IS~ほんとはただ寝たいだけ~   作:真暇 日間

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白式、束姉さん印の魔改造済み

 

決闘当日。そろそろ始まってもおかしくないはずなんだが、まだ束姉さんからISは届かない。

……やれやれ、困ったねぇ………ちー姉さんからも多分話が行ってるんだろうし、雪片との併用が難しいのもわかるけども……いくらなんでも遅すぎると思うんだが。

まあ、束姉さんのいつものノリだろうと思えば理解はできるし諦めもつく。

 

……ちなみに、ISの代わりにぷちかサイズ束姉さん人形(兎耳付き)なら送られてきた。ぷちかたちのお気に入りになってよく抱き枕になっている。

………抱きつかれるとにへらっと笑うのは気のせいだと思いたかった。俺が抱き締めたら鼻から血を噴き出したあたりで諦めたが。

 

「…………まだかねぇ……俺のISは……」

 

名前はなんだったっけね? ………とりあえず白かったような気がするし、勝手にシロと呼んでおこう。たとえ来たやつが黒くてもシロだ。はい決定。

 

「織斑くん、織斑くんのISが届きましたよ!」

 

……ああ、丁度か。

 

「はい、真耶先生」

「もう。山田先生ですよ」

「すみません、名字も名前もそれぞれ二文字以上だと覚えられないもので」

 

そう言いながらそれが来るのを待つ。ちー姉さんは俺の臍出しルックを正面から見た瞬間に頭を壁に叩きつけ始め、今はピットにあったベンチで横になっている。

……今度使う時は千の顔を持つ英雄で全身を覆うタイプのを作ろう。ちー姉さんのためにも、俺の精神安定のためにも。

 

よくこんな恥ずかしい格好をしていられるよなほんと。俺には無理だ。かなりきっつい。

 

そしてピットの搬入口から現れたのは、前情報(原作知識)通りの『白』だった。良かったな白で。白じゃなかったら色と名前とがちぐはぐになっていたところだった。

ちぐはぐでもシロって呼ぶことは決定してたんだけどな。例え名前が黄天だろうが紫電だろうが関係無くな!

 

……さてと。それじゃあさっさと蒸着……じゃなかった、装着しよう。

 

背中を預けるようにしてシロに乗り込む。するとシロの方から俺に合わせて装甲が閉じる。小さいままの状態でぴったりだが、今までの経験から言って大きくなってもぴったりになるんだろうな。きっと。

 

「……さて、一夏。気分は悪くないか?」

 

復活したちー姉さんが僅かに心配そうに聞いてくる。名前で呼んでくれているし、今だけは教師としてではなく、織斑一夏の姉の織斑千冬として話しているんだろう。

 

「大丈夫だよちー姉さん。なんにも問題ない」

「そうか」

 

ちー姉さんは俺の答えにほっと安堵の息を吐いた。多分真耶先生にはわかってないだろう。少し得した気分だ。

 

「……それじゃあ、ちー姉さん」

 

この時だけしっかりと起きて、

 

「行ってきます」

 

俺はゆっくりとアリーナの中に飛んでいった。

 

ついでにシロのスペックデータを確認して、束姉さんがどんな風に作ってくれたのかを確認…………

 

………………化物じゃねえか、このIS。まだ一次形態移行すら終わってないのにこれってなんだ。

 

それとお願いしていなかった武器が一つ。名称未設定の近接ブレードが一本。武装自体は千の顔を持つ英雄でどうとでもなるから頼んでなかったから……きっとこれはちー姉さんのリクエストだろう。

 

……まったくもう。ちー姉さんは心配症なんだから。そんなちー姉さんも大好きだけど。

 

 

ちなみに、ピットでの騒ぎは努めてスルーした。真耶先生が失言をしてちー姉さんに締め上げられてるようなギヂギヂという音と悲痛な悲鳴が聞こえた気のせいだった。そう気のせいさあっはっは。

 

…………今度プリンでも作って行ってあげよう。

 

 

 

 

side 篠ノ之 箒

 

一夏の決闘当日、私はステージと観客席を隔てるシールドのすぐそばに陣取っていた。とはいえ他のものの邪魔にはなっていないし、問題はないだろう。

 

……一夏は昨日一日中寝ていたが、今日の朝に見た笑顔はいつもの小動物のような笑顔とはまるで違い、明らかに狩られる側ではなく狩る側のする笑い顔だった。

………それにどうやら一夏はオルコットの事をひたすら虚仮にするつもりらしく、あんまり派手な戦闘は期待するなと言われてしまった。

 

………………その言葉で私は、一夏がなにをするつもりなのかがおおよそ理解できた。

 

そう考えているとピットから一夏が現れてオルコットの前に浮く。

やる気はほとんど見えず、六割ほど眠っているようにも見える。

 

 

だが、今の私にはどうしても一夏が本気でオルコットを叩き潰す気でいるようにしか見えなかった。

 

 

私はつい最近、戦闘状態にある相手の間合いがわかるようななった。相手を捉えることができるだけの一足一刀の間合いと、相手を殺すことのできる間合い。その二つ。

いつもは剣道場で見ているそれが、一夏からも見えている。

 

ISを展開しなくともただでさえ広かったその殺せる間合い。中間距離の射撃型であるオルコットのそれは、おおよそ五十メートルほど。

しかし一夏のそれはさらに広く、ステージ全てを覆い尽くし、観客席までも飲み込んでいた。

 

そう、私も。

 

そこで気付く。一夏の顔は確かにいつも以上に眠そうだが、その瞳には今まで見たことが無いほど剣呑な光が湛えられている。

 

…………だが、一夏は決闘で派手な戦いは期待するなと言った。ならばオルコットが殺されるようなことはないだろう。

……よっぽどのことがなければ。

 

 

試合開始の鐘が響き、オルコットは余裕を見せながら一夏に話しかける。

 

「最後のチャンスをあげ」

「あ、すいません真耶先生、棄権します」

 

 

………………………………。

 

「は?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

金髪に絡み付かれる、……計画通り

 

side 篠ノ之 箒

 

開始の合図から十秒もしないで行われた、一夏の突然のギブアップ発言。私達が固まっている間にそれは受理されて、決着を告げるブザーが虚しく響き渡った。

 

「……さてと、決闘も終わったし、寮に戻って寝るか」

「ッ!お待ちなさいっ!」

 

何でもないかのように平然とピットに戻ろうとする一夏に向かってオルコットの怒声がぶつけられた。

 

