IS~ほんとはただ寝たいだけ~   作:真暇 日間

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61~70

衝突寸前、鈴・セシリーvs眼帯兎

 

side 凰 鈴音

 

放課後の第三アリーナでセシリアと向き合う。いくら先生が相手とはいえ二対一で負けてしまったあたしたちは、特訓とは呼べない小技の練習中。

急激な戦闘力の増加は無いけれど、手札が増えた分だけとれる手段が多くなった。

 

とは言っても、あたしのは衝撃砲の効率運用と、あとは一夏がやっていた衝撃砲の曲げ撃ちの練習くらいなもの。

龍咆は一夏のシロの衝撃砲みたいに一部の出力を変えることはできないし、後ろから拳による推進力が加わってない分初速が遅い。

それに加えて一発撃つ度に砲身を新しく作らないと移動した相手を追えないし、出力も角度も威力も変えることもできないから色々と面倒臭い。

 

……けれど、逆に考えれば自由度は少しだけ増す。

例えば、砲身が固定されていても、角度や威力が固定されていても、やろうとすれば連射はできるし、口径を小さく作れば当たりにくくなるかわりに威力は倍率ドン!さらに倍!になるし、小さくなった分貫通力が増して相手が吹き飛ばなくなったところに何発か叩き込んでやれるようにもなった。

これも一つの成長ね。やっぱりそばに一夏がいるとやる気になるわ。

 

だって一夏は、あたしの目標だから。今は追い付けないほど遠くにいるけど、いつか必ず追い付いてやるんだから!

 

あと、曲げ撃ちの方は少しの工夫である程度の結果を得た。セシリアも何か新しくできるようになったみたい。

 

「正確には、確認しただけですわ」

「あっそ。何でもいいわよ」

 

一夏と戦ってMの扉を開いたセシリアは、同時に色々なものを見付けていたらしい。

今回の特訓(?)で、それを可能なだけ拾い集めて来たんだとか。

 

……一夏って、人を変える天才よね…………いや、あれは天才と言うよりも、天性の方が合ってるかもしれない。多分本人に自覚はないし。

 

「……それでは、最後に模擬戦でもいかがですか?」

「あ、それいいわね。お互い本番に向けて、手札を隠しながらいい勝負をしましょ?」

 

あたしとセシリアはお互いに笑顔でメインウェポンを呼び出して、構える。

 

「…………なんだか、すっごい面倒なことが起きる気がするんだけど」

「…………奇遇ですわね。ちょうどわたくしもそう思っていたところでしてよ」

 

例えば……横から飛んでくる砲弾とかね!

 

あたしは口径を小さくして威力を上げた龍咆で。セシリアは呼び出したばかりの青いライフルでその砲弾を撃ち落とす。

そしてその砲弾が飛んできた方に目を向けると、そこには一夏に喧嘩を売ろうとしたあの…………名前なんだっけ? キュウリキュウリ言ってたのは覚えてるんだけど……。

……そうだ、機体情報を参照すればいいじゃない。IS学園に所属してるんだったら、名前は登録してあるでしょ。

 

えーっと……機体名が『シュヴァルツェア・レーゲン』で、操縦者はラウラ・ボーデヴィッヒか。

 

「……いきなり何用ですの? ドイツの軍では挨拶にレールカノンを撃ち込めという作法でもあるのでしょうか? ずいぶんと野蛮な国ですわね」

「しょうがないわよドイツだもの。きっとあれの頭の中身はドイツが最強と言われていた頃で止まってるのよ。いいから無視して模擬戦しましょ」

 

…………そうは言ったけれど、実はあたしは無視する気もセシリアと模擬戦を続ける気も残っていなかった。

 

初めに向こうから攻撃させることはクリア。実のところこれが戦闘前の最終目的だったので、いくらでも攻撃を返してやることができるのだけれど……まだ周りには人がいるから、逃がさないと。

 

「……中国の『甲龍』にイギリスの『ブルー・ティアーズ』か。……ふん、データで見た時の方がまだ強そうではあったな」

「はいはい、保健室はあちらでしてよ。付き添いは必要あります?」

「無人のISやスペックしか載ってない画面の方が本物より強く見えるって、確実に頭が逝っちゃってるわよね。精々お大事に」

 

あたしとセシリアを挑発しているのだろうけど、あたしたち……少なくともあたしは一夏のあの挑発を知っているから大して怒りを感じない。

全てを見下しているような目も、傲慢な口調も、あたしたちには致命的な油断にしか見えない。

 

『セシリア。あんた多分偏向射撃できるわね?』

『あら、バレてしまいましたわ♪ 鈴さんこそ、色々できるようになっているでしょう?』

 

目の前で向き合っているラウラ・ボーデヴィッヒを挑発しながらも、あたしたちは大まかな戦法を練っていく。

 

……それにしても、セシリアはMじゃなかったの? よくこうして舌が回るわね。あたしが言えることじゃないけど。

 

『MとSは表裏一体なのですわ』

『あっそ』

 

…………元々あたしは沸点が高くない。一夏と一緒にいてずいぶんと怒りっぽくは無くなったけど、その分一度怒ると怖いと言われるようになった。

 

一夏と別れたあとの中国で、嫌だと言っているのに何度も何度も食事に誘ってくる馬鹿を相手に一度キレてから、あたしの評価がキレると龍より恐ろしいというものになった辺りからもその事が伺える。

 

……あたしが龍より怖かったら、千冬さんなんていったい何よ? 鬼神?

 

…………ああ、似合ってるかも。きっと鬼子母神ね。子供と言うか大事な弟は一人だけだけど。

 

まあなんにしろ、あたしは一夏を馬鹿にしたこの糞女―――っと、下品だったわね。これを許す気にはなれない。

例え一夏がどうとも思ってなくとも、あたしは嫌だ。

 

『あんた後衛、あたし前衛。前と同じに見せて、偏向射撃とあたしの衝撃砲と双天牙月で封殺するわよ』

『あちらにはワイヤーとプラズマエッジ、そしてAICがありますわよ?』

『わかってるわ。情報は武器だもの。………援護よろしく』

『承りましたわ』

 

………さて、始めましょうか。

一夏みたいに上手くはできないけれど、言質はしっかり取った。

 

『加減はいらん』に始まり、『二人で来たらどうだ』、『所詮は数しか能の無い国』、『古いだけが取り柄の国』、『下らん種馬を取り合うメスに負けるわけがない』。

 

…………最後のは千冬さんにも聞かせることにしましょう。ぼろくそにしてあげる予定ではあるけれど、もし負けたときでも復讐はできるように。

 

…………くすくすくすくすくすくす………………

 

 

 

 

 

 

 

 

激戦、鈴・セシリーvs眼帯兎

 

side 凰 鈴音

 

戦闘開始。まずはあたしが口径を小さくして貫通力と速度を上げた衝撃砲を撃ち込む。セシリアはその間にビットを自分のすぐ近くに二機だけ出した。後はまだ腰のところににくっついている。

 

「ふっ……無駄だ」

 

そんなことを言いながらあの女は右手を前に出す。恐らくあれがAICの予備動作なんだろう。

別にあれがなくともできるけど、あった方がやりやすいんだと思う。

 

まあ、消される前提で撃った衝撃砲でそれだけのことがわかったんだから上出来ね。

 

相手は動かないようだから、砲身はそのまま衝撃砲を連射する。その時、後ろからセシリアがビットとライフルからレーザーを、ギリギリ当たるラインであの女に撃ち込んだ。

 

「ちっ!」

 

