出戻り、そしてジョブチェンジ
弾とカズと蘭ちゃんを連れて教室に戻ると、並んでいる人数がえらいことになっていた。正直、なんでここまで延びるのかわからない。
教室に戻る階段の端に長い列ができていると思ったら、それが自分のクラスに続いてるとか……。
「いらっしゃ……あら、一夏じゃない。お帰り。そして弾に数馬に蘭も、久し振り」
なんでか鈴がチャイナからメイドにジョブチェンジしていた。似合ってるけど。
「ありがと。でもいまはそれより仕事仕事。シャルロットにやること聞いて、その通りにさっさと済ませてね」
「はいはい」
……でも、弾達はどうしようかね?
「なんなら、俺達も手伝うか? 執事服もメイド服もないけど接客だったら慣れてるぜ?」
「ほんとに!? 是非お願い!あっちに服の予備があるから着替えてきてっ!」
「え、ええ? ええ!?」
「……おいおい。まあ、いいけどよ」
弾とカズと蘭ちゃんは、シャルに連れられて制服の予備があるらしい裏につれていかれてしまった。
「一夏はどんどん出てきたのを運んで!それからテーブル一つ一つ回ってゲームしていって!」
「はいはい」
人使いが荒いね。今の状況だったら仕方無いけど。
「織斑くんこっちこっち!神経衰弱やろうよ!」
「こっちも!こっちはジャンケンで!」
「早く早くっ!」
……やれやれ。女三人集まると姦しいと言うが、それ以上に集まると更に喧しいな。
一部、全く騒がしくないテーブルもあるようだが。
そこに座っているのは二人の少女。中の人的には自分の半分くらいの年だし、間違ってないはずだ。
一人は、何故かここのメイド服を着ている猫座の生徒会長こと、こちら沢尻区盾有少年刑務所前派出所さん。略してこちたてさん。
もう一人は、内気キャラでありながら時々アグレッシブな可愛い系愛でられ妹キャラ、かんちゃんメイドver。本名は……今は凄まじい間違い方をしそうだから言わない。
その二人が一つのテーブルで、ただ座っている。
こちら沢尻区盾有少年刑務所前派出所さんことこちたてさんは、かんちゃんと目を合わせることができていない。
対するかんちゃんは、なんでか目を逸らし続けるこちたてさんに少し悲しそうな顔を向けている。
……ってか、なんで鈴やかんちゃんがここのメイド服を着てるんだ? シャルにスカウトされたか?
「誰かさんが勝手にいなくなっちゃったからね!一夏の着替え写真(後ろ姿でシャツを脱いでいるところ)を手離すことになっちゃった!」
「悪い」
……それはそれとして、隠すべき所をおもいっきり暴露してる気がするんだが、そんな調子で大丈夫か?
恐らくやさぐれてるんだと思うが……後悔しても知らないぞ。
……やさぐれシャーさん?
「一夏」
なんだか俺の後ろに修羅がいる。
「あんまり変なことばっかり考えてないで……仕事しようねぇ?」
「了解、シャルロットメイド長」
「………………え?」
今のは片眼鏡《モノクル》に登録しておいた名前を読み上げただけなんだが、非常識なほど驚いている。
「……一夏……いま………僕の名前を……」
「ちょっとずるしたけどね」
カンニングとも言う。
「も、もう一回!もう一回呼んで!」
「……シャルロット」
「かはぅっ!?」
どこかから銃撃音が聞こえたような気がしたが、きっと気のせいだろう。こう、ズッキューン!って。
くいくい、と袖を引かれてそちらを見ると、かんちゃんが物欲しそうな目で俺のことを見つめていた。
「……名前で、呼んで……?」
……これは素直に呼ぶしかないな。この状態のかんちゃんには勝てないって。
と、言うことで実践。ただし少し悪戯含む。
「……え? あ、い……いち……か………?」
かんちゃんを抱き寄せて、わざと上を向かせる。顔が俺の胸の辺りにあったら、目を合わせるためには上を向かなきゃならないからな。
そこで俺はちー姉さん笑いではなく、普通の意味でにっこりと笑いかける。
「あ……い、一夏……近い……」
かぁ……と赤くなるかんちゃんの目を見ながら
「━━━簪」
「ぁ……ぁあ…………」
かくん、とかんちゃんは気を失ってしまった。やっべ、やりすぎた?
「簪ちゃんに何てことするのっ!」
急に現れた猫座の生徒会長にかんちゃんがさらわれてしまった。いや、本当はずっといたんだけどね。
「おや、猫座の生徒会長。簪とお話はできた?」
きっ!と鋭い視線で睨まれた。まあ、確かに気絶させたのは悪いとは思うけど、そこまで睨まなくてもいいと思うんだけどね? 内容を聞いてたんだったら特に。
………ああ、嫉妬か。まあ、猫座の生徒会長も人間だったってことか。
ところで、猫座の生徒会長って呼ぶのとこちたてさんって呼ぶのとどっちがいいと思う? 俺はどっちでもいいんだけどさ。
「……睨むくらいなら話くらいしっかりしてやれよ。かんちゃんはあんたと話したがってたじゃないか」
「う……」
………気付いてはいたけど、勇気が出せなかった、と。なんだろうねこの姉妹。
姉は普段は明朗快活な完璧人で、そのうえ大体のことを器用にこなす一種の天才(その上努力もしている)。
しかし、大事な存在に気を使いすぎるあまり、とたんに臆病になるようになった隠れヘタレ。
妹の方は、普段は姉の影に隠れていて目立たないが、それでも自分を持ってしっかりと自立している。ただ、生来か環境からかは知らないが、あまり自分と言うものを外に出そうとはしない。
しかし引いてはいけないところではけして引かず、自分の意思を押し通そうとする力を持っているアグレッシブお嬢さん。
……なんというか、随分と対照的なことだ。似ているところと言えば、根っこは二人とも暑苦しいくらいに熱いってところと、優しすぎるくらいに優しいってところだな。
見ていて面白いけど。
「……ん……おねえ……ちゃん……?」
「! 簪ちゃん!」
かんちゃんが目を覚まして、猫座の生徒会長がかんちゃんの顔を覗き込む。
そんな猫座の生徒会長の顔を、かんちゃんはゆっくりと両手で包み込んだ。
「……やっと、私を見てくれた………」
そうしているかんちゃんはとても嬉しそうで、そこにいる全員はその光景を邪魔することができないでいた。
……まあ、仲直りの道は一歩進んだってことで。
時間も開いたし、接待しよう
色々ありつつも増えた人手を使ってなんとか混雑を乗り越えた。最長100mはあったのではないかと思われる人の行列は、今では10mもない。
と、言うことで俺は弾と蘭ちゃんとカズとかんちゃんと鈴、つまりクラスメイト以外で手伝ってくれた人の接待をしている。束姉さん? 束姉さんは裏でちー姉さんの接待を受けてるけど?