「何だよ五月蝿いな。お前があんまりにも五月蝿くて我儘で鬱陶しくて餓鬼臭くて放っておけば何時までも騒ぎ続けて迷惑だからお情けで決闘を受けてやったんだぞ? 決着ついたんだし帰らせろよ」

 

一夏。一の言葉に十のカウンターを返すのは流石に酷いと思うぞ。確かにそのような感じだったが。

 

しかしオルコットはその言葉に逆上し、オープン・チャネルでアリーナ中に響き渡るほどの大声で一夏にくってかかる。

 

「わたくしは言いましたわよね!わざと負けるようなことがあればあなたを奴隷にすると!」

「え、なに? 今の時代に奴隷? 法律的に駄目だろ常識的に考えて。第一それはお前が勝手に叫んで騒いでいただけで俺は了承してないし。妄想もいい加減にしろよ海賊王国人。お前みたいのがいるからイギリスの国の品位が下がるんだ」

 

いや、だからな一夏。一の言葉に十返すのは辞めろと。

 

「第一決闘って言っても原因はお前が日本を極東の島国で文化的に劣ってる下らないその上そこに住む黄色い猿が珍しいからという理由で自分より目立っているのが気に食わないって騒いだせいだしな。そんな劣るはずの黄色猿に決闘を挑むなんて、つまりわざわざ高尚な人間様から黄色猿と同じ所まで落ちてきたってわけだろご苦労さん。そうして威張ってられる原因のISを作ったのはお前の言うところの極東の島国に住む黄色い猿だってことも忘れてんだろ。そんなこと言うんだったらその極東の島国に住む黄色猿なんかでも作れるISを作ることができなかったお前達は文化的に劣っている極東の島国に住む黄色猿にも劣る豚だろう? 喧しいからその薄汚い口を塞いで屠殺場に行ってろ西洋の飯の不味い島国の白豚が」

 

…………ああ、もうこれは止まらんな。そして一夏が決闘では派手な闘いを期待するなと言った正しい理由もわかった。

つまり一夏はクラス代表になりたくなかったからオルコットに決闘を勝たせてすぐさま叩き潰すつもりだったと言うことか。

 

………ちなみに私が想像していた理由は、一瞬で終わらせるから派手にはけしてならないと言う理由だった。見事に外れたな。

 

「ん? どうしたんだそんな顔を真っ赤にして。一応言っておくと先に侮辱してきたのはお前だからな? 自分のことを棚に上げて他のところを責めて優位に立ったつもりになりたいのか? そんなんだから駄目なんだよ。なに怒ってるの? 怒ってるのはこっちの方だよドリル擬きが。俺だけだったらともかく日本人全て、ちー姉さんも束姉さんもののちゃんも弾もカズも蘭ちゃんも会ったこともないのに馬鹿にした塵屑未満が。オキシフルで全身余すところなく消毒されてから出直してこい。まあ黴菌《ばいきん》が消毒されて生きてるかどうかは微妙なところだけど」

 

……よくもまあそこまで舌が回るな。回りの者達はにこにこ笑いながらそう言っているお前を見てドン引きだぞ?

 

「……言いたい放題言ってくれましたわね……っ!!」

「先に言ったのはお前だって何回言えばいいんだ? それとも塵屑に記憶力を求めた俺のミスか? ……ああ、決闘だったら仕方無いから受けてやっても良いぞ? 今回はまともにな。ただ、これで勝とうが負けようがお前がクラス代表をやってくれるんだったらだけど」

 

そこで一夏は数秒間を開けて、それから呟いた。

 

「返事は無いか。……ああ、もしかして………俺に負けて、お前が豚だって証明されることが怖い? ならしょうがないな、豚にしては懸命な判断じゃないか?」

 

……恐らく幻聴だろうが、太い綱が一気に引き千切られるような音が聞こえた気がした。

 

「……ふ……ふふふ………ふふふふふふふふ……」

 

それはまるで地獄から響いてくるような笑い声だった。怒りを煮詰め、憎悪を煮詰め、殺意を煮詰めて混ぜ合わせ、さらに濃縮して凝縮して作り上げた負の感情の結晶のような笑い声が、アリーナに響く。

それは小さな笑い声だったが、妙によく通り、それを聞く全ての者達に恐怖を与えるような響きだった。

 

しかし、恐らくこの場には最低でも三人、この声に恐怖を感じていないものが居る。

 

一人は当然一夏。いつも通りに見える笑顔を浮かべたまま、笑い続けているオルコットを見詰めている。

そしてもう一人は恐らくだが千冬さん。あの人はこの程度で恐れることはないだろう。

 

そして最後の一人はこの私だ。

……正確には怖いと思っているのかもしれないが、わからない。

なぜなら、開始からずっと強まり続けている一夏の怒気の方がよほど恐ろしく、オルコット程度のことに割いている感情のキャパシティが存在しないからだ。

 

「……ふふふふふ……いいでしょう。その条件を飲みますわ…………変わりに、今回あなたが私に負けたら、強制的に奴隷ですわよ?」

「……なんだ、お前程度の腕でも誰かに勝てるのか。驚きだな」

 

「……試して差し上げましょうか?」

 

「試させて欲しいのか?」

 

一夏とオルコットの間の空間に火花が散ったように見える。

 

「……いいだろう。その条件、飲んでやる。……真耶先生!申し訳ありませんがもう一度試合開始の合図を!」

 

 

一夏が叫んだすぐ後に開始の鐘が鳴り響き、もう一度強固にバリアが張り直される。

 

「さあ、踊りなさい!わたくし、セシリア・オルコットとブルー・ティアーズの奏でる葬送曲で!」

 

「自分のためのか? 用意が良いな」

 

 

そうしてようやく試合が始まり、私はIS《こ》学園《こ》で初めて一夏が完全に起きているときの姿を見ることになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

試合開始、正確には私刑

 

開始の合図が鳴ってすぐ、俺はさっきぶりに完全に起きて動き始めた。

 

色々と話をしていたお陰で既に初期化は終わっている。後は最適化なんだが、これは動きながらじゃないとなかなか進まないのであまり進んでいない。

 

…………が、そんなことは関係無い。ちー姉さんと束姉さん、俺のこの世界で出来た友人達を馬鹿にしたんだから。とりあえずボコす。

ちなみに俺は優しいから、試合中にアポリオンをばらまいてゾナハらせてからボコすとかイギリス全土にアポリオンばらまいてゾナハらせてから原因をでっち上げてこのドリルを社会的に殺したりとかはしない。優しいだろう?