あの女は舌打ちをしながらAICを解除して移動する。やっぱりシロの空間固定とは違って光学兵器は防げないみたいね。

それに、止めている間は動きと反応が鈍かったし、かなり集中が必要なんだろう。

 

けれどあたしの砲身リユース式衝撃砲の連射速度を見誤っていたらしく、その装甲がいくつか抉り飛ばされた。

 

そして、セシリアの偏向射撃で鋭角に折れ曲がったレーザーがISごとあの女を貫いた。

 

その隙にあたしは瞬時加速であの女に接近し、二つに分けた双天牙月を同時に叩き付ける。

それはあの女の手首のパーツから出たプラズマエッジに阻まれたけれど、私には関係無い。

 

あたしのやるべきことは、こいつの動きを抑えて進行方向の予想を容易にすること。痛手を与えるのはセシリアが基本だ。

 

「舐めるなっ!」

「舐めてんのはそっちでしょうが!」

 

射出されたワイヤーの根元、両肩の四つと腰の二つに口径を小さく、砲身を短くして即射性と弾速を上げ、命中精度を少し落とした衝撃砲を打ち込む。

威力は無くていい。気をそらせれば、横から飛んできたセシリアのレーザーが、ワイヤーを操る集中力を掻き乱してくれる。

 

そこで双天牙月の峰に衝撃砲を撃ち込み、さらに圧力を加えてあたしからも精神を掻き乱す。ワイヤーに少し削られたけれど、シールドエネルギーはまだ余裕がある。

 

「後ろ見なくていいのかしらっ!」

 

その瞬間に背中に突き刺さる二本の光条。セシリアのすぐそばに待機していたビットは撃っていないのに、なぜか。

そんな問いが頭のなかを回っているだろうこの女に、囁くように種明かしをする。

 

「あんたってほんとに馬鹿ね。射撃型ビットは二つじゃなくて四つあるのよ?」

 

なんの事はない。この女があたしとセシリアの近くにあるビットだけに集中している間に、残った二つのビットを後ろに回り込ませていただけ。

 

「馬鹿な!誤射が恐ろしくないのか!?」

「当たる前に折れ曲がるもの。何度も見たのにわざわざそんなこと説明させないでよね」

 

心底馬鹿にしたように言ってやれば、この女は屈辱に顔を歪ませる。いつの間にか眼帯が外れて金色の目が見えている。

 

………ああ、そう言えば衝撃砲を高速連射したときに落ちてたわね。どうでもいいけど。

 

その時から妙に反応がよくなったけれど、どうもこの女は言葉を使った騙し合いには弱いらしい。

 

「ほらまた後ろ!」

 

そういってやると焦ったような顔で何もない背後を睨む。

その隙にあたしは双天牙月の峰に面積広めの衝撃砲を撃ち込み、斬撃の後に打撃を与えて吹き飛ばす。

体勢を崩した所にビットから撃たれた四本のレーザーが襲いかかり、それを避けようとしている間にあたしが近付く。

肩のカノン砲を撃たれたら、セシリアがライフルで撃ち落とす。

そしてもう一度双天牙月を振りかぶって、その体勢のまま瞬時加速キック。そして双天牙月を振り下ろして、あの女をアリーナの地面に抑えつける。

 

プラズマエッジを出す両手は抑えた。ワイヤーを出す両肩と腰の搭載部分を圧縮衝撃砲で破損させた。AICはこの場ではたいした意味はない。なぜなら。

 

「この距離だったら外さないし、あんたの後ろは地面だから吹き飛ぶことも無いわ―――何発耐えられるかしらね?」

 

……なんとなく、この女からさあっと血の気が引いたような音が聞こえた気がした。

 

「発射」

 

その単語を皮切りに、アリーナに絶え間なく轟音が響き渡った。

 

 

 

 

side セシリア・オルコット

 

鈴さんが一夏さんに手を上げた雌ブ……女に覆い被さり、衝撃砲を気持ち悪いくらいの速度で連射し始めたところで、わたくしは少し気を抜いた。

 

武器を封じられ、動きを止められ、衝撃砲の雨霰を浴びている状況を引っくり返すなど、織斑先生かあるいは一夏さんくらいじゃないと無理だろうと思えたから。

 

当然まだ何らかの手を残している可能性があるので警戒はしていますが、それもほとんど形だけのもの。実態はもう終わったような気分ですわ。

 

…………それにしても、言うだけあって強かったですわね。一対一ではまず勝てないでしょうし、即興のコンビネーションで勝てたのは奇跡かもしれません。

……鈴さんとわたくしのISの相性は中々にいいらしい。また今度にタッグマッチでもあれば、組んでみたいものですわ。

 

そこまで考えた次の瞬間に、ほとんど決まっていた戦況が一気に様変わりした。

 

そこに居たのは、全身装甲の黒いIS。その手にあるのは、この世界で現在もっとも有名な剣。

色は黒いが、その姿はまさしく現役時代の―――

 

「千冬さん!?」

「織斑先生!?」

 

わたくし達の言葉には反応せず、黒いISは一瞬でわたくし達に接近し、手に持った近接ブレード―――雪片を振り下ろした。

 

 

 

 

 

 

 

 

観戦、そして乱入

 

実は、セシリーが銀髪眼帯黒兎の背後に二機のビットを回り込ませて撃ち抜いたあたりから観戦していた。なんかあの二人、相性がいいな。

それに、つい最近真耶先生と戦っていい勝負をした時よりも強く……いや、上手くなってるし、セシリーなんかは五巻だったか六巻だったかまで使えなかったはずの偏向射撃ができるようになっていた。

 

……この短時間に、あの二人にいったい何があったのやら。知りたいような、知りたくないような……。

 

だが、観戦程度の気持ちでこの模擬戦を見ていられたのは、鈴が衝撃砲でラッシュを始めて五秒程度までだった。

 

突然銀髪眼帯黒兎のISから馬鹿みたいな電撃が放たれ、鈴はISごと吹き飛ばされた。

そして状況の変化は続き、黒兎のISがぐにゃぐにゃとその形を変えていく。

…………そういやそんなのもあったなぁ……。

 

「い、一夏っ!あれってどう言うことっ!?」

「何で俺に聞く? 俺は何でも知っているって訳じゃあないぞ?」

 

第一、あれの名前は知らないしな。知っていても覚えてなさそうだ。

 

しばらくぐにゃぐにゃとしていた黒兎のISだったが、衝撃砲を連続して食らっていたためにできたクレーターの真ん中でふわりと浮き上がり、両足を地につけると同時に急速にその形を整えていった。

 

それは黒い、全身装甲のISだった。

束姉さんが前に送ってきた奴とは違ってごつくはなかったが、そのシルエットは見覚えがある。

 

「………あいつ、自殺志願者だったのか」

「誰が!? って言うか怖いよ一夏!」

 

だってそうだろ。束姉さんの逆鱗に好んで触れたがるなんて、死にたがりか自殺志願者か狂人か頭がぱーんしてるかのどれかだろ。もしくはただの無知。

とりあえず俺は怖いから絶対に束姉さんの逆鱗には触れたくないね。

とりあえず俺は怖いから絶対に束姉さんの逆鱗には触れたくないね。

とりあえず俺は怖いから絶対に束姉さんの逆鱗には触れたくないね。

 

「なんでわざわざ三回も言ったの!?」

「重要なことだから」

 

少なくとも俺にとっては。

……ついでに言っとくと、口には出してないぞ。思ったけど。

 

