IS~ほんとはただ寝たいだけ~   作:真暇 日間

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71~80

一回戦、俺・シャルvsラルちゃん・ののちゃん

 

試合開始寸前に、俺はののちゃんにプライベート・チャネルを繋ぐ。

 

「ののちゃん」

「どうした、一夏。棄権するのか?」

 

できればしたいんだけどね。面倒臭いし。

 

「いやいや、先に謝っておこうと思ってさ……ごめんね?」

「………凄まじく嫌な予感がするのだが」

 

きっとそれ正解だよ。うん。

 

……ああ、あと三……二……一………

 

「シャル。下がるぞ」

「大丈夫!わかってるよっ!」

 

開始直後に俺とシャルは一気に後ろ向きに瞬時加速をして下がり、俺は千の顔を持つ英雄を発動する。

 

使うものは大威力拡散荷電粒子砲と、武装で錬金な世界にあったミサイルポッドの武装錬金。

荷電粒子砲の方には名前はないが、ミサイルポッドには名前がある。

その名前は―――

 

「ジェノサイドサーカス!」

 

特性は‘無限弾装’。数は八。とりあえず、リアルで『空が三でミサイルが七』をやってみた。

 

「………………」

「………………」

 

その無数の弾頭を向けられているののちゃんとラルちゃんは、なんだか物凄く顔をひきつらせていた。

 

「………………」

「………………」

「………………」

 

 

そして、隣に居るシャルと観客席に居る鈴とセシリーの顔も盛大にひきつっているように見える。

 

「秒間百五十発×2のミサイルが、三十秒ほど続くから…………頑張って避けてね♪」

「「「無茶苦茶言うなっ!!」」」

ラルちゃん、ののちゃん、シャルに口を揃えて言われた。悲しいなぁ……悲しすぎるからとりあえず発射しよう。

 

「発射ァ!」

 

号令と共にミサイルの第一陣が発射され、ラルちゃんとののちゃんに向かって飛んでいく。

 

「頑張ってね?」

「「死ぬわっ!」」

 

 

 

……そう返されたんだが、結構なんとかなるらしい。

 

ラルちゃんは予備の部品で組み上げたばかりのシュヴァルツェア・レーゲンを。ののちゃんはいつも乗っていたらしい打鉄を使っているが、二人ともに妙に切れが良い。

 

ラルちゃんが大口径レールカノンとワイヤーブレード、そしてAICを駆使して自分に当たるミサイルを落としているのはわかる。

けども、ののちゃんが打鉄の近接ブレードでミサイルの横っ腹を高速で飛び回りながら全部切り捨てているのを見ると、ちょっと呆れる。

 

「……もう十五秒過ぎるけど…………凄いね、あの二人」

「凄いよな。流石ののちゃんだ…………さてと。俺も行くかね」

 

カートリッジ式の荷電粒子砲を持って、ミサイルの雨が降り注ぐ中に飛び込む。まず狙うのはののちゃんだ。

 

ほとんど無いミサイルの隙間をすり抜けてののちゃんの背中に回り込む。

 

「………見えているぞ!一夏ぁっ!」

 

するとそれに気付いたののちゃんに斬りかかられた。ミサイルの影を伝ってきたし、見えないようにしたって言うのに随分と鋭いことだ。

 

「なに、肉眼では見えなくとも気配の目では見えている」

「そりゃすごいな」

 

そう言いながらののちゃんが切り落とす寸前のミサイルに重なるようにののちゃんを撃つ。

 

「見えていると……言っているだろうがっ!」

 

そう言ってののちゃんは荷電粒子砲の射撃とミサイルの誘爆まで避けきって見せた。

 

…………が、すべてを見通している訳じゃない。

 

ズドンッ!といきなりののちゃんの後ろに爆風と衝撃が起き、ののちゃんのバランスと姿勢を崩させた。

 

「一夏ばっかり見て、僕を忘れちゃダメだよ」

「くっ……デュノアかっ!」

 

今までちょこちょこラルちゃんの方にばれないようにちょっかいを出していたシャルが、ののちゃんの背後にグレネードを投げつけたのがさっきの爆発の原因だ。

 

バランスと姿勢を崩されたののちゃんはミサイルを懸命に避けようとしていたが、流石に無理があったらしく直撃を十数発食らった辺りでシールドエネルギーが0になったようで、一応残っていた機動用のエネルギーを使ってゆっくりと降りていった。

 

「……次は、負けんぞ」

「あるかどうかもわからないけどね」

 

短い会話を終わらせて、俺はののちゃんに向かっていた分のミサイルにまで襲われているラルちゃんに意識を向けた。

 

シャルはシャルでアサルトライフルを使ってうまいことラルちゃんにダメージを与えている。

なんと、AICの張られている場所をミサイルの停止位置から考えて、無いところに撃ち込みつつ誘爆でじりじりと減らしているらしい。器用だな。

 

……ののちゃんがミサイルの雨に倒れた時間が、開始から26秒程度。残りのミサイルはまだまだあるが、三十秒と言ったし一秒分をののちゃんの分からとっておこう。

 

……いやまあ、実際にはそんなこと必要ないんだけど。

 

 

 

「……あ、ミサイル切れた」

 

と、わざとギリギリ聞こえるくらいの声で言ってみる。するとそれに釣られたのかラルちゃんが元気になった。

 

……ここで『嘘だ阿呆が』とか言ってミサイル出したらかなり絶望感溢れる表情が見られるんだろうな。

 

…………とか思ったりしたが、俺は優しいからそんなことはまだしない。

 

……まだ、しない。

 

「……いつか……やるの?」

「やるけどどうかした?」

「…………ううん。なんでもない」

 

あっそ。

 

それじゃあ次行こうか。

 

今度は背中から大量にガトリングガン系統の銃を適当に五十ほど用意してみた。弾の口径は八十八ミリで、一発一発がライフル弾のように回転している。

 

「…………おい、冗談だろう?」

 

酷く青ざめてひきつった笑顔を浮かべるラルちゃんに、俺も笑顔を返す。

 

「大丈夫。痛いのはちょっとだけだから」

 

そして俺は、トリガーを引いた。

 

 

 

 

 

 

 

最早只の苛め、何を今さら

 

ガトリングガンのトリガーを引くと、弾が飛び出す。当たり前のことだ。

そしてそのガトリングガンでばらまかれた弾は、殆どがラルちゃんのAICによる停止結界で止められてしまった。

 

「シャル」

「うん。わかってるよ一夏」

 

その隙にシャルがAICを避けてマシンガンでラルちゃんに向けて銃弾をばらまく。

ラルちゃんはシャルのばらまいている弾を避けながらもAICを辞めようとはしない。まあ確かに一分に千五百発の三十倍で八十八ミリ弾をぶちこまれたら十秒持たないだろうしな。

 

ちなみに反動は全部相殺されている。そのかわりに全然動けないけど。PICが高性能で助かった。

 

「……ねえ一夏。そのガトリングってどこで売ってるの?」

「自作って言ったらどうする?」

「…………冗談でしょ?」

「冗談だといいね」

 

そう言って俺が笑うと、シャルはなぜか複雑そうな表情をする。

 

……んー。そろそろラルちゃんのエネルギーが切れてもおかしくないんだけどな?