 

最初に武装な錬金のチャフ、アリス・イン・ワンダーランドを大量に(具体的には核金十個分にちょっと色をつけたくらい)散布して光を強制的に乱反射させる空間を作り上げた。この中では十メートル離れたらドリルが持っているレーザーライフルでも虫すら殺せなくなるだろう。

それと同時にハイパーセンサーを殺し、さらにロックオンや名前の元になったブルー・ティアーズの思考操作、そして通信すらも届かないようにする。

 

それに気付かない金髪はただただ無為にエネルギーを消費し続けている。

今となっては全く怖くないレーザーライフルを乱射し、動かせない第三世代兵器を躍起になって動かそうとし、唯一の実体弾であるミサイルもただまっすぐ撃つことすらできずにぐにゃぐにゃと進路を曲げてアリーナの遮断シールドにぶつかって爆散した。

 

「くぅっ!なぜ!なぜ動かないんですの!?」

「こっちで邪魔してるからだけどなにか?」

 

金髪の神経を逆撫でするようにヘラヘラと笑い、無駄弾を撃たせる。そろそろエネルギーは二割ほど使ってしまっているだろう。

 

冷静になれば簡単に気が付くだろうことにも気が付かず、金髪はただ俺にライフルを向けてレーザーを撃つ。

 

「だから効かないっての。と言うかこれは対BT兵器使用IS用の第三世代兵器なんだから当然だろう。実弾系と接近戦だったら効果はあるけど………できるか? 中距離射撃型」

 

さらに挑発して鼻で笑う。卑怯とか言われても、相手のことを調べて対策をたてるのは当然だと思うんだがな。

 

数秒間動きを止めた金髪は、今度は近距離用の武器……インターセプターを取り出して向かってきたが、俺は向かってくるのに合わせてボクシングのヒットマンスタイルに構える。一歩を踏み出すボクシング漫画の死神と尾張の竜の技は好きだ。

 

フリッカーを連続して金髪に叩き込む。俺を目指していても別の方向に行こうとしてしまうので、隙はいくらでもある。

 

ちなみにこれ、金髪との距離を十メートルより短くしたりはしない。なにが原因で逆転されるかわからないから。

どうやっているかと言えば、俺が束姉さんに頼んでつけてもらった武装の一つである、衝撃砲で。

 

基本的にボクシングと同じように左は低威力の高速連射用で、右が高威力の単発。

大したことがないと思うかも知れない。しかし、俺としてはそう相手が思ってくれたほうが都合がいい。

しかしこれは束姉さん特製で、鉄甲、拡散、熱核拡散と即座に種類を帰る事ができ、さらには回転を加えて貫通力を増したり、出力を一部変えて軌道を曲げることまでできる。もちろん左右別々に。

 

それをひたすら撃ちながら金髪を追い詰める。途中で落ちていた移動砲台に衝撃砲を撃ち込んで破壊し、抵抗が激しくなってもどうとでもなるようにした。拾って戻せば多分エネルギーの補給ができるしな。

 

…………俺ってやっぱり優しいよな。こんだけアリス・イン・ワンダーランドを使ってるのに集束させて発狂させたりしてないし、シールドの中で爆破とかしてないし、気で衝撃砲やISそのものの強化もしてないんだ。優しすぎると思うんだが。

 

「……それじゃあ。そろそろ終わりにするぞ。眠くなってきたんでな」

 

右の衝撃砲を構え、左の衝撃砲で動きを止める。

 

「じゃあな」

 

ズドンッ!

 

 

試合終了のブザーが鳴り、俺の勝利をアナウンスが告げた。

 

……寮に戻って寝るか。アベアット。

 

 

 

 

side 篠ノ之 箒

 

………一方的だった。それくらいしか言えない試合だったと思う。

多くの者達の予想に反して一夏はオルコットに勝ってみせた。それも、完全に封殺したような形で。

 

私しか見えていなかったと思うが……いや、千冬さんなら見えていたかもしれないな。とにかく一夏の間合いの取り方は尋常じゃなく上手かった。

オルコットの間合い(見たところISに効果がありそうだったのは銃口から三メートル程か?)に入らないように、そしてオルコットが間合いに入れられないように動き、そして動きを制限するように攻撃し、相手の攻撃手段を削ぎ、そして予定調和のように勝って見せた。

 

右拳を突き出し、残心を忘れずにしていたその姿は、実に格好よかった。

 

…………ところで、明らかに身長が違っていることには誰一人として突っ込まないのか? 気にしている私がおかしいのか? 初めの話が終わってからの一夏の身長とそれまでの一夏の身長が…………はぁ。誰も何も言わないのだな。

 

ならば私も気にすることをやめよう。一夏は一夏だ。それで問題あるまい。

 

あと、一夏は怒らせないようにしよう。千冬さんが怒ったところは見たことがあるが、今回の一夏の方がよっぽど怖かった。

 

相手を封殺して動きを止め手段を奪い、最後に一思いにぷちっと潰す。

 

それはまるで無邪気な子供が生きている羽虫の羽を一枚一枚もぎ取り、足を一本一本引き千切り、動くことができなくなったそれを捨てて、踏み潰すようなこと。

 

ふと、誰かが一夏をもう一度本気で怒らせたところを想像した。

 

…………二度と一夏を怒らせることはすまい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クラス代表、俺じゃないよ?

 

金髪をボロクソにした次の日。俺はいつもの通りに起きて、いつもの通りにののちゃんと話をして、いつもの通りの一日を過ごして

 

「御主人様!」

「帰れ」

 

全くこの金髪はいつまでたっても五月蝿いな。

 

「……一夏。まずは御主人様発言に突っ込みを入れよう。な?」

「理由は知ってるから。どうでもいいけど」

 

簡単に言うと、ボコる→新しい世界の扉(具体的にはマゾの扉)が開く→開いたのは俺→御主人様。

 

当然無視したが、変態は基本元気で仕方ない。面倒だな。

ちなみに束姉さんはちー姉さんになら何されてもオッケーらしい。聞いてもないのに勝手に教えてくれた。十分変態だな。そして元気すぎるな。

 

「…………(そろそろ)」

「触んないで」

 

金髪が俺の頭を撫でようとして来たので振り払う。冷たくしても拒否しても放置しても優しくしても喜ぶ奴の相手なんて本当に勘弁だ。

今も払われた手を胸元に持って行ってぞくぞくしてるし、相手したくない。そしてさっさと寝たい。

……寝ようとするとそろそろと近付いてきて抱き締めようとするから気を張りっぱなしになる。ああやだ。ほんとやだ。

 

「……はぁはぁ……御主人様ぁ……」

「ちー姉さーーん!助けてーーっ!」

 

変態は嫌だ。特に俺に襲いかかってくる変態は嫌だ!

