか言ってみたいが、ぶっちゃけて心臓ばくばくである。

 

  誰が撃ったのか?本物の銃だろうか?誰が撃たれたのだろうか。そんな思考がごちゃごちゃのサラダボール状態になる。表情には出さないよう努力するが鏡がないのでわからない。

 

  そんなゴチャゴチャな俺の気持ちも、星空を見ればある程度は穏やかになる気がした。

  広い宇宙に比べてしまえば、俺達の悩みがちんけなようで、どうでもよくなりそうで...なっちゃダメなんだと理性に引き戻される。というか精霊なら宇宙規模でなんかしそう。

 

「ユー君」

  聞き覚えのある声、俺が振り返ると、そこには彼女がいた。

「やっぱ神谷か、思ったより早かったな・・・ってかコスプレって流行ってるのか?全身タイツか?学校のアイドルはコスプレ趣味だったのか?」

「これが私だよ。コスプレじゃないことくらい、わかってるでしょう?」

  そう言って神谷は腰にあった短い棒を抜く。

  するとSF映画のように棒の先から一メートル程の紅いレーザーが出てきた。

 

「何それカッコいい。俺がいない間にロマンと科学が進歩してる」

  中々夢のある武器だった。俺好きだよそういうの。

  銃刀法違反どうなのか夢のないことも気になるけど。

 

「ユー君とお話したいけど、今はゴメンね。どいてくれるかな?」

「生憎と俺はお話ししたくてね」

「・・・どいてくれないかなユー君。アイツを殺せないから」

「その台詞は画面の中だけで十分だよ。生で聞くとかなり怖いしそれ」

  そういって、俺は木刀を構えた。

「やるからには、やらないとな?」

 

・・・レーザーって、木刀でなんとかなるのかな?

 

「ユー君、本当にやるの?無理だよ。私これでも隊の戦闘ではトップクラスだから」

「・・・トップクラス?本当に凄いよ、お前」

 

  俺の友達には「可愛いは正義だろ?正義は強いだろ?可愛いは強いんだよ!!」なんて三段論法をぬかしていた奴がいたしその時は苦笑したが、存外否定できないのかもしれない。

  可愛くて強くて頭もいい?何それ羨ましい。

 

「・・・・・そもそもずっと疑問だったんだが。そんな完璧そうな学校のアイドルが俺なんかに干渉してくるかわかんないんだけど?」

「仲良くしたいに、理由なんているのかな?」

「神谷らしい。学校カーストに興味ない奴の回答だな・・・なら、俺の言いたいこともわかるだろ?」

俺は苦笑し、神谷はその顔を歪める。

「っねえ。本気なの?私は戦いたくない。武装もしてないし、武器だって」

「かもな。ある程度が出来てもその機関のトップレベルとやらに敵う訳がない」

「ならっ」

 

「確かに無理かもしれないが、無駄ではないから。やらせてもらうよ」

  俺が木刀を握り直すと、神谷は俯く。

「っ・・・・そっか、なら。怪我させるけど、許してね?なんなら後でずっと看病してあげるよ」

  そういって彼女も獲物を握り直し『脅し』から『攻撃』に変わる。

 

  変な緊張感を無理矢理誤魔化すように、俺は苦笑する。

 

「勘違いしてたら恥ずかしくて自殺ものだけど・・・お前俺のこと好きすぎない?発言が軽く病んでるぞ」

 

  腰を低くする。戦闘モードに入ったらしく回答はない、真剣な眼差しで俺を見つめる。

 

 

 

ーーーーーーー他人任せで何が悪い。出来ることは出来る奴に任せるのが筋だろう。

  俺は俺に出来ることをやるんだ。そもそも俺に出来ることは皆が出来るけどな。

 

  俺ではリズを救えない。彼女が普通の、精霊の力の無い女の子にでもなれば、この問題は起こらなかったはずなんだ。

 

  それも、きっと誰かがやる。

俺は家族みたく接しても、家族にはなれない。精霊であるかぎり、彼女への恐怖や不安は拭えない。

此処にいたいと彼女が望むなら、俺は全力を尽くす。それでも敵わなくても、ただの自己満足で終わるのかもしれないけど。

 

だから、下らない俺じゃない誰かがやるんだ。

 

  精霊の力を消したり、似たような事をして精霊を無力化できる。そんな不公平で悲劇的で勇敢で唯一のヒーローが現れてリズや他の精霊達を救うんだ。

 

これは夢物語か?