AICって要するにPICと同じで、相殺する物の運動エネルギーが大きければ大きいほどエネルギー食うはずなんだけど。

シールドエネルギーとは別系統だから強制解除とかにはならないだろうけど、まともには動けなくなるはずだし。

 

…………さてと。それじゃあ荷電粒子砲でも撃ち込むとするかね。ガトリングの反動を消すのも面倒になってきたし、これなら止められないだろ。

 

ゆっくりと狙いをつけて、引き金を引く。

 

AICの壁をすり抜けて、光線がラルちゃんを貫いた。

 

「……そう言えば、そんなのもあったね」

「ガトリングの印象が強くて忘れるだろ?」

 

忘れてくれれば隙をつけるしな。こういうド派手な武器の裏に、効果の高い地味な武器を隠しとくのが好きなんだよ。

 

そしてアリーナに試合終了のブザーが鳴り響く。

 

『試合終了。勝者――織斑一夏、シャルル・デュノアチーム』

 

……ふぅ。やっぱり強いやつの相手はめんどくさいわ。さっさと寝たい。帰りたい。ちー姉さんに撫でてもらいながら寝たい。

 

「あ、ちっちゃくなった……なんで一夏の身長は伸び縮みするのさ!?」

 

今さらすぎる疑問だな。確かに見せるのは二回目で、一回目はそんなことを気にできる状況じゃなかったし、仕方無いか。

 

…………ふぁ……。

 

…………すか~……

 

 

 

 

side シャルロット・デュノア

 

一夏がさっさと帰っちゃったあと、回りを見てみると見学していた大体の人がひきつったような顔をしていた。うん、気持ちはわかるよ? だって多分僕も似たような顔をしてると思うから。

 

一夏の言葉を信じると、秒間150×2×30秒で9000発のミサイルと、1500×36/60(分)×30門で27000発の銃弾がこの試合の中で飛んだことになる。当然これは一夏が撃った弾の合計で、僕やラウラが撃った弾は別計算だ。

 

………どこにそんな容量があったのかとか、昨日見た時にはそんなの無かったよねとか、色々と言いたいことはあるけれど、やっぱりやったのが一夏だと思うとなんでか納得できちゃうのは………どうしてかな?

 

「……ふぅ。やはりまだ勝てんか……手加減までして貰ったと言うのに、情けないことだ」

「どこに手加減の要素があったのさ!?」

 

僕が言うと、箒はきょとんとした顔で、当たり前のことを当たり前に説明するかのように言った。

 

「雪片も零落白夜も使っていないだろう? それに、遠距離からの狙撃で直撃させられる隙などいくらでもあった。そこを突かないと言うだけで、十分すぎる手加減だろうが」

 

………そんな隙なんてあったっけ……?

 

「ああ、あった。私にも、ラウラにも」

 

へぇ…………。

 

……あれ? 僕って今声出したっけ?

 

「一夏に付き合った時間がある程度長くなれば、何となくで読むことができるようになる」

「読心術を使えて普通ってどんな普通さそれはっ!?」

「普通ではないが、常識だ。シャルルも覚えておくといい」

「そんな常識はやだよ!?」

「諦めろ、デュノア」

「あ、シャルルでいいよ。このトーナメントが終わったら名前変わるけど」

「そうか」

 

ラウラに諦めろって言われちゃったので、受け入れることにした。でも、きっとこの突っ込み癖は直らないんだろうなぁ……と思う今日この頃。

 

「……さて。そろそろ移動しよう。次の試合の邪魔になってしまう」

「そうだね。行こうか」

「うむ」

 

僕達は一夏の消えていった方向に向かって飛ぶ。多分一夏はピットのベンチで寝ちゃってると思うし、着替えても大丈夫だよね?

 

「私は相手が一夏なら全く問題ないが」

「私もだな」

「そこは恥じらいを持とうよ!?」

 

 

 

 

 

 

 

一回戦終了、二回戦までは暇

 

ラルちゃんとののちゃんのコンビをなんとか倒し、俺はのんびりと寝ることにした。

 

………したんだが、その前にやることがある。それは、今回の戦闘のデータをかんちゃんに見せないといけないと言うことだ。

ミサイルと荷電粒子砲は、それなりに相性が良いらしい。荷電粒子砲がスナイパーライフルに変わっても同じように使えると思うけど、やっぱり複数のミサイルはコンビ戦等の多対多の勝負に有利だ。

 

「……でも、打鉄弐式には………あんなにミサイルはない……」

「波状攻撃って意味では同じだと思うけど?」

 

特に、ミサイルに気をとらせて荷電粒子砲で遠距離射撃とか、そう言った戦い方だったらある程度少なくないと誤爆するし。

 

「あと、マルチ・ロックオン・システムの方はどう? 無理矢理やるんだったら48個同時に通常のロックオン・システムを使えばできなくはないと思うけど」

「……それは……無駄が多すぎる」

 

だろうね。だから『無理矢理』って言ったわけだし。

でも、多分原理的には似たようなものだよな。48発のミサイルをそれぞれ独立させて狙うってのは。

 

「……織斑君は……どうやっていたの……?」

 

かんちゃんはそう聞いてきた。どうって言ってもあれはぶっちゃけるとなんとなくなんだが……。

 

「……簡単に言うと………気合い? 射撃用のシステム搭載してないし」

「そんな機体であんなに弾幕を張ったの!?」

 

おぉう、びっくりした。かんちゃんが大声を出す所なんて初めて見た。

 

「そうだよ? ハイパーセンサーもあって動体視力は良いし、弾幕張るタイプの武器だからある程度狙えば当たるしね」

「……だから、弾幕なの?」

「そうだよ? 荷電粒子砲の時は近付いて撃つか、相手の動きが止まったところでゆっくり狙って撃ってたし」

「……そう……近付けば……狙わなくっても当たる………」

 

まあ、乱暴に言えばその通りだな。

ついでに言うと、近くなれば空気中を進むことによる威力の減衰もほとんど無いから威力は高いままだしね。

 

「それじゃあ、俺は運動した分寝なくちゃいけないから、この辺りで失礼するよ」

「……待って」

 

ん? なんだ?

 

かんちゃんは俺の方を見ると、無言で腿を叩いた。

 

「……そんなに眠いんだったら………ここで寝ていけばいい」

 

そう言っているかんちゃんの頬は真っ赤だったが、俺はお言葉に甘えることにした。

……布団は千の顔を持つ英雄で出せるし、ベッドはいらない。枕はかんちゃんの膝枕。考えようによってはかなり贅沢な気がする。

 

そう考えながらも俺は布団を用意して、かんちゃんの膝枕に頭をのせる。

 

「おやすみ、かんちゃん」

「……おやすみ…………一夏」

 

……初めて名前を呼んでもらった気がする。嬉しいね。

そう思いながら、俺はゆっくりと意識を深く落としていった。

 

…………すか~……。

 

 

 

 

side 更識 簪

 

織斑君は、私の膝の上で寝息をたてている。五月蝿くてもまず起きないとは言っていたけれど、私を含めたこの場に居る全員は、できる限り静かに作業を続けている。

 

「……織斑君の寝顔……可愛いね」(小声)

「だよねだよねっ!」(小声)

「……撫でても大丈夫かなぁ……嫌われちゃったりしないかなぁ………」(小声)

 