 

「オルコット。一夏は私のものだ」

 

ちー姉さんはそう言いながら金髪の頭を片手で掴み、ぎしぎしという音が聞こえてくるほど締め上げている。

 

「……無事だったか? 一夏」

「大丈夫。ちー姉さんのお陰で助かった……」

 

ちー姉さんは俺の頭をよしよしと撫でる。……ああ、やっぱ気持ちいいな……。

 

「……くぅ……♪」

 

……気が付いたら食堂が血まみれになっていた。ちー姉さんもかなりふらついていたが、大丈夫だと言っていたのできっと大丈夫なんだろう。

 

そういうことにしておいて、俺は教室への道を歩く。ののちゃんと手を繋ぎながら、尻尾をぱたぱたと左右に振って。

 

………………待て、いつの間に俺は獣耳一号、柴犬を装着した? 覚えがないぞ? まさか、遠隔で装着したのか?

……凄いな、束姉さん。無駄なところにその技術を使いすぎているような気がしないでもないけど、すごいものはすごいよな。

 

………とりあえず吠えておこう。

 

「わぅ!」

 

周囲に血の海が出来た。さっきまではなんともなく手を繋いでいたののちゃんも、そっぽを向いて鼻を抑えた。

 

「……一夏」

「わぅ?」

「ぐふっ………ああいや、何でもない。だっこしても良いか?」

 

願ってもないことだったので即座にお願いした。お腹が一杯だったせいか、奇妙に眠い。

 

「……ふふふ。まったく一夏は。いいから寝てしまえ。必要になったら起こしてやる」

 

……それは、ありがたいことだな。

…………それじゃあ………お休み……ののちゃん………。

 

「……ああ、お休み、一夏」

 

………くぅん。

 

 

 

side 篠ノ之 箒

 

「……篠ノ之。なぜ織斑がお前の膝で眠っている」

「一夏が眠そうにしていたので打診したらこうなりました」

 

千冬さんに明らかな嫉妬の視線を向けられるが、私はそれを受け流す。六年ほど会っていなかったのだし、このくらいは良いだろう。

……それに、一夏はシスコンで、千冬さんもブラコンだからな。ここで離したらすぐさま千冬さんは一夏を拐って行くに違いない。せめて授業開始まではこうしていよう。

 

 

約束通り、一年一組のクラス代表は一夏ではなくオルコットになった。不満は少し出たようだが、一夏の最後の攻撃の威力を思い出して不満を取り下げた。

 

ちなみにあの攻撃はオルコットのシールドエネルギーを全て削り取り、アリーナの床に直撃して巨大なクレーターを作り上げていた。

そんなものを食らっては操縦者の生命が保証できないし、一夏がISを使う度にアリーナを修理していてはいくら金があっても間に合わないと千冬さんと山田先生からも言われていたので、一夏のクラス代表の話はなくなった。

 

…………ここまで考えてやっていたのだとすると、一夏は随分と策士になったものだ。

まだまだ偶然に頼るところも多いが、一夏の狙い通りにクラス代表はオルコットになったし、誰もがそれを肯定している。……理由とやり方はともかくとして、私も。

そんなことをしておいても、今こうして私の膝の上で眠っている一夏はとても可愛らしい。決闘の時はむしろ格好よくて、どうしてもこの一夏とあの一夏が同一人物に見えない。

 

…………雰囲気だけではなく、身長まで変わっているのだから当然か。

 

「……ん……」

 

……うむ、可愛らしい。

 

ところで、一夏の鞄からこっそりと私と一夏を覗き見ている小さな一夏(犬耳付き)はなんなのだ? 拾っていいのか? お待ち帰りしていいのか?

 

キーンコーンカーンコーン……♪

 

む、授業開始か。もう少し抱いていたかったのだが………周りの視線と千冬さんの視線が痛いし、無理だな。

 

「一夏。授業の時間だぞ。起きろ」

「……はぁ……い……」

 

私の言葉に反応してゆっくりと一夏が動き出す。ぺたりと伏せられていた耳がピクリと跳ね、眠そうな目を右手で擦りながら顔を上げる。

 

「……っ、ぐふっ!」

「かはっ!?」

「……っ!?」

 

……被害は甚大だ。かくいう私も必死になって愛情の暴走を止めているわけだしな。

 

自分の席に戻った一夏は、どうやって入っていたのかは知らないが四十センチほどの小さな一夏(お揃いらしい茶色い耳と尻尾付き)を鞄から出して、抱き締めて目を閉じた。

小さな一夏もまんざらでも無いらしく、一夏の手に頬を擦り付けて鼻をぴすぴすとならして甘えている。

 

「……きゅぅ……」

「……くぅ…ん……♪」

 

…………今思い出しても私は凄いと思う。よく耐えたな、私。

ただ、この時私の頭の中では

 

『箒。君は頑張った。よく頑張った』

『でも、もう我慢なんてしなくていいんだよ?』

『自分に素直になろうよ。我慢は体によくないよ?』

『見てごらん? 周りだってああなってるんだ。仕方ないことなんだよ』

『だって、一夏が可愛いんだから』

『……君も、そう思うでしょ?』

 

………といった悪魔の囁きがぐるぐると思考の大半を占拠していたが、なんとか振り切った。

 

……その声の主が頭の上に天使の輪を浮かべて純白の羽を生やした小さな一夏と、尖った尻尾と黒い蝙蝠のような羽を持っていた小さな一夏だった理由がわからないが、恐らくそれは永遠にわかる日は来ないだろう。

 

 

……ああ、一夏は可愛いなぁ…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

IS調整、一次移行マダー?