 

  でも。そうであって欲しい、関わってしまったのだから。

  その人が報われてほしいと望むのは当然だと思う。

 

俺は祈ることしかできない。

  ・・・所詮、俺のやる気はその程度だ。

  彼女がきっと殺す気で来れば一分も持たない、無力でちっぽけな存在。木刀を少し扱える程度。

  この事態がそもそも俺には力不足なんだから。抗戦?馬鹿かよ、投げやりな自殺志願じゃないか。

 

 

 ーーーーーーーで、だから?

最初からちっぽけだなんてそのレッテルは貼られてるんだ、自分で無力だと知ってるんだ。

 

  だから、割り切る。

  勝てなくてもいい。時間稼ぎでもいい。惨めで気持ち悪くても、残念でも、醜くてもいい。

  無意味じゃなければ、無駄じゃなければ構わない。

 

  後で恥ずかしくて死にそうになっても、笑えなくなるよりマシだ。

 

・・・この心の言葉を聞ける奴がいたら、間違いなく数日悶えるけど。

 

「私はユー君のそういうところ好きだよ?」

「訂正だやっぱり気絶するくらい殴ってくれ。今の記憶が飛ぶくらい」

あ、やだ死んだわこれ。

 

  そう言って俺が地面を蹴るのと、彼女が背中のブースターを使うのは同時だった。

 

 ◆◇◆

 

 

「五班、通信が切れました!後から送り込んだ隊員含めて現時点でおよそ八割の隊員の連絡がとれません!!」

「くそっ!どうなってるの!?まだ精霊を発見すら出来ていないじゃない!」

  残った十数人が、その苛立ちを隠せなくなっていた。

 

  ほぅ、と息を吐く。

「・・・私が出る、お前は本部に連絡しろ・・・奴等に借りを作るのは癪だが、人命を優先する」

「え?」

  近くの情報隊員が声をあげる。

「まさかこれ程とは予想外だったということだ。ここまで来ることは読んでいなかった。おい日下部(くさかべ)

「はっ!出撃ですか!」

  若さの残る黒髪の少女が直ぐに柊の元へ駆けてくる。

 

「いいや違う。この場の委任だ、お前は柔軟だし指揮の能力もあるからな。今の階級は無視しろ、ここでの指揮は任せーーーーーーー伏せろっ!!!!」

「ひゃっ!?」

  柊が目を剥き叫び、近くにいた日下部という名前の隊員の一人に飛び付き無理矢理伏せさせる。

  他の隊員も、もはや反射の領域で伏せる。数瞬後、二人が丁度立っていたら腹部当たりに何かが通り過ぎ、風が起きて髪が靡く。

『えっーーーー!?』

  そして反応が遅れた数名が、そのナニカの餌食となった。声も出す間もなそれとぶつかり。勢いに負けてくの字になってその場に倒れる。

 

「っ・・・くそ、やられた!」

  急襲。あまりに突然なそれ()想定していた柊は舌打ちする。想定はしていた、隊員も飛び道具の類いを十分警戒をしていたはずだ。

 

  だが、タイミングが悪かった、今は精霊の姿も確認できず大半の隊員との連絡も途絶えていた・・それに対する焦りと苛立ちがあって、それがこの急襲による反応を阻害したのだ。

 

  他の隊員と柊は直ぐ様立ち上がり、物陰に隠れる。

「倒れた人数を確認しろ!」

「七です!いずれも息はあると思われます!!」

  柊が声をあげると、数秒とかからず反応が返ってくる。いずれも息はある、その言葉に柊は少し安堵すると共に...眉を寄せる。

 

(殺さなかった・・・?気配のない同時急襲、これは精霊の仕業なのは確定だろう、生まれてまだ力加減ができてないのか?)