そう思っている間に、自殺志願者R(Lかもしれないけど、それこそ知ったことじゃない)の乗ったISが高速でセシリーに接近し、雪片もどきを振り下ろす。

それが当たる寸前に鈴が割り込みをかけるが、どうやらスペック自体は向こうの方が数段上らしく、見事に弾かれていた。

高速で展開された衝撃砲の砲身も出来上がった頃にはその先に目標がいないということが多々あるようだ。

 

それでも食らいついていける鈴とセシリーに、すごいなぁと本気で思う。

 

………っと、いくらなんでもあれはマズイな。データだけで動いているとはいえ、ちー姉さんだし。

 

……息を吸って、吐いて、もう一度吸って……周囲の視線が全て鈴とセシリーの方に向いているのを確認し、

 

「IS発動、シルバーカーテン」

 

その場で電子光学迷彩をかけて不可視になり、

 

「IS発動、ディープダイバー」

 

アリーナのステージと観客席を分けているシールドをすり抜けた。

 

物理的なものがすり抜けられるんだったらできると思っていたが、やっぱりできたな。うまく応用すればうちはのマダラみたいな真似ができそうだ。

生体はすり抜けられない代わりに無機物だったら選択してすり抜けられるみたいだし、もう少し便利そうだけど。

 

いきなりのことで反応が遅れていた教師陣から、ようやく状況がレベルDだの生徒は避難しろだのと言っているが………まあ、鈴とセシリーは友人だし、ちょっと無視して助けるか。

 

……それにしても、マジで鈴とセシリー凄いわ。データとはいえあのちー姉さんの攻撃を耐えてるんだから。零落白夜が無いってのも大きいのかもしれないが、それでもな。

 

とりあえず、そろそろシールドエネルギーの残量がやばげな二人から引き離すかね。

 

 

 

 

side 凰 鈴音

 

ったくもう!なによこいつはっ!

 

いきなり動きの癖や戦法までをがらっと変えたこの女に、明らかに妙な方法で形を変えたIS。

色々と聞きたいことはあるけれど、落とそうとしても全然落ちてくれない。

 

隙はできないし、誘いにも乗ってこない。

セシリアがやった背後からの射撃も見事に回避して見せたし、不可視の高速展開型衝撃砲も空振った。

攻撃方法はブレード一本で切りつけてくる、高機動・高攻撃力型。

ただ、変わる前に相当痛め付けたからシールドエネルギーは限界のはずで、あと一発ぶちこめば終わると思う。

 

『その一発が遠いですわね……』

『全くよ。なんて理不尽な。ブレード一本でこんな真似ができそうな人なんて、一夏と―――』

 

そこまで言ってようやく気付く。

 

一夏が使う雪片弐型と、ほぼ同型の近接ブレード。

操縦者と色こそ違うけど、ISに関わる者なら誰もが一度は見たことがあると思われる機体。

高機動型で、高威力かつ高速の剣使い。

 

『……姿形だけじゃなくて、本当に千冬さんみたいな戦い方をするのね』

 

………でも、やっぱりこれは違うと思う。

だって本当の千冬さんなら、あたしたちがどれだけ頑張っても五分あれば三回は落とせるはずだし、それ以前に剣が見えるわけがない。

今だって双天牙月と打ち合っているけれど、本物の千冬さんなら打ち合うことなんてできないしね。

 

……けど、やっぱりそんなになっても千冬さん。

一夏曰く、

 

「ちー姉さんだったら多分『覇王炎熱轟竜咆哮爆裂閃光魔神斬空大鉄拳』で山の一つくらいは吹き飛ばせそうだよね」

 

とまで言われる千冬さんだ。あたしたちを蹴散らすなんて造作もないことだろうし。

………一夏の言ったあれのことは気にしない。どうせ確実にろくでもないことだし。

 

ガギィンッ!と双天牙月が横からの攻撃で弾かれ、小さく皹が入る。

流れた体勢を整えようとするも、あの女の剣の方が早い。

セシリアのレーザーは確かに早いが、発射までにあるタイムラグが大きすぎるので、今から撃っても間に合わない。

 

衝撃砲も間に合わないし、もう片方の双天牙月も弾かれてガードに間に合いそうにない。

 

…………絶対痛いわよね。あれ。

あたしの衝撃砲と同等くらいの攻撃なんて、食らったら確実に絶対防御は抜けてくるだろう。

ISの操縦者生命活動補助型があるから死にはしないと思うけど、脱け殻とはいえ千冬さんが相手だから油断はできない。

 

半ば諦めかけていたけど、それでもやっぱり………

 

(……負けたくないなぁ…………)

 

あの女の刀があたしに振り下ろされて、世界がゆっくりになる。

最後まで目は閉じない。諦めたくないから。負けたくないから。

 

……だから、この光景はきっと神様からのご褒美なんだと思う。

 

一次移行を終わらせて真っ白になったシロを駆り、真剣な顔の一夏があたしを護ってくれた。

 

まあ、神様なんて信じちゃいないんだけどね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

原作崩壊? だから今更だって

 

鈴に斬りかかる偽ちー姉さん型ISの刃を雪片弐型で受け止める。威力だけはしっかりあるみたいで、ぎしりとシロの腕の関節が鳴く。

偽ちー姉さんはすぐさま剣を戻して縦に振るが、それも受け止める。

同時に左の衝撃砲で貫通型を撃ち込んでやるが、逃げられた。

速いな、流石データそのもの。人間で言う思考時間によるタイムラグがほとんどない。人間でもISに乗っている間はそこらのパソコンより演算能力がつくはずなんだが、それでも僅かにあるそれがない。

 

「よう、鈴。なんだ手こずってるみたいじゃないか。白馬の王子様をただ待ってるだけなんて、鈴らしくないな?」

「五月蝿いわね。ちょっと寝ぼけてただけ……よっ!」

 

そう言いながら鈴は衝撃砲を撃つ。それは瞬時加速で避けられるが、距離はできた。

 

「それじゃあ鈴。セシリーもだけど、そろそろシールドエネルギーが不味いだろ。巻き込まない自信はないから退がっててくれないか?」

「嘘つきなさい。普通に『ちー姉さんが相手だと心配だから』って言いなさいよ。わざわざ自分のことを小さく言ってないでさぁ」

「そうですわ。わたくし達だって彼我の戦力差は承知しています。一夏さんがわたくしたちを巻き込むようなことがないと言うことも」

 

……む。そうか…………。

 

「じゃあ、後でオウムぷちかに『大好き』って言葉を覚えさせてから抱かせてあげるから退いて」

「退くわよセシリア。ここは一夏に任せましょう」

「そうですわね。そういたしましょう」

 

最初からこう言えばよかったかもな。と思うくらいに簡単に鈴とセシリアは退いてくれた。

……さてと。俺は俺で‘鬼退治’とでも洒落込むかな。

 

……………あの黒いISを鬼と考えると、囚われのお姫様みたいだよな。あの銀髪黒兎。名前は忘れた。どうせ言おうとしても相当酷い間違いしか出ないと思うし。

例えば、ランバダ・ボーロキーレとか。

 

…………襤褸布《ぼろきれ》? 流石にこれは無い。ランドクルーザー・ボロボロと同じくらい無い。

 

まあ、いいか。とりあえずさっさと終わらそう。

 

俺は零落白夜を発動し、高速で接近。ギリギリ反応はしたようだが、空間固定で偽雪片と腕を被ってやれば逃げられない。

零落白夜が使えればまだわからないが、使えないみたいだし。

 

「……さっさと起きろ、馬鹿兎」

 