 

やほ。最近クラスののほほんとした娘におりむーと呼ばれ始めた俺だ。名前は当然、織斑一夏。昔の名前は桜道一哉。哉の字がムズい。

ちなみに俺からその娘は『のほほん』と呼んでいる。渾名とか偽名とかは何でか覚えられるんだよな。

理由は知らん。

 

そんな俺だが、今はIS整備室に来ている。黒猫耳と白猫ぷちか装備で。

……途中で色々あって拐われそうになったり寮の部屋に連れ込まれそうになったりしたけど、スタンガンってのは便利だな。スイッチ入れるとバチバチじゃなくってガギギギって致命的な音がするけど。

 

……まあ、それはどうでもいいことだ。今はもっと大切なことがある。

実は、シロがまだ一次移行をしないのだ。原作ではもうしているはず……と言うか、金髪との決闘中にするはずなんだが…………まあ、相当魔改造されてるからおかしくはないんだが。

 

そこで原因を調べるべく、整備室で色々と見ておこうとしているわけだ。

 

機材を借りて適当に繋ぎ、シロの中身を覗く。

 

……………………ああ、理由が何となくわかった。

 

つまり、性格の違うコアを直列並列関係無しに繋ぎあわせたおかげで、全体ならともかく一つ一つのコアに対する時間が足りていないわけだ。

ちなみに足りているのは左の衝撃砲と恐らく反応速度を上げているところ。右の衝撃砲は後少し。機動はまだまだでブースターもまだ。ハイパーセンサーは……まあまあか。

…………やれやれ、これじゃあ一次移行はしばらく先になりそうだ。クラス代表が俺じゃないから特にな。

 

……もし、鈴がIS学園に来て金髪と戦うことになったときに束姉さんからISが送り込まれてきたら、どうしようかねぇ……。

フィッティングが終わらないとアクセサリーみたいに待機してくれないんだが…………やれやれ、困ったねぇ……乱入もできないな。

 

 

side 更識 簪

 

視界の端で、黒い尻尾が揺れ動く。

それは私のとなりに座っている、織斑一夏のものだ。

なぜそんなものをつけているのかはわからないけれど……かわいいとは思う。

小さい白い猫耳の織斑くんが、その尻尾を追いかけ回している所なんて、ついつい手を休めて見入ってしまうほどだ。

 

何があったのかはわからないけど、織斑くんは難しそうな顔をしていたと思う。

それからため息をついて、専用機をどこかに運んでいった。

…………何で待機状態にしないの?

 

ちょっとだけ気になって織斑くんが残していったデータを見てみると、理由がわかった。

 

……まだ、フィッティングが終わってないんだ。あんなに乗ってたのに、まだ。

聞いた話だと、織斑くんは一週間に一度ISに乗って訓練をしているらしい。かなりの好成績を出していたって聞いたのだけれど……噂が間違っていたのか、それとも初期設定のISで結果を出した織斑くんが凄いのか……。

 

「……なにやってるの?」

「きゃっ……!」

 

振り向くとそこにはちっちゃい織斑くんを抱えた織斑くんがいた。

 

……私は今、何をしていた? 見ればわかる。織斑くんのISのデータを覗き見していた。

 

……もしも私が打鉄弐式のデータを勝手に見られたら? そのときにならなくってもわかる。すごく怒るだろう。

 

……それじゃあ、織斑くんが私のやっていることを見て、怒らない可能性は? ――そんなもの、どこにもない。

 

噂では、織斑くんは怒ると織斑先生より怖くなるらしい。IS初心者で、起動時間が一時間も無いのに代表候補生を一方的に倒してしまったという噂だ。

 

そして織斑先生も、怒った織斑くんには手がつけられないのだとか。

……正確に言うと止められないことはないのだが、その後に怒らせた相手に対する報復が激しくなるとも言っていたらしい。

 

そんな織斑くんが、今、私の前に立っている。

 

「………ああ、シロのデータ見てたのね」

「あ、あの……ごめんなさい……」

「いいよ別に。フィッティングすら終わってない状態のスペックを見られたところで痛くもなんともないし」

 

……あれ、意外と……怖くない………?

 

のんびりとした口調。ゆったりとした空気。眠たげな表情。それらがなんとなく、小さな頃から知っている私の友達を思い出させる。

 

「……ああ、って言うかむしろ手伝ってくれない? このままだとほんとに一次移行に半年とかかかりそうでさ」

「え……いいけど……」

 

……って、なんで私は良いよって言ってるの!?

 

そう思ったけど、織斑くんの嬉しそうな顔を見ると断る気が失せてしまう。……もう。

 

「ありがと。それじゃあとりあえず俺は乗るから、フィッティングの手伝い頼める?」

 

…………えっと……調整とか整備だったらともかく、フィッティングのやり方はちょっと……。

 

「……使ってれば勝手にしてくれると思うけど……?」

「八時間くらい乗ったんだけど、どうも遅くてな。二割くらいしか終わってないんだよ」

 

……どんなISを使ってるの?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鈴、来る

 

らららコッペバン♪ らららコッペバン♪ いつも変わらない味♪

 

……なんとなく出てきたので歌ってみた。若干舌っ足らず風に歌うのがコツと言えばコツかもしれない。

だからと言って本当に舌っ足らずにするわけではなく、あくまでも舌っ足らず『風』なだけだ。幼子風とも言う。

 

それとシロの事だが、驚きの事実が発覚した。

なんとシロは、フィッティングが完全でなくとも待機状態になれたらしい。かんちゃん(本名は忘れたが整備室に居た度の入っていない眼鏡をかけた娘)が言ってくれなかったらずっとわからなかったかもしれない。わかってよかった。

あと待機時の形態はなぜか武骨な手甲だった。きっとフィッティングが終わっていないせいだと思いたい。

 

とりあえずかんちゃんの助けを得てフィッティングを三割まで終わらせた。そう何度も手伝ってもらうのは悪い気がしたんだが、かんちゃんはどうやらシロの中のどこかのプログラムを参考にしたいらしく、もう少し手伝ってくれるらしい。

 

……優しい娘だな。

 

ちなみに俺はかんちゃんの名前も盛大に間違えた。

 

「サワッディー・神凪《かんなぎ》だっけ?」

「……全然違う」

 

このあとまた教えてくれたんだが、その度に間違えた。俺の体質(日本語に直して平仮名三文字以上の名前は覚えるのに五年以上かかる)の事を教えたら、苦笑いしていた。

ちなみに人の名前だけじゃなくってISの名前も覚えられないことを言った時も苦笑いしていた。

 

すまん。

 

 

ISの実践授業で基本的な飛行操縦をすることになった。ISスーツは臍出ししない全身型のを千の顔を持つ英雄で出して使っているので誰かさん達が倒れることはないだろう。

……なぜかうなじとか尻とかに後ろから視線が集中してるような気もするけど、きっと気のせい。

 

「……ああ、かわいいうなじ……」

「背中とか擽ったら、どんな声をあげるのかな……?」

「…………(はぁはぁ)」

 

……畜生。変態ばっかりか。全力で逃げたい。

ちょっと涙目になってしまったが、いくらなんでもちー姉さんの前でそういうことはしてこないだろうと思いたい。

 

ゴスッ!ゴスッ!ドゴスッ!!