ただし、珍しく暴行以外の意味も含めて。
「そう言えば一夏。さっきあんた簪のことを簪ってちゃんと呼んでたわよね? どんなトリック?」
「俺が覚えたって可能性を最初から除外してるあたり付き合いの長さがわかるよな」
「覚えたの?」
「いや違うけど」
「じゃあいいじゃない」
確かに。
「臨海学校の時に、束姉さんにコスプレ用のIS貰ってたの覚えてる?」
「……ああ、そう言えばそんなのも貰ってたわね。それが………って、もしかして……」
「そう、この執事服はIS【クロ】だ」
にっこり笑ってそう言うと、流石の鈴も驚いたような顔をした。
「……つまり、ISのハイパーセンサーの応用で、名前を登録しておけば呼ぼうとした時に名前が出てくる……ってことか。篠ノ之博士もあんたのことをよーく理解してるわね」
「まあ、私の姉だからな。多少ストーカーのケがあったりなかったりだが、悪い人ではない。変人だが」
たったあれだけの説明でよく理解できたな。俺自身でもなにも知らない状態からじゃあわからないと思うぞ。
「愛よ、愛。英語で言うとインフィニティ・ラヴ」
「無限ってどこについてたのさ!?」
「あたしの一夏への愛をバカにするなっ!そんなの前提条件でしょうがっ!」
「なんか怒られちゃった!? あとごめん!」
「許してあげるわ」
「……え……なんでこんなにオープンなの……?」
「蘭。一夏の周りではこれが普通だ。言わなけりゃ伝わらないのが当然だからな」
正確には、伝わらないことはないけど、曲解あるいは流されることを前提にしといてくれってことだな。
大半は流すけど。
「……私も、言わなくっちゃだめなのかなぁ………?」
「言っといた方が良いと思うぞ? ……一夏、大好きだ」
「俺も弾は好きだよ? 蘭ちゃんも」
「ふぇっ!?」
いきなり俺にそんなことを言われた蘭ちゃんは、急に爆心地に放り出された新兵のようなすっとんきょうな声をあげた。
ちなみに、これは別に悪戯ではなく、実際蘭ちゃんのことは好きだから言っただけ。それ以外の理由は特にない。
「へ、あ、あの、あのそのっ……ぁぅ………」
「……ふふふ……蘭は可愛いわね。よしよし」
真っ赤になって俯いた蘭ちゃんを、鈴が優しげな笑顔を浮かべて撫でている。
原作ではお互いに睨み合っている描写があったような気がしたが、きっとこの世界ではそんなことにはならないだろうな。
「……え……えっと………織斑一夏くん……?」
「……猫座の生徒会長と、こちら漣区盾剥ぎ精神疾患者専用隔離病棟前派出所さん略してこちたてさんと、どっちの名前で呼ばれたい?」
「なにその二択!? 普通に楯無じゃ駄目なの!? 駄目ならたっちゃんでも可!」
「たっちゃんの方なら別にいいよー」
「軽いっ!? それじゃあ何で今まで断り続けてきてたの!?」
「まず、いきなり俺をどこかの部活に強制入部させるって話を俺に通さず勝手に決めたことと、いきなりやって来て生徒会長なんていう面倒臭そうな役割を押し付けようとしたことと、それを拒否してるのに強引に押し通そうとしたことと、俺の部屋にやって来ていきなり泊まろうとしてきたことと、その時に俺の部屋にこっそり盗聴器を仕掛けていったことと、」
「ごめんなさい私が悪かったわだからそろそろ暴露話をやめて簪ちゃん達の視線が突き刺さってきてなんだか物理的にかつ本格的に痛くなってきたのだからお願いしますやめてくださいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
まあ、途中から色々なところから嫌悪感とか殺意とかそういうのが大量に含まれた視線が突き刺さってたもんな。
視線の元は、鈴とののちゃんと弾とかんちゃんと蘭ちゃんとシャルとラルちゃんとカズとセシリーと教室にいる全員に、教室の外からじとっとした視線を向ける束姉さんと、同じ場所から『人間としてどうなのそれは?』って言いたくなるような顔をしているちー姉さん。
正直、俺がこんな視線に晒されたら………無視して寝るかも。シルバースキンを200枚くらい重ね着してからの話だけど。
シルバースキンを200枚重ね着しておけば、およそあらゆる状態に対処できる。
空気が薄くなっても、宇宙服として使うことができるシルバースキンを着ていれば大丈夫だろうし、エネルギードレインを防いでいた所を見るとエネルギー系兵器もレーザー系兵器も核も放射線も問題なく防げるだろうから。
ただ、ガス系にはあんまり強く無さそうだからどこぞの大上老君の怠惰スーツでもあればいいんだけど。エアリアルオペレーターでも可。
「……で、なに。演劇だったら出る気はないよ」
「そこをなんとかならないかしら」
「こっちにも予定があるからな。何も言わずに勝手に人を引き込もうとするからこうなる。前回も原因は同じだろ」
「……どうしても駄目?」
「66兆2000億ユーロ積んでも駄目」
「法外すぎない!? しかもそれでも駄目ってなにさ!?」
「シャル。嫌なことを嫌だって言うのには理由は必要ないんだってよ………と言うことで、諦めといた方がお互いのためだと思うぞ?」
主に、あれからずっとたっちゃんを睨み付けているちー姉さんが原因だけど。
……あと、なんでかんちゃんは蘭ちゃんのことを睨んでるのかね? 拗ねてるのか?
「……拗ねてなんか………ない……」
ぷくっとほっぺを膨らませながら言っても説得力がないんだけどな。………ん~、いつもは蘭ちゃんのポジションはかんちゃんのだし、自分の居場所を取られたような気がしてるのか?
恋愛はみんな一緒でいいのに、そのポジションを取られるのは嫌か。
恋愛方面は共有スペースだけど、撫でてもらう方面はパーソナルスペースって思ってたとか?
で、急に出てきた相手にその場所を取られると感じたわけだ。
……そんなところも可愛いと思うのは、きっと気のせいでもなんでもないと思う。
とりあえず、かんちゃんに機嫌を直してもらうためにも……やるか。ちょうどメンバーもいることだし。
鈴と、弾と、カズに視線を向ける。三人はすぐに頷きを返してきた。
……よし、行こうか。
ゲリラライブ、IS学園編
弾と鈴とカズと蘭ちゃん、つまりバンドのメンバーと、観客としてののちゃん、セシリー、シャル、かんちゃん、ラルちゃん、束姉さん、ちー姉さんを俺の部屋に招待して、直後にアンダーグラウンドサーチライトに入る。
アンダーグラウンドサーチライトは異次元にシェルターを作るため、中に入ってしまえばISを使われようがまず入ってこれないし気付かれない。
なぜ俺達がアンダーグラウンドサーチライトに入ったかと言えば、見付からないで演奏できる場所が欲しかったからだ。
見つからない場所と言うことならば、アンダーグラウンドサーチライトとIS【不可触の秘書《フローレンス・セクレタリー》】の合わせ技ほど有効なものは早々ないから。
ちなみに【不可触の秘書《フローレンス・セクレタリー》】はインヒューレントスキルの一つで、完全ステルスと思考速度の加速ができる。使っていたのは確か一番上のお姉さんだったはず。
まあ、それはどうでもいい。かなりどうでもいい。すごくどうでもいい。とにかくどうでもいい。あと……どうでもいい。
「そこまでどうでもいいの!?」
「今からやることには一切関係ないからな」
今からやるのは演奏だし、と思いつつ楽器を取り出す。
「お、待ってました!」
いち速く弾がドラムを弄り、自分に使いやすいように調整を始める。
その隣では鈴がギターに弦を張り始め、カズと蘭ちゃんはその他の楽器の調整をする。一応調律はしてあるんだけどな。
「だろうと思ってその方面には触ってない」
「信用してくれてありがとさん」
「俺達の中で一番楽器に精通してるのはお前だからな」
楽器に精通はしてない。千の顔を持つ英雄には精通してるつもりだけど。
「じゃあ、何からやる? とりあえず練習は必要だと思うのよね。久し振りだし」
「じゃあ、『般若心経ロック』で」
「なんであえてここでその曲をチョイスしちゃうの? もう少しまともな曲だってあるじゃない」
「じゃあ『紫蝶々』」
「オッケー」
さてと。それじゃあ歌って奏でて遊ぼうか。放送機材のハッキングは━━━
「もう終わってるよ? 束さんを舐めちゃいけない! でもほんとはペロペロしてほし」
ちー姉さん の アイアンクロー!(タイプ的には鋼ではなく格闘かノーマル)
こうかは ばつぐんだ!