……それは大丈夫だと思う………だって織斑君は……撫でられるのが大好きだから……。

 

今も私が撫でてあげると、ほにゃっという笑顔を浮かべて私の手に髪を擦り付けている姿を見ながら、そう思う。

……だけど、教えてあげない。この時だけは、織斑君は………一夏は、私だけのもの。

 

そんな独占欲を持ちながら、私は片手で打鉄弐式のデータを弄り、片手で一夏の頭を撫でていた。

 

「……んぅ………はむ……」

 

かぷっ、と一夏に私の指が食べられた。そんなに強くは噛んでないみたいだけど………なんだかすっごいクルものがある。

はみはみと一夏は私の指を甘噛みし、その度になんだかぞくぞくしてくる。

 

このままじゃあいけないと思って一夏の唇から指を抜く。結構簡単に抜けたけど、何でかまだぞくぞくする。

指を見てみると、一夏ので私の指が濡れて―――

 

……この指を舐めたら間接キスになるんじゃ…………。

 

そんな邪な思いがよぎったけれど、意識してそれを頭から追い出す。

……打鉄弐式の方に集中しないと…………。

 

そう思って画面を見てみると、そこには一面に『一夏と間接キス』の文字が踊っていた。

 

……空間投影型のディスプレイじゃなくって、ほんとによかった。

 

私は画面に映った文字を、いらないところだけ纏めて消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二回戦、原作何それ美味しいの?

 

確か原作では一回戦で中断することになったはずなんだけども……まあ、続くんだったらそれは仕方ない。面倒だけど。

 

「一夏。油断はダメだよ」

「わかってるよ。油断せずミサイル弾幕を」

「弾切れ起こしたって言ってなかった!?」

「なんか増えてた」

「何でさ!?」

「知らない。何で俺に聞くんだよ」

「一夏のISだからだよ!?」

「じゃあシャルは自分のISの部品の一つに含まれる合金の種類と割合と元々の金属の原産地までわかってるの?」

「僕の聞いたことってそんなに難しいこと!?」

「幽霊が存在しない確たる証拠を見付けるのと同じくらい難しい」

 

ちなみに、存在することを証明するにはそれを見つければ良いが、存在しない証明は存在する可能性を全て否定しなければならないのでまず無理だそうだ。

 

「ああ、ちなみに増えてたってのは冗談だから」

「……なんだ、冗談だったの? よかったぁ……」

「本当は最初から切れてなかった」

「あれだけ撃っといてまだ残ってるの!?」

 

ののちゃんに撃つはずだった分が少しね。それがなくても作れば普通にあるんだけど。

それ以前にジェノサイドサーカスの武装錬金としての特性は無限弾装だから切れないんだけど。

 

「半ば冗談だよ」

「もう半分は!? もう半分は本気なの!?」

「まあ、どちらにしろミサイルは使わないけどね。もう残ってないし」

「結局残ってないんだ!?」

 

シャルの突っ込みが今日も冴え渡る。良いなぁ……。

 

「……僕もう疲れたよ……」

「諦めるといい」

 

そう言うとシャルはぐったりとした表情で俺を見てから、無言でISを展開してカタパルトに向かった。

……拗ねたのか?

 

「拗ねてないよ」

「拗ねてるように見える」

「拗ねてないってば」

 

まあ、本人がそう言うなら構わないがね。

 

……それじゃあ、始めようかね。

 

 

 

 

side 凰 鈴音

 

二回戦の相手は、名前も知らないだれか。使っている機体はどちらも訓練機のラファール・リヴァイヴで、あんまり変な武器も持ってはいないみたい。

だけど、油断はできない。さっき箒が見せてくれたように、訓練機だって使い方次第であそこまで上れるんだから。

 

「セシリア。油断は禁物よ」

「ええ。わかっていますわ」

 

あたし達の視線はたぶん鋭い。相手の二人にはちょっと悪い気がしなくもないけど、本気で行くことにする。

 

ただ、あたしは我流の無理矢理な衝撃砲の曲げ撃ちを、セシリアは偏向射撃を封印中。これは一夏と戦うまではとっておくつもりだから。

 

「それじゃあいつもの通り、あたしが前衛でセシリアは後衛ね」

「わかりましたわ。落とされないようにお気をつけて」

「誰に言ってるのよ。あたしは凰鈴音、中国の代表候補よ? 一夏にはまだちょっと勝てる気がしないけどね」

 

くすくすと笑い合い、それから武器を展開する。

 

「確かに、わたくしも一夏さんにはまだ勝てる気がしませんわね」

 

それでも、あたし達は目標に向かって進むことしかできないんだけどね。

 

双天牙月を構え、相手に視線を向ける。少し前に皹を入れられた双天牙月は新しいものに変えられているため、早々折れることもないだろう。

 

試合開始の合図まで、あと六秒。

 

 

 

試合開始直後にあたしは瞬時加速で接近する。一秒足らずで隣接距離まで入り込んだあたしは、双天牙月の先端をリヴァイヴの腹に直撃させたまま更に力を込める。

もう一人の方には口径を広げた拡散型の衝撃砲を一発。シールドエネルギーは大して削れはしないけど………

 

「隙ありですわ」

「えっ、キャアァァァッ!?」

 

セシリアのビットから出たレーザーがもう一人のリヴァイヴを貫いて、ダメージを与えた。あれ直撃すると割とダメージ大きいのよねぇ……。

 

そんなことを考えながら、あたしはアリーナの遮断シールドにリヴァイヴを叩き付ける。シールドエネルギー同士が干渉して、リヴァイヴのシールドがガリガリ削られているのがわかる。

 

もちろんここでなにもしないあたしじゃない。小さく衝撃砲を展開して、武器を展開しようとした両手を撃ち抜く。

もちろんそれでシールドエネルギーの消費は速まるし、そろそろこっちのリヴァイヴのシールドエネルギーが切れても

 

双天牙月を持ったまま、急速上昇。後ろから相手のパートナーの撃った弾が飛んできた。危ないわね。

 

「な……なんで避けれるのよ!?」

「勘よ。勘」

 

なんて当たり前の事を聞くのかしらね?

 

「……鈴さん。当たり前ではなくってよ?」

「はいはい、つまらない冗談なんて言ってないで、続きしましょ」

 

なんでわざわざそんな下らない嘘を言うのかしらね? 誰が聞いても嘘だってわかるじゃないの。

 

「…………はぁ……」

「? なによ溜め息なんてついて?」

「……なんでもありませんわ」

 

……なんとなく気に食わないけど…………セシリアがなんでもないって言うならなんでもないんでしょ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

決戦、俺・シャルvs鈴・セシリー

 

色々あって、一年の中ではこのどれかの組が優勝するだろうと言われている組が三つあった。

始めに、俺とシャルのペア。

次に、ののちゃんとラルちゃんのペア。

最後に、鈴とセシリーのペア。

 

そのうち、ののちゃんとラルちゃんのペアは一回戦で俺達に敗退したため除かれた。

それでは、次はどちらがこの勝負から消えるのだろうか。

 

「ふふふふ……一夏っ!…………私達が死なない程度に、手加減してね♪」

「元々殺す気は無いっての」

「なんで普通に殺す殺さないの話になってるのさ!? これ試合だからね!? 」

「……? 何を言ってらっしゃるの? 試合では『事故』と言うものがあるんですのよ?」

「事故は狙って起こすものじゃないからね!?」

「そんなものは当然ですわよ? 全く、シャルルさんはいったい何を言っているのか……」

「え、悪いの僕なの!? 僕なにか変なこと言った!?」

 