  いいや。と頭を振る。

 

「第二撃を警戒しろ!近く奴等でチームで固まり臨戦態勢だ!!」

『ハイ!!』

  攻撃をかわした十数人が返事をし、それぞれが指示の通り動き始める。

 

「うぅ・・・う?何、あれ?」

  そして遅れてもう一人。柊に頭を掴まれよって地面にキスする代わりに戦闘不能を免れた彼女は、視界に映るそれに戦闘中なのすら忘れて首をかしげる。

 

  彼女の前方には長方形の白い布で覆われて、破れた箇所からは黒いザラザラの物が溢れている。

 

(あれ、枕?それも、そば粉・・・?)

「見事ですね。正直今ので全滅させる気だったんですが」

 

「っ!ようやく、顔をだしたな」

  しかしそんな思考も、ある声によって遮られる。

  日下部隊員もまさかの精霊の登場に直ぐに立ちあがり、森から姿を現した精霊に武器を構える。

「ホンとに、精霊?」

 

「はい。精霊です...ですが『璃水(リズ)』という名前がありますので、精霊などではなくそちらで呼んでください」

  目の前の精霊、リズは笑顔で語る。まるでできる限り刺激させないよう丁寧に、ゆっくりと。

  しかし精霊の内容に、柊は小さく笑う。

「精霊に、名前だと?・・・随分と人間の家族に執着しているようだな?彼等にその名前付けて貰ったんだろう?強ち洗脳というのも嘘ではなさそうだ」

「洗脳・・・・?あぁ。そういうことですか」

「?」

  柊の言っていた事を何となく察して、リズは少し遠い目をする。

  そういう風に、捉えられたのかと。

 

  しかし柊は理解できず片眉を上げ、話を戻す。

「まぁいい・・・一応聞くが、素直に殺される気はないな?」

  そう言って背後の、土を被った彼女だが。に目配せし、彼女もそれを察して周囲に柊の意図を繋げるをす・・・『合図を待て、攻撃するぞ』のサインであった。

 

  露とも知らないリズは、その会話に応じる。

「勿論です。捕獲とかではないんですね?」

「捕獲か?出来るならな。生きてる状態から死ぬまで体を徹底的に調べあげられたいなら、そうしてやろう。私なら舌を噛んでても死ぬがな」

  小さく表情を歪めるリズに対して、柊は煽るように笑う。

「・・・交渉とかは、無いんですか?」

「内容も含め、言うまでもない。平行線さ。生憎と兵器と平和を語る口はないんでな・・・撃てっ!!」

  合図と同時に、彼女達は引金を引いてリズ弾丸の雨を降らせる。

 

  弾は勿論、殺すための弾だ。

  リズは顔色一つ変えず、円形のフィールドを自分の周りに発生させて弾丸を防いだ。

『っ!』

  その様子に撃っていた隊員達の顔が強張る。

 

  そして。リズはゆっくりと顔をずらしながら彼女達の表情を眺める。

 

  彼女達は皆、自分に明確な殺意をもって、敵と認識して、攻撃していた。

 

  大切な者達を守るために。

  リズはどこか、安心した様に笑う。

「・・・これが、彼女達の『普通』なんですよ。祐君」

  精霊に生まれなければなんて、嘆いても仕方ないと...一人の少年の顔が頭に浮かんで、寂しそうに笑った。

 

『ウリエル』」

  そう言うと、彼女の武器が現れた。

  何もない空間から出てきたのは五つの黒い球体。

  フヨフヨと浮かんでいるそれは重なり大きな球体となり。そしてーーーーーーーリズ自らを捕食するかのように覆い。浮かんだ。

 

