今回はミッドナイト視点から…
ではどうぞ
「あっつ〜い」
『ミッドナイトは薄着だからまだいい!見てくれよこのコスチューム!真夏でも全身真っ黒、首にはスピーカー…正直倒れそうだぜ…』
「サングラスあるからいいじゃない」
『辛辣だぜミッドナイト…やっぱり前にギルガメッシュに負けたのが原因?』
「その話はしないで…18禁ヒーローにあるまじき失態だわ…」
『ファン層が少し下がったってリスナーからお便りが届いたよ…』
「口調が少し変わってるわよ。少し日陰で休んできたら?」
『ありがとう…少しの間頼んだぜ…』
項垂れ、千鳥足を彷彿とさせる足取りでふらふらーっと日陰に向かって行くプレゼントマイク。まあ、あのコスチュームでは音を上げるのは仕方のないことだろう。
私達は今、ヴィランの目撃情報が多数報告されたと言われる、とある浜辺の警備をしていた。この海は少し前までは本当に海を愛する人だけが知っている穴場みたいな場所だったらしいが、浜辺のすぐそばに高級ホテルが立ち一躍有名になった。そのホテルは僅か1ヶ月程度で建てられたらしい。噂ではヴィランが裏で手を引いてるとかなんとか…このヴィランの目撃情報と関係していない事を願いたいものだ。
「しかし、みんな楽しそうね」
浜辺を見渡すと老若男女といった様々な人々がいて、海で遊んだり浜辺で日光浴をしたりし、中にはナンパをしている人もいて…それぞれの楽しみ方で夏を満喫しているみたいだ。
「ん〜青春ね〜」
私は青春が好きだ。限られた時を掛け替えのない友達や親友、恋人などと過ごし、楽しいときや甘酸っぱいとき、中には喧嘩したり悲しくて仕方のないときなど、若いからこそ織りなせる思い出がたくさんある。昔は高校野球、高校サッカーなど青春の代名詞とも呼べるものがあったらしいが今じゃ廃れてしまった。一度は見て見たかったものだ。
「でも、若いからって許されないこともあるわ」
そう例えば10人くらいの若い男が2人の若い女を囲み無理矢理連れて行こうとしたりした場合などだ。
「どこにでもいるのね、チンピラは」
溜め息がでる。折角の気分が台無しだ。そうしてる間に状況はどんどん悪化し、男達は女の子の腕を引き寄せ体を弄ったりして笑っている。恐らくナンパに失敗し、それに腹を立てた男達が女の子を無理矢理連れて行こうとしているのだろう。彼らは顔だけ見れば十分イケメンの部類に入る。自分の顔に自信を持っているであろう人間がナンパに失敗したなど自分たちのプライドが許さなかったのだろう。そろそろ止めなければ周りにギャラリーなど集まってきて収集がつかなくなる。
私は駆け足でその場に向かい、1人の男の肩を掴んだ。
「そこまでにしなさい」
「あァ?なんだてめぇ!」
「あら、私が分からないの?」
そして男達は数秒睨んだ後私の事に気付いたのか、みるみる顔が真っ青になっていった。
「おい、こいつってまさか…18禁ヒーローミッドナイトじゃないか⁉︎」
「なんでそんな奴が都心離れてこんなとこまで来てんだよ!」
「くそっ!どうする⁉︎」
「落ち着けお前ら!こんな奴に狼狽えてんじゃねえ!こいつ前にギルガメッシュにやられて伸びてた奴じゃねえか!って事はそんなに強い奴じゃねえ!俺ら全員でかかればいけるぞ!」
「ん?おお!確かにそうだな!三十路超えたババアが俺らの敵にぶへらぁ!」
綺麗に回転しながら1人の男が空に舞い、そのままドサッと倒れる。彼女の個性は「眠り香」であり眠らせるのは容易な事だろう。だが、今のは明らかに個性ではなく彼女の拳によるものだった。
「ごめんなさい。殴ってしまったわ」
「ってなんでやねん!そこは「ごめんなさい。手が滑ってしまったわ」じゃないのかよ!」
「こいつ隠す気がないじゃねえか!」
「やべぇ女に目をつけられた!お前らとっととずらかるぞ!」
そう言って即座に逃走する男達。なんて無様な後ろ姿だろう。しかも彼は決して口にしてはならない事を言ってしまったのだ。ボコボコにされなかっただけ幸運に思ってもらいたいぐらいだ。
その無様な後ろ姿を見届けた後に、ナンパされてた女の子2人の方に向く。彼女達は恐怖から解放されたのかペタッと尻餅をつく。
「大丈夫?立てる?」
そう言って私は手を差し伸ばした。しかし女の子2人組は手を取らず私の方を見てコソコソと話していた。
「怪我はなかった?」
もう一回聞き、手を差し伸ばした。今度は1人の女の子が手を取ってくれたので、立ち上がらせた。
「ええ。外傷はなかったですよ」
怪我がないのに安堵し、手を離そうかとしたが手は一向に離れなかった。誰かの手を借りたいくらい怖かったのかしら?