俺と鈴がいつものかけあいをしていると、シャルとセシリーが二人らしいかけあいを始めた。仲が良いなぁ。

まあ、二人が強くなったのは知ってるから……手加減はしても、侮ることはしない。負けちゃうからね。

 

特にセシリーの偏向射撃。あれは流石に完全に避けきるのは難しいしね。

例えば、シャルと俺を重ねて作った死角からの攻撃に鈴からの攻撃を合わせ、更に偏向射撃で狙い撃たれると避けにくい。

シロは攻撃特化+極限速度特化だから、防御は固くないんだよね。弱点は超々広域殲滅攻撃。もしくは束姉さんによる搦め手。

 

……こう考えると、結構弱点多いのかもね。

 

……まあ、いいか。

 

『とりあえず、シャルは鈴の方をお願い。鈴の衝撃砲は速射で狙いを散らしたりすることができるから気を付けて。あと、壁に押し付けられたらラルちゃんを落とした超速連射が来るから』

『……あれかぁ……うん、頑張ってみるよ。一夏も気を付けてね!』

『当然。死にたくないからね』

 

……さてと。頑張ってみるかね。

 

 

 

開始のブザーが鳴り響き、四機のISが動き始める。

俺はセシリーに向かい、セシリーは後方に飛びすさり、鈴はこちらに向かい、シャルが鈴に向かって飛ぶ。

 

「あら? あたしの相手はシャルルなの?」

「うん、そうだよ。一夏じゃなくってごめんね?」

「別にいいわよ………あたしがあんたを落とせば良いだけだしねぇっ!」

 

どうやら向こうは向こうで話が付いたらしく、急激に戦場の空気が辺りを包み込む。

 

「あら? あの時とは違って今度は一夏様からダンスのお誘いですか?」

「まあな。鈴と一緒だとかなり面倒なんで、悪いが付き合ってもらうぞ?」

 

鈴と組まれると凄まじく厄介だからな。コンビネーションを発揮される前に叩き潰してやらないと。その方が楽そうだし。

 

「……ふふふふっ♪ それでは一曲お相手しましょう♪」

「よろしく頼むよ、セシリー」

 

相手をしてくれるんだったらかなり嬉しいし。その方がシャルの勝率は上がるし。

 

「………では、セシリア・オルコットとブルー・ティアーズ。参ります!」

「織斑一夏とシロ。相手をしてやるよ。面倒だけど」

 

やれやれ。これが終わったら、思う存分寝るとしようかね。

 

 

 

 

side 凰 鈴音

 

あたしの相手はシャルロット。それは別にいい。たぶんこうなると思っていたから。

一夏はきっと、ある程度読みやすいあたしよりもセシリアの方を優先するだろうという予測はたてていた。

そのときのことも一応考えてはいたけれど、やっぱり一夏の操るシロは凶悪ね。高機動状態でもない筈なのに、あたし達を一瞬置き去りにして動いた。

あの時に攻撃されていたら、きっと避けることはできなかっただろう。

 

まあ、もしものことを考えても仕方ない。一夏はあたし達を攻撃しなかったし、あたしはこうしてシャルロットと向き合っている。

シャルロットの言った通り、本当なら一夏と戦いたかったところだけど………だからって今の相手に集中しないまま戦うほど、あたしは馬鹿じゃない。

 

それに、さっさと倒せば一夏とも戦えるかもしれないしね。

 

…………でも、相手は二世代機とはいえ専用機持ちで、さらに随分改造されている。こっちの手札は全部はバレていないけど、それは向こうも同じ。どんな隠し球があるかわかったもんじゃない。

 

「……それじゃあ、いくよっ!」

「来なさい!」

 

シャルロットがショットガンを展開すると同時に、あたしは武装を展開せずに口径を広げた衝撃砲を撃ち込んだ。

威力は下がるし発射速度も落ちるけど、シャルロットが動こうとする前から準備をしておいたから関係ない。

 

そして発射直後に砲身を破棄。双天牙月を展開して、シャルロットに斬りかかる。

 

「わっ、わっわっ!」

「ほらほらぁ!あんまり逃げ回ってると、その可愛い可愛いお尻を取っ捕まえて食べちゃうわよぉ?」

「ひぃっ!? り、鈴!? なんだか手つきが怪しいよぉ!?」

 

失礼ね。ただちょっと揉んで擦って撫で回して押し潰して掴んで指先で擽って爪を立てて弄ぶだけじゃない。噛み付いたり食べたりなんてしないわよ。

 

「それでも‘だけ’じゃないよぉ!?」

「嫌なら勝ちなさい? 一夏に助けてもらうんじゃなくって、自分でね」

 

あー、一夏がシャルロットをからかう理由がわかった気がするわね。

 

この娘………慌てた時の反応がすっごく可愛いわね。一夏ほどじゃないけど。

 

まあ、それなりにからかいながら戦うとしましょうか。

……真剣に、ね?

 

 

 

 

 

 

 

 

決戦中、俺・シャルvs鈴・セシリー

 

「そこですわっ!」

「教えてくれてありがとさん」

 

俺とセシリーは空中を舞うようにして戦っている。

偏向射撃ができるようになってから、セシリーは中距離だけではなく近距離もそれなりにできるようになった。誤射の可能性が低くなったということもあるんだろうな。強い強い。

 

……ちなみに、鈴とシャルは結構離れたところで逃げ回り、追いかけ回しながら撃ち合いをしている。

 

「わぁあぁぁん!」

「あははははっ!まだまだいくわよーっ!」

「こないでよぉぉっ!」

 

……楽しそうだな、鈴。まあ、昔からこうして他人をからかうのが好きだったからな。俺と同じで。

 

「余所見とは随分余裕がおありですことっ!」

「視界は前後上下左右全方向にあるっての」

 

あんまり活用できてるやつはいないけど。

その点は仕方ないよな。人間の脳味噌はそんな視界に耐えられるようにはできてないことが多いからな。例外はあるけど。ちー姉さんとか。

 

そんなことを考えながら飛んできた青いレーザーを避ける。銃口と銃身を見ればある程度避けられるのがレーザーって言うものなんだが………曲げられると言うのがきつい。ギリギリの回避もできないし、流石のシロも光速では動けない。

もちろん俺も、光速あるいは亜光速での機動は無理………だと思う。やったことないからわからないけど。

 

ちなみに今の避け方は、左手の衝撃砲でセシリーの持っているライフルの横っ面に衝撃を叩き付けて射線を外し、偏向させないと当てられないようにしてから避けている。ビットの方は、出てきた四機を空間固定で止めてすぐさま退場願ったら残った二機は出てこなくなった。

 

あんまり頭使うのは好きじゃないんだけどなぁ………。寝るのとは真逆の行為だし。

でも、ちー姉さんに言われちゃったし、負けるのは気に食わないしなぁ……。

 

……こうなったら被弾覚悟で一気に零落白夜で叩っ切るか? それが一番早そうだ。

 

今のところ、セシリーのライフルが一発撃ってから次を撃つまでに必要な時間は0.5秒ほど。これだけあれば一発二発食らう程度で済むだろう。

 