『っ!?』

  彼女達は目を見開き、一旦射撃をやめる。

  急に訪れた静寂。そして夜に浮かぶ漆黒の月がどこか幻想的で...どうすればいいのかと戸惑う。

「た、隊長」

  指示を仰ごうと一人が柊のいる方に顔を向け...あれ、と呟く。

 

 

「隊長?」

  気付けば、そこに柊の姿はなかった。

 

 ◆◇◆

 

  満天の星の下で、立っているのは恵だった。

「...ねぇ、ユー君」

  話しかけたのは、まるでボロ雑巾のように地面に付している俺だった。俺は呟くように、返す。

「なん、だよ・・・・?」

 

「もう。やめよう?」

「・・・お前らが止めてくれるなら、俺もやめてやるさ」

  そう言って立ち上がると。恵は息を飲む。

「ねぇ、お願いだから・・・!」

  彼女は、優しかった。だからこそ、とどめを刺せない。

  気絶しそうなら自分を殴って意識に食らいつき、立てないなら木刀を杖がわりにしてでも。彼女はその姿に目を見開きながら、それでも攻撃には加減があった。

 

「・・・確かに、俺はおかしくなってるのかもな」

  ここまで来ると本当に洗脳されてるのかもって思えてくる。ここまで没頭することがあったろうか、必死になったことが過去に何度あったろうか。などと自問する程度には。

 

「ユー君・・・」

「ほら来いよ、神谷・・・そんで後で病院に連れてってくれ」

  もういい。やけだ、ふてぶてしく行こう。

「・・・何で?」

「うん?」

「どうして、そんなに精霊を庇うの?」

「違うよ神谷、俺が庇ってんのは精霊じゃない・・・ただのリズだ」

「リ、ズ?」

「アイツの名前だよ、名前さ・・・まさかこの年で名付け親になるとは思わなかったが、な」

  あ、やばい。意識が朦朧としてきたぞこれ、何か変な玉が見えて、視界が黒くーーーーーーー

「何だこれ?飛蚊症?」

「っユー君!!」

  間抜けな発言と共に倒れて、神谷の叫びが聞こえて、俺の意識が消えた。

 

 ◇◆◇

 

 

「起きましたか?祐君」

「・・・リズ?」

「はい」

「ここは?」

「私の能力によるものです・・・私は五つの黒い球体を使って『増やすこと』と『移動させること』が出来ます。そして、今の私はその増えた一つです。私以外の生命は無理そうですが」

「・・・神谷は?」

「別の私と話してます・・まぁ、会話になるかは今の私はわからないんですけど」

  彼女は苦笑する。おじいさん達とも話してます。とも言った。

  蕎麦粉枕や、膝枕をしている彼女は分身体というわけだ。

「成程。よくわからないが、わかったことにする」

  体の痛みも抜けないし、大人しくすることにした。

 

  すると、リズは柔らかい笑顔で。

「ありがとうございました」

  そう言って、頭を下げた。

「そしてごめんなさい・・・やはり私はいるべき存在では無かったようです。私は、一人がお似合いみたいです」

 

 ・・・・・・あぁ?

 

  俺はおもむろに起きあがり、沸き上がった怒りのままリズを睨む。

「ふざけろ、前と言ってることが違う。嘘つきは嫌いだ」

「嘘じゃないです、女には二言があるんですよ?」

「喧しいわ。そもそもお前飯とかはどうすんだよ?家は?」

 

「えっ?そ。それは、その時考えます・・・」

「行き当たりばったりで倒れる姿が目に見えるんだが」

「いいんですよ!細かいことは!」

  衣食住の二つが細かい事って。

 