俺は雪片弐型を振り下ろし、黒い‘くー’に似たISを縦に真っ二つにした。

絶対防御の恩恵か何かは知らないが、乗っていた銀髪黒兎はたいした傷は負っていないらしい。

ここでもう一発やったら死んじゃうだろうから、優しい俺はそんなことをしないで黒兎(ISと言う皮剥ぎ済み)を静かに受け止めてやる。

 

今回は大して疲れなかったけど………寝たいことにはかわりない。

さっさと引き渡して保健室でも寮の自室でもいいから布団に入ろう。

 

……そして、こんなものを載せた馬鹿にはお仕置きだ。死人はでないから安心しな? 代わりに珍しい病気が流行ると思うけど。

 

 

 

 

side ラウラ・ボーデヴィッヒ

 

その二人に手を出したのは、単なる挑発と憂さ晴らしのためだった。

教官の弟、織斑一夏と戦うための下準備でもあったが、大半はそちらの理由だったと今では思う。

 

織斑一夏は、必要最低限の時間しかISに乗らないらしい。代表を決める決闘でも、週に一度のIS搭乗日でもできるだけ乗らないようにして、そして空いた時間は惰眠を貪る。

 

それらの情報からただ学年トーナメントで当たっただけではすぐに棄権されると思ったため、棄権しないようにと織斑一夏と仲の良い二人がアリーナに来たところで挑発した。

織斑一夏は友人を馬鹿にされると本気になると聞いたため、ボロボロになるまで叩き潰してやれば棄権することも、戦いを拒否することも無くなるだろうと予想したからだ。

 

その目論見は当たった。しかし、それも途中まで。

 

前のデータには無かった、甲龍の衝撃砲の速射と連射。不意を打つための話術と詐術。

ブルー・ティアーズの偏向射撃と、隙を付く巧みさ。

 

一人一人ならば容易く撃破することもできただろうそれに、私は一方的に追い詰められた。

 

 

―――私は、こんなところで負けるわけにはいかない。

 

私の憧れる教官を、その存在だけで変えてしまう男。

 

そんなことを認めるわけがない。そんなものの存在を、認められるわけがない。

 

だから、私はその男を敗北させ、地に伏せさせると決めたのだ。あの男を、完膚無きまでに叩き伏せると。

 

そのために、こんなところで負けるわけにはいかない。あの男に触れることすらできずに敗北するなど、あってはならない。

 

―――そこで声が聞こえ、私はその声に、一も二もなく飛び付いた。

 

力があり、私の全てを払うことでそれを手に入れられるなら、こんな私など何から何までくれてやる!

 

―――だから、私に力をよこせ。

比類無き、唯一絶対の最強の力を―――私によこせ!!

 

 

私は力を手に入れた。先程までは一方的に加えられていた攻撃を全て避け、近接ブレード一本であの雌共を一方的に攻撃している。

 

私は力を得た。圧倒的な、力を。

 

……しかし、その力すらも目の前の男には届かなかった。

 

………何故だ。私はあの人の……最強である教官の力を得たはずだ!それなのに、なぜ貴様は遥かな高みに居る!!

 

『ちー姉さんの力を手に入れた? アホかお前。ちー姉さん以外にちー姉さんと全く同じ力が持てるわけないだろ。それ以前にあれがちー姉さんの力? あんな空っぽな力がちー姉さんの物と同じな訳ないだろ』

 

……ならば、私はどうすればあの人のようになれる!? 何をすればあの高みに到達できる!

 

『………馬鹿なんだなお前。自分が新しい自分になることはできても、全く違う他人になれるわけが無いだろ』

 

……私は、あの人のようにはなれないと言うのか………巫山戯るな!

 

『五月蝿い奴だな。全く同じになれないってだけだ。お前のままでちー姉さんの高みに行けないとは言ってないぞ』

 

……ならば答えろ。私はどうすればその高みに登り詰めることができる!?

 

私の悲壮感すら漂う問いに、奴は一瞬も迷うことなく答えた。

 

『知るか。自分で考えろ』

 

それに私が返す前に、その男は続けて言う。

 

『自分が他人になれないように、他人も自分にはなれないんだから、そんなことを聞いたところで無駄だよ。自分で考えてこそ意味があるし、例えそれが間違っていてもそれは糧になるしな』

 

その言葉は奇妙なほど現実味に溢れていて、私はつい聞いてしまった。

 

――お前も、そうして強くなったのか?

 

『……精神的には、その通りだな。精神は肉体に直結するし』

 

その言葉に、この男の周りに居る者達がなぜ強いのかが理解できたような気がした。

 

あれは、意思の力だったのだろう。

私のような、依存と嫉妬から来る力ではなく、ただ純粋に思いを通したいという意思の。

 

そこに到達するまでに、恐らく誰もが迷ってきたのだろう。

高みに登るための道が間違っているかもしれない、届かないところで切れてしまっているかもしれないといった不安を乗り越えながら、ずっと進み続けたのだろう。

 

間違ってしまった時や転んでしまった時には、周りにいる誰かと力を合わせて。

 

この男のために。

 

 

『……まあ、そんなわけだ。登りたいんだったら勝手に登れ。俺はお前のことが大嫌いだが、頑張っている奴を見るのは……まあ、嫌いじゃないからな』

 

そう言い残して、その男は消えた。

 

………ああ、ああ、理解した。あの男があれほどだらしないのに、あの女達が呆れた顔をするだけで離れようとはしない理由を。

 

あの男は、人を垂らし込むのが上手いんだ。

気が付いたら近くに居て、気が付いたら心の一部に住み着いていて、気が付いたらその割合をどんどんと大きくしている、そんなやつなんだ。

 

……そして、どうやら私も手遅れらしい。

 

…………全く。あいつは実に厄介な男だ。

 

―――織斑、一夏

 

……本当に、厄介な男だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

最悪のコンビ、束姉さんと俺の『ドイツの黒幕にゾナハをぶちまけよう』大作戦

 

とりあえず電話を掛ける。お相手はさっきの戦いを見ていただろう束姉さんだ。

 

「もしもし束姉さん? ちょっとゾナハらせたい奴がいるんだけど、手助けしてくれない?」

『いいよー♪』

 

即OKが出た。と言うか束姉さんも凄まじく怒っているらしい。

 

「ちー姉さんが怒るし、殺人は無しね」

『え? やだなあいっくん。この束さんがそんなに簡単に死なんていう楽な道に逃げさせてあげるとでも思うの?』

「そんなわけないでしょ。束姉さんがそんなに甘いわけがない。そして俺もそんなことをさせてやるほど優しくない」

『だよね!』

 

なんだか束姉さんのテンションが高い。理由は何となくわかるけど。

 

『それじゃあ束姉さん情報を聞くんだいっくん!ちーちゃんの胃の健康はいっくんの手際にかかってるよ?』

「全力でやらざるを得ない」

 

元々そのつもりだったけど。

 

細かな金属片に水滴をつけた霧が、部屋の中に現れる。これで学園のカメラは潰れた。盗聴機は率先して潰したため、これでもう俺の行動を知ることはできなくなった。

そんな中でも何故か束姉さんと俺を繋ぐ電波はそのまま繋がりを保っている。

 

「それで、場所は?」

『ドイツだよ?』

「それは知ってるよ?」

『適当にドイツ全土にばらまいちゃえばいいと思うんだけど』

「ばれないと思うけど、ばれたらちー姉さんに怒られそうだから、やだ」

『……仕方無いなぁいっくんは』

 

そして束姉さんは詳しく場所を教えてくれた。よーし潰すぞー。

 

ちなみに、ゾナハ虫は戦闘機やミサイルを分解して無力化することができたりする。

 