瞬時加速を発動。セシリーに一気に接近する。

それと同時に雪片を振る―――わずに、もう一度瞬時加速で横に軌道を変える。

 

するとセシリーの腰にくっついていた二機のビットからレーザーが飛び出し、虚空を貫いた。

 

「……先に落としたうちの二機は、射撃型じゃなくて弾道型だったんだな」

「ええ。よく避けましたわね」

 

セシリーがなんだか地味に策士だ。ちっちゃい策だけど有効だよな。

 

……まあ、こっちもやることはやったし、おあいこってところかね。

 

「セシリー」

「はい?」

「右肩見てみ」

 

俺の言葉に従って、自分の右肩を見る。するとそこには―――

 

「なっ!? グ、グレネード!?」

「正解♪」

 

瞬間、爆音と共に、赤い大輪の炎の花が開いた。

 

「たーまやー」

 

 

 

 

side 凰 鈴音

 

爆音と衝撃がアリーナ全体を揺るがせた。

鬼ごっこ(シャルはかなり必死)をしていたあたし達は、同時に一夏とセシリアの方に振り向いた。

 

「隙あり」

「無いわよ」

 

ついでにシャルはあたしにショットガンを五発ほど撃ち込んできたけれど、口径を広げた擬似的な拡散型の衝撃砲で撃ち落とした。

 

「……何があったんだと思う?」

「とりあえずあたしに向けてのマシンガンの斉射を辞めてから聞いてよね」

「防いでるくせに」

「まあ、実態があって軽ければ双天牙月で落とせるからね。あと、さっきのことだけど……どうせ一夏が馬鹿威力のグレネードでも使ったんでしょ」

 

と言うか、セシリアの声が聞こえていればわかると思うけどね。おもいっきりグレネードって言ってたし。

……一夏って、グレネードなんて持ってたのね。

 

まあ、勝負を終わらせるにはもう少し必要みたいだけど。グレネード一発で落ちるほどセシリアもヤワじゃないだろうし。

 

「えいっ」

「返すわ」

「困るよ」

「こっちもよ」

 

シャルロットがグレネードを投げてきたので双天牙月で打ち返す。盾で打ち返してきたので今度は上に弾く。

……なんだか、ほのぼのとしながら殺伐とした戦いね。何でもないことみたいにグレネードを投げ合うことになるなんて、思ってもみなかったわ。

…………普段からそんなことを考えているのは、それはそれでまずいことかもしれないけど。

 

「……そろそろ終わらせない?」

「あ、それいいね。僕もちょっと(貞操の)危機を感じてた所なんだ」

 

シャルロットはそう言って、いつもの高速展開で両手に連装型のショットガンを二丁取り出した。

 

「ああ、負けたらシャルルのところに泊まるから」

「え……こ、困るよ!」

 

ああもう可愛いわね。どうせいつもと同じように一夏と寝るだけなんだから、気にしなければ良いのに。

 

「じゃあ頑張りなさい」

「うう……鈴の意地悪………」

 

そこまで言って、お互いに瞬時加速。どうやらあっちも不意を打とうとしてたみたいね。

それに驚く感情はあるけど、それよりも今はシャルロットを倒さなくちゃ。

 

そして一夏と……まあ、本気じゃなければ五分くらいは持たせてくれるかな?

……それも、ここでシャルロットを倒せればの話だけど。

 

あたしは双天牙月を弓を引き絞るように片手で振りかぶり、シャルロットの胸を貫くように突き込んだ。

当然、シャルロットは腕の盾で防いでからショットガンを撃ち込んでくると思っていたのだけれど…………

 

「ぐぅっ……」

「な……」

 

シャルロットは、盾で防御しなかった。

 

「あ、あんたなに考えて」

「うふ」

 

ぞくり、と寒気が走る。シャルロットは今の一撃でシールドエネルギーがかなり削られていて、あとはちょっと力を込めた衝撃砲の一撃で落とせそうなくらい弱っているはずなのに。

 

「うふふふふふふふふふ………捕まえたぁ……♪」

 

バンッ!という破裂音がして、シャルロットの腕の実体盾が弾け飛ぶ。そしてその腕から覗くそれは―――

 

「盾殺し《シールド・ピアース》ですって!?」

「ふふふふふ………この距離なら……鈴の衝撃砲より僕のこれの方が早い!」

 

あたしは急いで離れようとするけれど、それより早くシャルロットはあたしに向かって瞬時加速をした。

全てがゆっくりとした空間の中。双天牙月の間合いの内側で、シャルロットはまるで千冬さんのような―――獰猛な獣の笑顔を浮かべた。

 

「ぶ……っち抜けぇっ!」

 

ズガンッ!という轟音と共に、あたしの体にパイルバンカーの一撃が突き刺さる。

同時に絶対防御が発動し、シールドエネルギーが一気に削られる。

 

けれど、それだけだ。確かに食らった胸は痛いけど(一瞬『成長止まったらどうしよう?』なんて思ってないったら思ってない)、そんなのどうってことはない。

あと一発叩き込めば、シャルロットは落ちる。だから私は痛みを訴える体を無視して、衝撃砲の砲身を作り上げる。

短くても、小さくても、薄くてもいい。一発撃てればそれでいい。

 

あたしはそう考えて、シャルロットの四回目のパイルバンカーの攻撃と同時に衝撃砲を撃ち込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

ただのネタ、時間軸とかは気にしないこと(外伝)

 

真っ暗な中で、何かが動く。それは人間にしては小さな影だったが、人間の大人以上に俊敏に動き回っていた。

 

「わぅわぅ?」

「きゅっ!」

「くきゅっ!」

「ちゅぴぴっ!」

「わぅ!」

 

そのうちのひとつが確認するかのように声をあげると、帰ってくる声は四つ。

 

「ぅわぅ?」

「きぃっ!」

 

今度は別の方向に確認の言葉を向ける。何を確認したのかはわからないが、何かを聞いたと言うことはわかるだろう。

 

「わぅわぅ?」

「にゃう!」

 

ぱっ!とスポットライトが点き、色々なことを確認していた小さな影を照らし出した。

 

それは、いつもの寝間着だったり制服だったりする白狼ぷちかではなく、きりっとした燕尾服を着ている白狼ぷちかだった。

 

白狼ぷちかが手に何かを持ったままその手を上に上げ、ひゅっと動かした。

 

すると暗闇の中からピアノとフルートとドラムの音が聞こえ始め、それが一つの音楽になる。

 

それと同時に新しく一つスポットライトが何かを照らし、その姿を露にした。

 

それはリスぷちか。格好は白狼ぷちかと同じく燕尾服だが、白狼ぷちかの持っている細長い棒の代わりにぷちかサイズのバイオリンとその弓を持っている。

 

「おれは音楽家織斑ぷちか(栗鼠)♪ 上手にバイオリン弾いてみましょう♪」

 

そこまで歌ってからリスぷちかはバイオリンを構え、曲に合わせて弾き始めた。

 

~~~♪ ~~~~♪ ※都合により省略させていただきます。

 

「いかーがですー♪」

 

リスぷちかがそう歌い終わると、リスぷちかに向けられたスポットライトはそのままに新しいスポットライトが別の何かを照らし出す。

 

白い兎耳を頭につけた燕尾服のぷちかが、ピアノの前に座っていた。

同時に、さっきまで流れていたピアノの音が消えて、代わりにバイオリンの旋律が流れている。

 

「おれは音楽家織斑ぷちか(白兎)♪上手にピアノを弾いてみましょう♪」

 