「あの・・・わかってますよね?もし仮にここを凌いでも意味がないってこと」

「・・・意味はあるだろ」

「む、揚げ足とらないんですよ?・・・なので、エーエスティー?とかいうあの機関の人達のリーダー、後神谷さんとやらにお話してその後に去ります」

「何を話すんだよ?」

「勿論、精霊についてです」

 

「・・・そうかよ」

「精霊はやっぱり人間の敵ですし、危ない存在です。でも・・・心はあるってことを、知ってほしいから」

 

「そだな。話してみると意外に間抜けだからな」

「辛辣ですね!?」

「事実だろ」

  そう言った。怒りは会話で冷めてしまった様だ。

  呆れる、我が儘になってもいいと思うのだが。

 

  すると、リズがもじもじとし始めた。

  トイレかな?アイドル理論で精霊はしないかと思ってた。なんて間抜けな勘繰りをしていると、リズは顔をあげる。

「・・・・こんな話するのも何ですが、本当に、変だと思うんですけど」

 

安心しろ。お前と会ってから変なことしか起きてないから。と内心で呟く。

 

「ーーーーーーもし。私が普通の女の子だったら、どうなってたと思いますか?」

「もし普通だったらまず関わりなかったと痛い痛い。打撲とか怪我が割りと深いから揺らさないでリズさん」

  頬を膨らませて肩を揺すられる。俺が怪我人だって忘れてないこの子?

  真面目に聞かれたから真面目に答えたのに。解せぬ。

「私これ怒っていいと思うんですよ!?わざとですよね!わかってての回答ですよね!?だからの敬語ですよね!」

「わかってるんだったら止めてくれ。ほらあれだよ、俺ってツンデレだからさ」

「今まで過ごしてて初耳なんですけど!?しかもそれ自分で言っていいんですか!」

 

「その意気なら、まぁ大丈夫だろ?」

「っ・・・・もう」

  リズは上がっていた肩を下ろす。

 

  そして、笑った。

「こんなに祐君と話して、バレたら他の私に嫉妬されるかもしれませんね」

「やるなよ?手がつけられない」

  俺もつられて笑う。それは嫌だ。

 

  俺達は立ち上がり、同時に視線を景色に向ける。

何処とも知らない夜空を見ながら、リズが言った。

「夜空、綺麗ですね?」

「そだな。だがあそこには負ける」

  望めないと思っていた、不器用な二人の別れ話は終わった。

 

俺はリズを見る。

「じゃあまたな。せいぜい死ぬ気で逃げろよ?」

「っ!・・・ハイ!また会いましょう」

  彼女の笑顔は、涙に濡れながらも輝いていた。

 

  生涯、忘れないだろう。

 

 

 

 

さて、全く似合わない事をやった俺はまた気を失った。

 

  その後の事はよく覚えていない。

聞けば神谷と一緒に倒れていたそうだ。

 

 

  ボロボロで動けない俺はすぐさま病院へ、そして本当に有言実行な彼女・・・神谷の世話になりました。

 

  下の世話されそうになった時は本気で焦って逃げた。怪我だらけで、ハイスペックな彼女から逃れる術はなく捕まったが。そもそも俺頑張ったのに掠り傷一つないんだけど。

 

いや女の子相手だと本気でないんだよ、うん。本当だからね?

 

  よし、忘れることにしよう。下の世話から食事まで、ナースでも辛いのにクラスメイトは死にたくなる。何か神谷笑っても目がギラギラしてるし。

 

  その後、柊と名乗る神谷の所属する機関の支部長とも会って話をした。

 

どうやら俺は『偶然あった精霊の被害者である不幸な一般人』という扱いらしい。というか柊さんがそういう感じで接して来たのだ。

 

  俺もそれに合わせた。

  面倒だし、どこで誰に聞かれてるかわからない。

 

  去り際「名付け親は君だろう?全く良い男だよ、君は」と俺の頭を撫でて意味深に笑ったのは何故だろうか、リズと話した内容が気になってしょうがない。

 

え?マジでどこまで知ってんの?なんで見舞いの品に『パジャマっ子特集』の最新号持ってきてんのこのお姉さん?