 

「私語は慎め。かわりに元気の有り余っている貴様らにはグラウンド五十周をくれてやる。嬉しいだろう?」

 

…………IS学園のグラウンドは一周五キロあるそうだ。それを五十周……フルマラソンおよそ六回分か。

……まあ、俺ならなんとかなるだろう。ライドインパルスと気の強化を使って全速力でやれば……多分ラカンは秒速十キロくらいは出せるだろうから、二倍と考えて十五秒かからない。

曲がることを考えればもう少し遅くなるだろうが、それでも一分程度だろう。

 

………久し振りにまともにチートか凄いと感じたな。いつぶりだ?

 

……まあ、なんでもいいか。がんばれ。

こっちはこっちでIS展開しないとな。とりあえずだらんと力を抜いて、シロという鎧をつける感覚で。

 

(シロ)

 

反応速度特化型のISであるためか、展開開始から終了までが0.02秒という明らかに頭がおかしい速度になっているが、悪いことではないので気にしない。

それとついでに、シロの機体名がいつの間にかシロになっていた。元は違ったと思うが、呼びやすいから無問題。

 

「ISの展開は終わったようだな。飛べ」

 

そういわれてすぐ飛び上がる。機動力特化だがそんなに速度は出さない。面倒だし、まだ慣れてないから自信がない。

百零停止と零百加速はできたけど、やっぱり飛び慣れてないからな。

 

「ご主人様?」

「ご主人は嫌だ。黙ってくれ」

 

……ああ、まあ、なんとかなるかね。

 

ちなみにこのISは急加速や急減速の時のGの軽減用としてかなり性能のいいPICを積んでいるらしい。そうじゃなかったら百零停止で死んでるな。

 

……いや、この程度じゃあ死なないか。

 

この後の武装の展開は楽に終わった。いつも千の顔を持つ英雄を使っているので想像が簡単だったからと言うのもあるだろうな。記録は0.03秒。展開より0.01秒遅いが、まあ早い方だよな?

 

「武装……あったんですの?」

「あるから展開したんだけどな」

 

 

 

……さて、今日の授業も何事もなく終わっ

 

―――っ!

 

懐かしい気配を見付けた。すぐさま監視用のゾナハ虫(無害)をそちらに放つ。

 

すると空港にほど近いタクシーの中でその気配の主を見付けた。

 

――やっぱり来たか。鈴。

 

ちー姉さんの授業の時と同じくらい起きて、買い物に行く。久し振りの親友との再会なんだし、手の込んだ料理で迎えるべきだろう。

 

ちー姉さんも鈴のことは嫌いではなかったはずだし、一緒に飯にしよう。ののちゃんも呼んで、かんちゃんは………忙しいって断られるだろうけど一応呼んどくか。

 

 

後ろで俺が起きたことに驚いている奴等はしばらくほっとこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

歓迎会、お出迎え

 

俺は料理の材料を買い込み、鈴が好きそうな料理を作っていた。主に酢豚や青椒肉絲等の中華料理だが、和食も少し入っている。

 

ちなみに一番手をかけているのはミニラーメンだ。鈴はラーメンが好きだったと記憶しているので、小麦粉を捏ねて麺を切らずに手で伸ばし、スープもチャーシューもメンマも自作してみた。

途中で見知らぬ誰かが勝手につまみ食いしていたので、とりあえずちー姉さんの真似をしてアイアンクローで浮かしておいた。泡を吹いていたような気がしなくもないけど、きっと気のせいだと思うことにしておいた。

 

ちなみに俺は、片手で固定されてない西瓜の皮を掴んで抉ることができる。そのくらい簡単だけど、人間相手にはちゃんと手加減している。俺って優しい♪

 

それと、鈴の迎えにはぷちか達四体を行かせた。あいつらはあんななりでもISだし、ISなのに小さいシロ、略してミニシロを使うので問題ないだろう。一次移行終わってないけど。

 

ちなみにミニシロはしっかり衝撃砲も近接ブレード(まだ名無し)をもっているし、機動力も反応速度もシロとほとんど同等と言う驚きのスペックを誇る。

さらに奥の手も存在するので、まあ、拐われることはないだろう。

 

心配するべき所は、鈴に会う前にはしゃぎすぎて眠ってしまわないかと言うところだが…………まあ、なんとかなるだろう。

 

……なんとかなるよな?

 

 

 

side ぷちか四十六号

 

白狼ぷちかこと、ぷちか四十六号です。名前はこれで固定されました、変更はききません。

 

おれたちは今、ごしゅじんさまにお願いされて、中学の頃の同級生、鳳 鈴銀《リンイン》こと鈴を迎えに行くと言う責任重大な任務を受けています。

 

そのためにおれが任されたのが、三体の同族達。

 

黒ラブぷちかこと、ぷちか二十三号。

ボルゾイぷちかこと、ぷちか三十三号。

そしてチワワぷちかこと、ぷちか四十一号。

それに俺を合わせた四体での任務になる。

 

……報酬はなんと、おにくをいっぱいたべられるのだ。そして、高確率で鈴さんにだっこしてもらった後、たかいたかいまでしてもらえることがあると。

…………受けるしかないだろこれは!

 

「わぅ!」

「わぅ!」

「わぅ!わぅわぅ!」

「……くぅ……わぅ」

 

ボルゾイぷちかが大きく吠えすぎたせいで、チワワぷちかが怖がって半泣きになった。とりあえずボルゾイぷちかを『めっ!』してからチワワぷちかを慰める。

……背は同じくらいだから、押されるところころ転がっていっちゃうけどね。

 

それとさっきからハイパーセンサーで周りの様子を見ていると、ころころ転がったりとてとてと歩き回るおれたちを見て、なぜか血まみれで笑顔を浮かべながら倒れてしまう。

そんなになってもずりずりとおれたちにはいよってくるから、ちょっと怖い。

 

「くぅ……」

 

気の弱いチワワぷちかなんて、尻尾を足の間に挟みながら俺にくっついてくるほど怖がっている。

 

「わぅわぅ!」

「わぅ!」

「わぅ!」

「くぅん……わぅ!」

 

すぐにこの場を離れて鈴さんを迎えに行く事を提案すると、即答で色好い返事が帰ってきた。

 

それじゃあ、行こう!鈴さんを迎えに!