~~~♪ ~~~~♪ ※都合により以下略。

 

「いかーがですー♪」

 

また新しくスポットライトが点き、今度は燕尾服を着た金色の小鳥ぷちかを照らし出した。手にはフルートを持っているが、今は吹かれていないために音は出ていない。

 

代わりに少し休んだ白兎ぷちかが入り、補填している。

 

「おれは音楽家織斑ぷちか(金糸雀)♪ 上手にフルートを吹いてみましょう♪」

 

~~~♪ ~~~~♪ ※都合略

 

「いかーがですー♪」

 

もう一度スポットライトが新しい影を照らし出す。

狸耳をつけた燕尾服を着たぷちかが、太鼓の前に座っていた。

 

「おれは音楽家織斑ぷちか(狸)♪ 上手に太鼓を叩いてみましょう♪」

 

~~~♪ ~~~~♪ ※都略。

 

「いかーがですー♪」

 

そして最後に、指揮をしている白狼ぷちか以外のぷちか達が全員同時に歌い始めた。

 

「おれ達音楽家織斑ぷちか♪ 上手にあわせて演奏しましょう♪」

 

~~~♪ ~~~~♪ ※全略。

 

「いかーがですー♪」

 

最後のフレーズを何度も繰り返しながら、ゆっくりとぷちか達はフェードアウトしていった。

 

 

 

 

side 織斑 一夏

 

再生の終わったブルーレイディスクを取り出して、『演奏会~ぷちか①~』と書いてあるケースに丁寧に仕舞う。

空間投影型の画面を消して、一緒に見ていた鈴達の方に振り向く。

 

死屍累々だった。

 

「……おーい」

「ぐ……がはっ……ぁ……はぁ……はぁ………」

「けほ……箒は……まだ声が出るなら平気ね……それよりは……」

 

「…………」(鼻血をだくだくと流して恍惚の表情を浮かべて倒れているセシリア)

「…………」(鼻血をだくだくと流してだらしなくかつしまりのない笑顔を浮かべているシャル)

「………………ゴパッ」(今まで耐えてきたが我慢の限界に達して吐血したラウラ)

「…………」(燕尾服を着た白狼ぷちかが出てきたときにぶっ倒れた千冬)

 

「……こっちのをどうにかしないと…………」

「……すぅ……はぁ………そうだな」

「ちなみに、弾にも送ってみた」

「……弾。あなたなら平気だと信じているわ」

 

鈴は空を仰ぎながらそう言った。何故か、空に笑顔の弾が浮かんだような気がした。

 

 

 

 

 

……書いてから思ったんですが、これっていいんですかね? 替え歌なんですけど………。

ちなみに、ぷちか達の声は一夏によるアテレコです。

 

 

 

それと、このブルーレイを送られた後の五反田家の一部の惨状を、台詞主体でどうぞ。

 

 

 

 

 

「ん? 一夏からなんか来てるな? 珍しいこともあったもんだ………ってこれ切手とか郵便配達の紙とか張ってないんだけどどうやって…………一夏だし何でもありか」

 

 ~仕事が終わって~

 

「さてと。それじゃあ一夏からのプレゼントを開けてみるかね」

 

「……なんだこりゃ? DVD……いや、ブルーレイディスクか? まあいい、再生してみるか」

 

 ~見終わってから~

 

「お兄!さっきから晩御飯が………きゃあぁぁっ!!?」

 

蘭が扉を蹴り開けたそこには、血まみれで倒れる弾の姿が。

 

「お兄!大丈夫!?」

「ぁ……ら、蘭………」

「よかった……何があったのお兄!?」

「……あ………あれを……」

 

弾が指差したのはテレビ。今は何も映されていないが、どうやらビデオ1に設定されているらしい。

 

「テレビ? テレビがどうしたの!?」

「……ブルーレイだ………ブルーレイが…………致命傷を……」

 

そこまで言って弾の腕が力を失って床に落ちる。蘭は弾の遺言(?)に従って、ブルーレイを再生させてしまった。

そして…………

 

 

「……かはっ……」

 

どさっ!という音と共に、弾の部屋に死体が一つ増えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

試合終了、整備に行こうか

 

………シャルと鈴の方も終わったみたいだし、そろそろ真面目にやろうかね。これ使うとISのプライベート・チャネルが使えなくなるから自重してたけど、これなら使っても平気だろう。

 

千の顔を持つ英雄で作るは、毎度お馴染みのアリス・イン・ワンダーランド。

ISに乗れるとわかってから出番がかなり増えていたりするこれを、とりあえずサービスで核金二十個分ほど水滴をつけてばらまく。これで光学兵器の大半は無力化できたし、機動も無茶苦茶なものになるだろう。

 

「く……またそれですの!?」

「前回も使ったから、今回はちょっと工夫して霧もオプションにつけてみた。効果は倍増だ」

 

セシリーは始めにミサイル・ビットを俺に落とさせてしまった。だから使えるのはゼロ距離のライフルか近接戦闘用のナイフくらい。あと機体の装甲で直接殴るとか、最悪ライフルで殴るとか?

 

まあ、セシリーならライフルで殴るってのはやらなさそうだけど。

 

とにかく、視界は封じてビットの操作とレーザーも封じた。あとはさっさと斬り倒すだけだ。

機動はこっちが上だし、すぐ終わるだろう。

……周りには見せないけど。

 

「……零落白夜」

 

雪片弐型の実体部分が消え、鬱陶しいくらいに眩しく輝くエネルギーの刃が現れた。霧のお陰で向こうからは見えないだろうけど。

 

そして後ろから近付いて、剣を振る。これで終わり。

 

……さてと。それじゃあさっさと帰ろうかね。色々やりたいこともあるし。

 

 

 

ここは整備室。そして整備室と言えば……そう、かんちゃん。

 

「やっほーかんちゃん。勝ってきたよ」

「……うん………見てた」

どうやら見ていたらしい。それならもう少しミサイルの効率運用に気を使えばよかったかもしれない。

だけど俺の使い方は飽和攻撃で押し通す事だしなぁ……。

 

まあ、いいか。過ぎたことだし。

 

「………ん」

 

かんちゃんが俺に向かって手を差し出していた。なにかな?

 

「……シロの調整………しないの?」

「ん、する。ありがと」

「…………私も……助かってるから」

 

そう言ってくれるとありがたいね。

 

………あー……眠い……。

ふぁ……とあくびをしてから立とうとすると、かんちゃんに腕を引かれてかんちゃんの隣に座らされた。

そして、いつの間にか膝枕に移行している。いったい何が起きたんだろうね?

 

「…………お休み。織斑君」

「……ん。お休み……かんちゃん」

 

そして俺は目を閉じる。その寸前にかんちゃんが鼻をつまんで上を向いたような気がしたが、きっと気のせいだろう。

 

……すか~…………。

 

 

 

 

side 更識 簪

 

織斑君が私の膝の上で眠っている。これは一週間に一度は起きることだから珍しくもなんともない。

けれど、今の織斑君だとちょっと問題かもしれない。

全身にぴったりと張り付いているISスーツが、男の子にしてはかなり華奢な体のラインを強調している。