束姉さんのひめい が アンダーグラウンドサーチライト の くうかんに ひびきわたる!
束姉さん は アイアンクロー を されている!
ちー姉さん の アイアンクロー!(タイプ的には以下略)
こうかは ばつぐんだ!
……なんか、最初期のポケモン思い出した。巻き付かれると動けないんだよな。あれ。
束姉さん は おとなしくなった。
■ ■ ■ ■ ■ ■
突然のことだった。放送機材が全てこちらの制御を離れ、こちらの操作を一切受け付けなくなってしまった。
そして流れ始めるのは、陽気な男女の声と、小さなBGM。
『あー、あーあー↑あー↓あー? マイクテスマイクテス、感度はどうかな?』
『いいと思うわよ?』
『そうかい? ああそうそう、この放送は、ご覧のスポンサーの提供でお送りします』
『音だけだからご覧できないけどねーwww』
『解説は私、Sammer&Bellの揚げ物より煮物が好きな方、サマーと!』
『同じく、Sammer&Bellのティガレックスにハンマーで勝てちゃう方、ベルがお送りいたします!』
この放送はあまりに突然流れすぎて、この場にいる全員が驚愕して固まってしまっている。
『それでは一曲目!初めは騒がしいくらい騒がしいのから流すからね。五月蝿かったら扉を閉めると良いよ!【初音ミクの消失-Dead end】!』
『このタイトルの初音ミクさんはフィクションよ。もし本当にそんな名前の人を見かけても、なにも言わずにスルーしてあげてね? お姉さんとの約束よ?』
『お姉さんwww』
どごっ!バギィッ!ビチャチャッ!
『始まるわよーっ!』
そうして曲が始まった。
……ど………どうしよう…………?
side 織斑 一夏
数曲の練習の後、俺達は本格的に演奏を始めた。
弾がドラムを叩き、鈴がギターを弾き、俺とカズは使う楽器をころころ変えて必要なものを演奏している。
今回用意した曲は【初音ミクの消失】に始まり、【メルト】、【ブラック★ロックシューター】、【ダブルラリアット、【恋は戦争】、【下剋上】、【magnet】、【人狼狂詩曲】……といった激しい曲を主体にしている。一部激しいかどうか疑問なものもあるが。
俺としては楽しければ良いけどさ。
ちなみに、最後にはカズの歌う【なまえのないうた】を予定してある。だんだん静かにしていく予定だし、ちょうどいいと言うことで。
あと、実はナレーションはサテライト30で増えた俺と、俺がライアーズマスクで変装した鈴だったりする。
ライアーズマスクは声も変わって本当に便利。
「ところでここってどこなの?」
「気にすんな。気にしたところで変わりゃしない」
曲の合間に鈴が聞いてきたが、秘密にしとこう。説明が面倒だし、俺もどうやって作られてるのか知らないし。
……そうそう、すぐ近くにいる招待客の皆様には好評だった。よかったよかった。
……? なんか無かったか?
IS学園の放送機材をジャックして行ったゲリラライブも終わり、今はクラスの片付けをしている。
机と椅子のいくつかを千の顔を持つ英雄で代行しておいたため、テーブルクロスを含めて消滅させるだけでおよそ三割は終了。後はセシリーが持ってきたやつだから少し時間がかかる。
ちなみに劇はやっていない。生徒会がなにをやったかって? 興味ないから知らない。
…………なーんか物騒なことがあったような気がしたんだけど………………フラグを折っちゃったかね?
まあ、別にいいけど。
「一夏、ちょっとこれ食堂に返してきてー」
「おー、わかったー」
台拭きを受け取り、廊下をのんびり歩く。今日は本当に疲れた。主に精神的に。
執事服を着てにこにこ笑って、演奏して、接待して、片付けて…………俺らしくないことこの上ないな。
今日はもうゆっ………くり寝ることにしよう。この状態で理不尽なことを言われたら、本気で切れてしまいそうだ。
まあ、あまり理不尽すぎることでなければ切れる前に寝ると思うけど。
例えば、弾が交通事故に遭って、犯人は逃走中って知らせが入るとか、どこかの悪の秘密結社の工作員がやって来て、シロを頂こうかと思いまして、とか言ってくるとか。
……その他にも色々ありそうだけど、今はこのくらいにしておこう。
理由? そりゃ簡単だ。目の前にたっちゃんがいるからだな。
「一夏くん」
「……真剣な話臭いなぁ……なに?」
いつもみたいな不透明かつ信用できないうえ緩い空気だったらともかく、今は不透明なのは同じだが、真剣で引き締まった空気を発している。
「……今日、何かあったかしら?」
「文化祭とゲリラライブとご奉仕喫茶以外に?」
「ええ。短刀直入に言うと、誰かに襲われたりは?」
性的な意味でだったら束姉さんとちー姉さんに襲われたし、好敵手《ライバル》的な意味でラルちゃんに少し人気勝負を持ちかけられたりもしたけど、バトル的な意味では無いな。
「無い無い。一人になる時間はほとんど作ってないし、エムさんに遭遇してからはずっと一人にならないように気を付けてたから」
「え……エムさん?」
「巻紙礼子って人。多分偽名。いらないからこの名刺あげる。素手で触ってたから指紋とか採れると思う」
「……ありがと」
たっちゃんはなんでか複雑そうな表情でその名刺を受け取り、これまたどうしてか溜め息をついた。
「そんな落ち込んだような顔をして、どうしたんだ? 正直に言って似合わないぞ? 愚痴くらいなら聞いてもいいけど?」
聞くだけだけど。文字通り文言通り聞くだけだけど。
「ん~……なんかさ………私がでしゃばるようなことじゃなかったのかな~って思っちゃってね……」
ポツリと溢した言葉は、しっかりと俺の耳に入るくらいの音量だった。話すでも話さないでもよかったんだが、どうやら話す方を選んだらしい。
「本当は、一夏くんに被害が行く前に一夏くんを囮に一夏くんを狙っている奴を捕まえたかったんだけど……一夏くんは一夏くんでちゃんと考えて動いてたって知らなかったし」
まあ、知られないように動いてたし、普段の俺を見てたら何かに警戒してるようには見えないわなぁ。
実際は臆病すぎるくらい警戒して、安心できる状態でしか寝ないようにしてるんだけど。
俺に被害が来そうになったらすぐに起きるし、大体のものは防げるようにしてあるし。
「……私のしたことって、お節介だった?」
「睡眠時間が減って本気で殺してやろうかどうか迷うくらいには………っていう俺の完全な個人の意見は置いといて、理性的に考えた場合は感謝しているけど?」
「……へ?」
あ、馬鹿みたいに呆けてる。
「たっちゃんが優しいことはよく知ってるし、無駄なことをしたがらないのもよく知ってるから理性的には感謝。ただし寝るのが大好きな俺個人としては、どこかの四肢切断大好きバラバラ大魔王みたいに殺そうか、エクスカリバーに再度出演願って精神的に殺そうか、アイアンクローで頭を握りつぶそうかって悩むくらい憎く思ってるけど」
「なんか一つよくわからないのがあったけどほんとにやめて!?」
「いいよー」
「って軽っ!?」
「重い話は似合わないからさっさと明るくしようと思って」
重い話なんて前世の友人の暗黒時代の黒歴史ノートに記載されている設定の中身だけでお腹一杯。それ以上は胸焼け起こすよ。
胸焼けは気持ち悪くなるから嫌だ。
「………そう」
「ん。そう」
……あ、そうだ。これを食堂にもっていかなくっちゃならないんだっけね。面倒だけど。