 

「わぅわぅわぅ♪」

「わぅ、わわぅ♪」

「くぅ~、わぅ♪」

「わぅ~~♪」

 

尻尾をふりふり、耳をぴくぴく、四体揃って元気に歩く。

鈴さんの居場所はすぐにわかる。ハイパーセンサーと風に乗った匂いで。

 

まだIS学園の敷地内には入ってきてないようなので、外と中を繋ぐモノレールの駅で鈴さんを待つ。もうちょっと時間がかかるみたいだ。

 

暇な時間を潰すための遊び道具は持ってきた。トランプだけど。ちなみに絵柄はスペードがわんこ属性ぷちか、クローバーがにゃんこ属性ぷちか、ダイヤが鳥属性ぷちか(エンジェルぷちかもここ)、ハートがそれ以外の属性のぷちかと絵柄分けされている。

 

やるのは大貧民。ジョーカー一枚の特殊ルール革命以外一切なし。ついでにジョーカーの柄はミニシロ。

 

「わぅ!」

「ふっ……わぅ」

「わぅっ!」

「わ~ぅ~」

「わぅわぅ!」

「わぅ」

 

なぜかチワワぷちかはこういうのが妙に強い。どのくらい強いかと言うと、物理・特殊受けラッキーレベル100しんかのきせき持ちカウンターたまごうみつきくらい? 勝てないことはないけどきつい。

 

「わぅ!」

 

革命!? こんなときに革命だって!?

 

弱い札から切っていってあらかた出尽くしたところでこれは……っ!

 

…………ん? この匂いは……。

 

くるりと後ろを振り返ってみると、そこには鈴さんが立っていた。懐かしい匂いだ。

 

急いでトランプを片付けて、鈴さんをお出迎えする。くるくると鈴さんの周りを回っているだけだけど。

 

「……ふふふっ。久し振りね、ぷちか」

「わぅ!」

「わわぅ!」

「わぅわぅ!」

「わぅ!」

「あははっ!元気ねぇ。一夏は元気?」

 

ごしゅじんさまは元気だよ。ずっとね。

そういう思いを込めてこくこくと頷くと、鈴さんは嬉しそうににっこりと笑ってくれました。

 

……それじゃあ、ごしゅじんさまの所に行きましょう!

 

「あ、私ちょっと先に手続きしないとIS学園に入れないんだけど……場所わかる?」

 

わかりますよ?

 

頷いてからその場所に行こうとすると、チワワぷちかが鈴さんに抱き上げられた。

 

「それじゃあ、案内よろしくね?」

 

「「「わぅ!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

歓迎会、主催者は俺

 

食堂を借りきって準備をする。ちなみにかんちゃんはやっぱり来ないらしい。ちょっと残念。

 

ののちゃんとちー姉さんは結構乗り気だった。それから俺が準備をしているのを見て途中参加したいと言ってきたクラスメイト(例によって名前は覚えていない)達も手伝ってくれているのではかどっている。

……ちょっと料理が足りないかと思ったので追加を作ることにする。鈴には悪いけどちょっとの間ぷちかハーレムで我慢してもらおう。

 

料理の追加を作っていると、ぷちかたちと一緒に鈴が姿を表した。ちー姉さんやクラスメイトがいいな~という目で見ていたが、ぷちか達は久し振りに会った鈴から離れたがらなかった。

……まったく。

 

「鈴」

「あ、一夏」

 

俺が姿を見せると、ぷちか達は俺に向かって走ってくる。ててててっと言う擬音がとても良く似合う走り方だ。

 

「……久し振り。料理できてるから、座って」

「……それじゃあ、お言葉に甘えるとしましょうか」

 

鈴はそう言って、膝にチワワぷちかを乗せて座った。

………変わらないな。鈴は。

 

 

 

料理をするのは俺、料理を運ぶのはぷちか達と言う歓迎会は、凄まじい勢いで脱落者を量産していった。

 

とある少女はぷちかにご飯を食べさせた時の反応に脳髄を直撃されて鼻血を噴き出し、とある少女はぱたぱたと左右に振られる狐ぷちかの尻尾に視線を奪われてただじっと見つめ続け、催眠術にかかったかのように倒れる。

またある少女はぷちかをおもちかえりしようとしてちー姉さんのアイアンクローに浮かされ、頭蓋骨を軋ませながら気絶し、そのちー姉さんも白蛇ぷちかと白虎ぷちか、小さな翼が背中についている鳩ぷちかに囲まれて気絶。残ったのはのほほんとののちゃんと鈴の三人だけ。

 

ちなみに金髪は開始二十秒で左腕を虎ぷちかに尻尾で擽られて気絶。幸せそうな顔をしていた。

 

「……なんか、ぷちかもずいぶん増えたわね」

「最初からぷちかは108いるって言っといた方が良かった?」

「…………そんなに一気にぷちかを見たら、出血多量で死んじゃうわよ」

 

そう言っている間にも片付けの手は止まらない。俺も鈴もののちゃんもある程度家事はできるし、このくらいのことは簡単だ。

 

ちなみにぷちか達は落ちた少女達(ちー姉さん含む)をそれぞれの部屋におくりとどけさせている。ぷちかだけじゃあ確かに難しいだろうが、ミニシロがいるし平気だろう。

ばれたら不味い気もするが、ばれないように武装で錬金なチャフを撒いてカメラや発信器などを無効化してあるので……大丈夫なはず。

 

「……あーあ。料理の修行もしてこれなら一夏にも負けないって思ってたら、もっと上手くなってるなんて……」

「しかたなかろう。それが一夏なのだから」

「…………そうね。……はぁ……」

「うむ。………そう言えば、自己紹介がまだだったな。私は篠ノ之 箒だ。箒でいい」

「鳳 鈴音よ。じゃあ私も鈴でいいわ。仲良くしましょ」

 

ののちゃんと鈴はこの短い時間でわかりあったらしく、こつんと拳を軽くぶつけ合っていた。仲が良いってのは良いことだ。

 

「あ、でも一夏を一人占めはさせないわよ? 私も混ぜて」

「なんの話をしている……と、昔ならば言っていたのだろうが……安心しろ」

 

じゃあ俺が言うわ。なんの話だなんの。

 