 

  ちなみにその後見舞いに来た神谷に即頭を洗われた、意図的だろう。

 

「何で急に頭洗うの?」

「ユー君のそのフラグ叩きおろうと思って」

 

思ったより近くに聞いてる人いたわ。

  もう慣れたよ。解せぬ。

 

・・・・その後はまぁ、残り少ない夏休み返上で病院で過ごした。あまり気にすることはなかったが、敢えて加えることとすれば。

 

 

・・・・周囲も自分も病院で着るこの服は、正直パジャマ枠でありかもしれない

 

 

 ーーーーーーーでも神谷が常にパジャマなのは気にしない。確かに可愛いかったけど。なんか凄いニコニコしてるけど。枷が外れたように俺の側にいるんだけど。

 

「神谷、たまには一人にしてくんない?」

「やだ」

  なんか、負けた気がした。

 

 

 ◆◇◆

 

 

  そんな破天荒な夏休みから、時計の針は回る。

 

 

「・・・シドー!何をしている、早く行くぞ!」

「ちょっ、待てよ十香!すいません祐二さん、俺行きますね!」

「おう、頑張れよ主人公」

 

  俺の前には、二人の男女がいた。女の子の方は元気一杯で。男の子の方はそれに苦労しているものの、満更でもなさそうな様子だ。

 

  今は『計画デート』の最中だった、面倒なので細かい説明は省くと。リア充が世界を救うために奮闘中とでも言ったところか。

 

・・・わからないって?女の子の方、彼女は精霊だと言えばわかるだろうか。

 

 

  携帯が鳴る。

「っと。草薙です・・・はい、了解しました。失礼します」

  そして、たった今ロリな上司から携帯で『お疲れ様、もう上がっていいわよ』と労られた所だ。

 

  実はそのロリ上司は少年の妹なのだが、これ以上は事態がゴチャゴチャになるので省かせてもらう。

  正直マトモな神経だと色々付いていけないからだ、愉快すぎて。

 

心も体もイケメンな奴が世界(女の子)を救う。それだけ知っていればいい。

 

 

「・・・」

  通話を終えて携帯を耳から離すと、なんと不在着信が『十件』来ていた。

  全て先程とは違う、だが同一人物である。俺は邪魔しないよう現場から離れながら、電話を掛ける。

 

  右耳から話して、ワンコールで相手が出た。

 

『遅いよユー君!!?』

 

  やはり、携帯から距離を取って正解だった様だ。

  多分耳を澄まさなくても五メートルくらい先まで聞こえたと思う。数人が振り返るがすぐ視線を戻した。

 

「悪い、仕事中だった」

『むむ、それは浮気の常套句だよ!?』

「お前の視線を掻い潜って浮気とか不可能なんだけど」

トム・○ルーズも回避不可のインポッシブルである。

 

相手も本気ではないようだ、笑い声が聞こえる。

『そうだね・・・ねぇユー君。そっちの仕事はどう?』

 

・・・・あれ?今納得した?俺縛りつけられてんの認めた?

 

話変えてきやがったし、付き合うけど。

「・・・ボチボチだな。奇抜な変装と変な異名つけられなかったら公務員ばりに安定してるよ」

『へぇ!・・・ちなみに異名って?』

「『取り憑かれた男(チートストーカー)』って。異名は俺じゃなくてお前に向かってるよ・・・ま、それでも士道君とはそれなりに仲いいけどな。精霊と仲良くしてた男なんてそういないしな」

『いや、ユー君だけだと思う。しかしその秘密を知ったときは驚いたよ?まさか精霊の力を封じるなんて、本当にあるんだね!』

 

「そだな。でも俺としては何故か俺宛に来る極秘メールの内容とか隠し事を全部熟知してた()の方が驚いたんだけど」

 