さあさあいこうか。そこが地下ならドリルで穴を開けて侵入するのもいいし、吸気口からの侵入もいい。フィルターなんて無いも同然だしな。

とりあえず、三千人分も用意しておけばいいかね。

 

来たれ。 千の顔を持つ英雄。 ゾナハ虫【アポリオン】。

当然監視用のゾナハ虫も用意している。監視と確認は重要だよな。

 

目標、ドイツの秘密研究所。そこにいる人間全てをゾナハに罹患させろ。

ただし、一人たりとも殺すな。ISがあれば持ってこい。束姉さんに渡して改造してもらうから。

 

 

 

空中投影型ディスプレイで現在のドイツのとある場所の状況を見てみる。

 

『ぜひ、ぜひ、ぜひ、ぜひ…………』

『こ……ぜひ、ぜひ……ころ、じ、て……ぜひ、ぜひ、ぜひ…………』

 

喉をおさえ、白目をむいたり瞳孔が半開きに固定されたままぜひぜひという苦しげな呼吸を繰り返している白衣の研究者達が、男1、女6くらいの割合で床に倒れて悶えている。

ゾナハ病に発症し、進行がレベル3まで行くと代謝が下がり、体の筋肉も石のようになって飲まず食わずでも死ねなくなる。怖い怖い。

 

このまま誰にも気付かれず、何らかの原因でその研究施設が吹き飛ばされたりしない限りは、この研究者達は生き続けるのだろう。

もしかしたらゾナハ病の原因解明のために解剖されたりもするかもしれないが、その時はゾナハ虫一匹一匹が見えないように飛び出して解剖している相手をゾナハ病にすることだろう。

それが機械なら分解し、操作しているものや近くに居るものをゾナハに罹患させる。

 

………流石にISを装備されてたら無理だと思うが、装備していないうちに飛び込めば平気だろう。最悪ランブルデトネイターで爆破するし。

 

「これでいいかな」

『いいんじゃないかな?』

「……束姉さん。またハッキングして監視カメラの映像をジャックしたんですか?」

『そうだけど、なにか問題あった?』

 

……無いけども。

どうせやるんだったらIS管理委員会には流れないようにお願いします。あとついでにデータの全消去も。

何となくその辺りからこっちの方に悪意と一緒に向けられそうな気がするし。

 

『いいよ? ただ、ちょっとぷちーちゃん作ってみたから、今度実験よろしくー』

「あいさー了解。ちー姉さんの前に出しても平気?」

『それをやっちゃうとちーちゃんと感覚がリンクしてなでなでするとちーちゃんがヘヴン状態になっちゃっていっくんの貞操が危なくなっちゃうから、やめた方がいいかも?』

「……視覚リンクとかは?」

『もちろんあるよ?』

「…………束姉さん、それを使って覗きとかしてませんよね?」

 

…………束姉さんから返事が来ない。どうやらやっていたようだ。

 

「……ちー姉さんに通報します」

『それはやめてぇ~~っ!ちーちゃんのちーちゃんクローは痛いんだよ!? 頭蓋骨が‘ギリギリギリ……’っていう生優しい音じゃなくって‘ギヂギヂギヂ……’っていう致命的な音と痛みがするんだよ!?』

「じゃあ俺のでこぴんで」

『………いっくんのでこぴんって、確か小学生の頃に誰かを相手にして八メートルくらい飛ばしたんじゃなかったっけ……?』

「それはちゃんと加減してます。鼻から上だけが消し飛ぶとかそんなことにはなってないでしょ?」

『でこぴん怖いっ!? いっくんのでこぴんすっごく怖いっ!? 束姉さんの頭が吹き飛んじゃうよっ!?』

「加減はします。ダムダム弾の直撃くらいまで」

『死んじゃうってば!?』

「じゃあこんにゃくを叩き付けたくらい」

『……あれ? 一気に弱くなった?』

「ただし、上空三千キロメートルくらいから三千キログラムくらいを時速三千キロくらいで」

『やっぱり死んじゃう!?』

 

束姉さんはこうやってノリノリで返してくれるから良いね。ちー姉さんだと止まっちゃうし、からかえないんだよね。

最近は‘シャルル’がおんなじ感じでからかえるけど。

 

「まあ、それじゃあお元気で。きっとそっちにちー姉さんから電話が行くと思いますけど」

『うん!いっくんも元気でね』

 

そうして俺は電話を切り、チャフを下がらせる。

 

……………ふぅ。一仕事したし…………寝ようかな。

 

……すか~…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

予想外の行動、予想外の言動

 

鈴とセシリーが銀髪黒兎を苛め、俺が張っ倒し、ドイツを相手に一仕事を終わらせた次の日のこと。銀髪眼帯黒兎は俺の席の前に来て、こう言った。

 

「私はお前がいないとこの世界に意味を見出せなくなった!責任をとってずっと私と一緒に居ろ!」

 

そして俺の頭を抱え込み、額にキスをしてから自分の席へと戻っていった。

 

…………久々に本気で困惑したわ。あと‘シャルル’が黒い気配を醸し出してるのがちょっと怖い。

 

……何がどうなってこうなったのやら。

 

 

 

 

side ラウラ・ボーデヴィッヒ

 

予備のパーツをフルに使って組み直されたシュヴァルツェア・レーゲンを使い、本国にいるシュヴァルツェ・ハーゼの副隊長、クラリッサ・ハルフォーフにプライベート・チャネルを繋ぐ。

クラリッサは本国では私に次ぐ好成績を叩き出している者でもあるが、今連絡をとろうとしている理由はそれだけではない。

 

クラリッサは確か隊員達に慕われていて、よく悩みを聞いてやっていたはずだ。

当時の私は下らないことだと切り捨てていたが、その事を頭の片隅に止めておいてよかったと、今では思う。

 

『――受諾。クラリッサ・ハルフォーフ大尉です』

「ラウラ・ボーデヴィッヒ少佐だ……突然だが、一つ質問がある」

『はっ!なんなりと』

 

そう答えたクラリッサに、私は勢いをつけるように深呼吸をしてから本題を切り出す。

本題、それはすなわち―――

 

「―――男の気を引くにはどうしたらいい?」

 

そう、織斑一夏のことだ。

 

しかし、なぜかクラリッサからは返答が来ない。まるで凍りついてしまったかのようだ。

 

「……クラリッサ? クラリッサ・ハルフォーフ大尉!聞こえているか!?」

『は、あ、え、えぇぇえぇぇぇぇっ!!?』

 

いきなり爆発したような声を上げたクラリッサは、ただただ驚いているようだった。

 

 

 

しばらくの間ひたすら驚き続けていたクラリッサを抑えると、クラリッサはなぜか私に質問を繰り返してきた。

 

なぜそのようなことを聞くのかと言う問いには、正直に『気になる男ができたからだ』と答え、それが誰かと言う問いにも正直に『織斑教官の弟で、織斑一夏と言う男だ』と言った。

確かに相手のことを知らなければ助言などできはしないだろうし、この質問も的外れなものではないな。

 

『……隊長は、その男の事を好いているのですか?』

「ああ、惚れている。もし一夏がこの瞬間世界から姿を消したら、世界の九割以上が色を無くしてしまうだろうと言う予想ができるほどにな」

 

……ただ、それが『女』としての感情か、それとも『今までの何でもなかったラウラ・ボーデヴィッヒ』を『人間であるラウラ・ボーデヴィッヒ』として生まれ変わらせてくれたという『子供』としての感情かの区別はつかないが。

 