ついでに、釣りでもするか。
「たっちゃんたっちゃん」
「ん? なにかしら?」
ちょいちょい、とたっちゃんを手招きで呼んで、耳元でこっそり囁く。
「……まだ居るみたいだけど、釣ろうか?」
さっきまでなんとなく落ち込んでいるような空気を発散していたたっちゃんが、急に目付きを鋭くさせた。
「……お願いできる?」
「いいよー」
「……前から思ってたけど……軽くない?」
「軽くたっていいじゃない。俺だもの。……まあ、釣った後はよろしく」
俺が囮で、たっちゃんが実働。どんな結果になることやら。
……食堂食堂、片付けしないと。
やれやれ、やっぱりあったな
食堂からの帰り道で、わざと人気の無い場所を通る。賢いやつなら誘いだとか思うかもしれないが、あの短気な奴だったらどうなんだろうな?
しかも、わざと名前を大嫌いなやつのコードネームと同じにしてやったから、相当本気でキレているはずだ。単純そうな顔と雰囲気してたし。
……噂をすればなんとやら。本当に単純だったな。
まあ、単純な奴ほど自分の得意な状態にはまると強いから、単純というのは悪いことではない。
例えば、某一歩を踏み出すボクシング漫画の主人公は単純一途で、ひたすら前に出ることしかできないが、はまれば最大級に恐ろしい相手の代表格だろう。
それと同じようにはまれば恐ろしい相手になるのか、それとも口だけの相手なのかは知らないが………まあ、頑張れば多分なんとかなるよな?
ならなかった時はならなかった時で考える。場合によってはバスターバロンとサテライト30とシルバースキンと激戦とブレイズ・オブ・グローリーとヘルメスドライブの同時使用も厭わないつもりだ。
「 」
「あ、エムさんじゃないですか」
相手が口を開こうとした瞬間、それに被せるようにして俺は挑発をさらに繰り返す。繰り返すはおかしくないかって? 初めのあれも挑発の一部だからいいんだよ!
「ところで、エムさんはこんなところで何をしているんですか? もう文化祭は終わりましたよエムさん。よいこは帰る時間ですからお帰りくださいエムさん。エムさんがここにいては仕事に支障が出ますから、できるだけ早くお願いしますねエムさん。エムさん? 聞いてますかエムさん。そんなプルプル震えてもエムさんは所詮エムさんなんだからやめといた方がいいですよエムさん。と言うか最大限ぶっちゃけますと邪魔ですよエムさん。仕事は失敗したんだからさっさと帰って上司に叱られて来てくださいよエムさん」
「うるせえな。こっちの仕事はまだ終わっちゃいねえんだよ!」
エムさんは本気でキレているらしく、俺に殴りかかってきた。たしかあの秘密兵器はこっちがISを使ってなくちゃ使えないはずだから、こっちも使わず応戦する。
千の顔を持つ英雄を使ってトンファーを呼び出す。普通のトンファーではなく、振り回すところの先に鉄球がある。ワンピースでこんなトンファーを使う敵が居たな。
それを振り回し、
当然のように鳩尾に爪先蹴りを叩き込んだ。
「ぉげえっ!?」
なんか変な声を上げてその場に踞ったエムさんの後頭部をトンファーで殴る。実は拳より蹴りよりトンファーの方が威力が弱いから、これでも手加減の一種なんだよな。
しかしそのトンファーの一撃は、ISのシールドに阻まれて届かない。
仕方がないので神鳴流烈蹴斬弐の太刀でシールドを抜いてもう一度蹴る。今度は喉を蹴り潰す感じで。
「ゴヴォッ!?」
酷い悲鳴だな。急に襲いかかってくるからそうなる。もっとちゃんと『襲いますよ』って言ってから来いって。
そうすれば手加減の一つや二つは………してやらないこともないが、結局殴る。そして蹴る。ついでに関節を極める。あと折る。それから無限エクスカリバーの刑。最後にちー姉さんに引き渡す。
……知らない奴が多いが、ISを使っていても関節技を極めれば普通に骨折や脱臼くらいまでは持っていけたりする。関節技《サプミション》こそ王者の技よ!とはよく言ったものだな。
「……ぐぁ……て……てめぇ………この……クソガキがあぁぁあああっ!!」
なんか蜘蛛っぽい爪が出てきた。その上、先端が開いて銃口が顔を出している。見た目がキモい。
「まあ、関係無いけどな」
なんのために俺がわざわざ実際に接触したと思ってるんだか。
ダメージは二の次。本命は、エムさんの使うISにとある能力の発動に必要なエネルギーを送り込むためだったりする。
その能力とは、俺が神に実際に頼んだ能力の一つ。名前をインヒューレントスキル・ランブルデトネイターと言う。
流石にこの距離で爆発されると色々きついので、シルバースキンを三枚ほど装着して、それから爆破。ISの装甲だろうがコアだろうが、金属でできているなら壊せない道理はない。
……実はシルバースキンを爆破することもできたりする。ただし、その場合だとシルバースキンは自動修復されないから、新しく出す必要があるが。
一番便利な爆破の元は、エンゼル御前の矢かモーターギアの二択。激戦もいいが、疲れる。
急に八つの爪の全てを爆破されたエムさんは、全身にISを展開して備える。俺はそんなエムさんを帽子の下から眺めるが、どうしてもギンの方が強そうに見えるし、束姉さんが操縦するゴーレムの方が強い気がする。
「で、エムさんはなにやってるの?」
「私をあいつと同じ名前で呼ぶんじゃねえ!私は秘密結社『亡国機業』が一人、オータム様だ!」
「覚えるのが面倒だからエムさんで固定な。自己紹介も終わったし、帰れば? どうせエムさんじゃあ俺には勝てないだろうし」
帰してやる予定は一切ないけど。
「っだらぁぁあああっ!!」
急にエムさんは俺に襲いかかってきた。爆破されて先端を失った機械の脚をわしゃわしゃと蠢かせ、結構な速度で飛んでくる。
うん、生理的に受け付けられないくらいキモい。
シルバースキンを解除し、クロの上からシロを展開。クロはISだからほぼ完全にシロと同期することができる。ISスーツより便利だ。
雪片弐型を展開して、それから左右の衝撃砲と接近しての斬撃でかなり一方的に追い詰める。ネットなんかがこのシロに効くと思うなよ。
抉るようにして、撃つ。それだけでかなり削ることができる。ぶっちゃけ弾丸《バレット》だな。久し振りの出番だけど。
鈴達との模擬戦闘の時に使うと割と深刻に体に響くから使ってないしな。
……さてと。俺としてはISだけ置いて帰ってくれると嬉しいんだけどな。エムさんにマーキングはしたし。
それに、そろそろたっちゃんが仕事に来るはずだし。
「あら、私が助けに来るまでもなかったかしら?」
「いやいや、来てくれて嬉しいよ」
とりあえず、これで俺の仕事の一部は終わり。後はたっちゃんの仕事だ。
『……お疲れ、一夏』
「ほんと、疲れたよ。ののちゃん」
…………ん? ののちゃん達はずっと見てたぞ? 屋上あたりから、ISを使って。
穿千とスターライトmk3を展開してたり、衝撃砲の砲身をロングバレルな形で形成する準備が整ってたり、レールカノンやミサイル弾幕や狙撃用グレネードランチャーとかの準備ができてたりもするけど。
……それじゃあ、仕掛けもすんだことだし、寝るか。
その後、亡国機業本部にて
どうやらあの後エムさんは逃げきったらしい。たっちゃんがそう報告してくれた。
まあ、実はすぐにでも居場所を見付けて殲滅することもできたりするんだが………いいや。セシリーの後の事を考えれば、この辺りでちー姉さん似の……名前なんだっけ?