「そうだ、私達の部屋に泊まるか? 一夏の睡眠を邪魔しないのならば許すぞ?」

「はっ。誰に言ってるのよ。私はIII(いっぱいいっぱい一夏)の会長よ? 一夏の健やかな睡眠を見守ることを誉れとする私達が、そんなことをするわけないじゃない」

 

…………まあ、いいか。寝るのの邪魔をする訳じゃないみたいだし、問題ないな。

仕事を終わらせて帰ってきたぷちか達の数を数える。全員いるな。拐われたりはしてないな。

 

「……じゃあ、歯磨きして寝るか」

「わぅ!」

「にゃう!」

「「がふっ!!」」

 

どささっ!と五十キロ程度の肉が床に落ちたような音がした。その方向を見てみると、鈴とののちゃんが床に倒れていた。床が真っ赤に染まっている。

 

「く……い、いきなりそれは、反則よ……っ!」

「くぅ……っ!」

 

どうやら元気なようだ。

それじゃあ、部屋に戻るか。なんか盗聴機が山のように仕掛けられてるような気がするけど。

 

……俺、一人部屋になったら自分の部屋にチャフ撒くんだ……。今はののちゃんが居るから使うとののちゃんが発狂しちゃうから使わないけど、一人になったら絶対使うんだ………。

 

まあ、部屋に着く前にまた全部ぶっ壊したけど。電波障害って地球が磁気を帯びている限り、どんなところでも起きる可能性はあるらしいな。それと同じく磁気嵐も。

 

……偶然ほど怖いものは無いよな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

原作崩壊、今更だけど

 

一組のクラス代表は金髪。確か名前は……せ………せ……セリヌンティウス・オルゴデミーラ。

………絶対違うな。

 

「それはそうだろう。メロスの友人とゲームの魔王の名だぞそれは。オルコットだ。セシリア・オルコット」

 

そうだったか。人の名前は覚えられなくてな。

あと、二組のクラス代表も覚えていない。鈴はクラス代表にはなっていないみたいだし、あまり覚える気も無い。

 

……原作崩壊が凄まじいな。このままだと原作ではあった束姉さんの作った無人ISの襲撃がなくなるんじゃないか?

……なくなっても何ら問題は無いか。あったらあったで一次移行の糧にさせてもらうつもりだけど。

それに、なんとなくある気がするんだよな。襲撃。

 

ついでに一次移行についてだが、かんちゃんのおかげで少しずつ進んでいる。フラグメントマップが凄いことになってるらしいけど、知らん。現在進行率三割五分くらい。

 

…………さてと。昼休みになったし、寝るか。

 

「一夏、迎えに来たわよ」

「良く来てくれたな鈴」

「あ、箒じゃない。昨日はありがとね。……で、やっぱり一夏は昼食べてないの?」

「私が引きずって食堂まで連れていかなければ昼どころか朝も夜も食べようとしないのだ」

 

ののちゃんの話を聞いた鈴に睨まれた。怖い怖い。

 

「一夏。また作ってきてあげたから、屋上で食べるわよ」

「え。俺は作ってないぞ?」

「んなことはわかってんのよ。いいから来なさい。箒も一緒にどう?」

「……ふむ。ならばご一緒させてもらうとしようか」

 

いつの間にか勝手に話が進んでいた。俺はどうやら屋上で弁当を食べることになったらしい。

 

……まあ、いいか。

 

 

 

「はい一夏。あーん」

「……はむ。もきゅもきゅ……」

「……いいものだな」

「……いいものでしょ?」

 

なぜか俺はののちゃんと鈴に優しい目で見つめられている。

……それはどうでもいいけど、鈴のやつ随分腕上げたなぁ……俺もうかうかしてらんないな。

 

「ふふふっ♪ 美味しいでしょ? 一夏に追い付けるように頑張ったんだから」

「ん。美味い」

「……そうだな。明日は私も作ってくることにしよう。構わないか?」

 

ん? ののちゃんの料理? ……確か、結構上手に作れたはず。

 

「お願いします」

「一夏は私達の分ね。私も一夏の分作ってくるから」

「……ああそうか。普通の量では足りないのだったな。だから二人分か。わかった」

 

一瞬抗議の声を上げようとしたののちゃんも、俺の食う量を思い出したのかすぐに静かになった。

……うん、人に料理を作ってあげるのって、いいよね。

それに感想をもらって、笑顔と一緒に『美味しい』って言ってもらえると、次も頑張る気になる。

 

……最近、ちー姉さんにご飯作ってあげてないなぁ…………ちー姉さんの分も一緒に作ろうかな。ちなみに、前に一回ものすっごく可愛いお弁当(たこさんウインナー、だし巻き玉子はハート型。ご飯の上にはまたハートで、デザートは当然うささんリンゴ)を作って持たせたら、次会ったときにグリグリされた。痛かった。

何でも周りの人にすっごいからかわれたんだとか。

しかもかなり美味しくて悔しかったらしい。

ごめんねちー姉さん。

 

 

 

side 鳳 鈴音

 

「はい一夏。あーん」

「あー……はむ」

 

一夏のために作ってきた酢豚をバランス良く摘まみ、一夏の口許に運ぶ。すると一夏は躊躇なくぱくりと食いついてくる。

 

「もきゅもきゅもきゅ……」

 

…………うん、可愛い。

 

「……な、なあ、鈴」

「どうしたの?」

 

急に話しかけてきた箒に視線を向けると、箒は僅かに顔を赤らめながら私にお願いをして来た。

 

「こんなことを頼むのは変だとわかっているんだが………私も、一夏に食べさせてやっても構わないだろうか?」

「あ、良いわよ?」

 

あまりに軽い私の答えに、箒の体から力が抜けた。

 

「……い……良いのか?」

「良いわよ別に。でも、ちゃんと栄養や味の濃さとかも考えて食べさせてあげてね」

 

ちなみにこれ、結構難しい。どのくらい難しいかを簡単に言うと、他人に最適化されたISを動かすのと同じくらい難しい。

なぜならそれは、一夏の味覚のことをよく知って、そして料理の材料やその味のことをわかっていて、その上で一夏の口の大きさやなにやらかにやらをわかってやんないといけないけれど……まあ、一夏だったら大体のことは簡単に無視して食べるでしょ。どうしても嫌なら口出しくらいすると思うし。

 

「……ふぅ……一夏。あーん、だ」

「……あー……ん」

 

……うん。初々しくて良いわねぇ…………。

 

 

 

 

 

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