「……今まで私は男とまともに話したこともないからな。隊員の話をよく聞いているクラリッサに話を聞こうと思ったのだ」

『……了解しました。このクラリッサ・ハルフォーフ、ラウラ・ボーデヴィッヒ隊長のサポートを勤めさせていただきます』

「よろしく頼む」

 

そこからは早いもので、クラリッサは次々に質問をし、私がそれに答えて作戦を練る。

 

「惚れていると言ったが、正直に言ってこれが女としての思いなのかわからないのだ。それよりも今は『勝ちたい』という思いが強くてな……」

『なるほど……(恐らく隊長はその相手を好敵手として見ていると同時に、男として意識し始めているのだろう……ならば、私はその背を押してやるまでだ)話は理解しました。隊長は恐らく、その男の事を好敵手《ライバル》と同時に男として想っているのでしょう。ならば、まずは好敵手として関係を深め、相手のことを理解するのがよろしいかと』

「……だが、それで相手のことを理解できるのか?」

 

クラリッサの話はわかるが、それが成功するかはいまいち不安だ。

 

『何をおっしゃいますか。隊長が今回織斑教官の弟君に惚れたのも、原因は弟君との戦闘がきっかけのはずですが?』

「!」

 

そうだ、確かにその通りだ。私が織斑一夏を想うようになったきっかけはそれだった。

 

力に酔い、暴走していた私を抑え込み、初めて私が本音をさらけ出して話をしたのは、織斑一夏との戦闘があったからだった。

 

「すまない、クラリッサ。私が浅はかだったようだ」

『初めは皆そのようなものです。お気になさらぬよう』

 

……そうだな。ならばクラリッサの助言に従い、織斑一夏に好敵手として宣戦を布告しよう。

 

『好敵手への宣戦布告でしたら、こういった方法がございますが』

 

クラリッサに聞きながら、私は織斑一夏への宣戦布告の言葉を考えていった。

 

 

 

そして次の日の朝。織斑一夏の目の前で言う。

 

「私はお前がいないとこの世界に意味を見出せなくなった(憧れと目標を失って気力が出なくなるという意味で)!責任(私を強烈に憧れさせた責任)をとってずっと一緒に居ろ(私の目標で在り続けろと言う意味で)!」

 

 

 

このあと、教官による凄まじい威力のアイアンクローを食らい、そのまま振り回され、壁に何度か叩きつけられ、投げられ、壁に激突して崩れ落ちたところをグリグリと踏みにじられたのは……実に刺激的な体験だった。

刺激的すぎて死ぬかと思ったがな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

トーナメント、ペアを作ろう

 

銀髪眼帯黒兎から訳のわからない告白を受けた当日の昼休み。俺と‘シャルル’は大勢の一年女子に囲まれていた。原因は、学年別トーナメントのペア決め。正直やりたくないが、ちー姉さんにやれと言われたなら仕方無い。

 

「すまないけど俺はシャルルと組む予定だから」

 

ちなみにこの事は昨日のうちに決定されていて、既に鈴とセシリー、ののちゃんと銀髪眼帯黒兎が組んでいる。

ののちゃんと銀髪眼帯黒兎の仲が悪くない理由は、どうも目標が俺と言うことで意気投合したらしい。あと縦に前方三回宙返り土下座を披露したと聞いた。

俺も土下座されたけど後方三回宙返り土下座だった。器用だな。

 

「器用ってレベルの話じゃ無いよね!? 物凄いよね!?」

「ちー姉さんなら助走無しで三回宙返りに二回捻りくらいはやってくれる」

「織斑先生ってどこまで凄いのさ!?」

 

普通だよ普通。凄いけど。

 

「で、ペアは俺でいいか? 突っ込み上手のシャルル」

「いいけど……突っ込み上手にしてるのは誰さ!」

「シャルル自身だろ。俺が話すとシャルルが突っ込むだけだし」

 

そうだよな?

 

「……もうそれで良いよ………」

「そうか」

 

‘シャルル’はぐったりと体から力を抜いたが、それで良いと言質は取ったし、これからもからかうことにしよう。

 

 

 

食事時にはいつものメンバーが集まって食事をする。のほほんちゃんが入ってきたりそれに便乗していろんな人が入ってきたりしてなかなか騒がしいが、今日はいつものメンバー+一名だった。

その一名とはすなわち銀髪眼帯黒兎。なぜか一緒に食事をすることになった。雰囲気悪くなったりはないから別に良いけど。

 

「……そうだ、一夏」

「もきゅもきゅ……ごっきゅん。……なに?」

「……まさか本当に『ごっきゅん』って飲み込むのを見るとは思わなかったわ………まあ、それは良いとして、一夏はここでは作らないの? 睡眠愛好会」

「何それ!? 睡眠愛好会って何!?」

 

ああ、そう言えば中学では作ってたな、睡眠愛好会。裏で鈴や弾達がなんか色々やってたような気もするけど。

 

「……じゃあ、作るか。睡眠愛好会」

「会長は一夏で良いとして、副会長はキャリアのあるあたしで良いわね」

「ではわたくしは参謀などを務めさせていただきますわ」

「私は……何をすれば良い?」

「粛清部隊の隊長なんてどう?」

「いや、実力的にそれはボーデヴィッヒか鈴が良いだろう」

「篠ノ之。私のことはラウラで構わん……ならば私が隊長で、篠ノ之は副隊長でどうだ?」

「私のことも箒で構わん。……ならばそうしよう」

「良いんじゃない? じゃあ決定ね」

「なんの話をしてるの!? 睡眠愛好会って何!? 粛清部隊ってなんなの!? 参謀は必要なの!? なんだかすっごく危ない組織に聞こえるんだけど!?」

「何言ってるの。裏組織のIII・IS学園本部創設の話に決まってるじゃない。支部長の弾に報告しておかなくっちゃ」

「支部まであるの!? って言うかIIIってなに!?」

今日も‘シャルル’の突っ込みは絶好調だな。一人で突っ込み続けるのは疲れるだろうけど、頑張れ。

 

「IIIって言うのはいっぱいいっぱい一夏の略称で、一夏の健やかな眠りを妨げようとする者や独占しようとする馬鹿共を粛清するついでに一夏の可愛らしさを布教するために中学の頃にあたしと親友たちで作り上げた組織のことよ。つい最近ラウラが粛清されたわ」

「あれもそうだったの!?」

 

それは初耳だな。粛清はあそこまで過激なものだったのか。

 

「だってラウラ強いから♪」

「強いから♪ じゃないよ!あれはやりすぎだって!」

「どこが?」

「どこがだ?」

「どこがですの?」

「なにがやりすぎだ?」

「ラウラ含めて全員自覚なし!?」

 

……ほんとに元気だなぁ…………ふぁ……。

 

「どうした一夏。眠いのか?」

「……ん」

 

うなずくと、ののちゃんが自分の膝をぽんぽんと叩く。

 

「ほら一夏、こっちにおいで」

 

当然俺はその誘いに乗って近付いて行き、ののちゃんの膝に頭を乗せる。

すると俺の頭を誰かが撫でるのを感じた。多分これはののちゃんかな。

 

俺はただゆっくりと意識を沈める。俺のことを撫でる手が少しくすぐったいが、これくらいなら‘シャルル’が寝る前にやっている頬ぷにと似たようなもんだ。問題ない。

 

「……へぇ? シャルルってば毎晩一夏のほっぺをぷにぷにしてたんだ?」

「鈴。ISの展開は禁止されているから、私の腰の緋宵を使うと良い」

「……護身用のニードルガンがなんの役に立つのかと思っていましたが……意外とすぐ出番になりましたわね」

「―――斬る」

「え、えぇっ!?」

 