織斑はわかる。織斑…………なんだったかな……。
ま……ま……………そう、マゾカ。そんな感じの名前だったはず。自分の顔にナイフを滑らせて悦ぶような変態性癖の持ち主だし、名は体を現すって本当のことだと思った瞬間だった。コードネームもM《マゾ》だし。ぴったりな名前だと思う。
……とにかく、マゾカと戦っておくのはためになるだろうし。
……さてと。ちょっと悪戯しようかね。エムさんと大雨さんに挨拶でもしとこう。
アリス・イン・ワンダーランドは本当に便利。あれを使って電話のように話をすることもできるんだから。
まあ、電波やら何やらを狂わせ、機械を狂わせ、人間の感覚すらも狂わせるアリス・イン・ワンダーランドだ。電波のやり取りくらいはできてもおかしくない。
と、言うことでエムさんにくっつけたマーキングをヘルメスドライブで見付け出し、その位置にアリス・イン・ワンダーランドを薄く散布する。これで話ができるな。
できればエンゼル御前を付けたかったが、いくらなんでも見付かるだろうと思って断念した。
今思えば、エンゼル御前にシルバーカーテンを使ってやれば見つからなかったんじゃないかと思ったりもするが、過ぎたことを気にしすぎるのはよくない。反省するだけして、後はきっぱり割り切ろう。
原作内では第二位と三位の謎キャラ(何を考えているかわからないという意味と、謎に包まれた出生的な意味で。一位はダントツ束姉さん)の二人と話ができるんだから、ISのファンとしては楽しまなくっちゃ損ってもんだ。
ファンの割には崩壊させる率が非常に高いけど、まあその辺りは気にしない。
俺だからな。
……でも、やっぱり眠いからまた今度でいいや。と言うか、盗聴とかいいや。もう面倒になってきたし。
適当に【死ねばいいのに】でもリピートかけとけばいいや。【ベンゼン】とか【ニトロベンゼン】でもいいけど。
……ふぁ………ねみぃ…………おやすみ……。
……すか~…………。
■ ■ ■ ■
とある高層マンションの最上階の、豪華な飾りが溢れかえるほどに存在しているその部屋で、一夏にオータムと名乗ったが一度もその名前で呼んでもらえず、あろうことか目の前にいる大嫌いな新入りの少女と同じ名前で呼ばれ続けた可哀想と言えば可哀想な女性が、少女に詰め寄っていた。
つい先程、更識楯無を主とした七人の少女達に一方的にボコられていたところを助けてもらっておいて、恥を恥とも思わない、しょーもない女である。
「るっせぇ!!何で私ばっかこんなめにあうんだよ!? あれか!お前私の事が嫌いか!? 私もお前の事なんか大嫌いだくそったれが!!」
「……何もない天井を向いて話すとは………本格的に駄目女だな。女以前に人間としても駄目だが」
「てめえに言われる筋合いはねえよクソガキ!」
その女は八つ当たりも含めて少女の体を壁に叩きつけ、無理矢理押さえつけていた。端から見ていると強姦現場に見えなくもない。
「明らかに悪意満載じゃねえか!私にはスコールっていう恋人がいるんだよ!何でこんなちんちくりんに手を出さなくっちゃなんねえんだ!?」
なんだ、浮気か。浮気魔とか脳天に穴を開けられて脳味噌をスプーンで掻き出されて死ねばいいのに。
死ねよ。
「ついにこいつ直接罵倒してきやがった!?」
「……スコール。この頭が可哀想な女のどこが良いんだ?」
「あら、可愛いじゃない」
突然聞こえた女の声に振り向くと、そこには女の恋人であるらしい女が一人。名前はスコールと言うらしい。
「スコール!」
「あらあら、可愛い顔が台無しよ? もっと落ち着きなさいな」
「それより!」
「いいから、落ち着きなさい」
いつの間にか近付いていたスコールに優しく抱き締められ、エムさんと呼ばれ続けたオータムは顔を赤らめて静かになる。それを少女は下らないと切り捨てて部屋を歩き去る。
「エム。ISは整備に回しておいて頂戴。サイレント・ゼフィルスはまだ奪って間もない機体だから、再度の調整が必要よ」
「わかった」
「―――それと、オータムを連れてきてくれてありがとう」
その言葉に一瞬だけ足を止めるが、すぐにその足は動き出す。
「―――ふん。命令だからな」
閉じたドアの向こう側で囁かれるように口に出された言葉を知るのは、口に出した張本人であるエムだけだった。
……ところで、オータムってちょろいよな。正直に言うと、一言で機嫌を直すオータムを見て、すわ二代目ちょろいさんの降臨かと思ったし。
まあ、ちょろータムだから仕方がない。ちょろシア・ちょろコットと同じくらいちょろいちょろータムだから仕方がない。
返事とかは無いが、返事があろうが無かろうがちょろータムがちょろい事には変わりない。藤崎漫画の封神演義の足音がロリロリな奴みたいに、歩く度にちょろちょろとでも効果音をつければいいのに。
……冗談だよ? なに、空気を読めって?