『フフフ!私たちの間に秘密は要らないでしょう?』

「プライバシーってご存知?」

『それに、誰にも話してないしいいでしょ?』

「無視しやがったな。それに立場を考えろ・・・はぁ。精霊を守る側と倒す側、対立するはずなんだがな」

俺は頭を掻く。

「もう大人だってのに、そう変わらないもんだ」

 

『アハハ~・・・やっぱり。リズさんの事、諦めきれないんだね』

苦笑、と言った笑いだった。呆れてると言ってもいい。

 

「・・・ま、希望が出来ちまったからな。現にもう何人もの精霊の力を封印してる」

『未だに信じられないけどね~』

 

「俺も信じられないよ。でも、いたんだ」

『そっか、でもリズさんの目撃情報は無いんでしょう?』

 

そうなのだ。折角の希望がいても、救いたい奴が都合よく現れてもくれなかった。まぁ彼女にケータイがあれば良かったのだが。

 

「まーな、でもいつか会えるだろ・・・あ、恵。それで今日なんだが」

『帰れないんでしょ?知ってるよ~お仕事お疲れ様だね!多分帰りは二日後の夜明けと見た!』

「・・・お前実は精霊だったりしないか?心読める的な」

むしろ、そっちの方が納得がいく要素が多い気がする。

 

『まっさか~?』

『お電話中すいません・・・草薙(・・)支部長、お時間よろしいですか?』

『あれ。もうそんな時間かな?名残惜しいけど、じゃあねユー君!』

「おぅ、またな」

そして、通話を切った。

 

  その『また』が五分後だったら、携帯番号を変えよう。三十分位は持つと思う。

 

 

  丘の上の公園で、先程手に入れたパンを腕に抱いて街の景色を楽しむ。パン屋のオッサンという設定の『計画デート』で彼等に近付いたのが、思わぬ僥倖であった。

 

 

俺は、高台に登る。景色が良いところで食べる方が幾分かうまいからだ。

 

そして公園らしき場所の木製のベンチに座り、街を見る。

 

  綺麗な街だ。

  そして何回も精霊に破壊されたとは思えない点、随分逞しい街である。

 

この街に呼ばれたのも、リズの影響だ。

 

出合いも景色も、彼女がくれたものだ。『精霊と仲良くしていた人間』は、今俺が所属している機関では中々貴重らしい。

 

しかし、恵がいろいろな意味で化けた。それもアイツの影響なら怒っても許されると思う。

 

 

  慰めるように暖かく柔らかい風が、俺の頬を撫でる。俺こ思考を切り、ガサガサと紙袋からパンを一つ取り出し口へ向かわせた。

 

 

 

 

 

 

「あの・・・その美味しそうなパン、分けてくださいませんか?」

 

  声が聞こえ、ふと振り返る。

 

 

 

「・・・・っ」

  それは、とても聞き慣れた声だった。

 

  時が止まったような感覚に襲われる。

  夢のように現実味が無かった。

 

 

 

 

  俺は、風に靡くその淡い青髪を見て、

「・・・言った通りになったな?バカ」

 

そう言って、破顔した。

 

 

 

 

  世の中は適材適所だ。

  俺には精霊を救う力も正義感もない。

  彼には精霊を救う力も正義感もあった。

 

  ならば、彼がきっとこの街も、精霊も、世界も。なんなら宇宙も救うのかもしれない。

  俺はサポートに回る、そんで救いたい奴を救って自己満足して終わりだ。小者らしい生き方をするさ。

 

  力不足でも、俺じゃなくても。

救いたい奴を、救えるなら。

 

  でも、これくらいは(精霊と仲良くする位は)いいだろう?

 

 




読んでくれてありがとうございます。
精霊の設定とかに矛盾点があったらすいません。

しかしこれ書いたの一年前か・・・全然気づかなかった。

・・・過去の私は疲れていたんだ(錯乱)!
では、今度こそ一年後くらいに会いましょう。
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