ののちゃんは俺の頭を撫でているから動けないが、代わりに鈴がその腰の刀を鞘から抜いて構えた。

それと同時にセシリーが袖の中からペン型スプリング式のニードルガンをいくつか取り出して‘シャルル’を見据え、銀髪眼帯黒兎がつや消しされた黒のサバイバルナイフを制服の中から引き抜いた。

 

そして狼狽する‘シャルル’に向かって、全員が同時に言う。

 

「冗談よ」

「「冗談だ」」

「冗談ですわ」

 

その言葉を聞いて‘シャルル’は、力が抜けたらしく床にへたりこんだ。

 

「心臓が止まっちゃうかと思ったよぉ………」

「人間、心臓が止まった時間が一分以内なら割と助かるらしいぞ?」

「それは知ってるけどさぁ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

再誕、睡眠愛好会(会員募集中)

 

起きたら既に授業が始まっていた。いつの間にか席についていて、いつの間にかノートに黒板と真耶先生の話の内容を書き出していた。どうやら俺は寝たままある程度動くことができるようになったらしい。凄いなこの体。

まあその事は置いておくとして、俺は今現在、放課後が楽しみで仕方無い。

 

シロに乗るのは楽しい。じゃなかったら乗ってないし、わかり合おうともしてなかっただろうし。

かんちゃんとISの整備をするのも楽しい。シロの事がよくわかってくるし、かんちゃんと話をするのも楽しい。

 

……でも今はそれ以上に嬉しい事がある。

部活動の発足についてはともかく、愛好会の発足についての書類は面倒なことが少ないし、会員が五人以上居れば認められる。部費は出ないが別にいらない。道具は千の顔を持つ英雄で十分だ。

 

ちなみに会員は、俺、鈴、ののちゃん、セシリー、‘シャルル’、銀髪眼帯黒兎の六人。会員は随時募集中、ただし盗聴機とか隠しカメラとかを持ってくる相手にはご遠慮願っている。

……部活動に組み込まれそうになったらすぐさま解散して無許可で寮の自室で開いてやる。面倒なことは嫌いだ。

文化祭の出し物とか、中学でやったみたいに放送ジャックして曲流すくらいしか思い付かないしな。

 

「一番に思い付くのがそれってのもねぇ……」

「しょうがないじゃん。中学の三年間毎年やってたんだから」

「毎年放送ジャックって……なにやってるのさ………」

 

‘シャルル’が疲れたように突っ込むが、しょうがないじゃん事実だし。

 

……それにしても、プライベート・チャネルは便利だな。黙ったまま話ができるし。ほんとは校則違反なんだが、俺は準待機モードかつステルスモードにしておけばまずばれないから平気。

欠点はののちゃんが入ってこれないところなんだよな。紅桜《べにざくら》を早く作って送ってもらおうかな?

 

……ちょっと違う気がするけど。

 

「ああ、確かに違うな。紅椿だ」

「……何でできるの?」

「姉さんに頼んで作ってもらったんだ。ただ、機体はまだだから通信くらいにしか使えないと聞いているがな」

「……ほんとにそう思う?」

「思わん」

 

だよな。束姉さんだし、絶対なにかしら仕込んでるよな。武装だけ展開するとかだったら普通にできそうだし。

……それどころか普通に完成してそうだし。

 

………まあ、何でも良いんだけどね。トーナメントで使うのか?

 

「使わん。アリーナがもう使えないから練習もできないし、ぶっつけ本番でできると思うほど自惚れてもないのでな」

「そ。まあ、頑張って」

 

 

 

放課後。真耶先生に愛好会発足の書類を提出してどこかを部室がわりに使えないかと話し合いをしてみるが、やっぱり使えるところは無いらしい。

仕方無いので寮の俺の部屋を部室がわりにすることでファイナルアンサー。俺もシャルルもあんまり物を持ってないからスペースはあるし。

 

ちなみに愛好会だから顧問はいないし部費が学園から出ることもない。大会なんてありゃしないし、あったとしても出たくない。

 

活動内容は、学園の敷地内で四季折々に合わせた昼寝スポットを探し、健やかな睡眠をとること。猫だけが知っている涼しいところや温かいところ、みたいなものだ。

裏で鈴やののちゃん達がなにかやってるけど、それについては関知していない。勝手にどうぞ、俺は寝るけど。

 

 

 

 

side 凰 鈴音

 

「弾? 久し振り」

『ん? おお、鈴か!久し振りだなぁ。元気してたか?』

「そばに一夏がいるのに元気じゃないわけないじゃない」

『それもそうだな』

 

弾とあたし、久し振りに話して笑い合う。そこには一年離れていたことによるぎこちなさなんてまるでない。これこそ同志って言うものよね。

 

『……で? もしかしてIS《そ》学園《っち》にもIIIを作ったとかそんな話か?』

「話が早いわね。頭のいい味方は一夏の次に好きよ?」

『何回も聞いたから知ってるよ』

 

本当に弾は察しがいい。ここまで来たら最後まで当てられないかしら?

 

『それで一夏の居るそっちを本部にしたいって話だったら構わないぞ。一夏からお前が日本に戻ってきてるのは聞いてたし』

「本当に察しがいいわね。ありがと」

『そう思うんだったら写真送れよー。コピーして布教するから』

「それなんだけど、一夏がIS動かせるようになって有名になっちゃったから、ごくごく一部の身内だけにしてくれる?」

『……ああ、なるほど。わかった』

 

弾はあれで頭がいい。今もたったこれだけでなぜ隠すのかを理解してくれた。

まったく。ありがたい話ね。

 

「それじゃあ、蘭にも‘よろしく’言っておいて」

『おう。またな』

 

電話が切れて、ツー、ツー、という電子音が聞こえる。

 

……弾も蘭も、元気でやってるみたいね。よかったわ。

 

…………やっぱり家族は仲良くなくっちゃね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

トーナメント、その前に調整だ

 

トーナメント前の最後のシロの調整。最後なのでとりあえず気合いを入れてやってみた。

 

「……荷電粒子砲も、ミサイルもないみたいだけど……」

「シロが受け入れてくれないからちょっと反則臭い方法でやることにしたから安心してくれ」

 

千の顔を持つ英雄でリアル『空が3でミサイルが7』をやってやるつもりだし。

もちろんミサイルだけじゃなくて荷電粒子砲も実弾兵器も使うけど。荷電粒子砲は弾をカートリッジ式にしてそのカートリッジを千の顔を持つ英雄で交換してやれば銃身が焼き付きを起こすまでいける。

もちろんシロの高速機動を殺す気は無いけどな。ミサイルの弾幕をすり抜けてゼロ距離から荷電粒子砲をぶち込んでやる。

 

……悪役のやることだよなそれ。

普通に考えたらある意味じゃあ根比べなんだけど。

具体的にはミサイルの弾幕に耐えきれたら後は武装のないこっちを一方的にボコるだけ。耐えきれなかったらアウト。ゲームオーバーだ。

 

まあ、俺本体がミサイルの隙間を抜けて一発入れていくから、実際はもっと難易度高いんだろうけど。

 

ミサイルが(切れないけど)切れたら雪片弐型と荷電粒子砲で、荷電粒子砲が(切れないけど)切れたら左右の衝撃砲と雪片弐型で戦える。

空間固定でコア抜きはしない。それやったら乗ってるやつが落ちて地面に叩きつけられたザクロかトマトみたいになるからな。楯にはするけど。

 