「いたっ!」
そう思った瞬間、女の子の手を握っている力が異常に強くなり、思わず手を引いてしまう。その女の子の顔を見てみると少し怒ったような複雑な顔をしている。
「貴方力が強いのね…」
「すみません。力の制御が上手くいかなくて」
「なにかの個性かしら?」
「いえ、無個性です」
「そっ、そうなの。でも力が強いからって気をつけるのよ。折角の夏なんだから悪いナンパには引っかからないように」
「わかりました。ありがとうございます」
彼女達は無事だったようなので注意だけして、その場から離れ、なるべく人目のつかないところで休む事にした。
しかし、先程助けた女の子の1人は何故あんなにも怒っていたのだろう?まさかナンパされる事を望んでいた?でもあの男に囲まれた時の、恐怖の表情は確かなものだった。
「うーん…分からないわ…」
「いやー!久しぶりだなミッドナイト!」
突如、背後から声が聞こえて来たので振り向いてみると、そこには海難ヒーロー、セルキーがいた。
「セルキー、久しぶりね。何でここにいるのかしら?」
「まあ今はアレだ。ホテルの経営者に頼まれて子供向けのスイミングスクールをしているんだ」
「貴方の個性、そもそもアザラシなのに教える事できるの?ていうかこの暑さの中大丈夫なの?」
「なぁに。泳ぐことに関しては平泳ぎ、クロール、バタフライなんでもオッケーだ、溺れた時も俺が一番早く助ける事ができるだろうしな。暑さに関しては保冷剤を大量に持ってきてるから大丈夫だ!」
「保冷剤…?」
「それは冗談だけどな。しっかしお前さんも大変だな。あんな事があってなぁ。若い女に目を付けられるようになったのになぁ…」
「え?どうして?」
「なに?知らないのか?ギルガメッシュのファンクラブって奴に目の敵にされてるぞ」
「あっ…」
「その反応は心当たりがあるようだな。ヒーローだから気にすんなとは言わないが…気をつけておいた方がいいかもな」
「気をつける?どうして?」
「穏健派と過激派があるらしいからな…」
「そう、忠告ありがとうセルキー。色々知っているのね」
「シリウスに聞いたんだ。あいつの周りも毒されているって嘆いてたぜ。おっと、そろそろスイミングスクールが始まるから行くとするか」
「分かったわ。じゃあまたねセルキー」
「おう」
私は歩いて行くセルキーを見ながら物思いに耽る。
あの日の件が無ければ今頃、普通にヒーロー活動を出来ていたのだろう。だがギルガメッシュに関わってしまった事により私のヒーローとしての活動に支障を来すかもしれない。そう考えるとどうしても意気消沈してしまう。
「どうしてこうなったのかしら…」
気が重くなっても仕事を破棄することはできないので、大人しく警備を続行するのであった。
ギルガメッシュを崇拝している力の強い女の子…まさか奴か…
プレゼントマイクはヒロアカ中トップレベルで好き。だが開始早々脱落…
少し前にセルキーを登場させて欲しいと言われたので出してみた。一応昔にセルキーとミッドナイトはあっている程で。
セルキーはアニメ版しか出てこなかったらしいですね。漫画しか読んでいなかったので、友達の家まで行って録画を見させてもらいました。だがセルキーのキャラは掴めなかった作者であった…
次話、ギルガメッシュ様ようやくの登場
感想待ってます