はっはっは、そんな無茶な。
『ぜんぶ聞こえてんだよぉぉおぉぉっ!!』
盗み聞きか。変態め。
学園祭の、裏話
……これはちー姉さんから後々になって聞いた、学園祭の時にちー姉さんが行ったことの話だ。
多少の推測が入るために完全とは言えないものの、恐らくちー姉さんがわざと隠した部分もそこそこ正確に描かれているだろうと思われる。
まあ、ちー姉さんの暴走はいつも通りだし、そこまで気を張って読む必要もない、単なる報告書みたいなものだ。
side 恐怖公 血冬
ゴッ!ガッ!ガッ!ガッ!ガッ!ドゴス!ベゴシャ!ブヂブヂブヂッ!!ゴギンッ!ベゴォ!ドムドムッ!ドムドムドゴスベギグシャッ!!
side 織斑 千冬
学園祭当日。私はとある女を後門のすぐ近くで待っていた。束か? と思うかもしれないが、今回は珍しく違う。
私が待っているのは、ボーデヴィッヒにあのようなことを吹き込んだ主犯であり、私の教え子の一人でもあるクラリッサ・ハルフォーフだ。
あの女がたわけたことをボーデヴィッヒに吹き込んだお陰で、一夏にの額に……ひたいに……ヒタイニィィィイイ!!
「ひぃっ!?」
……オヤァ……? 漸く来たようだナァ……?
久し振りに顔を会わせるが、ハルフォーフも大きくなったものだ。私とそこまで年は離れていないのだが、初めて出会った時のハルフォーフは年齢的には中学三年から高校一年程度で、その頃のイメージが強い私はつい子供相手のような気がしてしまう。
……だが、ここまで育っているならば加減は要らんだろう。外交問題にはならない程度に全力でボコってくれる。
目の前で青い顔をしてカタカタと震えるハルフォーフに私はゆっくりと近付きながら、どの程度まで加減するかを考えるのだった。
結局、そこそこ本気のアイアンクロー程度で手を打ったのだが、ハルフォーフはハルフォーフで凰ほどではないにしろかなりの再生能力を有していたのですぐに復活してしまった。三十分は悶絶させるつもりだったのだが、実際に悶絶していたのはたったの1分ほど。
……まったく、私も衰えたものだ。
「いえ、かなり痛かったですよ、教官。隊長への愛をみなぎらせていなければ、危ないところでした」
「そうか」
……つまりハルフォーフも、相手は違えど私達と同じ位階に足を踏み入れようとしているのか。
……と言うことは………もう少しやっても平気と言うことだな?
「お願い致します、辞めてください」
右手をゴキゴキと鳴らしていると、どうやら自分の末路を悟ってしまったらしいハルフォーフから土下座せんばかりの勢いで頼まれてしまった。かなり本気の懇願のようだったので、仕方なくやめてやることにした。私はそこそこ優しいからな。
ハルフォーフと別れてすぐに、私は一夏に連れられて一夏の中学時代の同級生達(+α)のゲリラライブを楽しむことになった。クラスの事は……まあ、なんとかなるはずだ。
一夏と凰と五反田兄が気合いとノリと勢いで分身してクラスを切り盛りしているので人手が足りなくなることは無さそうだし、山田先生が一肌脱いでメイドをしてくれているので問題ない。
山田先生は少しひきつったような笑顔を浮かべていたが、最後に見た限り本気で楽しんでいたしな。
……さて、私もそろそろ仕事に戻るか。束を放置するわけにもいかんしな。
「楽しかったよー。まったね~!」
そう言いながら帰っていった束の姿が消えて、私は漸く一息つくことができた。
学園祭には、多くの国の上層部、または諜報部の者達が、代表候補生等から一般参加用のチケットを使って堂々と入り込んでくることがある。
チケットを使っている以上、なにもしないうちに追い出すのは不可能だが、逆に言えばなにかをすれば責任を問うこともできると言うことだ。
……ここで何が困ったかと言うと、束の存在とその優秀さだ。
束の居場所の情報は、束を欲しがる国家や組織の上層部にとっては何よりも価値あるもの。当然、見つけたならばすぐにスカウトや強引な勧誘、最悪拉致等を仕掛けてくるものも居なくはない。
そんなことをしてくる相手に束が加減をするわけもなく、私はやり過ぎた制裁を止めるのに四苦八苦した。
確かにその組織からの勧誘などを抑える方法で一番確実なものはその組織を潰すことだが、組織を潰すために国家を丸ごと潰すと言うのはいただけない。
加減するべきところで加減をしなければ、それは天災ではなくただの暴力だ。
暴力を振るうのは最終手段として、それでいて自分に正当性がなければ排除されるのは自分だ。
……まあ、束はそれをわかってて限界ギリギリの所をにこにこ笑いながら踏みにじるのだから質が悪い。
結局話し掛けてきた数人を見事に首にさせ、その者が所属する組織と国家にそこそこの損害を出させるだけで抑えさせたが、それでもやはり疲れた。束と一緒にいると、精神的に疲れてしまう。
……今日は一夏のプリント付きの抱き枕を抱いて寝よう。束もたまにはいいものを作る。
そう思っていたのだが、寮長室のベッドで丸まっている一夏を見て、抱き枕が必要ないことを悟った。
……今日はいい夢が見れそうだ。
決定事項、面倒臭い
今年は一年生に専用機持ちが多いと言うだけの理由で、キャノンボール・ファストとか言うレースに強制出場させられることになってしまった。
とにかく早くゴールすればいいだけの話らしいので、周りの妨害をしつつさっさととんずらするのが正解だろう。
ラッキーなことにシロは速度特化型だし、そこまで時間がかかるようなことは無いはず。ゴールしたらさっさとコースから出て寝よう。そうしよう。けってーい。
「はいはい、それでもいいから試合中は本気でやってね。本気の一夏に勝ったら千冬さんに挑戦して、一夏をあたしに下さいって言うんだから」
「私もいいか?」
「む、では私も立候補しよう。近くに居ればその強さの秘密が分かるやもしれんし、私も嬉しいしな」
「……すぅ……ふぅ……一夏を、私にくだしゃひ………うぅ…………」
……小声で練習しているかんちゃんはなんだか見ていて和む。
「……? また撫でられた……」
「可愛いからよ。可愛い子は撫でられる運命にあるのよ。私が決めた、今決めた」
「うんうん、かんちゃんは可愛いね」
「……ぁぅ…………」
何この娘可愛すぎるんですが。本気で可愛らしすぎるんですが。
……まあ、撫でとこう。
「……はぁ……うん、つっこまないよー、僕はもうつっこまないよー」
「ところで一夏さん? 犬を一匹飼ってみる気はありませんか? 名前はセシリアと言いますが」
「………っ!……つ……つっこまない……つっこまない………っ!!」
「面倒を見れなさそうだからやめとく」
「ご安心下さい、トイレの躾はできておりますし、洗濯と掃除はバッチリですわ。………料理は不味くもなく美味しくもなくという程度ですが」
「━━━ッ!!━━━━━━ッ!!!」
「……シャルロット。我慢は体によくないわよ?」
「そうだぞシャルロット。あまり自分の中に溜め込みすぎていると、体を壊してしまう。病は気からと言うが、騒の気も鬱の気も、過ぎれば体には毒にしかならん」
ぷるぷる震えてツッコミを我慢しているシャルだけど、ツッコミ属性がツッコミを我慢できるわけが無い。前にあった賢者モードだったらともかく、平常時だったら特に。
その上シャルは完全にツッコミ属性だ。ツッコミもできるボケ属性ではなく、真性のツッコミ属性だ。
……あと、弄られキャラでもあるな。
……まあ、なんにしろ準備はしとかないとな。面倒だけど。
「キャノンボール・ファストが終わったら、みんなで一緒に寝ましょう? だから、頑張って」
「……鈴。お母さんって呼んでいい?」
「できればやめて」
やめてと言われてしまった。仕方無い、やめるか。
「そう言えば、キャノンボール・ファストで思い出したんだけど、一夏の誕生日当日よね? 何か欲しい物ってある?」
「睡眠時間がほしい」
「……また難しい注文をするわね……腕がなるわ」
「そうだな。それでは共同作業でつくるとしようか」
「……とりあえず、五反田さんに連絡を取ることを提案いたしますわ」
「「「意義無し」」」
「……すー……はー……すー……はー………落ち着け、落ち着くんだ僕………素数を数えて落ち着こう。素数は1か自分自身でしか割りきれない孤独な数字、僕に元気を与えてくれる…………」
なんだかシャルはツッコミを我慢するあまりネタに走っちゃってるよ。このままだとボケとツッコミのバランスが崩れて大変なことになりそうだ。
原作的な意味ではとっくに帰還不能地点《ポイント・オブ・ノー・リターン》を通り過ぎてるけどな。
「……とりあえず、今度の休みに皆で一緒に寝ましょう。千冬さんや弾達も呼んで」
「私も姉さんを呼ぶか?」
「お願いするわ。一緒に寝る人数は多い方が夢の中が楽しくなりそうだし、幸せだし……安全だしね」
……ああ、あのエムさんのことでも思い出してるのかね?