いつも制服の裾から覗くお臍や首筋よりも、なんだか艶かしく見えるのは……きっと気のせいじゃない。

 

「あ、織斑君はここにいましたか。探したんで……寝てます?」

「…………」

 

私は山田先生に頷くだけで返し、左手で織斑君の頭を撫で、右手と右足でシロをいじる。

 

……それにしても、シロの機動は凄い。と言うよりも、織斑君が凄いのかな。こんな真似をしようなんて、私じゃあシロを持っていたとしてもやろうとしないだろうし。

 

「えっと……一年四組の更識さんですね。織斑君に伝言をお願いしてもいいですか?」

「……はい」

「それじゃあ、今日から男子生徒はお風呂が使えますので、その旨と………あと、織斑先生が『毎朝の一夏分の補給がきかなくなってきた』と嘆いていたので、今度寮長室に行ってあげてください、と」

「………わかりました」

 

……私は今、笑っていないだろうか? あの織斑先生がそんなことを言うなんて………。

私としては、なんとか抑え込んでいるつもりなのだけど……ちょっぴり不安になる。

 

笑ったらきっと織斑君を起こしちゃうし、我慢、我慢……。

 

 

 

 

「……くすっ♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

トーナメント終了、送られてきたモノ

 

すべての試合が終わり、表彰式に移る。優勝は俺とシャル。賞品は無いけどね。元々欲しくもないけど。

 

…………さてと。それじゃあ…………寝ようかな。時間もとれるようになったし。

 

…………すか~……。

 

 

 

 

side ???

 

……うんうん、いっくんはよーく寝てるなぁ?

その事を確認して、私は静かにいっくんのベッドの脇に段ボール箱を展開した。これぞ束さん流、遠隔展開だよー♪

いっくんが起きた時にこれを見てどんな反応をしてくれるかなー♪

 

楽しみ、楽しみぃ♪

 

 

side out

 

 

 

目が覚めて、ふと横を向いてみると……そこには段ボール箱が一つ置いてあった。

……誰が置いたのかは知らないけど、多分束姉さんだと思う。だって束姉さんだし。

 

とりあえず開けてみることにした。上のところを目張りしているガムテープを剥がして、それから蓋を開く。

するとそこには、

 

「…………?」

「…………そう言えば、言ってたねぇ」

 

三十センチくらいで頭に茶色の狼耳をつけているちー姉さんが俺のことを見上げていた。

 

とりあえず抱き上げて撫でておく。なんでかうっとりと目を細めるんだが、それがまた可愛い。

 

「…………」

「はいはい、おいで」

 

それをじーーっと見つめていたのは狼ぷちか。なんだろうねこれ。嫉妬か?

手招きすると、ててててっと走ってくる。良いねぇ。でも鈴や弾に見せたら大変なことになりそうだよなぁ……。

 

きゃいきゃいと騒いでころころともつれあったまま転がるぷちー姉さんとぷちかを見ていると、なんでかまた眠くなってきた。

今日は休みだし………一日寝て過ごそうか……。

 

俺の意思を汲み取ったのか、狼ぷちかが俺に駆け寄ってきた。ちょっと服がぼろっとしているのはご愛嬌といったやつだろう。ぷちー姉さんの方もちょっとぼろっとしてるし。

 

俺が布団に入ると、ぷちかもぷちー姉さんも布団の中に潜り込んできた。ぷちー姉さんがかぷかぷと甘噛みを繰り返すのがちょっとくすぐったいけれど、まあ、問題ない。

 

ぷちかとぷちー姉さんの頭を撫でながら……お休みなさい。

 

 

 

 

side 織斑 千冬

 

私の朝は、一夏とぷちかの写真を見ることから始まる。これによって一夏への愛を全身に巡らせ、一日頑張ろうと言う気力を沸き立たせるのだ。

 

しかし、今日は違った。なぜなら、私の体が一夏に包まれていたからだ。

 

何がおきたのかはわからないが、これは確かに一夏だ。一夏の臭いがするし、一夏の声がするし、一夏の味がするし、一夏の肌の感触がするし、一夏がすぐ近くに見える。

 

ただ、一夏にしては大きいと思ったのだが……どうやら私が小さくなっているらしい。隣にぷちかの姿があった。

どういうことかはわからない。どうなっているのかも、どんな状況なのかもわからない。

わからないが―――なんだこの幸せな拷問は……っ!?

 

一夏がこんなに近くにいるのに抱き締められず、撫でられず、頬プニもできず、首筋に舌を這わせることもできないなど………っ!

 

……えぇい、我慢できるか!私は一夏の部屋に行くぞ!

 

 

そこで私か見たものは、ベッドで眠る一夏とぷちか。そして小さな私自身だった。

 

「……ん……ぁ、ちー姉さんだ……♪」

 

一夏はぼんやりとした焦点のあっていない目で私を見つめ、ほにゃりと笑顔を浮かべた。

 

「ちー姉さん……一緒に寝よ?」

 

色々な意味でくらくらしていた私がこの一夏の誘惑に耐えられる筈もなく……気が付いた時には私は一夏と同じ布団で眠っていた。

小さい私が尻尾を振っていたり、ぷちかが小さな私の頬をぺろりと舐めているのを見て、ようやくさっきまでの感覚が小さな私を通して伝わった物だと言うのがわかった。

 

……それにしても、そろそろ本格的にまずいな。

今までは抑えられたのだが、よく会うようになってから我慢が利かなくなり始めている。このままでは本当に食べてしまいそうだ。

 

なにしろ、今も一夏の唇を見て『………キスくらいなら問題ないのでは? そうだ、そのくらいやっているところでは普通にやっている。そして私は一夏が好きだ。うむ問題ない』という思考が一瞬で展開され、そして数分迷ってから却下されているのだから。

 

………それにしても、一夏の唇は柔らかそうだな。それに甘そうだ。

一夏の唇に指を当て、少し力を入れてみる。

すると一夏の唇はくにりとつぶれ、私の指にほんのりと暖かく、少し湿った柔らかな感触を伝える。

 

「……んぅ……はむ………」

 

一夏にくわえられた指に、ぬるりとした一夏の舌が這う。

奇妙なほど熱く感じるそれに私は耐え切れず、意識がまるで木っ端のように消し飛んだ。

 

 

 

目が覚めると、私の腕の中に一夏がいた。それも、腕をきゅっと自分の体に引き付けたまま寝ているという凄まじい威力を誇る姿で。

 

……やれやれ助かったな。これを前に着せた『だぶだぶのYシャツ一枚』でやられていたら……

 

 

 

『……ちー……姉さん……?』

 

いつも通りの眠そうな目に、わずかに涙が浮かんでいる。

だぼっとしたYシャツのボタンは上から二つが外されていて、胸元まで見えてしまっている。

 

『ふふ……一夏。お前は本当に可愛いな……』

 

私は一夏の肌に唇を落とし、一夏の反応を楽しむ。

 

『んっ……ぁ……』

『こら一夏。そんなに可愛い反応をしていると……食べてしまうぞ?』

 

私は一夏の耳元でそう呟き、耳をぺろりと舐めた。

 

ぞくぞくぅっ!と体を震わせた一夏が目を開く。

 

『ち……ちー姉さんなら………いいよ……?』

『……くくくく……可愛い奴め』

 