「……頑張って」

 

かんちゃんは、いつもの無表情をちょっと崩して心配そうな顔をしている。

 

「大丈夫だよ。シロもかなり具合良いみたいだし、優勝も狙えるかも」

「……そう」

「そう。データを楽しみにしてるといいよ」

 

データ取りの他にはあんまり意味ないし。遠距離武器とか千の顔を持つ英雄で作った剣をぶん投げてランブルデトネイターすればいいよ。もしくは相手に一瞬触ってからランブルデトネイターで直接爆破してやればいいよ。

ミサイルはミサイルで使い道があるから別にいいけど。

 

「とりあえず、いい時間だし昼食べにいかない? 頭使うとお腹空くでしょ」

「……わかった……行く」

よっし、ご飯だご飯。

 

 

 

うどんのかき揚げはしっとり派な俺。かんちゃんはたっぷり全身浴派だそうだ。

どう違うかというと、先に全部沈めちゃうのがかんちゃんで、食べるときにちょっとずつ汁につけて食べるのが俺。

 

先につけちゃうとサクサクが全部なくなるから、その時その時につけてサクサクもしっとりも味わいたい欲張りな方におすすめ。

途中からサクサク派に変えることも全身浴派にすることも可能だ。

 

……最後の方は強制でしっとり派になるけど。

 

「ちゅるるるる……もきゅもきゅもきゅ」

「……もきゅもきゅ……ごっくん」

 

……IS学園の学食って美味いよなぁ……ちょっと量が少ないのが珠に傷だけど、その辺りは男に食べさせることを想定してないだろうから仕方無い。

その分お代わりすれば良いし、問題は無いかな?

 

ちなみに周りは上級生や同級生に囲まれている。騒ごうとしたところで『食事中は静かに』ってことを言ったから静かだけど。

 

あと、その時に『めっ!』てやってみたら全体の五割くらいが鼻血を噴き出して倒れ、倒れなかった奴の七割くらいが俺をお持ち帰ろうとしてどこからか現れたちー姉さんにアイアンクロー+震動で気絶させられた。残りはなんだかにこにこしながら俺を見ているような気がする(ちー姉さん含む)。

 

「ちゅるるる~~……もちゅもちゅ……ごっきゅん」

「……こっち、向いて」

「?」

 

かんちゃんに言われて振り向くと、口の端に付いていたらしいかき揚げのかけらを指で摘まみ取られた。

 

「……はい、もういいよ」

「ありがと、かんちゃん」

 

ちなみにとってもらったかき揚げのかけらは俺が食べた。指にぱくりと食いついた時になんだか物凄い負の気配があったような気もしたけど、中学の頃にはよくあったから気にしない。

中学の時は鈴に食べさせてもらった後に鈴が俺の口の端に付いていた酢豚のたれを指でとってぺろりと舐めた時とかにあったよな。

 

ぶっちゃけるといつものことだ。

 

「……もう少し……気を付けないとだめ」

「むく?」

「…………はぁ……なんでもない」

 

そ。ならいいや。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一回戦、その直前

 

来賓に色々と来ているらしいが、正直なんでもいい。俺には関係ないことだし、邪魔さえしなければ。

 

「どうでもいいって言うけどね……あの人達の目的の一つには、一夏を見ることも含まれてるんだよ?」

「見られるのには慣れてるから別に平気。邪魔さえされなければ」

「……一夏らしいなぁ………」

 

俺だからな。

……さて、確か原作では初戦が銀髪眼帯黒兎ことラルちゃんとののちゃんコンビだったんだが、こっちではどうなのかね? 鈴とセシリーも居るし、原作なんて無かったんだ!くらいの勢いだし。

 

セシリーはリベンジに燃えているようだし、鈴は再戦を楽しみにしているみたいだ。ののちゃんとは初勝負だし、一応ラルちゃん自身とも初勝負。

それなりに気合い入れてやらなくちゃ負けるかもな。今のセシリーは強そうだし。

かんちゃんと約束したし、頑張らないとなぁ。面倒だけど。

 

「……あと、僕のことをシャルルって呼ぶのは辞めてくれないかな?」

「じゃあ何て呼ぶ? 普通に名前で呼ぼうとすると、多分酷い間違いがあると思うけど」

 

シャアザク・デュケーンとか。

……俺の頭はどうなってるんだろうな。かなり本気で不思議だよ。

 

「……じゃあ、一夏が決めて」

「シャルで」

「……安直だなぁ……」

「安直なのは嫌? じゃあ【シャラポワンヌ】とか【草臥れシャーさん】とかが良いのか?」

「い、いやシャルがいいな!シャルっていうのがいいな!」

「そっか。じゃあシャルで」

 

‘シャルル’改めシャルは、なんだかかなり本気で胸を撫で下ろしている。何でだろうね?

 

「一夏のせいかな」

「そうなのか?」

「そうだよ一夏。だからちょっと癒しを提供してほしいな」

 

そう言ってシャルはベンチに座り、膝をポンポンと叩いた。

……寝ろと? シャルの膝枕で寝ろと?

 

まあ、良いけどな。

 

…………すか~……。

 

 

 

起きたら相手が決まっていた。ラルちゃんとののちゃんだった。こういうところは原作通りなんだな。

まあ、ラルちゃんのあの変型機能(不許可な上違法)はネタが割れて使用不可になっているし、鈴やセシリーも参加してるし、ののちゃんが実は奇妙なほどに強いし………外れてるところは多々あるんだけど。

一番のイレギュラー(転生者、チート持ち、魔改造IS持ち)がなに言ってんのかとも思うけど、面倒だし気にしないことにした。

 

……もうちょっとで始まりかぁ…………あー……棄権したい。

 

「開始直前にいったいどんな夢を見てるのさ!?」

「俺は大抵寝てるぞ? 最近起きたのはラルちゃんにお仕置きした時とゴーレムとバトった時とセシリーをボコった時くらい」

「結構起きてる!?」

「でもその前にはっきり起きたのは実は中学の学園祭の睡眠愛好会特別バンド±1の時以来だったり」

 

マイナス1=鈴、プラス1=蘭ちゃんで、それなりに好評だった。

 

…………まあ、やるか。仕方無い。

 

 

 

 

side 篠ノ之 箒

 

……初戦の相手が一夏か………………勝てる気が欠片もしないな。

勝てたとしても一夏の棄権か面倒だったから大会そのものをサボったかのどちらかだろう。

 

「ラウラ。一夏に勝てると思うか?」

「無茶を言うな」

 

ついに一夏に勝つこと自体が『無茶』と言われるようになったか。理解はできるが。

 

「まあ、それでもやるしかなかろう。一夏は私の目標なのだから、戦えると言うのなら喜ばなければな」

「ほう? なかなか良い目をするな。期待させてもらうとしよう」

「専用機を持たない私にいったい何を求めているのやら………期待に応える努力はするがな」

「それでいい」

 

いつの間にか仲良くなったラウラと、軽く拳をぶつけ合う。よく一夏と鈴がやっているのを見るこれは、なかなか面白い。

 

「……では、行くとするか。箒」

「そうだな。ラウラ」

 

私達は飛ぶ。一夏の居るだろうアリーナに向けて。

 

 

………一夏。私はお前に近付けているか?

 

ほんの少しだけでも、昔よりお前の近くにいるか?

 

私はお前に教えてもらった強さを追い求めて来たから、ここまでこれたんだ。

 

だから、お前が私に教えた強さが、お前にどこまで通用するかを確かめさせてくれ!

 

 

 

 

 

 

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