エムさんはしばらく大丈夫だと思うがね。聞いた話だと原作よろしく自爆して逃げようとして失敗して、地獄の断頭台を食らいそうになったところでマゾカに連れられて逃げ出したそうだし。
ちなみに、逃げてる最中にセシリー凝縮歪曲光線と、ののちゃんの真っ赤なエネルギー砲と、鈴の重複圧縮衝撃砲(左右の衝撃砲の口径をすぼめて威力を上げて、そのまま同一地点に撃ち込む大技……らしい)と、ラルちゃんのレールカノンと、シャルの大口径対物ライフル砲(部品の一部と銃身に千の顔を持つ英雄を使用しているデュノアの製品。なかなか壊れない上威力が馬鹿高い)と、かんちゃんの山嵐(手動ロック)が打ち込まれたが、シールドビットを犠牲に相手は逃げ切ったらしい。凄いなマゾカ。流石マゾカ打たれ強い。
……まあ、誕生日のプレゼントは毎年似たようなものだし、結果も毎回似たようなものに落ち着くし、これでいいだろ。
……さてと。俺は寝ようかね。やることと言えば後でキャノンボール・ファスト仕様にシロを調整するくらいだし。
……対光学兵器用に雪片弐型は必要だけど、衝撃砲は封印。空間固定も封印。機動に全部回せばいけないことはないだろう。千の顔を持つ英雄もあるし。
とある日、セシリアの悩み
……ふぅ……と溜め息をつく。これで今日、いったい何度溜め息をついただろう?
その回数を数えようとして指を折り曲げ始めたが、指を曲げ伸ばしした回数が25を越えた辺りで憂鬱になり、数えるのをやめた。
そしてその事でまた溜め息。
「…………はぁ……」
「……セシリア。そんな溜め息ばっかりついてると幸せが逃げるわよ? 何があったのよ」
隣の席に座る鈴さんが心配そうな雰囲気で話しかけてきてくれるけれど、今はそれに笑顔を返すことすら難しい。
どうにか笑顔らしきものを浮かべて見せましたが、鈴さんにはどうやら笑顔に見えなかったようで、さらに心配そうな表情を浮かべてしまった。
「……なんかあんた、本気で調子悪そうね」
「……いえ、そんなことは……」
「あるでしょ。バレバレなのよ」
いつもの勘……ではなく、恐らくただ観察した上での言葉に、わたくしは溜め息をつく。いつもならばここまで分かりやすいことはないはずなのだけれど、今日はとことん調子が悪い。
『……話してみたら? ここだけの話にしとくからさ』
すると聞こえてきたのはISのプライベート・チャネルでの声。どうやら本格的に相談を聞いてくれるつもりらしく、鈴さんはわたくしのことをじっと見つめている。
『ああ、千冬さんにばれると後が怖いから目はそらすわよ?』
ちゃんと聞いてるから、と言って鈴さんはのんびりと麻婆定食を口にする。
『……実は…………』
『うん、実は?』
『…………最近、一夏様に調教し《いじめ》ていただけなくて欲求不満気味なのですわ』
『………』
わたくしの言葉を聞いた鈴さんは一度固まり、それからレンゲを置いてナプキンで口の周りを拭いた。ナプキンには何もついていなく、とても綺麗に食べていたのだと言うことがわかった。
「あんた真性のマゾヒストね」
「―――ッ!」
いきなりの罵倒に体の一部が熱くなる。喉からせりあがってくる声を唇を噛み締めるようにして殺し、両手を思いきり握り締めて波が過ぎるのを待つ。
『きゅ……急に何をおっしゃるのですか!心の準備もなかったお陰で危うく気をやるところでしたわ!』
『……本気で餓えてるのねあんた。一夏以外でもこうなるなんて…………』
『恐らく、鈴さん、箒さん、シャルロットさん、ラウラさん、簪さん、織斑先生相手ならこうなる自信がありますわ』
『……………はぁ……確かにそれは不味いわね。後で一夏に話はつけてあげるから、今はこのくらいで我慢してね』
鈴さんはわたくしの額にでこぴんの前状態の指を近付け、容赦の欠片もなく撃ち込んだ。
バヂンッ!という音と共にわたくしの額に鈍痛が走り、わたくしは椅子から床に転げ落ちてしまった。
『じゃあ後でね』
『あ……あぁぁ………あ……はぁ………♪』
わたくしは久し振りに他人から与えられた痛みに恍惚としながら、皆様が内履きとはいえ靴で歩き回っている床を這いずりまわる。
顔が汚れた? 髪に埃がついている? むしろそれはご褒美ですわっ!