私は一夏の顎先を指で持ち上げ、ゆっくりと顔を近付けていく。

 

『一夏。目を閉じろ』

 

一夏は素直に目を閉じた。

それを確認して、私はまた一夏に顔を近付ける。

 

 

 

―――そこまで妄想した私の頭をかなり本気で殴る。非常に痛いが目は覚めた。

 

……ああ、今の私は相当不味いな。認めたくはないが、束のことをどうこう言えない程度には。

 

やれやれ。どうするか……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

睡眠愛好会日誌、またの名を一夏観察日記

 

俺の部屋には、表紙に【睡眠愛好会日誌】と書かれたノートがある。

俺は使ったことはないし、中を見たこともないが、鈴達はかなりの頻度で使っているらしい。理由は知らないけど。

……まあ、なんだっていいけどな。

 

 

 

side 睡眠愛好会日誌

 

六月 ○日 凰 鈴音

 

今日は記念すべき睡眠愛好会の活動初日。と言うことで活動の内容をつけるこのノートを用意したから、皆も書きたいことがあったら好きに書くといいわ。

 

今日の一夏はいつもより少し深く眠っていたように思える。きっと色々あったせいであんまり寝れてないのね。

あと、やっぱり一夏は可愛いわよね。臍チラ最高!うなじもいいし二の腕のぷにぷにもいいけど、やっぱりあのお腹に顔を埋めた時の感触が一番よ!

 

 

六月 ×日 篠ノ之 箒

 

今日の一夏は少し寝相が悪かった。膝枕が嫌なのかと思ったがそんなことはなく、ただ頭がちょうどよくはまる場所を見付けるのに時間がかかっただけらしい。

一度そこを見つけてからは実に大人しく、いつもと同じように髪を撫でさせてくれた。

 

……ちなみに私は一夏の髪が好きだ。さらさらと指に通るあの感触が良い。

それに匂いも良いしな。なぜ一夏はこれほどいい匂いがするのだろうか?

 

 

六月 △日 セシリア・オルコット

 

今日の一夏さんは、いつもとあまり変わった所は見受けられませんでした。

いつもの通りにのんびりと眠っていて、あまり大きく動こうとはしません。

ただ、なにかを食べている夢でも見ているのか、時折むにむにと口が動くのがわかります。

 

ちなみにわたくしは足首から太股にかけてのラインが好みですわね。抱きつきながらこの脚も使ってしがみつく姿と感触が最高ですわ。

 

 

六月 □日 更識 簪

 

……初めまして。更識簪です。今日は整備室で寝ちゃった織斑君を運んで、その時に見つけたので書いています。

今日の織斑君はいつもと変わらず私の膝を枕にして、犬耳をくてっと萎れさせたまま寝ていた。なんだかすごく撫でてあげたくなる表情をしていたから、つい撫でてしまった。

それと同時にシロの整備をしているのだけど………なぜか『織斑君がどんなものを求めているか』が簡単にだけどわかるようになっていた。

……これは……慣れ?

 

私はおでこが好き。撫でていると、なんだか落ち着くから。理由はわからないけど。

 

 

六月 ☆日 凰 鈴音

 

はじめまして、更識さん。そしてようこそ、III(いっぱいいっぱい一夏)へ。一夏に健やかなる眠りを!

 

今日の一夏はなかなか起きてこなかった。入ってみると、なんとシャルルが一夏と同じ布団に入って顔を真っ赤しにたまま胸に顔を埋めていた。羨ましいわね代わりなさい。

ちなみに、本当に代わってもらったわ。遅刻しそうになったけど。

 

脚のラインと、髪と、おでこ………むぅ、どれも捨てがたい……。あたしはどれを選べばいいの!? 教えて弾!

 

 

六月 ☆日 五反田 弾

 

初めましての人は初めまして。鈴ともしかしたら一夏には久し振り。一夏の親友五反田 弾だ。

深夜に書いてるから☆日でいいよな。もう一時だけど。

 

……羨ましいな。是非とも写真を送ってくれ。俺の所にある永久保存版一夏アルバムに入れるから。中学までの写真が欲しい奴は、是非とも五反田食堂に来てくれよな。

高校生くらいの赤い髪の男が俺だ。注文は『ワンサマーアルバム』だ。出前はやってないけど。

あと、完全予約制だ。予約はここに取りにくる日時と一緒に書いてくれればいい。

 

それと、鈴。お前に俺に降りてきた天恵を教えよう。

 

『一夏の全てが可愛い』

 

これで解決だ。

 

 

六月 ◇日 凰 鈴音

 

どうやって書いたのかはわからないけど、ありがとう弾!迷いの霧が一気に晴れ渡ったような気がするわ!

そうよね、みんなみんな一夏だもんね。選ぼうとするのが間違ってるのよ!何であたしはこんな簡単なことにも気が付かなかったの!?

 

………あたしもまだまだ修行が足りないわね。

 

 

六月 ▽日 シャルロット・デュノア

 

いや、突っ込みどころが多すぎるんだけど!? どうしてみんな突っ込まないのさ!?

 

何でいきなり鈴はそんなカミングアウトするのさ!? そして箒やセシリアも、乗っちゃ駄目でしょそこは!?

それと更識さんも毒されないで!お願いだから!

 

あと五反田さんはどうやってここに書き込んだんですか!? 不法侵入するのはまず不可能なはずなんですけど!? ワンサマーアルバムは半ダース貰います。いくらになりますか?

 

 

 

 

……………腕の中って、あったかくって、おちつくよね。

 

 

六月 ◎日 ラウラ・ボーデヴィッヒ

 

……ふむ。なるほど。私の好敵手の腕の中は落ち着くのか。今度試してみるとしよう。

 

好敵手のことを知ることは大切なことだ。私もワンサマーアルバムを頼もうか。

……ああ、確か出前はしていないのだったか。それではまた今度、直接出向くとしよう。

 

ちなみに私はあの強い意思の籠った目が好きだな。あの目に見詰められると、体が熱くなってくる。

理由はわかるようなわからないような曖昧な状態だが、あの目は良い。

 

 

六月 ∂日 織斑 千冬

 

……貴様等、面白い話をしているな? 一夏の話に私を呼ばないとは、まさか私と全力で模擬戦をしたいという遠回しな自殺か?

………まあいい。今回は多目に見よう。話を持ってきたのは凰だったしな。

 

そして五反田。貴様はいいことを言った。

そう、一夏は全てが素晴らしいのだ。それをわざわざ分割して考えようとするからこんがらがるのだ。一夏は一夏、それを理解して一つのものとして考えれば、一夏がどれほど素晴らしいかが見えてくるはずだ。

 

例えば声。一夏の声はそれ単体でもかなりの威力を持つが、それに甘えるような響きと人懐っこい子犬のような視線を加えればその威力は格段に増す。一夏が私に抱きついている状態だったなら更にクるな。

その他にも背筋や首筋も良い。撫でたときの反応や、ふっと息を吹きかけてやった時にきゅうっと目を閉じる姿はこれまた威力が高い。

 

さらに―――(以下数万文字を省略)

 

 

六月 ф日 布仏 本音

 

わー。織斑せんせーって、実はすっごいブラコンだー♪

 

 

 

 

 

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