放課後になり、わたくしはいつものように一夏様の元に。するとわたくしのことを見た一夏様は、いつもと違う表情でわたくしを見た。
「鈴から話は聞いてる。だから今日だけは、ちょっと付き合ってあげる」
「!? あ、ありがとうございますっ!」
わたくしはその場で頭を下げる。いつもならばなんと言っても流され続けていたが、今日はわたくしのことをとことん苛め抜いてくれると言ってくださったのだから、喜ばない理由がない。
換気を露にしているわたくしを見て、一夏様はにっこりと笑いながら言う。
「あははは、気持ち悪いやつだなぁ」
「ぁはぅあぁぁっ!?」
たった一言。一夏様の口からたった一言の蔑みの言葉が出ただけで、わたくしの脳髄から背骨を通り、全身を甘い甘い稲妻が走り抜けた。
声も抑えることができずにはしたない声をあげてしまったし、全身にまだ残っている稲妻の余韻が抜けた後に体を支えられる自信がないほど疲労している。
しかしそれでも、わたくしの頭のなかは幸福感で一杯だった。
(……あ……少し濡らしてしまいましたわ…………)
「こっちにおいで、雌豚」
「はぅぅうぅぅぅっ!?」
れ……連続技は卑怯ですわっ!いくらわたくしでも、身体が持ちませ
「来い、豚」
いつもより数段強い口調。それで一夏《ごしゅじん》様に命令されてしまえば、わたくしが逆らうことができるはずもなく……わたくしは動きづらい体を懸命に動かして一夏様に近寄って行く。
数十秒をかけて一夏様の足元に到着したわたくしは、一夏様の顔を見上げる。
一夏様は優しい笑顔を浮かべ、わたくしの頭をゆっくりと撫でてくださった。
いままでの急に跳ね上げられるような感覚ではなく、ゆっくりと持ち上げられていくような感覚に、どんどんとわたくしの身体が火照っていくのがわかる。
一夏様の触ったところは頭だけだと言うのに、わたくしの身体はまるで火にかけられたかのように熱い。
「……セシリー」
「……は……はい……ごしゅじんさまぁ……♪」
わたくしと御主人様の視線が絡み合う。それからゆっくりと影が近付いて―――
「お嬢様。あれほど派手な下着も『馬鹿には見えない下着』も控えるように申し上げましたのに」
急に現れたチェルシーが、にっこりと笑うのを見て悟る。
「……夢………ですのね」
「慧眼です」
ぱん、と世界が弾けて消えた。
目が覚めるとそこは一夏の部屋。セシリアはぷちか数体に囲まれて眠っていた状態からゆっくりと体を起こし、真っ暗な中で目を凝らす。
すると一夏の布団の上には何人分もの影が存在していて、自分はそこから弾かれたのだと知る。
(……わたくし……欲求がたまっているのでしょうか……?)
そう考えながらもベッドに寄りかかり、一夏の寝顔を観察する。
「……たまには、夢の中の御主人様のように……わたくしを苛めてくださいね?」
……お願いしますわ、御主人様。
そう、心の中で呟いて、健やかに眠る一夏様の額に唇を当てた。
IS改造、依頼先は……?
side 篠ノ之 箒
私は今、携帯電話を片手に学校の屋上に居る。
まだ電話を掛けているわけではないが、すぐにかける予定だ。
電話帳から姉さんの携帯番号(なぜか始まりが090でも070でも080でもなく666な上、13桁という市販ではありえない番号だが)を呼び出して電話を掛ける。内容は、紅椿について。
抱き付きからの零距離展開装甲攻撃の威力の底上げと機動力の上昇のため、胸部と腹部に追加装甲をお願いできないかという話をするつもりなのだが………なんと言うか、姉さんならば普通に用意ができてそうで恐ろしい。
数度の呼び出し音が響いて、
『やあやあしばらくぶりだね箒ちゃん。束さんはちょっと寂しかったよ?』
いつもとまったく変わらない、能天気な姉さんの声が聞こえた。
「そうでしたか。それは悪いことをしました」
『も~、前にも言ったけど箒ちゃんってば固いよ~? もっとキャッチーに呼んでくれたまへ~』
……キャッチーに、というのがどういったものかよくわからないのだが………とりあえず、呼び方から変えてみるか。
「……わかりました……お……お姉ちゃん」
電話の向こうで氷に皹が入ったような音が響いた。そして、一夏に再会してから聞きなれた粘性の高い液体が滴る音も。
「お……お姉ちゃん?」
『けぺっ!……だ、大丈夫だよ箒ちゃん!お姉ちゃんは元気だよっ!』
姉さんはそう言っているが、どうしても平気そうな場面が見えてこない。
「……なんというか色々と大変そうなので、やっぱり姉さんと呼びます」
『うん、束さんもあんまりそう呼ばれすぎると身体が持たないからその方が嬉しいかな!ざんねんだけどね!すっごくざんねんだけどね!!』
いつも通りの高いテンションを維持したまま姉さんははしゃぐ。全くこの人は。いつまでも子供のようだ。
「……ところで、今回電話した理由ですが……」
『わかってるよー。紅椿に追加で展開装甲をつけたいんでしょ? お腹と胸にさ』
本当に理解していたようだ。いったいこの人は、どんな世界で生きているのやら。
『箒ちゃんのことはほとんどなんでもわかるのさっ!だって私は箒ちゃんのお姉ちゃんだからね!』
「凄いですね」
色々な意味で。
『それじゃあすぐそっちにいっちゃうから、明後日の四時くらいから三十分くらいは開けといてねー』
「はい、ありがとうございます」
『まったねー!』
ぷつり、と切れた携帯電話に目を落とし、一つ息を吐く。千冬さんに連絡を入れておかねばな。千冬さんには迷惑をかけてしまうが………一夏の小学校のプールの写真1ダースで許してもらえるだろうか?
姉さんにもありがとうという思いを込めて渡すつもりだったが、それが2セットになったところでそこまで変わらないし……。
まあ、何とかしてみせよう。姉さんの手伝いも、もう慣れた。
side 凰 鈴音
「……もしもし、楊管理官でしょうか? 代表候補生、凰鈴音です」
『代表候補生管理官、楊です。用件をどうぞ』
「現在開発中のキャノンボール・ファスト用高機動パッケージの仕様について、できる限り詳しいスペックデータを要求します。未完成であっても、予想値は既に出ていますよね?」
『はい。まず衝撃砲ですが、出力を落とし、近距離用拡散仕様に変更されていますが、基本的には使えます。増設スラスターは新技術を用いた物で、従来のスラスターとは感覚が違います。事前に慣れておくように』
「了解しました。……衝撃砲ですが、口径変更は可能ですか?」
『……一応、可能ではあります。しかしそれには相当の集中力が要求され、高速機動中には難易度が高く、狙い通りにいかない可能性が濃厚です』
「了解。実際の最高速度と加速度は?」
『残念ですが、正確な値は出ていません。完成後の調整で多少の変更が効きますが、およそイギリスのブルー・ティアーズの強襲制圧型と同等以上の性能を持ちます』
「わかりました。いつごろ届くことになりますか?」
『……そうですね………今週末というところでしょう』
「了解。それでは」
『はい』
ぷつ、と電子音が鳴って電話が切れる。携帯を数秒眺めて、ぱたりと閉じた。
……いつも、一夏とは仲良く過ごしてきた。
それと同時に、競う時は必ず全力でぶつかり合った。
いつしか一夏はあたしよりずっとずっと強くなって本気を出してはくれなくなったけど、それは私が弱いのが悪い。
だからこそあたしはやれることはみんなやって、いつでも全力でぶつかっていく。
今回こそ、一夏の本気を引きずり出してみせる!
……そうだ。今回はあたしだけじゃないんだから、協力を頼みましょう。
あたしはいま閉じたばかりの携帯とは別の携帯を開き、そこに登録されている番号に一つ一つ電話を掛けていく。たぶん協力はしてくれると思うけどね……。